『ダークナイト ライジング』考察|ヒーローには誰にでもなれる|あらすじ解説|感想|クリストファー・ノーラン

『ダークナイト ライジング』考察|ヒーローには誰にでもなれる|あらすじ解説|感想|クリストファー・ノーラン

概要

 『ダークナイト ライジング』は、2012年に公開された英米合作のSFアクション映画。監督はクリストファー・ノーラン。『ダークナイト トリロジー』の第3作目。前々作は『バットマン ビギンズ』、前作は『ダークナイト』。

 新たな脅威に見舞われたゴッサムを救うべく、ダークナイトとして再び戦い、最愛の人を亡くした後悔と立ち向かう物語。

 ノーラン監督はほかに『メメント』、『インセプション』、『インターステラー』、『ダンケルク』、『TENET テネット』がある。

 クリスチャン・ベールは『3時10分、決断の時』、アン・ハサウェイは『オーシャンズ8』、モーガン・フリーマンは『セブン』『LUCY / ルーシー』、ジョセフ・ゴードン=レヴィットは『プレミアム・ラッシュ』、ゲイリー・オールドマンは『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』『ハリー・ポッターと死の秘宝PART2』、トム・ハーディは『マッドマックス 怒りのデス・ロード』に出演している。

 ヴィジランテ映画はほかにスコセッシ監督の『タクシードライバー』、『アメイジング・スパイダーマン』などがある。

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登場人物

ブルース・ウェイン(クリスチャン・ベール):バットマン。古傷が杖を使う生活を送っていたが、ベインと戦うためバットマンとして復活する。

ベイン(トム・ハーディ):傭兵。奈落から脱出した唯一の人物と噂されている。影の同盟に入りデュカードを師事するも破門される。

セリーナ・カイル(アン・ハサウェイ):泥棒。別名キャットウーマン。過去の犯罪履歴を消す装置を得るために、ベインの手下に協力していた。

ミランダ・テイト(マリオン・コティヤール):ウェイン産業の役員。グリーンエネルギーに高い関心があり、核融合炉をブルースから託される。実は、影の同盟のトップ、デュカードの娘タリタであり、奈落から脱出した張本人。デュカードの遺志を継ぎ、ゴッサムを破壊しようとする。

ジョン・ブレイク(ジョセフ・ゴードン=レヴィット):新米警官。元々は孤児院にいた。過去にバットマンの正体がブルースと見抜く。ゴードンの元、正義のために奮闘する。

アルフレッド・ペニーワース(マイケル・ケイン):執事。ブルースが信頼する数少ないうちの一人。レイチェルの手紙を燃やしていたことを知ったブルースが激怒し、彼の元から離れることになる。

ジェームズ・“ジム”・ゴードン(ゲイリー・オールドマン):本部長。デント法の元、ゴッサムの治安を守る。

ルーシャス・フォックス(モーガン・フリーマン):バットマンの装備を開発する科学者。

名言

ブルース:マスクを着けろ。お前自身のためじゃない。大切な人を守るためだ

あらすじ・ネタバレ

 ハービー・デントの死から8年、デント法が発令されたゴッサムは、犯罪組織が一掃され平和な街になっていた。ハービーの罪を被ったバットマンは身を潜め、ブルースは屋敷に閉じこもっていた。

 ある日、ブルースの母の形見のネックレスが、宝石泥棒セリーナ・カイル別名キャットウーマンに盗まれる。実はウェイン産業役員ダゲットの依頼で、ブルースの指紋が目的だった。セリーナはダゲットの手下に指紋を渡そうとるが裏切られるも、警察を呼ぶことで逆襲する。ゴードンが手下を追って地下水道に向かうと、マスクを被った傭兵ベインに返り討ちに遭う。ゴードンはなんとか逃げ切るも、銃弾を受け入院する。

