『オーシャンズ8』感想|あらすじ解説|内容考察|女たちの共闘

『オーシャンズ8』感想|あらすじ解説|内容考察|女たちの共闘

概要

 『オーシャンズ8』は、2018年に公開されたアメリカ映画。監督はゲイリー・ロス。ゲイリー・ロスは『ハンガー・ゲーム』の監督として有名。 スーザン・ソダバーグ監督の「オーシャンズ」シリーズのスピンオフ映画。「オーシャンズ」シリーズで主人公であったダニー・オーシャンは亡くなり、妹のデビー・オーシャンが活躍する。

 関連作品の感想はこちら。『オーシャンズ11』、『オーシャンズ12』、『オーシャンズ13』。

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登場人物

デビー・オーシャン(サンドラ・ブロック):ダニーの妹。ベッカーに騙されて5年間も刑務所にいた。ダフネが身につけるダイヤモンドのネックレス狙う。

ルー・ミラー (ケイト・ブランシェット):デビーの相棒。客を騙しながら飲食店を経営している。

ダフネ・クルーガー(アン・ハサウェイ):大女優。ファッション大会でつけるネックレスを、デビーらに狙われる。

アミータ(ミンディ・カリング):宝石商。職業を理由に事前に宝石をみせてもらう。

タミー(サラ・ポールソン):盗品ディーラー。普段は主婦。

コンスタンス(オークワフィナ):詐欺師。

ナインボール(リアーナ):ハッカー。美術館のシステムにハッキングする。

ローズ・ワイル(ヘレナ・ボナム=カーター):落ち目のデザイナー。ダフネの専属デザイナーになる。

クロード・ベッカー(リチャード・アーミティッジ):デビーの元恋人。5年前にデビーを騙している。

あらすじ

 ダニー・オーシャンの妹デビー・オーシャンは、刑期を終えて5年ぶりに仮出所をすると、騙したり盗んだりしてホテルに無料で泊まる。次に向かった先は相棒のルーのもとで、ファッション大会でダフネが身に付けるダイヤモンドネックレスを盗む計画を披露する。

 二人は作戦に必要な仲間を集め、7人のチームを結成する。ダフネを騙し専属デザイナーになったローズは、アミーダと共に宝石をみせてもらい、特殊な眼鏡を用いてスキャンし複製を作る。

 他に、ナインボールが会場の防犯システムにハッキングして監視カメラをいじり死角を作ったり、タミーが潜入工作をしたりする。

 当日、下剤を入れられたスープを飲んだダフネは、トイレの個室に入って嘔吐する。警備員がトイレに付いてこないよう阻み、介抱するとみせかけたコンスタンスは宝石を盗む。宝石は通りかかったウェイターのお盆にのせて移動させ、彼を誘導してアミーダの手に渡る。

 宝石がなくなっていることに気がついた警護者は会場を封鎖。全員の手荷物検査を始める。タミーは複製しておいた宝石を見つけたと報告し、会場の封鎖は解かれる。その頃、アミーダは宝石を分解して仲間に分散させていた。少量ずつ宝石をもった仲間たちは、誰にも気づかれず見事に脱出する。

 宝石が偽物であることが発覚し警察の調査がスタート。喜び合うデビーらのもとにダフネが現れる。ダフネは彼女たちが犯人だと見抜いていた。デビーはダフネと共闘し、宝石の一部をクロードの家に置くことで容疑をクロードに向けさせる。

 さらに、ダフネの宝石以外に、手荷物検査で人がいない間に博物館の宝石も盗んでいた。予定より多い分前に仲間たちは大喜び。最後にデビーはダニーの墓の前で「見せたかった」と報告するのだった。

解説

『オーシャンズ11』の共通点と違い

 「オーシャンズ」シリーズが男だらけの集団であったのと対照的に『オーシャンズ8』は女だらけの集団である。弱音を吐いたり男性に助けを求めたりせず、最後まで一貫して女性だけで作戦を遂行するのは爽快である。主人公のサンドラ・ブロックと相棒のケイト・ブランシェット、さらに最後に仲間になるアン・ハサウェイがとにかくカッコ良いので、それだけでも観る価値がある。

