スーパードラマウォッチャーのナンシーです。地上波のテレビドラマをウォッチしています。
2025年も残すところ1日。「フジテレビ問題」の表面化によるスポンサーの撤退・ロケ撮影中止等さまざまな出来事がありましたが、ドラマはなんとか変わらず作られ続けました。ということで、そんな1年を振り返ってナンシー的「2025年のドラマベスト5」を発表したいと思います。今は配信サービスも発達していますので、お正月に時間があればぜひ見てください!
第5位
【10月-12月期】
(TBS系)『じゃあ、あんたが作ってみろよ』
脚本: 安藤 奎 他
料理を誰がどう作るかを題材に、令和の男女関係をコミカルに写し出した「火10」枠らしい作品。鮎美(夏帆)に作ってもらった料理を「全体的に茶色いね」とのたまう勝男(竹内涼真)の「化石男」ぶりが最高。いわゆる「有害男性」が自己啓発を通して「かわいく」変身する話、南勝久による漫画『ザ・ファブル』(講談社)とも重なる近年の注目トレンドである。といっても案外、『るろうに剣心』まで遡れそうな気もするが。
第4位
【4月-6月期】
(NHK)『地震のあとで』(全4話)
脚本: 大江崇允

村上春樹の短編集『神の子どもたちはみな踊る』を、阪神淡路大震災から30年の年に井上剛演出で映像化。『その街のこども』(2010)、『あまちゃん』(2013)等の作品でも震災を描いてきた井上剛が、『64』(2015)等で腕をふるったホームグラウンド「土曜ドラマ」枠にひさびさ復帰。第1話「UFOが釧路に降りる」の長台詞、第2話「アイロンのある風景」の焚火、第3話「神の子どもたちはみな踊る」の球場でのダンス、第4話「続・かえるくん、東京を救う」の、現実か非現実かもわからない錦戸亮等、毎回異様な演出で視聴者の読解力を試し限界へといざなうかのようだった。脚本・演出ともにテレビドラマの臨界点として評価したい。
第3位
【1月-3月期】
(TBS系)『まどか26歳、研修医やってます!』
脚本: 前川洋一 他

今年「火10」枠が放った最高作。新人研修医のまどかが、様々な部局を巡りOJTを重ね医療スタッフや患者と接して自己の適性に目覚めていく、という定型的な「お仕事(&恋愛)ドラマ」。ただ、まどかを演じた芳根京子の、「本当に何も考えてない」顔が定型をぶっちぎったリアルさで、『恋はつづくよどこまでも』(2020)の上白石萌音に完勝している。まどかの「わかってなさ」と「懸命さ」を見ていて、若いってこういうことだよなー、と毎回笑わされ、でも少しグッときてしまった。まどかが「ドクターK」なる人形劇と、前年度日本一に輝いた横浜DeNAベイスターズの大ファンという設定が過不足なく生かされていたのも見事。診察部長役の奥田瑛二、患者役の金田明夫、ゲスト枠の中畑清前前前DeNA監督(!)等脇を固めるキャストも良かった。こういうのがもっと見たいんです。
第2位
【10-12月期】
(テレビ東京系)『シナントロープ』
脚本: 此元和津也
このドラマの素晴らしさについては秋ドラマ寸評にも書いたので繰り返さないが、全体の完成度と細部のオフビートさがたまらない。青春群像劇、ミステリー、コメディー、バイオレンスetcの要素を満遍なく含む傑作。この経費削減全盛の時代に全12話フルボリュームで届けてくれたことにも感謝。主題歌「ときめき探偵 feat. Le Makeup」も、歌詞が聴き取れないながらに癖になる。
第1位
【7-9月期】
(フジ系)『僕達はまだその星の校則を知らない』
脚本: 大森美香

