『インターステラー』考察|時空間を越える愛と重力|あらすじ解説|感想|クリストファー・ノーラン

『インターステラー』考察|時空間を越える愛と重力|あらすじ解説|感想|クリストファー・ノーラン

概要

 『インターステラー』は、2014年に公開されたアメリカのSFファンタジーヒューマン映画。監督はクリストファー・ノーラン。出演はマシュー・マコノヒー、アン・ハサウェイ、ジェシカ・チャステイン、マイケル・ケイン。アカデミー賞は5部門でノミネート、視覚効果賞を受賞。

 人類の居住可能な惑星を探しに行くクーパーと、地球に残された娘マーフィーの父娘の愛の物語。

 2017年にノーベル物理学賞を受賞した理論物理学者キップ・ソーンが製作総指揮を務めている。

 ノーラン監督はほかに『メメント』、『バットマン ビギンズ』、『インセプション』、『ダークナイト』、『ダークナイト ライジング』、『ダンケルク』、『TENET テネット』がある。

 出演者のアン・ハサウェイは『オーシャンズ8』、ウェス・ベントリーは『アメリカン・ビューティー』、ティモシー・シャラメは『レイニー・デイ・イン・ニューヨーク』、マット・デイモンは『オーシャンズ11』『オーシャンズ12』『オーシャンズ13』にも出演している。

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登場人物

ジョセフ・クーパー(マシュー・マコノヒー):元パイロット。義父ドナルド、息子トム、娘マーフィーと共に暮らしながらトウモロコシ農場を営んでいる。

マーフィー・クーパー(ジェシカ・チャステイン/マッケンジー・フォイ/エレン・バースティン):クーパーの娘。本が落ちるのを何かからのメッセージだと最初に気づく。理論物理学者になりブランド教授と共に研究をする。

アメリア・ブランド(アン・ハサウェイ):科学者。ジョンの娘。宇宙船エンデュランスでクーパーらと共に調査する。

ジョン・ブランド(マイケル・ケイン):理論物理学者。クーパーの元同僚。NASAに勤めている。長年重力の方程式を解を探している。本当は数十年前に解けており、ブラックホール内部のデータがない限り重力を制御できないことを知っている。

TARS(ビル・アーウィン):人工知能ロボット。正直レベル90%でジョークを混えて会話する。

CASE(ジョシュ・スチュワート):人工知能ロボット。TARSと比べて真面目。

ニコライ・ロミリー(デヴィッド・ジャーシー):理論物理学者。調査員の一人。水の惑星ではブラックホールの観測のために残って研究する。

ドイル(ウェス・ベントリー):博士。調査員の一人。水の惑星で津波に飲み込まれて死亡。

マン(マット・デイモン):生物学者。ラザロ計画の先駆者で、氷の惑星から生存可能という信号を送り続けている。本当は死ぬのが怖く、データを改竄し救出を待っていただけだった。

トム・クーパー(ティモシー・シャラメ/ケイシー・アフレック):クーパーの息子。結婚し子供を授かるが、クーパーの生存を諦める。クーパーの跡を継ぎ、家に住みながら農場を経営している。

ドナルド・クーパー(ジョン・リスゴー):ジョセフの義理の父。ジョセフと孫のトム、マーフと4人暮らし。亡くなった後は、娘と同じ墓に埋葬された。

名言

ブランド博士:穏やかな夜に身を任せるな 老いても怒りを燃やせ、終わりゆく日に 怒れ、怒れ、消え行く光に(ディラン・トマスの詩の引用)
Do not go gentle into that good night, Old age should burn and rave at close of day; Rage, rage against the dying of the light.


あらすじ・ネタバレ

 元パイロットのクーパーは、義父のドナルドと15歳の息子トム、10歳の娘マーフィーとトウモロコシ農場をしながら暮らしていた。しかし異常気象により砂嵐が発生して農作物を破壊し、人類存続の危機に瀕していた。ある日、マーフィーは本が本棚から勝手に落ちるのを発見し、幽霊の仕業と考えモールス信号を使って解読しようとする。

 クーパーは落ちた砂埃の位置が特徴的なことから、重力波を用いた二進数のメッセージだと気づく。解読した座標にマーフィーと向かうと、そこには秘密裏に復活したNASAの裏施設があった。そこでブランド教授と再会し、土星近くのワームホールから別の銀河へ向かい、人類の再建を図るラザロ計画の存在を知る。48年前に「彼ら」によって作られたワームホールを通過して、12の惑星に1人ずつ探索者を送り、3つから入植可能のメッセージが送られていた。

 クーパーはブランド教授から、有望な惑星にむかうミッションのパイロットになるよう頼まれる。マーフィーは反対し幽霊からの伝言が「STAY」であると主張するが、クーパーはそれを聞き入れず彼女と仲直りしないまま、アメリア、ロミリー、ドイル、ロボットTARSと共に探査船レインジャーで出発する。レインジャーは宇宙船エンデュランスとドッキングし、ロボットCASEと合流し、土星への2年の旅に向けて睡眠カプセルに入る。

