『ジョー・ブラックをよろしく』考察|去りがたい、それが人生だ|あらすじネタバレ感想・伝えたいこと解説|マーティン・ブレスト

『ジョー・ブラックをよろしく』考察|去りがたい、それが人生だ|あらすじネタバレ感想・伝えたいこと解説|マーティン・ブレスト

概要

ジョー・ブラックをよろしく』は、1998年に公開されたアメリカの恋愛ヒューマン映画。監督はマーティン・ブレスト。原題はMeet Joe Black。主演はブラッド・ピット。上映時間は3時間におよぶ。

 第19回ゴールデンラズベリー賞で最低リメイク続編賞にノミネートした。

 1934年に公開されたミッチェル・ライゼン監督による映画『明日なき抱擁』を元にしている。「ジョー・ブラック”に”よろしく」と間違われることが多いが、正しくは「ジョー・ブラック”を”よろしく」である。

 ジョーに乗り移った死神とスーザンの恋愛と、死神と会社の社長ビルの人間模様を描いた物語。

 恋愛映画はほかに『ビフォア・サンセット』『ラ・ラ・ランド』『ライムライト』などがある。

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登場人物・キャスト

ジョー・ブラック(ブラッド・ピット):明るくよく喋る青年(本名不明)。喫茶店でスーザンと出会い恋に落ちるも、交通事故に遭い、肉体を死神に乗っ取られる。「ジョー・ブラック」はビルによって命名される。死神は孤独な存在で、興味本位で人間界をのぞきにきた。
(他の出演作:デヴィッド・フィンチャー監督『セブン』『ファイト・クラブ』、『オーシャンズ11』『オーシャンズ12』『オーシャンズ13』)

ウィリアム・パリッシュ(アンソニー・ホプキンス):メディア会社「パリッシュ・コミュニケーション」の社長。通称ビル。65歳を迎える直前。情に厚く、多くの人に慕われている。死ぬことの代わりに、ジョー・ブラック(死神)によって人間界の案内人にされる。
(他の出演作:『ミッション:インポッシブル2』)

スーザン(クレア・フォーラニ):ビルの次女。医師。ジョー・ブラックを好きになる。両親のような情熱的な恋愛をしたことがなく、恋人のドリューとの結婚にたいして及び腰。ビルのお気に入り。

アリソン(マーシャ・ゲイ・ハーデン):ビルの長女。スーザンと比べるとビルから愛されていない。ビルの65歳の誕生日の準備に尽力する。
(他の出演作:『ミスト』)

クインス(ジェフリー・タンバー):アリソンの夫。「パリッシュ・コミュニケーション」の役員。人がよく愛妻家。結果的にビルを騙してしまったことを後悔し謝罪する。

ドリュー(ジェイク・ウェバー):スーザンの恋人。ビルの右腕。会社を乗っ取り私腹を肥やそうとする。

名言

ビル:心を開いていれば、いつか稲妻に打たれる。(Stay open. Who knows? Lightning could strike.)

ビル:愛の本質とは、奪うことではない。生涯をかけて相手への信頼と責任を全うする、そして相手を決して傷つけぬこと。それに、無限と永遠をかければ愛に近づく。

ビル:別れはつらいだろ。
ジョー:とてもつらい。
ビル:それでいい。生きた証だ。

あらすじ・ネタバレ・内容

 大企業「パリッシュ・コミュニケーション」の社長であるウィリアム・パリッシュ、通称ビルは、ニューヨークの誰もが知る大富豪の老紳士である。ところが、65歳の誕生日を間近に控えたビルは、「イエス」と呼びかけてくる幻聴に悩まされていた。そんなビルの誕生日を大々的に祝うために、長女アリソンはパーティーの準備に明け暮れていた。

 ビルには長女アリソンのほかに、お気に入りである次女のスーザン、スーザンの恋人でビルの右腕であるドリュー、アリソンの夫クインスに囲まれ生活していた。ビルの誕生日はボンテキュー社との提携契約日でもあり、ドリューはその仕事を受け持っていた。

 ビルはスーザンが恋人ドリューに燃えるような愛情を抱いていないことに気がついていた。愛情を持たぬまま結婚することに不満を持つビルは、自分と妻との恋愛のような稲妻みたいな恋があること、そのような恋がなければ人生に意味などないとスーザンに伝える。そのままヘリがニューヨークに着くと、先ほどスーザンに伝えた言葉が幻聴として聞こえて不思議に思う。