フジテレビが自社の身から出た錆で振るわなかった1年だった。逆境の中、系列の関西テレビが制作したこの瑞々しい学園ドラマを今年のベストに推したい。学園ドラマと言っても主人公は教師ではなくスクールロイヤーの白鳥健治(磯村勇斗)。白鳥は親が教師でありながら学校に不適合で、未だに校門をくぐる時に「ムムス」を感じてしまう(※彼の造語です)。今までのトラブル対処の方法でやっていこうとする学校組織には反発する白鳥だが、教師や生徒1人1人には共感的で、何とか皆の「本当のさいわい」を見い出そうとする…。主人公と同じ名前の宮沢賢治作品がフィーチャーされ、天体観測の場面で「星めぐりの歌」も流れる抒情性もあるが、向き合う問題はブラック校則、いじめ、盗撮疑惑、教育虐待等非常に現代的。最終話が弁護士ものらしく裁判劇というのもすごい(よく考えたら脚本大森美香の出世作は『カバチタレ!』(2001)ですからね)。裁判をした結果、白鳥が学校に束の間の「ポポム」(※彼の造語です)を感じる結末は胸が温かくなる。堀田真由はじめ教師、生徒の演技が素晴らしいが、「もう1つの正義」を体現し続けた理事長役の稲垣吾郎に惜しみない拍手を。夜空ノムコウが見えました。
ここまで書いてきて、2020年代も「上半期」を終えようとしていることにふと気づいたので、ついでにナンシーの「2020s上半期ベスト&ワースト」も発表します。
【2020s上半期ベスト】
第10位 『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』(NHK、2023) 脚本: 市之瀬浩子 他
河合優実の名演技と大九明子による映画的演出の質感がベストマッチ。

第9位 『セクシー田中さん』(日テレ、2023) 脚本: 相沢友子・芦原妃名子
原作者(芦原)の自殺により評価が難しくなったが、ドラマ単体で見れば素晴らしい。木南晴夏演じる田中さんの自己発見と自己研鑽の物語。「有害男性」笙野(毎熊克哉)の変化は、今年の「じゃあつく」を先取りしている。田中さんに憧れる後輩を演じためるるも抜群に良い。…が、確かにめるるの恋愛成就は蛇足ですかね。

第8位 『半沢直樹』[第2シーズン](TBS、2020)
お化けドラマの続編で、なんだかんだで国民的に盛り上がった楽しい記憶。コロナ禍で撮影できなかったのを利用して生放送のトークで堺雅人らが舞台裏を語ったのも良かった。「日曜劇場」という枠と、市川中車こと香川照之、片岡愛之助、市川猿之助ら伝統芸能勢との相性が上手くマッチングし、柄本明ら悪役のケレン味にやられた。

第7位 『青のSP-学校内警察・嶋田隆平-』(フジ、2021) 脚本: 大石哲也 他
舞台や映画を活動の中心にしていた藤原竜也が本格的にドラマにも出始めた頃の作品。生徒や教師の問題行動も生徒内トラブルもスクールポリスが解決する社会という現時点では荒唐無稽な設定に、藤原竜也の深刻そうな顔だけで説得力を持たせた。連ドラ、こんなんでいいぜ。藤原竜也の無双ぶりは『全領域異常解決室』(2024)へと続く。

第6位 『ブラッシュアップライフ』(日テレ、2023) 脚本: バカリズム
事故で亡くなった麻美(安藤サクラ)が、タイムリープで人生をやり直せることになり、そのたび幼馴染のなっち(夏帆)、みーぽん(木南晴夏)とつるみながら違う職に就く話。「レトロ平成」ブームにも乗り、シール帳など細部の再現も楽しかった。麻美の少女時代を演じた永尾柚乃、麻美が何度タイムリープしても不動のカラオケ店員福ちゃんを演じた染谷将太、ミタコング先生をいかにも先生らしく演じた鈴木浩介らの演技力が傑出。だからこそ、最終話の軟着陸が惜しまれる。しかし、この冒険のなさ・「地元でまったり」感が、不安定な令和において憧れられているのかも。