 本作は、「オーシャンズ」シリーズとはほとんど関係がなく、登場するのはシャオボー・チン演じるイエンのみである(マット・デイモンはカメオ出演の予定であったが#MeToo関連でカットされた)。雰囲気も若干異なり、笑いとトリックの複雑さは抑えめだが、爽快感とカッコ良さは前作に匹敵する。作戦のためにプロフェッショナルを各地から集めるのは、前作と変わらず楽しい気分になる。

 「オーシャンズ」シリーズのどれに似ているかといえば、間違いなく『オーシャンズ11』だろう。どちらの作戦も刑期中に考えた壮大な計画であり、どちらのオーシャンも仮出所後の犯行である。なにより、犯行の動機が似ている。ダニーはカジノの金を盗むことに加えて、ベネディクからテスを奪うという裏の目的があった。同様に、デビーは宝石を盗むことに加えて、過去に自分を騙したベッカーへの復讐が裏の目的としてある。この二重の目的がどちらの物語も面白くさせているのは間違いない。

 盗みの裏に、ダニーの強奪とデビーの復讐がある。この構図は似ているようだが、むしろ違いに注目すると面白い。ダニーの場合は、ダニーとベネディクトの男性同士の対決があり、テスはいわばこの対決の賞品のような位置にあった。だがデビーの場合は、そもそもデビーとダフネの女性同士の対決は成り立っていない。したがってベッカーは対決の賞品にはならないし、なおかつデビーがベッカーに絆されることはない。デビーは男性など必要とせず完全に自立しているのである。

 デビーとダフネの対決が成立していないことは、彼女たちの後の共闘の伏線になっているのだが、共闘までくるとデビーの復讐はチーム全員に共有され、女性側からの男性への「復讐」という感すらでてくる。デビーはさらに後続の女性の地位すら背負っている。このミッションの成功は、のちの女性泥棒の道筋を立てるものだ。デビーは未来を含めた全ての女性のために宝石を盗むのである。

考察・感想

女性ホモソーシャルの新しい物語

 ダニーの「強奪」からデビーの「復讐」へ、やめられない「強盗」から地位を背負った「共闘」へ。この違いは、同性の集まりという点では一致しているものの、男性ホモソーシャルと女性ホモソーシャルの違いだとも言える。ホモソーシャルというのは、同性同士の社会的集団のことである。もともとは男性の集団のことをさし、ミソジニー(女性嫌悪)とホモフォビア(同性愛嫌悪)を特徴とする。女性と同性愛者を排除することで、男同士の絆が保たれているのだ。女性ホモソーシャルが存在するのかは議論されることらしいが、『オーシャンズ8』の女性ホモソーシャルには明らかな男性嫌悪がある。ベッカーに騙された経験のあるデビーは、男性は女性を無視するという理由で男性を仲間に入れることはしない。男性がいないことで、自由で楽しい空間が生まれているのだ。

 だが、デビーたちに同性愛嫌悪があるのかといえば、ない。デビーたちは男性を排除しながら同性愛は排除しないのであり、それがデビーたちがつくる女性ホモソーシャルの特徴なのだ(同性愛が排除されていないのでホモソーシャルとはいえないかもしれない)。この特徴が先に挙げた、男性への「復讐」と女性たちの「共闘」という、『オーシャンズ11』とは違う新たな物語を作りあげている。

 ホモソーシャルの議論が大変面白いと感じるのは、持続的な同質の集団を作るためには、排除するもの(構成的外部)が二つ必要だということである。異質なもの(異性)だけではない、同一になろうとするもの(同性愛)もは排除するのだ。

 『オーシャンズ8』ではホモフォビアがない代わりに、他に二つのものを排除しているように見える。『オーシャンズ11』との対比で言えば、一つは「汗」、もう一つは「年齢差」である(『オーシャンズ11』評ー人間臭い強奪作戦)。「汗」は人間臭さの象徴であり、「年齢差」は人間の多様さの象徴であった。「汗」はミスや失敗をおこし、「年齢差」はコミュニケーションの不可能性を生む。この二つが排除されているのは、本作の女性のホモソーシャルの「共闘」と相性がいいからだ。どちらも作戦には必要ないし、なければ密接に繋がることができる。しかし、それによって失われてしまうものはないだろうか。ミソジニーとホモフォビアからなる男性ホモソーシャルとは違う原理の、女性ホモソーシャルがつくる新たな物語の試みはこれからも発展していくことだろう。

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