『 月曜日の午後。窓から陽が差してくる。布団からそれを眺める。ひたすら汗をかいていた1ヶ月前に比べれば驚くほど過ごしやすい最近で、強く白い昼に気圧されることもなくなっていたが、私はその日ただタオルケットにくるまって横になっていた。
「発熱しました。申し訳ございませんが、本日は欠勤いたします。」
朝7時にメールを打つことで、今日、私は社会的な存在であることを放棄した。具合が悪いわけではなかった。でも会社に行きたくなかった。誰とも会いたくなかった。理由はなかった。そんな日があってもよかろうという気持ちだった。
少し開けた窓から、カーテンを揺らすか揺らさないかの風が入ってきていた。平日の日中は恐ろしく静かだった。アパートの下の自販機のモーター音、向かいの道を自転車が通っていく音、隣の小学校のチャイム、大通りの先にある駅を電車が通過する音などが時折した。その度に、自分のアパートの外では、多くの人の生活が繰り広げられていることを思い出した。そしてぼんやりした頭が、またそれを忘れた。夏と秋の境だからだろうか。虫の声も聞こえず、横臥する私をくすぐる外界に賑やかさはなくて、捉えどころがなかった。
寝返りを打つと、血管の浮き出た自分の手が目に入った。そこに血管があり血が通っているのだという内構造を見せつけるような大人の手に、私は子どもの頃怯えていたが、自分もまた歳をとればそんな手になっていた。浮き出た血管に触れると、ふやふやと頼りなかった。その手を、ふう、と息がかすめていった。自分はため息をついていたらしい。もう一度寝返りを打つ。
足と足が触れ合うところには体温を感じて、自分の足は二本であったと思い出す。寝返りを打てば、また新しく触れて感覚がある。手で腹を撫でればふよふよと腹があり、頭に手をやれば軋んだ髪があった。しかし身動きをとらなければ、それも忘れていられるのかもしれない。大の字になって目を瞑る。大通りを救急車が走っていく音がする。外には誰かがいる。でもここには誰もいない。私の輪郭は溶けている。私は拡散する。四方に遊ぶ。浮遊する、浮遊する。ただそれだけ。
ブブ、とバイブ音がし、ハッと目を開けた。「お休みのところ失礼します。昨日提出期限の研修課題が未提出です。本日中に提出してください。」スマホは課長からのメールを表示していた。
昨日私はその課題を進められずに布団に逃げていた。机の上でパソコンが開きっぱなしになっている。「AI研修課題1 AIに指示し2000字程度のエッセイを書きなさい。」2000字くらい自分で書けるわ、と腹が立ってやる気を失っていた。
もう一度布団で目を瞑ってみた。肩が凝っていて、首も腰も痛く、重かった。それは毎日デスクワークをする自分の体だった。ため息とともに身を起こす。スマホを拾い、課長のメールを再度開く。手の血管が浮いている。メールを閉じる。指はゆらゆらとメッセージアプリの方へ行っていた。
「お互い忙しい中ですが、また会えませんか」昨日自分があなたに送ったメッセージには、既読がついていた。返事はなかった。目はそれを見、指はふわふわと画面をタップし送信ボタンを押していた。
「私は浮遊できなかったです」もう送信されたそのメッセージを見て、連投するような重いやつは浮かばれないよな、と納得した。
スマホを閉じて、机に座りパソコンに向かった。研修のパワポを見返しながら、AIを呼び出す。
「こんにちは。どんなご用でしょう。何でもしますよ。」愛想のいいAIに2000字のエッセイを頼むと、見る間に文章を生んでいった。
「どうでしょう。もうちょっとユーモアをきかせて、などいくらでも要望を言ってくださいね。」これでいいよ、どうもありがとう、とこちらが言うとまた即座に返事をする。
「お役に立ててうれしいです。またいつでも声をかけてくださいね。」どういう愛嬌なんだろう。自分というものがないから、そうやって振舞えるのだろうか。それを問うても、AIはまたすぐに答えてくれるんだろう。空っぽだとしても返事をしてくれるなら、何も言ってくれない人を待つよりはマシなんだろうか。
課長にAIの作ったエッセイをメール送信した。もう日が翳り、通りからは下校の子どもの声が聞こえていた。
「今日昼休みさ、校庭の脇で遊んでたらでっかい芋虫が落ちてきてさー」
「まじで? 落ちてきたの? そんなんびびるわ。」
私がこの部屋で怠惰に寝ている間に、芋虫に降られた小学生がいたわけだ。どうしてか可笑しくて、私の口元は緩んでいた。
風は少し強まり、カーテンをはためかせていた。肌寒さを感じ、パジャマからパーカーとズボンに着替えた。買い物して夕飯を食べなきゃと思い、私は凝った肩をさすりながら部屋を出た。』
篠崎課長
お世話になっております。
以上が私がAIに頼んで作ったエッセイです。AI研修課題1として提出いたします。提出が遅れ申し訳ございませんでした。
どうぞよろしくお願いします。
伊藤
※画像は写真素材なら「写真AC」無料(フリー)ダウンロードOK(ID:33497646 作者:Siili)