第5位 『マイダイアリー』(2024、テレ朝) 脚本: 兵藤るり
清原果耶、佐野勇斗、吉川愛、見上愛、望月歩という若手キャストが集結した、大学~社会人数年目までの生活を描いた愛すべき青春ドラマ。同時期に朝ドラ『おむすび』で橋本環奈の夫役を演じた佐野のギフテッドぶり、大河『光る君へ』で中宮役を演じた見上の気遣い屋ぶり、と役者のカメレオン性を堪能できる(その後の佐野は、今年歌手として紅白出場しつつ『ひとりでしにたい』(NHK)で綾瀬はるかと共演し困難な那須田氏役を絶妙に演じる活躍を見せた)。ファミレス店員和田虎之介を演じた望月歩は、その後『十角館の殺人』(2024)『恋は闇』『シナントロープ』(2025)でも重要な役を演じ20年代のキーパーソンとなった。低視聴率に苦しんで頻繁に放送枠が繰り下げになり9話で打ち切られたとも思えたが、今でもこの5人のことを時々考える。

第4位 『不適切にもほどがある!』(TBS、2024) 脚本: 宮藤官九郎
令和(2024)vs昭和(1986)モノの最高峰。震災を描いた第5話はコンプライアンス諷刺の枠を飛びこえてヒューマンな感動を呼んだ。またも河合優実による、山口百恵が憑依したような名演技が見られるが、阿部サダヲのナチュラルボーン昭和体育教師ぶりはそれすらも凌駕している。2020年代のクドカンは『俺の家の話』(2021)『新宿野戦病院』(2024)も大傑作で、入れ替えても十分ランキングが成り立つ。

第3位 『鎌倉殿の13人』(NHK、2022) 脚本: 三谷幸喜
源頼朝(大泉洋)と北条義時(小栗旬)を主軸に、最初コメディー調と見せたドス黒い権力劇を大河でやってしまった記念碑的作品。『ゴッドファーザー』か『仁義なき戦い』かレベル。終盤は毎話誰か殺されていくという異常さだった。「帰って来た義経」「諦めの悪い男」等各回タイトルがダブルミーニングというジャブ連打の果てに、総タイトル自体もダブルミーニングだったとわかる最終話が見事!北条政子(小池栄子)のすすり泣きで終わるラストが忘れがたい。

第2位 『降り積もれ孤独な死よ』(日テレ、2024) 脚本: 橋本夏
児童虐待をめぐる連続殺人をバイオレンス描写を交え痛切に描く。成田凌演じる元刑事冴木の歩き方が、『アリバイ崩し承ります』(2020)での刑事役の成田と全く違うことに感動。役者って凄い。歪んではいるが大きな父性愛を持つ灰川十三を演じた小日向文世の存在感も圧倒的だった。

第1位 『エルピス 希望あるいは災い』(関テレ、2022) 脚本: 渡辺あや
安倍長期政権の腐敗に肉迫した報道ドラマ。長澤まさみ演じるキャスターの浅川が、岡部たかし演じるディレクターの村井に送別会で「贈る言葉」を歌うシーン、眞栄田郷敦演じるADの岸本が調査で疲労困憊した果てにファミレスでぞうすいを食べるシーン、村井がニュース番組のセットに乗り込んで破壊しようとするシーン等名場面多数。しかし悪役鈴木亮平のスマートすぎるたたずまいが全てをなしくずしに圧倒していく。最終話がスッとしないのもリアルすぎる。『カーネーション』(2010)の渡辺あや、流石の大傑作。