 ビルの教えを聞いたスーザンは、職場の病院に向かう前に、近くのコーヒーショップに立ち寄る。すると電話越しに相手を励ます声が聞こえ、その青年の会話を微笑ましく聞く。青年は田舎らから引っ越してきたばかりで、電話の相手は失恋したばかりの妹だった。恋愛は永遠じゃないという励ましの言葉にスーザンは共感し、そこから二人はすぐに打ち解け合う。別れを先延ばしにするために、青年はもう一杯コーヒーをスーザンに勧め彼女は了承する。スーザンは青年の名前も知らないままだったが、二人は互いに意識するようになる。しかし二人は次に会う約束をできずに別れてしまい、青年はその先の交差点で車に跳ね飛ばされてしまう。

 その夜、誕生パーティーの打ち合わせのために、ビルは家族と食卓を囲んでいた。悩み事でうわの空のビルは、再び幻聴を聞き、玄関先に来ていると告げられる。玄関へと向かうと、ビルの前に青年の肉体に憑依した死神がいた。たびたび聞こえていた幻聴は死神の声であった。

 死神が乗り移った青年は、ビルに死期がきたと告げる。しかし死神は人間界に興味を持ちはじめていたため、ビルの死期を先延ばしする代わりに人間界の案内を要求する。その契約を了承したビルは、会食に集まった人々に青年(死神)をジョー・ブラックと紹介する。

 突然現れたジョーを、アリソンと夫クインスは彼を好意的に受け入れる。遅れて現れたスーザンは、恋し始めていた青年が目の前にいることに驚くも、朝方とは一変してよそよそしい様子に落胆する。またビルの右腕であるドリューは、恋人のスーザンとただならぬ関係にありビルと親しいジョーに対して不信感を抱く。ビルはジョーとスーザンが知り合いであることを察し、死神が青年の体に憑依していることを知って驚く。

 人間界が初めてのジョーは、屋敷の中を歩き回り、キッチンに置いてあったピーナッツバターやクッキーを気に入る。さらに歩き続けていると、迷い込んだ最上階のプールでスーザンと二人きりで出会う。よそよそしい態度は訪れたばかりの街に慣れていなかったためと釈明したジョーは、友達になってほしいとお願いする。この提案を受け入れたスーザンは、すでに心を開きはじめていた。しかし、スーザンのことを心配したビルは、ジョーに家族に関わらないことを約束させる。

 翌日、ジョーはビルの会社の役員会議に無理やり出席する。ドリューは役員でもないのに会議に出席するジョーの特別待遇に対して不満を募らせる。役員会議はこれからの経営方針で意見が対立する。ドリューはボンテキュー社との合併し会社を大きくしたいと考えるが、ビルは利益重視の方針ではなく、自社で新しい事業を拡大すべきと考える。ジョーはドリューの話に割り込み関係が悪化する。またドリューと言い合いになったビルは、ひとりにしてほしいと頼み、ジョーに金を渡して外に出てもらう。

 追い出されたジョーは、スーザンが務める病院に向かう。そこで出会った死期が近い老婦人は、ジョーを見て「オベア」と呟く。オベアとはジャマイカ語で悪霊を意味していた。ジョーは自分はオベアではないが、あの世から来たと告げる。老婦人はジョーの正体を知ると、痛みから解放されるために死の世界に連れて行ってくれと頼む。寿命がまだあるとジョーは断るも、もう少しの辛抱であると告げる。仕事で忙しいスーザンは今は喋れないと伝え、ジョーは会社に戻る。

 そこでビルは亡き妻の得意料理、ラム肉入りのサンドウィッチを提供する。妻との馴れ初めについて話していると、ドリューがビルの部屋を訪れ会社の合併を強く推す。その後クインスもビルのもとを訪れ、他の合併交渉のできる企業を来週にでも紹介すると伝えるが、寿命を気にしたビルはジョー次第と応える。その発言をクインスから聞かされたドリューは、再び怒りを燃やす。

 ビルと家族の夕食会で、ビルは娘二人に感謝の意を伝え、和やかな雰囲気に包まれる。しかしジョーとスーザンと老婦人の出来事が話題に上がると、ビルとドリューは嫌悪感をあらわにする。ビルはジョーに家族を巻き込むなと再び言いつける。ドリューはジョーの悪口をスーザンにするが、スーザンはジョーのことが好きだと伝える。その様子にジョーは何かを感じ、スーザンとドリューは別れる。そしてスーザンはビルに、ジョーとの出会いは稲妻に打たれた体験かもしれないと伝えるも、ビルはそれを否定する。

