『ムーンフォール』考察|非モテ、世界を救う|あらすじネタバレ感想・伝えたいこと解説|ローランド・エメリッヒ

『ムーンフォール』考察|非モテ、世界を救う|あらすじネタバレ感想・伝えたいこと解説|ローランド・エメリッヒ

概要

 『ムーンフォール』は、2022年に公開されたアメリカのSFアクション映画。監督・共同脚本はローランド・エメリッヒ。インディペンデント映画史上最も高額な作品の一つ。

 月が落下してくるという危機に立ち向かい、その裏に隠された真実を暴こうとする人々の葛藤と奮闘を描いた物語。

 SF映画はほかにノーラン監督の『インセプション』『インターステラー』『TENET テネット』、スピルバーグの『A.I.』『宇宙戦争』、アミエル監督の『ザ・コア』、『マトリックス レザレクションズ』『キューブ』『タイムマシン』『ブレードランナー』、『翔んで埼玉』などがある。

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登場人物・キャスト

ブライアン・ハーパー(パトリック・ウィルソン):元宇宙飛行士。宇宙で黒い物体に襲われる。そのことを報告したが信じてもらえず、退職を迫られる。

ジョー・ファウラー(ハル・ベリー):NASAの副長官。ハーパーと共に事故に遭うが、意識を失くしていたため黒い物体の存在を知らない。
(他の出演作:『クラウド アトラス』『ジョン・ウィック:パラベラム』)

K・C・ハウスマン(ジョン・ブラッドリー):陰謀論者。月の内部が空洞で、巨大建造物であると主張している。

ブレンダ・ロペス(カロリーナ・バルトチャック):ハーパーの元妻。

トム・ロペス(マイケル・ペーニャ):ブレンダの現在の夫。レクサスの販売会社を経営。
(他の出演作:『運び屋』『ワールド・トレード・センター』)

ソニー・ハーパー(チャーリー・プラマー):ハーパーの息子。大学生。

ミシェル(ケリー・ユー):中国人留学生。ファウラーの息子の子守をしている。

ホールデンフィールド(ドナルド・サザーランド):NASAの元職員。
(他の出演作:『ミニミニ大作戦』)

ダグ・デイビッドソン(エミ・イクワーカー):ファウラーの元夫。空軍の将軍。

キャプテン・ガブリエラ・オークレア(マキシム・ロイ):ブライアンとハウスマンを救出する軍人。

アルバート・ハッチングス(スティーヴン・ボガート):NASAの長官。

名言

ハウスマン:僕は僕の意思で残る。みんなを守ってくれ。世界には君が要る。月の真実を広めて。

ハウスマン母:始めましょう。

あらすじ・ネタバレ・内容

 2011年、ジョー、ブライアン、マーカスの3人はスペースシャトルで飛行船の修理をしていた。そのとき謎の黒い物体に襲われ、マーカスは死亡、ファウラーは意識を失い、ハーパーが操縦して地球に帰還する。ハーパーはこの事件を報告するもNASAに信じてもらえず、人為的なミスとして処理され解雇される。その事件がきっかけに妻と離婚、貧乏な生活を送るようになる。

 2021年、月の軌道が変化し地球に接近を始める。陰謀論者のハウスマンはいち早くこの事態に気づき警告するもNASAに無視される。ハウスマンは子供向けセミナーでハーパーと知り合い、そのことを告げる。最初は半信半疑だったハーパーもあらゆる角度から検証した結果確からしいことを知り、副長官になっていたファウラーに連絡する。

 そのころNASAでも月の異変に気づき調査を進めていた。しかしNASAに無視されたハウスマンが、SNSでその情報を流してしまい世界中でパニックになる。NASAは早速月に探査機を送り、垂直な穴を発見するも、過去にハーパーが目撃した黒い物体に襲われ全員死亡する。月はさらに軌道を変え地球に接近し、地球規模の環境変動が起きる。

 ファウラーは機密になっているアポロ11号の記録を調べ、当時すでに月が空洞であることを突き止めていたが隠蔽したことを知る。黒い物体と戦うために、軍は兵器ZX7を開発していたがそのまま放棄されていた。ファウラーは博物館にあった退役スペースシャトル・エンデバー号と兵器ZX7を持ち出し、中国から提供された月着陸船を使って、ファウラー、ハーパー、ハウスマンの三人でエンデバー号に乗ってツキを目指す。

 ハーパーの息子ソニー、ファウラーの息子、中国人中学生のミッシェルは、ファウラーの元夫デヴィッドソン将軍が避難するコロラドにある地下シェルターに向かう。しかし月が地球に接近した影響で、その道のりは困難を極める。