 新米警官ジョン・ブレイクはゴードンの話を受け、バットマンの協力をブルースに依頼する。孤児だったブレイクはブルースの正体がバットマンだと見破っていた。ブルースはウェイン産業社長ルーシャス・フォックスの協力を得て、新型の乗り物「バット」やギブスを装着しバットマンとして復活する。執事のアルフレッドは、ベインは奈落と呼ばれる監獄で生まれ脱出したという噂を伝える。さらに影の同盟に入り、デュカードに破門されたらしい。アルフレッドはブルースの身を心配し、燃やしてしまったレイチャルの手紙の内容を伝えるが、ブルースは激怒しアルフレッドは執事を辞職する。

 セリーナの盗んだ指紋が使われブルースは破産。ブルースとフォックスは核融合炉をダゲットから守るため、役員ミランダ・テイトに会長職を任せる。ベインはダゲットを始末し、セリーナを使いバットマンと地下で対面する。ベインはバットマンを倒し、武器庫や核融合炉を奪い、ブルースは奈落へ連れて行かれる。警察官は地下に捜索に向かうが、ベインの策略でほとんどの警察官が地下に閉じ込められる。

 市長を殺害したベインは、市民に核爆弾の保有を宣告し、ゴッサムへの干渉と逃亡を禁止する。またデントの罪と死の真相を暴露し、囚人を解放する。虐げられていた者たちが市民軍を形成し、上流階級や警官たちを私的に裁き始める。

 ゴッサムの現状を知ったブルースは、奈落でもう一度体を鍛え直し外に出る。核爆弾の爆発前日、ブルースはセリーナに接触、過去の犯罪履歴を消す装置を渡し協力を頼む。またフォックスやゴードン、ブレイクとともに地下に捕らえられた警官を解放し、ベインに立ち向かう。

 当日、市民軍と警官たちが衝突、バットマンはベインを撃破するが、人質のミランダに刺される。実はミランダこそが奈落で生まれ脱出したデュカードの娘タリタであり、ベインはタリタの守護者だった。タリタはデュカードの遺志を継ぎ爆発させようとするが、バットマンたちに阻まれる。しかし爆弾は止めることができないことを告げ死亡する。

 バットマンは「バット」で核爆弾を海に運び、無事ゴッサムシティは守られた。バットマンの正体を知る者だけで葬儀が行われ、アルフレッドは自らの行為を詫びる。フォックスは「バット」に自動操縦機能が加わっていたことを知る。アルフレッドはカフェに向かうと、ブルースとセリーナの幸せな姿を目撃する。ブレイクは警察を辞職し、ブルースからの伝言に従い、バットマンの地下設備にたどり着いたのだった。

解説

『ダークナイト トリロジー』の最終章。ノーラン史上最大の興行収入を記録

 クリスト・ファーノーランが監督する『ダークナイト トリロジー』の第3作目にして最終章。バットマンの実写映画はこの作品にて7作品目になる。批評家から絶賛された前作『ダークナイト』(2008年)の制作後、ノーランは続編について「「より表面的な段階で、質問に答えるが」と前置きし、「皆は映画のシリーズもので出来の良い3作目を思いつきますか?」」(wikipedia)と答えたという。確かに3作目はそれまでの作品と比べて見劣りする場合が多い気もする。だがノーランはその前例を覆した。全世界の興行収入は前作を超えて10億8000万ドル、ノーラン作品で最も高い興行収入を得ることになったのだ。作品としての評価は『ダークナイト』のほうが高いかもしれないが、前作や前前作『バットマン ビギンズ』と比べても全く引けを取らない内容である。

 前作『ダークナイト』(2008年)と本作『ダークナイト ライジング』(2012年)の間には、これまた傑作と名高い『インセプション』(2010年)が公開されている。さらに『ダークナイト ライジング』以降は、壮大なスケールのSF作品『インターステラー』(2014年)や戦争を扱った『ダンケルク』(2017年)などの名作を発表している。このようにして振り返ると、『ダークナイト』から『ダンケルク』までの10年間に製作された作品の完成度の高さに驚かされる。ノーランの監督人生においても、最も実りある10年だったに相違ない。

 『ダークナイト ライジング』の舞台は『ダークナイト』のラストから8年後のゴッサムシティ。ハービー・デントの罪を被り、彼を正義の象徴として祭り上げることで作り上げた束の間の偽りの平和、それがこの8年間である。