 ジョーに過度な信頼があることに苛つくドリューは、このことを利用して役員たちのビルに対する不信感を煽る。そしてドリューはビル抜きの役員会議を開いて、彼を退任に追い込む。実のところドリューは、ボンテキュー社と合併後に本社を解体し、多額の金を得ようと目論んでいた。そのことを知って愕然としたクインスは、自らもドリューを信じビルの退任に加担したことを後悔する。ドリューは、ボンテキュー社と合併はビルの誕生日に正式に発表することにし、そのために準備を進める。

 一方でジョーとスーザンは次第に距離が接近し、互いに好きであることを自覚する。スーザンと暮らしたいと願うジョーにビルは、スーザンには関わらないでくれと怒る。ジョーは死期を延ばしているのは自分だと脅しをかけるも、ビルの訴えに思い悩む。

 スーザンに会いにジョーは病院に向かうも、彼女は不在で会えない。そこで病院で出会った死期が近い老婦人に再会する。彼女はジョーに、この世にいてはスーザンも不幸になるから一緒にあの世に行こうと伝える。孤独は嫌だとジョーは断るが、彼女は誰もが孤独だと伝え亡くなる。その出来事があって、ジョーも本来あるべき場所に戻らなければならないと考えるようになる。

 ジョーはビルと共に行くことを決心し、その日をビルの誕生日の夜に決める。ジョーはクインスに恋に悩みがあると告げ、アリソンのことを愛しているかと問う。クインスは愛していると答え、二人は隠し事のない関係で、彼女は自分の欠点を全て許していくれるからだと言う。だが、結果的にビルを裏切ってしまったことを後悔していると告げると、ジョーはそのことをビルに伝えるべきだと説得する。

 パーティーが始まると、この後に死ぬことを知っているビルは、アリソンらと会話し心残りを精算していく。アリソンにはスーザンとは違う愛を捧げたと伝え、彼女は全てを納得する。その後、ビルはクインスから事情を全て聞き、彼を許すと共にドリューを呼びつける。

 ビルはドリューに全てを知っていると迫るが、ドリューは証拠がないと突っぱねる。ジョーは正体を明かすと言い、自分が国税庁の秘密調査員であると嘘をつく。ボンテキュー社には脱税疑惑があり、逮捕されたくなければ真実を明かせと迫るジョーに、ドリューは自らの非を認める。この会話は電話で役員に筒抜けになっていて、ドリューは社長の座を降りることになり、ビルが再び社長の座に戻れる体制になっていると告げる。

 ジョーは思い悩んだ挙句、スーザンも死の世界に連れて行こうとしていた。しかしジョーの愛には、相手から奪うのではなく傷付けないことだ、という本質的な部分が欠けているとビルは叱る。ジョーはスーザンに会いに行き、彼女は青年と出会った最初の日に恋に落ちたと告げる。彼女の恋は青年に対するものだと確かめたジョーは、スーザンと別れてビルと二人で死の世界に向かうことを決意する。

 二人は抱き合い、スーザンはジョーが青年でないことをなんとなく察する。ジョーはスーザンに感謝の意を伝え分かれる。ジョーと別れたスーザンはビルと再び対面し、パーティーのフィナーレである花火が飛び交うなか和解する。そこでビルはスーザンに、これまでの人生に悔いはないと告げる。

 橋の向こうの死の世界に向かうビルとジョーをスーザンは追っかける。すると、あちらから死神ではなく、喫茶店にいたあの青年が現れる。スーザンと青年は再会を喜び、パーティーに戻って行った。

解説

二つの物語と、微妙な感情を表現する圧倒的な演技力

 『ジョー・ブラックをよろしく』には、二つの物語が混在している。一つは、青年に憑依した死神ジョー・ブラックとスーザンの恋の物語。もう一つは、ジョーと死が目前に迫ったビルの奇妙な友情の物語。この二つの物語は、互いに独立しつつも影響し合いながら、並行して展開していく。

 まずもって注目すべきは、スーザンとビルの中にある二方向の感情のズレと、それを表現するクレア・フォーラニとアンソニー・ホプキンスの演技力の高さであろう。

 クレア・フォーラニが演じるスーザンは、喫茶店で出会った青年に一目惚れをするが、恋心を発展させる相手は青年に乗り移った死神である。したがってスーザンの心の中では、青年に恋をしながら死神であることに気づいていく過程と、そうと知りながらも死神に愛を感じていくという、双方向の感情の揺れが存在している。この同時に起こる曖昧で微妙な感情の揺れを、クレア・フォーラニは見事に表現している。

