『オーシャンズ13』解説|アナログの逆襲|あらすじ考察|感想|スティーブン・ソダーバーグ

『オーシャンズ13』解説|アナログの逆襲|あらすじ考察|感想|スティーブン・ソダーバーグ

概要

 『オーシャンズ13』は2007年に公開されたアメリカのサスペンス推理映画。監督はスティーブン・ソダーバーグ。出演はジョージ・クルーニー、ブラッド・ピット、マット・デイマン、ドン・チードル。『オーシャンズ11』『オーシャンズ12』の続編。『オーシャンズ8』はスピンオフ。

 今回はテスが抜けて、ベネディクトとローマンが加わった13人のチームで強盗を行う。

 ジョージ・クルーニーは『マイレージ、マイライフ』で主役『アルゴ』で制作、ブラッド・ピットはフィンチャー監督の『セブン』や『ジョー・ブラックをよろしく』で主役、マット・デイマンはクリストファー・ノーランの『インターステラー』、ドン・チードルは『天使のくれた時間』に出演している。

 サスペンス推理映画はほかに『ゴーン・ガール』『シャーロック・ホームズ』『シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム』がおすすめである。

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登場人物

・味方

ダニエル・オーシャン(ジョージ・クルーニー):有名な詐欺師。若い頃ルーベンに助けてもらった過去がある。

ラスティ・ライアン(ブラッド・ピット):若手の詐欺師。ダニエルと同じくルーベンに恩がある。

ルーベン・ティシュコフ(エリオット・グールド):バンクとカジノホテルの共同経営者になるはずが騙され経営権を剥奪。怒りに心臓の持病が悪化、倒れてしまう。

ライナス・コールドウェル(マット・デイモン):伝説的な泥棒の息子。父や母にいつも気をかけられている。

ソール・ブルーム(カール・ライナー):年寄りの天才詐欺師。

フランク・キャットン(バーニー・マック):カジノのディーラー。

バシャー・ター(ドン・チードル):爆発物の専門家。地下で作業をおこなう。

モロイ兄弟(ケイシー・アフレック、スコット・カーン):双子。変装、潜入が得意。メキシコでの工場のストライキに参加。

イエン(シャオボー・チン):曲芸師。不動産王に変装する。

リヴィングストン・デル(エディ・ジェイミソン):電気・通信・機械の専門家。

ローマン・ネーゲル(エディー・イザード):技術屋。「グレコ」を破るためアイデアをだす。

テリー・ベネディクト(アンディ・ガルシア):ラスベガスの3大カジノのオーナー。1作目、2作目の敵。

・その他

ウィリー・バンク(アル・パチーノ):ホテル王。ホテル格付けで得られるダイヤモンドを自慢にしている。ルーベンを裏切りダニーらの報復にあう。

アビゲイル・スポンダー(エレン・バーキン):バンクの右腕。実務を取り仕切る。

あらすじ・ネタバレ

 ルーベンはバンクと組みホテルの共同経営に乗り出すが、バンクに騙され経営権を破棄、さらには心筋梗塞になり生死を彷徨う。泥棒仕事から足を洗っていたダニーらはこの事件を聞きつけ、バンクと交渉するが跳ね除けられる。

 ダニーはルーベンの敵討ちのためにメンバーを結集。ルーベンのホテルのプレオープン日に報復することを計画する。計画の一つ目は格付けの「5ダイヤモンド」の受賞を阻むこと。二つ目はカジノで大量の損失を起こさせること。二つ目の計画を遂行するために、カジノ器具にイカサマやトリックを仕込む。そのためにサイコロを製造する工場に潜伏したり、ディーラーを潜伏させたりする。

 だが、カジノ店にはイカサマなどの不正を探知するコンピューターシステム「グレコ」が導入されていた。掻い潜れないかにみえた「グレコ」だったが、システムをダウンさせるため地震を起こすことを思いつく。

 順調であったが、資金不足が発生。仇敵ベネディクトに応援を求める。カジノを経営しているベネディクトはバンクに恨みがあるため、ダイヤモンドを盗むという条件のもと協力することにする。

 様々なトラブルを乗り越え、プレオープンの日を迎える。ここでもいくつかの不手際で焦る場面もあるのだが、ダニーらは地震を起こすことで「グレコ」のダウンに成功し、その間に不正で大金を荒稼ぎする。

 だがFBI捜査官があらわれ、ダイヤを盗もうとしていたライナスが逮捕される。しかしFBI捜査官のリーダーロバートは、ライナスの父で伝説の泥棒「ボビー・コールドウェル」であった。ヘリコプターで逃げようとするライナスの前に、ベネディクトに雇われたトゥルアーが現れダイヤモンドを横取りする。しかしそれは偽物であり、ライナスらは本物がはいった展示ケースごとヘリコプターで釣り上げ盗んでいく。

 大金とダイヤモンドを失ったバンクの前にダニーは現れ、バンクの仲間はダニーの知り合いでもあり、自分(ダニー)に見方するだろうと告げる。

 稼いだ金はルーベンの新たなホテルの現資金に、ベネディクトへの金は彼に無言で慈善団体に寄付し、結果的にベネディクトは慈善家として称賛を受ける。

解説

成長しない愛すべき盗人たち

 『オーシャンズ13』は「オーシャンズ」シリーズの第三弾にして、スティーブン・ソダーバーグが監督するのは最後の作品である。

 強盗を目的とする前作までとは異なり、本作は裏切られた仲間の報復のためにラスベガスのホテル王ウィリー・バンクを狙う。『オーシャンズ11』と『オーシャンズ12』の敵テリー・ベネディクトも仲間に加わり、シリーズの最終作にして総決算に相応しい作品となっている。ストーリー展開は『オーシャンズ12』が最も難解に感じられたが、本作も気を抜くと筋を追えなくなるので注意が必要だ。