 2年後、ワームホールを抜け、ミラー飛行士がいる水の惑星に向かう。近くにあるブラックホールガルガンチュアの存在のため、水の惑星の1時間は7年に相当するが、時間が最短になるよう計画し実行に移す。レインジャーで水の惑星に降りたドイル、アメリア、クーパー、CASEは、ミラー博士の飛行船の残骸を発見する。その直後大型の津波に襲われ、CASEの助けでなんとか脱出するもドイルを失い、エンデュランスに戻ると23年経っていてロミリーは年老いていた。

 クーパーは地球からの23年分の伝言を受け取り、自分の生存が諦められたこと、ドナルドが亡くなったこと、トムに子供ができたことを知る。一方、マーフィーはブランド教授と重力の研究を行っていた。だがブランドは死の間際、数十年前に重力方程式を解いていたこと、重力の制御は不可能なことを告白する。マーフィーは一度は絶望するが、ブラックホールの中の観測データがあれば、方程式を完璧に解くことができることに気づく。

 乗組員は議論の末、恋人のエドマンズが降りた惑星が有望であるというアメリアの主張を退け、プロジェクトの立案者で生物学者のマン博士のいる氷の惑星に向かう。マン博士は氷の惑星で人類が生き残れる可能性があるという。そこにブランドが嘘をついていたというマーフィーの連絡が届き、当初から生存可能な惑星で凍結受精卵を孵化させるプランBの予定だったとマンに告げられる。だがマンの相棒で故障しているロボットKIPPの光通信装置を移植したTARSをブラックホールに落とし、観測データを得ることで重力を制御し人類を移住させるプランAは可能だと反論する。マンは地球に戻る気のないクーパーを襲い、死の恐怖のため助けに来てくれるようデータを捏造したと告白する。異変に気づいたアメリアはクーパーを助けるが、ロミリーはマンの爆弾に倒れる。

 マンはレインジャーで惑星を脱出し、エンデュランスにドッキングしようとするが失敗し爆発する。着陸船ランダーで彼を追跡したクーパーたちは、爆発で残った部分とドッキングし、エンデュランスの制御に成功する。だが大きな損傷と燃料の損失が原因で地球には帰れなくなる。クーパーとアメリアはガルガンチュアの重力を利用し、プランBを遂行するためにエドマンズのいる惑星に向かう。途中速度を確保するために、TARSを乗せたランダー、クーパーを乗せたレインジャーIIを切り離し、ミッションをアメリに託す。

 TARSはブラックホールの内部のデータを取り、クーパーは「彼ら」の作った4次元空間に入る。そこは未来と過去に接触できる特殊な空間だった。クーパーは過去のマーフィーと自分自身に重力波を使って残るよう仕向けるが、過去を変えることができない。そこでTARSの助言により未来を変えるため、マーフィーにあげた腕時計の針にモールス信号でブラックホールの内部のデータを送る。マーフィーは手がかりを探しに元の家に戻りトムと喧嘩した後、クーパーからの伝言に気づく。そしてそのデータを用いて重力方程式を完璧に解いたのだった。その瞬間、4次元空間は閉鎖し、ワームホールに飲み込まれる。

 目を覚ましたクーパーは土星の軌道線上にあるスペースコロニーの病院で目が覚める。マーフィーは成功したのだ。彼は土星近くの宇宙空間に漂っていて、酸素は残り二分で尽きるところを助けられた。クーパーはそこで年老いたマーフィーと再会し、マーフィーは子供や孫、ひ孫など多くの人に囲まれながら最後を迎える。そしてクーパーは一人残されたアメリアを捜索しに、再び宇宙船で出発する。

解説

父と娘の愛の物語——時空間のズレ

 『インターステラー』は、人類の居住可能惑星を探索すべくワームホールを利用した恒星間の移動をする宇宙飛行士たちの信頼と、地球と宇宙で引き裂かれた父娘の愛の物語である。

 ノーランといえば初期の『メメント』の記憶や自由意志から、『ダークナイト』の正義や虚構の問題まで、一貫して哲学的なテーマを扱ってきた作家である。そんな彼が本作で初めて描くのが、父娘の愛の関係だ。人類を救うため宇宙に向かう父クーパーと、地球に残され重力を研究する娘マーフィー。二人は互いに信頼し合いながら、決して再び出会うことができない。

 この設定にプラスされるのが相対性理論から導き出される時間のズレである。相対性理論によれば重力が強い物質の近くは時間の流れが遅く、そのことが原因でクーパーよりもマーフィーの流れる時間の方が速くなる。気づいた時には出発した時のクーパーの年齢をマーフィーは越えて、二人の時間はますますズレていく。

