『運び屋』考察|老人の魂の演技が圧巻|あらすじネタバレ感想・伝えたいこと解説|クリント・イーストウッド

『運び屋』考察|老人の魂の演技が圧巻|あらすじネタバレ感想・伝えたいこと解説|クリント・イーストウッド

概要

 『運び屋』は、2018年に公開されたアメリカの犯罪ヒューマン映画。監督・主演はクリント・イーストウッド。 原題はThe Mule

 第二次世界大戦の退役軍人であるレオ・シャープが80歳代で犯した実際の犯罪を元にしている。

 妻や娘と絶縁状態にある90歳近くの老人が、ひょんなことから麻薬の運び人として働くようになる物語。

 イーストウッドの映画は他に『グラン・トリノ』がある。

 犯罪映画はほかに『セブン』『殺人の追憶』『ゴーン・ガール』などがある。

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登場人物・キャスト

アール・ストーン(クリント・イーストウッド):園芸家の老人。2005年の品評会で賞を取る。家族よりも仕事を優先したため、妻メアリーと娘アイリスからは嫌悪されている。

コリン・ベイツ捜査官(ブラッドリー・クーパー):捜査官。麻薬取引を捜査している。関係者を脅して、麻薬組織の内部の情報を得る。
(他の出演作:『イエスマン “YES”は人生のパスワード』)

主任特別捜査官(ローレンス・フィッシュバーン):コリンの上司。
(他の出演作:『ジョン・ウィック:チャプター2』『ジョン・ウィック:パラベラム』『ボビー・フィッシャーを探して』)

トレビノ捜査官(マイケル・ペーニャ):コリンの相棒。
(他の出演作:『ムーンフォール』『ワールド・トレード・センター』)

メアリー(ダイアン・ウィースト):アールの妻。アールとは別居している。しかし心の底ではまだ彼のことを好いている。

ラトン(アンディ・ガルシア):麻薬カルテルのボス。アールのことを気に入り、重宝している。
(他の出演作:『アンタッチャブル』『オーシャンズ11』『オーシャンズ12』『オーシャンズ13』)

フリオ(イグナシオ・セリッチオ):麻薬カルテルの幹部。アールの監視役。

ジニー(タイッサ・ファーミガ):アールの孫。アールに好意的。彼を卒業式や結婚式に招待する。

アイリス(アリソン・イーストウッド):アールの娘。アールが結婚式に来なかったため、同じ空間にいることすら嫌がるようになる。

グスタボ(クリフトン・コリンズ・Jr):麻薬カルテルの幹部。ラトンの方針に反発し、彼を射殺する。

名言

アール:もっとのんびりしなきゃ。こんなふうに人生楽しめ。

アール:本当にしたいことをみつけて追い求めるんだ。

メアリー:あなたは人生最愛の人で、人生最悪の悩みの種

あらすじ・ネタバレ・内容

 園芸家として有名なアール・ストーンは、家族よりも仕事を優先する堅物な父親だった。娘アイリスの結婚式の日に仕事を優先したために、以後口を聞いてもらえなくなる。

 それから数十年経った現在、妻と娘とは絶縁状態になり、園芸家としての仕事は立ち行かなくなる。家賃を滞納したことで家を追い出されたアールは、その足で孫ジニーの結婚前パーティーに向かう。そこで再会したアイリスには口も聞いてもらえず、雰囲気も最悪のためその場から立ち去ろうとする。すると、アールの状況を見たジニーの友人によって、車を走らせるだけで稼げる仕事を紹介される。

 アールは渡された物の中身を確認せずに、運び屋を引き受け、高額な報酬に驚嘆する。一度だけでこの仕事を止めようとしていたが、差し押さえられた家を取り戻すためにもう一度運び、火事で店を畳むことになった人を救うためにまた運ぶ。その途中、運んでいる物を確認してしまい、麻薬を運んでいる異に気づく。

 一方、麻薬取締局のコリン・ベイツ捜査官は、麻薬関連の犯罪で捕まえた男を脅して、情報を流すよう強いる。麻薬の運搬が成功するにつれ、一回で運ぶ量が次第に増えていく。そして九回目の仕事を終えると、組織のボス・ラトンが屋敷に招き大いに盛り上がる。

