オルテガ哲学を学ぶ人のために
ホセ・オルテガ・イ・ガセット(1883ー1955)はスペインの哲学者です。
1898年にマドリード大学に入学。哲学と文学を専攻し、1904年に博士号取得(論文テーマ:中世スペインの文学)します。
その時期にドイツの新カント学派や現象学に興味を持ちスペインの文化的遅れを憂いたオルテガは、1905年からドイツに留学します。そこで、新カント派(ヘルマン・コーエン、パウル・ナトルプ)やフッサールの現象学、ディルタイの歴史哲学に影響を受けこれが「生の哲学」の基礎となります。
その後スペインに戻り、マドリード大学の教授になったオルテガは旺盛な執筆活動を行いました。
主著には『主題について』(1914年)や『大衆の反逆』(1930年)などがあります。
ここでは、オルテガの入門編から著作まで人気おすすめ著作を紹介します。
また他に、カント、ニーチェ、フッサール、エーリッヒ・フロム、ハンナ・アーレントのおすすめ入門書・解説本・著作を紹介しています。
世界のおすすめ必読哲学書は「本格的な人向けおすすめ世界の哲学書」で紹介しています。
ぜひそちらもご覧ください。
入門編
中島 岳志『オルテガ 大衆の反逆:真のリベラルを取り戻せ』(2022年)
NHK「100分de名著」ブックスシリーズのオルテガ『大衆の反逆』編。
オルテガの『大衆の反逆』を解説し、現代日本の文脈でその思想を再解釈したオルテガ思想の入門書。
具体的に、投票率の低下やポピュリズムの台頭、地域社会の希薄化など挙げて、現代日本とオルテガの思想をつなげたところが本書のおすすめポイントだ。
渡辺 修『人と思想 138 オルテガ』
「人と思想」シリーズのオルテガ編。
オルテガの「生の理性」(razón vital)や「私は私と私の環境である」といった核心的概念を、ドイツ留学や新カント派の影響を背景にわかりやすく解説する。
また、『大衆の反逆』や『スペインの無脊椎性』などの主要作品を通じて、彼の文明論や国家論を紹介する点も非常に良い。
オルテガの思想は、彼が生きた20世紀初頭のスペインの状況(内戦、フランコ政権、共和国の動乱)と密接に繋がっている。なかなか学ぶことのないスペイン史をここで学んでみるのはどうだろうか。
著作
佐々木孝訳『大衆の反逆』(2020年)
20世紀初頭、産業革命や都市化の進展により、ヨーロッパでは「大衆」と呼ばれる新しい社会階層が台頭し、従来のエリート層だけでなく、一般大衆が政治や文化に影響を及ぼすようになっていた。
また、第一次世界大戦後のヨーロッパは、民主主義の拡大と同時に、ファシズムや共産主義などの全体主義が台頭し、スペインでは、1923年から1930年までプリモ・デ・リベラの独裁政権下にあるなど、政治的混乱が続いていた。
この状況を危惧したオルテガは大衆の分析に着手する。1920年代から、新聞「エル・ソル」(El Sol)でエッセイを発表し、さらに講演活動を盛んに行い、その成果を1930年『大衆の反逆』にまとめる。
ニーチェやトクヴィルの影響を受けつつも、大衆の支配による文化や文明の衰退というオルテガ独自の思想を展開した大衆論である。
現代のポピュリズムや情報社会における「大衆」の影響力を考える上でも、依然として示唆に富んでいる。
翻訳は他に、ちくま学芸文庫版(神吉敬三訳、1995年)や中公クラシックス版(寺田和夫訳)がある。



