オフコース『言葉にできない』解説|言葉はなくなっていき|歌詞意味考察

オフコース『言葉にできない』解説|言葉はなくなっていき|歌詞意味考察

概要

 1982年2月1日に発売された、オフコース23枚目のシングルの一曲。

 オフコースは他に『YES-YES-YES』、『秋の気配』などがある。

 音楽はほかにくるり『奇跡』スガシカオの『奇跡』ラサール石井『おいでよ亀有』和田光司『Butter-Fly』などを解説している。

歌詞解説

 BPMは84の非常にゆったりした叙情豊かな曲である。なんといっても独特なのは、サビの部分で歌われる「ラ〜ラ〜ラ」だろう。ほとんど「ラ〜ラ〜ラ」であり、そこがまさに「言葉(言語)にできない」ということを物語っている。

 ラララの後の、冒頭の「終わるはずのない愛が途絶えた」で、聞き手はこの曲が失恋の歌だということがわかる。もとのガールフレンドに関しては、歌詞からもさまざまなすれ違いがあったことが想像される。しかし、別れの寂しさのあまり「ひとりでは生きてゆけなくて また 誰かを愛し」ている。そして、そのような状況が「哀しくて 言葉にできない」。失恋にありがちな悲しい歌だ。しかし、小田和正作詞の曲は情緒が複雑に揺れ動くのは周知のことだろう。この曲も単純に悲しい歌として終わるわけでない。

 2番。「誰のせいでもない」と言いつつ、「自分が小さすぎるから」、である。別れた原因はどうやら自分にあるらしい。少なくともその未熟さに関係がある。そして、それが「くやしくて 言葉にできない」。ここでは言葉にできない理由が未熟さのせいで別れてしまったことに変わっている。

 最後、情動が反転する。「哀しくて」「くやしくて」ときて、最後にくるのは「嬉しくて」である。「あなたにあえてほんとうによかった」なので、その出会ったことに対する感謝、あの頃の楽しかった日々が言葉を詰まらせるのだ。ある種のハッピーエンドというか、良い思い出とともに過去の思い出が消えていくのである。

 「言葉にできない」異なる三つのシーンの情景が浮かぶだろう。哀しくて言葉にできないときは涙だ。くやしくてことばにできないときは歯を噛みしめ、嬉しくて言葉にできない時は震えている。三つの情景を小田和正は使い分けたが、順番が重要だ。最後が「嬉しくて」である。ここで感動が一気に極まるのである。

解釈・考察

言葉がなくなっていく

最後の節の歌詞を見てみよう。

あなたに会えて ooh~
言葉にできない
今あなたに会えて ooh~

 これで歌が終わるのだが、最初の”ooh”の箇所は、本当だったら「ほんとうによかった うれしくて うれしくて」が来たはずである。それが”ooh”しか なくなっている。ここは無くなったというより、歌えなくなったのだ。そう、まさにその部分はのである。実は歌詞の中で「言葉にできない」が再現されているのだ。

 2番目の”ooh”の部分では何が消えているのだろうか。「言葉にできない」という言葉である。ここではもう、言葉にできないという言葉さえ言葉にできなくっているのだ。もう残っているのは、「あなたに会えて」だけである。仮に3番目の”ooh”が来た場合にどんな言葉が残っているだろうか。おそらくもう残っている言葉はない。そこには”ooh”しかない。「言葉にできない」自己言及的な意味合いを持つ。言葉にできないのがもし本当なら、最後には、語るべき言葉がなくなってしまうのである。

今あなたに会えて?

 最後の歌詞が、「今あなたに会えて」だが、普通に考えるとそれまでの歌詞ととつつじまが合わないように感じるだろう。失恋の歌だということは、元のガールフレンドとは今は会えないはずである。それが「今あなたに会えて」ということになっている。どういうことだろうか。

 記憶の中の亡霊としてガールフレンドに今会っているという解釈はありうる。昔の彼女を思い浮かべて、それで「あなたに会えた」ことにするわけである。

 一番可能性が高そうなのは、本当は「今あなたに会えて」という意味である。つまり「もう 今は あなたに会えて ほんとうによかった」という前に語ったフレーズがここの原型の歌詞で、前後が省略され、さらに「は」も省略されてしまった結果、このようなフレーズになったというものである。すると、意味としては「(昔に)あなたに会えて ほんとうによかった」と同じ意味なるだろう。とにかくこの歌詞の主人公はあなたとの出会いに幸福を感じている。そして幸福のあまり言葉にできない。そう、とにかく主人公は(なぜかしらないが)幸福なのだ(失恋したけど、そこまで悪くない(良くない)という二重性は小田っぽいところである)。

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