 冒頭、泥棒仕事から足を洗いそれぞれの仕事を始めているダニーたちに、前作からの成長がみて取れる。ところが事はそう単純ではない。泥棒稼業において天才的な能力を発揮してきたオーシャンズのメンバーたちは、新しく始めた職業で殆ど失敗しており、プライベートでは莫大な金を浪費していたのだ。そのため資金不足になり、仇敵ベネディクトに資金援助を頼むことになる。

 ダニーに至っては、妻のテスに咎められているにもかかわらず、何処にいても何をしていても、泥棒の手口を考えてしまう。彼らは泥棒稼業から一時的に止めてみたはいいものの、実は全く離れられていない。彼らは泥棒稼業の興奮と快楽に取り憑かれているのだ。しかしだからこそ、ダニーたちが嫌々ながらの風を装って泥棒稼業に戻ったときの、嬉しそうな表情を憎むことはできない。彼らは『オーシャンズ12』で論じたように、いまでも「愛すべき(ダメな)盗人」なのである。

復讐とはいえ泥棒を楽しむ

 繰り返しになるが、本作は強盗だけを目的としていない。ダニーたちの恩人であるルーベンが、バンクに騙され心不全に陥り生死を彷徨った。ルーベンへの仕打ちに対する復讐に燃えるダニーたちの団結は強い。オーシャンズのメンバーからは、復讐のためならば掟を破るのもやぶさかではない、という意見まででてくる。だが彼らが泥棒の道から外れることはない。何故なら泥棒稼業に信念と掟を持っているからだ。彼らはイカサマ、騙し、変装などを使って、泥棒稼業としてバンクから金を盗み取るのである。

 したがって、強盗に挑むダニーたちは、復讐の怒りと泥棒の魅力のアンビバレントな感情に満ちている。復讐という怒りの感情を隠蓑に、泥棒を謳歌する欲望を見逃してはならない。この点、漫画『ワンピース』の流行以降に増えた、ルフィー的なヤンキーボーイたちとは一線を画する。繋がりが希薄化した現代の日本の集団は、仲間が傷つけられたら怒るという共通認識をもつことで、何とか維持される「ルフィー的なもの」と呼びうるようなマイルドヤンキー的共同体である。ところが本作は「ルフィー的なもの」とは違い、怒りの影で泥棒それ自体を楽しんでいる。彼らはやはり最後まで「愛すべき(ダメな)盗人」なのだ。

 それを裏付けるように、今回のミッションにテスは呼ばれない。6ヶ月の計画なのだから隠すのは難しそうだし、テスにとってルーベンは大切な人物であるにも関わらずだ。テスという彼らを叱る存在から隠れて盗みを働くことも、ホモソーシャルで得られる「愛すべき盗人」たちの快楽なのである。

考察・感想

アナログ vs デジタル。過程を重んじる旧世代

 本作のストーリーは、一作目『オーシャンズ11』に近い印象を受ける。だが『オーシャンズ11』と違って本作で問題になるのは、新旧対決、あるいは、アナログ対デジタルの対決である。もちろんダニーたちは旧いアナログ側に属する。彼らは目的とあらば最先端技術は取り入れるし、そこに費用は惜しまない。しかし『グランド・イリュージョン』(2013)のように、トリックは科学で科学は魔法なのだ、といったデジタルの側に立つことはない。

 新世代の敵が用いるデジタルは強い。不正を探知するコンピューターシステム「グレコ」を欺くことは難しそうで、ダニーたちに勝ち目はなさそうだ。そのような状況をひっくり返すために、アナログ世代が取る方法は二つある。

 一つはデジタルを超えた現象、つまり天災を起こすことだ。システムをダウンさせるために、地震を起こすという発想のダイナミックさに驚いた。これぞアナログ世代。敵が完璧なら小賢しいことはしない。下から建物ごと揺らすのである。

 もう一つは地道な作業。ダイスに仕掛けをするのも、表面にチョコチョコっとというものではない。製造する工場に潜入するところから始まるのだ。したがって工作作業は6ヶ月を要することになる。これもアナログ的時間感覚である。

 したがって、天変地異と地道な作業という一見すると真逆の発想は、実はアナログの考え方からでてきているといえる。そしてどちらも時間がかかる。すると本作の驚くべき特徴、映画の半分以上が対決ではなく下準備の時間に費やされていることにも納得がいく。トリックでバンクを負かすその鮮やかさは、もはや本作の一番の魅力ではない。そうではなくて、トリックの準備工作に費やされた時間、その過程が重要なのだ。

 完璧なデジタルの世界では過ちは起こらないことになっている。だが工夫をすればアナログ人間でも、隣の人に大当たりをださせることで、デジタルを騙すことができる。それだけではない。天災を起こしてデジタルの空間自体を外からシャットダウンさせることもできるのだ。そのとき傲り昂るデジタル人間は、完璧であるはずの「グレコ」に完璧であるが故に閉じ込められる。そしてバンクは無限にも感じられる3分20秒という時間が過ぎ去るのを待つことしかできない。そのとき初めてデジタルに生きてきたバンクは、アナログ的時間を生きて冷や汗を流すのだ。

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