 ハーパーたちは月に接近し、黒い物体が有機体と電力が組み合わさったときに反応していることを突き止める。電力を落としてさらに月に接近すると、内部は空洞で、月は中心ある白小矮星からエネルギーを得る巨大建造物だった。黒い物体に襲われたハーパーたちは、建造物のオペレーティングシステムに救われる。

 実は、数十億年前の人類の祖先は自我に目覚めたAIと戦闘になり、巨大建造物(=月)を数多く作り脱出したのだった。その中で唯一生き残ったのが、太陽系に辿り着いた月だった。祖先は人類を存続させるために自ら命を絶ち、黒い物体の動きを封じ、地球の生命に遺伝子を組み込んで再生を図る。そして現在、人類が月に到着したことで黒い物体(=AI)は目覚めてしまい、月の中心にある白色矮星のエネルギーを阻害することで月の起動を変えたのだった。

 大統領はハーパーたちの作戦が間に合わないと判断し、核攻撃を命令する。しかしデヴィッドソン将軍が命令に背き、攻撃は行われない。その間に、ハウスマンの犠牲によって兵器ZX7を起動させ、黒い物体を破壊する。

 残されたハーパーとファウラーは、地球に帰還し子供たち再会する。AIの阻害を免れた月は、元の軌道に戻っていく。ハウスマンの意識は月のAIにスキャンされていて、AIは地球再建の手助けを提案する。

解説

インディペンデント映画史上最も高額な作品の一つ

 ある日、月が地球に落ちてくるとしたら、人類はどのように行動するだろうか。もし仮にあなたが『ムーンフォール』という題名をみて、そんな疑問に応えてくれる物語、例えば『アルマゲドン』や『ディープインパクト』のような黙示録的映画、を予想したのなら、ローランド・エメリッヒ監督の想像力に度肝を抜かれるかもしれない。何故なら本作で描かれるのは、人類の終末ではなく、人類の始まりなのだから。

 「インデペンデンス・デイ」シリーズや『紀元前1万年』などで有名なローランド・エメリッヒは、SFやアクションの制作で広く知られている監督である。「ハリウッドの破壊王」とも呼ばれる彼の作風は、娯楽色が強く大衆に広くウケ多くのファンを獲得している。

 本作は多額の予算がついたため、インディペンデント映画史上最も高額な作品の一つとなった。その多額の予算のおかげで、物語のスケールの大きさやSF映像の豪快さはかなりの見応えであり、彼の作風と長所が遺憾無く発揮されている。地球への月の接近、それに伴う地球規模での環境変動、月に生息する黒い物体との戦闘、月の核にある白色矮星とそれを制御する機械など、どれをとっても一級品の映像である。

B級映画として否定的な評価が多い。

 したがって、それらの映像を楽しみたい人にとっては、かなり楽しめる作品である。かく言う私もその映像をとても楽しんだ。

 だが、スケールを大きくし過ぎてしまったために、荒唐無稽なストーリーに呆れる部分も目立つ。月の内部が空洞であるばかりか白色矮星をエネルギー源として核に持つという現実と齟齬をきたす設定(仮にそうであるならば、観測事実や地球に及ぼす物理現象に反する)、10億年前から続く人類とAIの対決という陰謀論的な歴史観(陰謀論者に説得は殆ど効果がなく、事前の教育が有効という調査結果がある)、月が接近したのに元の軌道に戻るといった物理法則の無視など、物語を面白くさせるためだけに導入された非論理的な展開は多くの反感を呼んだ。

 そのためRotten Tomatoesの批評家の意見は「『ムーンフォール』はくだらな過ぎて笑えるのか、それとも単に出来が悪いのかは、陳腐なB級映画に対する耐性によるだろうが、いずれにせよ、これはまさにエメリッヒのディザスター・スリラーそのものである。」(引用:wikipedeia)となっている。またAmazonに寄せられた感想でも否定的な意見が多く星は平均3.2となっている。

 賛否を分けるのは、主にこの非論理的展開を許せるか否かにかかっている。それは多くの人が映像だけは評価していることからもわかる。映像は良い、しかし、非論理的な展開が許せないという人は「暇つぶしにはなる」と否定的に評価する。逆にこの非論理性を許せれば、壮大なスケールを大胆な映像で描く超大作なスペクタクル映画と肯定的に評価することになる

考察・感想

陰謀論は、真実か陰謀か

 だが、問題は非論理性だけではない。基本的にこの映画は、人類史をより大きな歴史の中に位置付け、より高次の何者かによって人類が支配されている、という陰謀論的物語である。したがって、陰謀論者のハウスマンの主張は、現実の陰謀論者の主張と完全に一致する。曰く、「月の内部は空洞で、本当は巨大建造物なんだ」。