 加えて、名俳優アンソニー・ホプキンスの演技も光る。ビルの死を恐れず堂々とした態度の裏には、人生に対する後悔と達成感と哀愁が漂っている。つまりここでもスーザンと同様、ビルは逆方向の二つの感情を抱えている。その不安定な感情を、アンソニー・ホプキンスは態度と目で表現する。自らの死を恐れない威風堂々とした態度と、スーザンの将来を心配して不安になる姿は、彼の中で共存しながら演じられるのである

見つめ合うということの意味

 三人の演技力は、セリフなしで見つめ合うラストシーンで頂点に達する。二人が恋に落ちるとき、ジョーが死神であると気づくとき、ビルの死を悟るとき、そこにセリフはない。ただ見つめ合うだけで、二人は互いに何かを理解する。

 目は口ほどに物を言う、とはまさにこのことである。見つめ合った二人の目が、そこにある感情の機微の全てを物語っているのだ。

 長さのわりに時間を感じさせないのは、この三人の名演技によるところが大きい。目で語り会うシーンは、言葉や動きがなくとも全く飽きることはない。

ビルと死神の奇妙な共依存関係

 ビルと死神の奇妙な関係について触れておこう。一言で言えば二人の関係は、共依存的である。

 一見すると死神が主導権を握っているようにみえる。ビルの生死をにぎる死神は、死をチラつかせてビルを脅すこともある。しかし死神が、人間界の案内をビルに頼んでいるということを忘れてはならない。死神にとってビルは必要不可欠な存在なのである。死神はビルの生死をにぎり、ビルは死神の生きる場所を提供する。その意味で、ビルと死神の関係は共依存的だと言える。

 その証拠に、言うことを聞かないビルに死神は死をチラつかせて脅す一方で、スーザンと恋に落ちる死神をビルは叱責する。双方ともに一歩も譲らないのは、自分が相手にとって欠かすことのできない存在だと知っているからだ。

 ビルと死神はこの共依存関係のなかで、互いに成長する。死神とビルの成長は、ジョーとスーザンの恋の物語に並行する、もう一つのメインプロットなのである。

考察・感想

「なんとなく気づいてる」という感覚

 霊的なのは死神のジョーだけではない。本作にとって「なんとなく気づいてる」という霊的な感覚は、物語のなかで重要な位置を占めている。スーザンと青年は相思相愛である/になることを「なんとなく気づいてる」し、スーザンが明かされなかったジョーの正体を途中から「なんとなく気づいてる」。さらに、スーザンは最愛の父ビルに死が訪れることですら「なんとなく気づいてる」のだ。

 その中でもビルの霊的感覚がその最たるものだろう。メディア会社「パリッシュ・コミュニケーション」の社長であるビルは、周囲の人には聞こえない「イエス」と呟く声に悩まされる。声の主は誰で、「イエス」とはどういう意味なのか。しかし、ビルはその真相を告げられる前から、じつはその正体に「なんとなく気づいてる」。青年に憑依した死神のジョーが現れたとき、自分の死の運命をすんなりと受け入れたのもそのためだ。ジョーに促されてビルが答えたように死神が現れる前から、自分の死期が近いのか、と自問していたのだった。ビルは自らの死期が近いと察していたからこそ、ジョー(死神)の出現をすんなりと受け入れ、残りわずかな人生を謳歌することができたのである。

 ビルは死神の存在をつまり死を受け入れながらも、死後に残されるスーザンの将来が不安でならない。この微妙な感情の揺れをホプキンスは巧みに演じてみせる。ビルがジョーに怒るのは、死の運命を認めながらも他人の将来を想って不安が残っているからで、それがビルの人間的な魅力にもなっている。ドリューが私怨と私欲にまみれビルを騙そうとするとき、役員やクインスはビルを裏切るのだが、それはビルが人望を失ったからではなく、むしろビルの会社を守ろうとするが故なのだ。

 家族に愛され役員にも愛されるビルは、ジョー(死神)によってその素晴らしさを褒め称えられるほどである。ビルの65歳の誕生日には多くの人が集まった。それが彼の人望の厚さを示している。

青年とスーザンの出会う場面は名シーンだ!