 コリンは上層部の意向に沿い、麻薬組織の隠れ家に捜査に入る。そのことで焦った幹部のグスタボはラトンを殺害し、厳格なルールとスケジュールのもと運搬を行うように命令する。アールの子守役であったフリオとアールは、渋々ならがグスタボの命令に従うことにする。

 12回目の運搬の際、運び屋がモーテルに泊まると情報を得たコリン捜査官は、アールが泊まる場所を張り込んでいたが、アールの装いから疑われずにすむ。翌朝、コリンに疑われずにモーテルを出発すると、孫のジニーから、妻メアリーが重い病気で何日も持たないと聞かされる。アールは外せない仕事があると応じるが、考え直し仕事を放棄してメアリーのもとに向かう。

 アールはそのままメアリーの最後を看取り、それを見ていたアイリスやジニーと関係を修復する。しかしメアリーを看病している間は、麻薬組織との連絡を絶っていたため、運搬車が逃亡したと思われていた。メアリーの葬式を終えたアールは、グスタボに事情を説明するが受け入れてもらえない。

 グスタボの部下に捕まり殴られるが、仕事に復帰させられる。その運搬中に、盗聴していたコリン捜査官らに捕まる。アールは裁判が始まると、自ら有罪であることを認め、刑務所に収監される。刑務所でアールは、美しい花を育てるのだった。

解説

クリント・イーストウッドが88歳にして主役を演じる

 監督兼主演のクリント・イーストウッドは1930年生まれ。この映画が公開されたのは2018年のことだから、彼は88歳で演じていたことになる。もう一度、言おう。88歳である。

 確か私の祖父がそれくらいの年齢だった気がするが、日中はほとんど寝ていて、外に出ることすら珍しい。祖父は社会的な意味での「生きる」ということに、もう昔ほどの意欲が無いようにみえるが、それは決して珍しいことではない。88年間も生きてきた人は、多かれ少なかれ、「生きる」ことに疲れる。そして身近にあるより小さなことに、例えば昼寝とか夕飯に出された大トロとかに、幸せを感じて平穏に生きている。

 老人にはそのような幸せに生きる資格がある。社会的に「生きる」ことが疲れたなら、いつでもその道から降りてよい。降りるための経路は準備されているし、その道はいつでも使うことが許されている。

 だがそうであっても、まだ「生き」続ける人がいる。それは誰に強制されるのでもない、純粋な欲求だけがある。制作したい。その想いにただ突き動かされているのが、クリント・イーストウッドである

老人と犯罪

 イーストウッドが自身の監督作品に最後に出演したのは2008年に公開された『グラン・トリノ』であり、映画に出演したのは2012年に公開された『人生の特等席』が最後である。したがって自身の監督作品では10年ぶり、映画には6年ぶりの出演となる。

 この映画には元ネタがある。その事件は「シナロア・カルテルが雇った90歳の麻薬運び屋」という記事で報じられ、2014年に全米を驚愕させた。87歳の老人が、莫大な量の麻薬を、十数回も運搬していたのである。老人と犯罪。これだけでも興味がそそられる。老人は何を考えて犯行に及んだのか。元々麻薬組織と関わりを持っていたのか。金が目的だったのだろうか。それともスリルのためだろうか。

 日本でも老人と犯罪が注目されることがある。相対的に貧困化しつつある日本社会で、老人の万引きが増えている。それも狙うのは高額な商品ではなく、ワンコインで買える安物の場合が多い。万引きに対する犯罪意識が低いためか、常習化しているケースもあるという。ここ数年は高齢者の万引き件数も減少傾向にあるが、依然高い状態にある。2010年付近に未成年者の万引き件数を上回って以来、その差は開き続けている。

考察・感想

齢88歳のイーストウッドにしか演じることができない

 繰り返しになるが、88歳の老人が主役を演じていること自体、驚愕すべき出来事である。だが、イーストウッドにしか演じられないということも、また確かなのだ。87歳という多くの人にとって未知の領域に達した人の考えは、87歳に到達した者にしかわからない。