 しかしそのような平和が長続きするはずがない。警察権力を強化し犯罪者を取締りやすくしたデント法の成立の原点には嘘と暴力がある。ベインはこの事実を市民に明らかにするだけでいい。そうすればこの偽りの平和の中で溜まり続けていた歪みが解放され手を加えずとも自壊する。バットマンは『ダークナイト』のラストで犯した罪を償う時がきたのである。

考察・感想

レイチェルの死から、死への欲望へ

 危機が訪れ再びバットマンが必要になる事態は、ブルースが無意識に望んでいることでもある。ブルースが生まれた時から側に仕える執事アルフレッドは、そのことを見抜きこう指摘する。

アルフレッド:あなたは生きていない。何か悪いことが再び起こるのを望んで待っているだけです

アルフレッド:違います。あなたがそうしたがっていることが怖いのです

 奥の手としてアルフレッドは燃やしたレイチェルの手紙の内容を伝えてみるも、ブルースの決意は変わらず、ブルースの唯一のブレーキ役であったアルフレッドが追い出されてしまう。このときバットマンを渇望するブルースの欲望は結構微妙なものである。彼は決してヒーローとして市民に崇められたいのではない。前作のうちからすでにハービーに象徴の地位を譲りバットマンを引退したがっていた。またハービーの罪を被り、逃走者として生きる道を選んだのもブルースである。彼は名誉や地位よりも街の平穏を願う善良な人物なのである。

 ではブルースは何故バットマントに戻りたいのだろうか。ヒントはブルースを止めるべくアルフレッドが伝えた今は無きレイチェルの手紙の存在である。彼はブルースに、レイチェルが死の直前にハービーを愛し彼と人生を歩む道を選んだことを伝える。逆に言えば、ブルースは相思相愛であったレイチェルを自分の無力が故に失ったことを後悔し、死への欲望を抱いているのだ。軟骨が失われた左足を鞭打ち再び立ち上がるのは、まさに自己破壊衝動の現れである。彼は悪を葬るために立ち上がるのではない。自らを葬るために再び表舞台に登場するのだ。

世界は終わりじゃない——ヒーローの真髄とは

ブルースの父トーマス:And why do we fall? So we can learn to pick ourselves up.

 「何故、人は落ちるのか?這い上がるためだ」。『バットマン ビギンズ』以来、繰り返されてきたこの警句が再び重要な意味を帯びる。ベインに敗れたブルースは奈落と呼ばれる砂漠の地下に運ばれ監禁される。彼はゴッサムシティの悲劇をテレビで確認し、もう一度「這い上がる」ことを決意する。しかしいくら体を鍛えても脱出することができない。『バットマン ビギンズ』でトラウマを克服し恐怖に打ち勝ったブルースは、精神的にも肉体的にも万全な状態である。だが……。

 ブルースに欠けているもの、それはアルフレッドが指摘した生への意志である。

囚人:おまえは死を恐れていない。それをおまえは強さだと思っている。だが、弱さだ

 死への欲望、それは強さではない。生への渇望が死を恐れさせ、それが這い上がる原動力になるのだ。実際、死を欲望する者が、地の底から這い上がろうとするだろうか?「何故、人は落ちるのか?」この問いの答えである「這い上がるためだ」は、生きるためだと同義である。

 レイチェル無き世界で生きることはあまりに辛い。だが両親を亡くしたときもそうだったはずだ。それでも彼が生きてこられたのは、「世界は終わりじゃない」と教えてくれた人がいたからである。

バットマン:ヒーローには誰でもなれる。少年の肩にコートをかけて、世界は終わりじゃないと教えて安心させればいいんだ

 絶望に飲み込まれても、レイチェルを失っても、世界は終わらない。世界があれば、もしかしたら生きる意味を見つけることができるかもしれないのだ。ゴッサムを核爆弾から救った世界で、ブルースはようやくバットマンの役目を終える。そしてアルフレッドが夢見た未来、「もっと違った幸せを願っていました。今もそう思っています」と願った情景を、ブルースは生き始めるのだ。

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