 ところで、喫茶店で青年とビルが初めて出会うところは、その青年の初々しさを含めて名シーンといってよい。ビルがいうように、「恋は稲妻のようだ」を文字通り体験するスーザンは、青年の引き延ばしの文句に思わずひっかかる。相手とお喋りを続けたいときは、「コーヒーをもう一杯飲みませんか」と誘うものらしい。これは別に男女、恋愛問わず誰でも今日から使える術なので、このシーンは熟視すると良い。だが、もしかすると、ブラピだからこそできる技かもしれないので、相手の様子から成功するか見極めることが必要だ。

 もう一杯のコーヒーを飲むとき、青年とスーザンはほぼ同じ動作で、コーヒーにいれた砂糖とミルクをかき混ぜる。スピッツの名曲『ロビンソン』に「同じセリフ同じとき 思わず口にするような ありふれたこの魔法で 作り上げたよ」という歌詞がある。青年とスーザンにも「ありふれたこの魔法」が降り注いでいる。このとき二人はすでに愛し合っているのだ。

 しかし、彼女たちは会う約束をお互いに言いだせない。別れたあとに、どちらも後ろを振り返るが、そのタイミングは見事にずれてしまう。青年が振り返ればスーザンが歩き出し、スーザンが振り返ると青年は歩いているのだ。そして、スーザンが横に曲がって見えなくなってしまったことで呆然としている青年に、突如車が衝突する。「恋は盲目」。青年は道路上にいることを忘れていたのだ。1度目の「ありふれた魔法」は彼女たちを相思相愛に導いた。しかしながら、2度目の「ありふれた魔法」は青年を死に追いやった。スピッツの先の歌詞で「作り上げた」のは「誰も触れない二人だけの国」であったが、今回の「二人だけの国」は、「スーザンと死神の国」だったのだ。

自分の人生は満ち足りて何の悔いもない

 愛と死は密接に結びついている。スーザンはジョーへの愛が深まるごとに死へと近づいていく。青年とは中身が違うのにスーザンがジョーに惹かれるのは、青年が死神だからだ。愛するということは、死んでもいいと思えることに近い。ビルもそうだ。ビルが姉妹への愛を向けようとするのは死が近づいているからであり、さらにいえば、ビルはジョーをそばに置くことで死にすら愛を向けている。彼女たちの愛することで死に近づき、死に近づくことで愛を知るのである。

 ビルは死を愛しているがゆえに、死神に愛を語ることができる。スーザンを連れて行こうとするジョーに、「生涯を懸けて相手への信頼と責任を全うする事。そして愛する相手を傷つけぬ事」「それに無限と永遠を掛ければ愛に近づく」と教える。そもそも本作は、子供のように何も知らない死神が「愛」を知り成長するという物語であった。相手を所有するのでも従わせるのでもなく「愛する相手を傷つけぬ事」、「それに無限と永遠を掛ければ愛に近づく」という愛の性質を知ったジョーは、スーザンを愛することで手放すことになるのだ。

 ビルとの最後に踊ったスーザンは、ビルが死ぬことを悟って涙する。そこから遠く離れて、ジョーはスーザンとの別れを悲しみ、打ちあがる美しい花火を前にして涙する。ポケモン映画の第一弾『ミュウツーの逆襲』によれば、痛み以外で涙するのは人間の証だった。死神はまるで子供のような純粋さで人間界に舞い降りた。死神は、ビルという人格者に恋の本質を教わり、老婦人に死に方を諭され、そしてスーザンと出会った。死神はスーザンに恋をし、失うことの悲しみを知ったのだ。死神がビルとともに死の国へと向かう後ろ姿は、まさに長年連れ添った相棒のようである。人間の心を宿した死神と人格者のビルは、「去りがたい、それが人生だ」と言いながら、「自分の人生は満ち足りて何の悔いもない」と、振り返ることなく人間界を去るのである。

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評価(批評・評論・レビュー)

死神が事故死した青年の肉体を借りて、大富豪パリッシュの前に現れ死の通告をする。と共に、束の間の人間社会を楽しむというお話。人間界で誰もが避けられない”死と税金”をキーワードに……… 全文

ーー eiga.com(Gustav)

加筆中(おもしろい評論、または、載せてほしい論考などがありましたら、コメント欄にてお伝えください)

動画配信状況

『ジョー・ブラックをよろしく』配信状況比較

配信サービス配信状況無料期間月額料金
U-NEXT 31日間2,189円
Amazon Prime30日間500円
TSUTAYA DISCAS30日間2,052円
Hulu✖️2週間1,026円
dTV✖️31日間550円
FOD✖️✖️976円
ABEMAプレミアム✖️2週間960円
Netflix✖️✖️1,440円
クランクイン!ビデオ✖️14日間990円
mieru-TV✖️1ヶ月間990円
dアニメストア✖️31日間550円
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