 日本のフェミニストで社会学者の上野千鶴子がどこかで、老人になった時に老人の性欲について語りたいと書いていた気がする。年老いた時に性欲はどうなるのか、それは自分が年老いた時にしかわからない。だから、そうなった時に、未知の領域の性欲に興味がある、と。

 それと同じことがイーストウッドにも言えるのではないか。実際に麻薬を運搬した老人は、その年齢に到達したことのない我々の感覚から隔絶しているはずである。それゆえ彼は自ら演じることにした。ほかの人が演じれば、演じてほしいものにならない、すなわち、自分だけが彼のことを理解していると自負していたはずである

 イーストウッドはその老人にさらに、自分の人生も重ねている節がある。娘役のアイリスを演じるのは実娘のアリソン・イーストウッドで、彼女と彼のギクシャクした様子は真に迫るものがある。映画の中で二人は、家族を顧みず仕事を優先する父親と、大事にされなかったが故に大人になっても恨み続ける娘という、破綻した関係を結んでいる。

「こんなふうに人生を楽しめ」ば、矛盾などない

 さて、本作には矛盾した二つのメッセージがある。一つは自分の思うままに生きろ、もう一つは家族を想って生きろ。

アール:本当にしたいことをみつけて追い求めるんだ。

 アールは家族よりも仕事を優先して生きてきた。それはアールにとっては当然のことで、曰く「好きだからだ」。しかしそのツケは、年を重ねるごとに大きくなる。妻メアリーからは距離を置かれ、娘アイリスからは同じ空間にいることすら断られる。それでもアールはその選択を後悔していない。何故なら彼は、自由に生きたし人生を楽しんでいるからである。彼は若者に向かってこう言っている。

アール:もっとのんびりしなきゃ。こんなふうに人生を楽しめ。

 だが、アールは家族との関係が壊れていることに、後悔を感じている。彼は「みんな携帯が手放せない。もはや疫病だ。」と言うが、その実、彼が携帯を使うことができないのは、身近な若者がいなくなってしまったからである。彼のデジタル嫌いは、家族を蔑ろにした結果に他ならない。麻薬運搬を依頼する若者が携帯の使い方を教えてくれる時の、アールの嬉しそうな表情を見逃してはならない。

 アールは妻メアリーの死が近づいてきたことで、仕事を捨てて自分の命を顧みず、メアリーのもとに向かう。そこでメアリーは彼を許し、その様子を見てアイリスも彼を受け入れる。家族の大切さをしみじみと感じていたアールは、土壇場になって仕事ではなく家族を優先することで、家族との関係を修復する。しかし、彼は仕事を辞めたわけではない。その足で仕事に戻り、グスタボの部下に殴られ、警察に捕まる。彼は家族を優先したのに、仕事に戻ったのである。そして法廷では、自ら有罪であることを認め、アイリスや孫のジニーに泣かれながら、家族と共に暮らせない刑務所に収監される。彼は仕事ではなく、家族を優先したのではなかったのか。

 しかしこれはアールにとって、なんら矛盾したものではない。このような見方をしていては、冒頭で示した二つのメッセージをうまく受け取ることができない。アールは仕事と家族という対立ではなく、「こんなふうに人生楽しめ」というテーゼに従えと言った。この意味において彼は矛盾していない。アールは人生を楽しむという視点から、仕事と家族を見た。だから有罪であることも認めた上で、刑務所の中で好きだった花を輝かせた。メアリーは死の間際にアールに向かって「あなたは人生最愛の人で、人生最悪の悩みの種」と言った。アールの生き様が矛盾ではないように、これもまた矛盾ではないのである

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評価(批評・評論・レビュー)

クリント・イーストウッドの前作『15時17分、パリ行き』の公開時に、英字新聞JAPAN TIMESに「日本の批評家は映画監督としてのイーストウッドを神格化しすぎている」という趣旨の記事が載った。新作『運び屋』について書く上でどうしてこの話から …… 全文

ーー realsound.jp(宇野維正)

加筆中(おもしろい評論、または、載せてほしい論考などがありましたら、コメント欄にてお伝えください)

動画配信状況

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dTV✖️31日間550円
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ABEMAプレミアム✖️2週間960円
Netflix✖️1,440円
クランクイン!ビデオ14日間990円
mieru-TV1ヶ月間990円
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