 陰謀論の一つに、アポロ11号の月面着陸は偽物だという主張がある。陰謀論者の精力的な研究は、アポロ11号の映し出した月面の映像に不審な点を幾つも暴き出した。空白の数分間、舞い上がらない砂埃、捏造された画像など。それらはより大きな陰謀(例えば宇宙人の存在と地球への侵略)を隠すために行われたNASAによる隠蔽であると主張される。

 多くの人が一笑に付すであろうこれらの陰謀論は、実は正しい、というのが『ムーンフォール』の世界である。陰謀論者のハウスマンは、月が軌道を変えて地球に接近しているという陰謀論を世界に公開し、月はそれ自体が何者かによる建造物だと主張する。それらの主張はNASAによって無視されるが、しかし、実はNASAはそのことをすでに知っていて対策を練っていた。陰謀論は事実だったのだ。陰謀論が「陰謀」ではなく「事実」であったとき、陰謀論を「陰謀」論と呼んでいた前提が崩れる。荒唐無稽な陰謀論を「陰謀」論たらしめているものは何か。

非モテは自らのために世界を救う

 現実となった陰謀論に対処する物語と並行して描かれるのが異性愛関係の復権である。しかもその描写はかなりわざとらしい。ハーパーが退職に追いやられた事件以降、ハーパーもファウラーも互いに離婚しており、この冒険を通じて離婚相手との再生が図られる。さらに、ハーパーの息子ソニーと中国人留学生ミシェルが、月の接近に伴いシェルターに避難する過程で恋仲になる。

 とすればこの物語は一つの出来事を通過することで、夫婦関係が再生し、恋が始まりといった愛を称揚する古典的な物語形式と同型である。だが、事態は逆転している。この物語ではまず最初に異性愛者とそれ以外に分けられる。その後に出来事が起こり、愛を謳歌できるものだけが従来の方法で救われる。したがって、異性愛規範に参入できていない非モテでオタクのハウスマンは、そもそも(従来の意味で)救われることはありえない。それは彼だけが唯一、物語の中で異性の対がいないことからも明らかである。彼は物語の最後にすら母親と出会うことで、異性愛の関係の輪から排除されていることが強調される。そして月の衝突を回避した最大の功労者ハウスマンだけが、崩壊を免れた地球上に戻流ことができない。『僕だけがいない街』ならぬ『僕だけがいない地球』である。

 だがこのことに、ハーパーやファウラーなどの周囲の人々も、ハウスマン本人ですら全く悲壮感がない。兵器ZX7を起動するために犠牲になることを進んで引き入れる瞬間ですらそうなのだ。そこには『アルマゲドン』に見られるような犠牲の崇高さは微塵も感じられない。

僕は僕の意思で残る。みんなを守ってくれ。世界には君が要る。月の真実を広めて。

 「世界には君が要る」のは、「月の真実を広め」て自分の陰謀論が正しかったことを証明するためなのである。彼の犠牲は、誰かのためではない、自分のために、「僕の意思で」行われる。

 この悲壮感の無さこそが、非モテの冷遇を物語の中心に据えているにもかかわらず、非モテの肯定を示している。ハウスマンは非モテオタクであることで、異性愛を非難したりしない。そして異性愛者だけが地球で生き続けることにも、自分が地球に戻れないことにも未練がない。彼は異性愛の関係の輪に排除されながら、決してそれを僻むことはない。しかし、だからと言って、異性愛関係に奉仕をするわけでもない。彼はあくまで自分のために、自分の意思で、犠牲になる。彼は異性愛関係の外部で、異性愛関係に愛憎も感じることなく、つまり、異性愛関係と全く関係ないところで生き続ける。最後AIと母親の融合体がAIとハウスマンの融合体に放った「始めましょう」は、異性愛の関係から外れた非モテオタクの、これまでとは異なる何かを創造する最初の一言になるだろう。

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評価(批評・評論・レビュー)

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ーー cinemandrake.com(シネマンドレイク)

加筆中(おもしろい評論、または、載せてほしい論考などがありましたら、コメント欄にてお伝えください)

動画配信状況

『ムーンフォール』配信状況比較

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U-NEXT✖️31日間2,189円
Amazon Prime30日間500円
TSUTAYA DISCAS✖️30日間2,052円
Hulu✖️2週間1,026円
dTV✖️31日間550円
FOD✖️✖️976円
ABEMAプレミアム✖️2週間960円
Netflix✖️✖️1,440円
クランクイン!ビデオ✖️14日間990円
mieru-TV✖️1ヶ月間990円
dアニメストア✖️31日間550円
◎☆:おすすめ、○:無料、☆:実質無料、△:別途有料、✖️:配信なし(2023年4月時点の情報。最新の配信状況は各サイトにてご確認ください)*実質無料とは、無料ポイント付与により別途料金を払わずに視聴できるということ。詳細:『ムーンフォール』おすすめ無料フル視聴方法

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