【2020s上半期ワースト】
ワースト5位 『ONE DAY~聖夜のから騒ぎ~』(フジ、2023) 脚本: 徳永友一
この年は、フジの大看板「月9」が夏に『真夏のシンデレラ』、冬に本作、で両方とも大失敗作だった。フジテレビの凋落はこの時期から決定されていたと断じたい。二宮和也演じる記憶喪失の男、中谷美紀演じるキャスター、大沢たかお演じるシェフ、3人のクリスマスイヴが交錯する…かと思いきや、11話かけてさほど交錯せず。中谷美紀が急いでいるはずなのに自転車移動でヘルメットを装着するのが一番の見所。意味ありげにチラチラ登場する佐藤浩市も無駄遣いで終わる。一番動きのない店パートを成り立たせるために無駄なセリフをしゃべらされ続けた桜井ユキが最大の被害者。
ワースト4位 『恋はDeepに』(日テレ、2021年) 脚本: 徳尾浩司
2010年代にあざとい系女子のトップに君臨した石原さとみの復帰作ということで鳴り物入りで見始めたが、ほどなく見るのが苦痛になった。「いつも部屋に加湿器をかけている」という人魚フラグ、マジでなんなんだ。「こいぷに」と略させようとする戦略も誰もノってなかった。これならディズニー『リトル・マーメイド』見るわ。平成の視聴者を魅了した身分違いのラブロマンスが、令和においては単純にはもはや受け入れられないことを天下に示した作品。
ワースト3位 『真夏のシンデレラ』(フジ、2023) 脚本: 市東さやか
全ての要素がちぐはぐだった奇跡のドラマ。真夏の海の話なのに誰も汗をかかず、日焼けもせず、大工の匠(神尾楓珠)は仕事もせず食堂に入り浸るシーンしかない。仲良し女子3人の設定はミュージカル『マンマ・ミーア!』みたいなことをやりたかったのだろうが、リアリティーのなさと出来栄えの悪さにマンマミーアだ。夏海を演じた森七菜はこの作品の失敗でいわゆるヒロイン女優の座を失ったが、『ひらやすみ』(2025)等で本来の演技力を発揮し始めている。
ワースト2位 『初恋DOGs』(TBS、2025) 脚本: 金子ありさ
今年の作品が堂々ランクイン。韓国コミックが原作かなんか知らんが、成田凌と清原果耶という2大演技派を起用してこの薄さはない。内面的苦悩を表現しようにもそもそも内面のない「キャラ」だから演技のしようがないんですね。韓国の御曹司(なんやそれ)も日本と韓国手軽に往復しすぎだし、そもそもタイトルの犬たちも愛玩動物としてしか撮られていないし…。日韓共同制作、聞こえはいいが全く実りないなら潔く韓国ドラマ買い付けてそのまま放映しようぜ。
ワースト1位 『真犯人フラグ』(日テレ、2021-22) 脚本: 高野水登
2クールに亘って放送され、その切れ目には登場人物を演じる俳優が真犯人が誰か考察するという斬新なギミックを多数含みながらも、「無意識の書きミスで犯人が露見」という全ての考察を無にする結末で視聴者の怒りを買った。犯人多すぎ、安易に犯行に走りすぎ、偶然重なりすぎ、押し入れの中身が何かで数カ月間引っ張りすぎ(これも時間稼ぎの被害者は桜井ユキ)、何もないのにいちいちリアクションさせられる西島秀俊可哀そうすぎ。思えば今年『良いこと悪いこと』最終話で「続きはHulu!」となったのは日テレの悪しき伝統継承万全じゃないの。刑事役の渋川清彦は良かったです。故・上島竜兵がダチョウ倶楽部熱々おでんモードとは異なる凄みを発揮している。
ワースト次点 『おむすび』(NHK、2024-25)
「阪神淡路大震災30年の年だから」「橋本環奈人気だから」と適当に企画を立てるとこうなるという悪い見本。結役の橋本が多忙だったためヒロインとして機能せず、東日本大震災も被災地に行った友人の話を聞いて想像するのみ、なのにギャル魂で朝ドラ主人公にまでなるのを家族で見るというメタフィクション、なんちゃって『カーネーション』パクリで本当にダメだった。病院で結がそれらしいことをしゃべるとスタッフから拍手が自然に湧き起こるという最終週、独裁国家のプロパガンダに使えると思う。とはいえ、B’zを紅白に連れてきてくれた功績は大。主題歌「イルミネーション」を聴き、震災で亡くなった恋人と恋人の好きだった歌をかけながら車で神戸までルミナリエを見に行くというアナザーストーリーを思い描こう。専業主夫として結の影に徹した佐野優斗におにぎり(おむすびでなく)腹いっぱい食べさせてあげたい。こんなひどいドラマ、本当にあるよね、嘘じゃないよね? ただ、『おむすび』は全話見たのに『あんぱん』は興味が抱けず早々にリタイアしたので、朝ドラとは不思議なのである。
ということで、2020年代を通してドラマは確実に進化しています。来年も傑作に出会えることを願って、チャンネルを合わせ続けましょう。来年冬ドラマ寸評でまたお会いしましょう、ナンシーでした。良いお年を!!!