物理学者が監修した物理現象の正確な描写

 この時間のズレは物語を盛り上げるために付け足されたフィクションではなく、前述の相対性理論から導き出された現実に起こりうる現象である。また超巨大質量をもつガルガンチュアに接近したときに見られた、光が曲がり輪のようになる壮大な景色も理論的なもので、物理学的に正確に制作されていることがわかる。

 それもそのはず、本作の科学コンサルタント兼製作総指揮を務めたのは、2017年に重力波検出装置の構築及び重力波発見への決定的な貢献によりノーベル物理学賞を受賞した、理論物理学者のキップ・ソーンなのだ。本作には相対性理論以外にも、重力場や特異点などの極めて高度な理論物理学が正確に応用されている。高度な理論物理学から導き出された正確な物理現象を表現する、壮大なスケールの圧倒的な映像美は本作の魅力の一つである。

考察

『2001年宇宙の旅』との相違点

 映画史の観点から言えば、本作はSF映画の傑作、スタンリー・キューブリックの『2001年宇宙の旅』のオマージュである。『2001年』との大きな違いは、導かれるのはモノリスではなく「彼ら」であること、父と娘の物語に重心が置かれていること、そして人工知能ロボットの立ち位置である。

 『2001年』では、人工知能ロボットHALが人類に反逆し乗組員を殺害した。だが『インターステラー』の人工知能ロボットTARSとCASEは人類の立派に役立つどころか、乗組員の中で最も活躍したプロジェクトの功労者である。水の惑星では歩くスピードの遅い人間に代わりドイルやアメリアを救出し、アメリアを次の惑星に送り出すタイミングでは命を惜しまずブラックホールに落ちていく。正直度90%でジョークを入り混ぜた会話はユーモアに富み、信頼度や安心感は相当なものだ。だからTARSが機械だからといって自らの使命を果たそうとする姿に、人間に対するのと同じ感情を抱かずにはいられない。TARSやCASEは人間以上に人間的な信頼のおける相棒なのだ。

 反対にここで描かれる人間は悪い意味で人間的である。ブランド博士は人類存続のためにアメリアやクーパーを騙し、マン博士は生き残りたいがためにデータを改竄しクーパーを殺そうとし、アメリアは人類よりも恋人の生存を優先し、クーパーもマーフィーと再開することを第一に考える。TARSやCASEとは反対に、誰もが利己的に行動し周囲を欺き多くの犠牲をだしてしまう。

愛と重力が時空間を超える

 ところがその利己的で自分勝手な行為の中心に愛も存在している。マーフィーに再会したいクーパーも、恋人のもとに向かおうとするアメリアも愛に動かされている。

Cooper:I love you forever,and I’m coming back.ーお前を愛している、だから必ず戻る。

Amelia:When I say that love isn’t something we invented.It’s observable,powerful.
だって愛は人間が発明したものじゃない、愛は観察可能な”力”よ

 クーパーは地球に戻れる保証がなくても、必ず戻るとマーフィーに誓う。宇宙と地球に遠く引き裂かれてなお、再会したいと再開できると信じられるのは何故か。それが愛の力である。

クーパー「愛だよ、愛。アメリアが言っていたように。俺とマーフはつながっている。測定可能な方法で。それこそが鍵だ」

 アメリアが「多分、愛は何かを意味してるのよ。私たちの理解を超えた何かを」と言うように、愛は時間や空間を超えて伝わる理解を超えた力である。だからこそクーパーは四次元空間からマーフィーやアメリアに接触できる。本作において、愛は重力と同義である。質量を持つ物質はどのようなものでも重力を発し、どれほど離れていても干渉することができる。未だ仮説でしか存在しない重力子はパラレルワールドに干渉できる唯一の素粒子であり、愛と同様時空間を越えて過去と現在に干渉し未来を変える。クーパーとマーフィーはどれほど離れていようと、愛と重力で互いに通じあっているのだ。

 出発の前にマーフィーに「必ず戻る」と伝えた理由を、クーパーはアメリアに説明する。

クーパー「君も親になったら分かるよ。子どもを安心させてやりたいと。10歳の子どもに世界が終わるなんてことは言えないよ」

 これは前作『ダークナイト ライジング』のバットマンのセリフ「ヒーローには誰でもなれる。少年の肩にコートをかけて、世界は終わりじゃないと教えて安心させればいいんだ」に通じるものがある。無根拠であっても嘘であっても子供を安心させるために断言する、それが大人の役目なのだ。「俺が選ばれたと思ってたけど、違った。選ばれたのはマーフだったんだ」。自分の未来を変えるのではない、子どもに未来を託すのだ。子供を信頼すること、安心させるために嘘をつくこと、そして未来を託すこと。それこそが子どもや世界に対する、責任ある大人の態度なのである。

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