概要
『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』は、2004年に公開されたイギリスのファンタジー映画。監督はアルフォンソ・キュアロン。原作は1999年に発表されたイギリスの作家J・K・ローリングの同名小説。
前作は『ハリー・ポッターと秘密の部屋』、次作は『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』。ダニエル・ラドクリフ、エマ・ワトソンのほか、新たにゲイリー・オールドマンが出演している。
監獄アズカバンから脱獄した囚人シリウス・ブラックと対峙し、両親の死の真相を暴くハリー・ポッターの物語。
「ハリポッター」シリーズはほかに『ハリ・ポッターと賢者の石』『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』『ハリー・ポッターと謎のプリンス』『ハリー・ポッターと死の秘宝PART1』『ハリー・ポッターと死の秘宝PART2』『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』などがある。
登場人物・キャスト
ハリー・ポッター(ダニエル・ラドクリフ):額に傷をもつ。ヴォルデモートに両親を殺されている。
(他の出演作:『ガンズ・アキンボ』『スイス・アーミー・マン』)
ハーマイオニー・グレンジャー(エマ・ワトソン):マグル生まれの魔法使い。知識が豊富で、魔法も得意。ハリーの親友。
ロン・ウィーズリー(ルパート・グリント):赤毛。ハリーの親友。
シリウス・ブラック(ゲイリー・オールドマン):ハリーの両親の居場所をヴォルデモートに売った裏切り者。アズカバンに監禁されていたが、脱獄しハリーの命を狙っていると噂されている。
(他の出演作:『レオン』、クリストファー・ノーラン監督『バットマン ビギンズ』『ダークナイト』『ダークナイト ライジング』)
リーマス・ルーピン(デヴィッド・シューリス):闇の魔術に対する防衛術の教授。ハリーに守護霊の呪文を教える。ハリーの両親と同級生。
ピーター・ペティグリュー(ティモシー・スポール):シリウスに殺害されたとされていた人物。実はロンの飼っていたネズミに変身していた。
シビル・トレローニー(エマ・トンプソン):占い学の教授。無意識の状態で、ハリーに不吉な予言を言い渡す。
アルバス・ダンブルドア(マイケル・ガンボン):ホグワーツの校長。
セブルス・スネイプ(アラン・リックマン):スリザリンの寮長。ハリーに厳しい。
名言
シリウス:お見事!鋭い洞察力でまた間違った結論を引き出した
Sirius:Brilliant, Snape. You’ve put your keen mind to the task and come to the wrong conclusion.
ダンブルドア:じゃが、たとえ暗黒のときであっても幸せは見つけられる。明かりを灯すことを忘れない者にはな
Dumbledore:But you know happiness can be found even in the darkest of times, when one only remembers to turn on the light.
スネイプ:復讐は蜜より甘い。おまえをつかまえるのをどれだけ待ち望んだか
Professor Snape:Ah, vengeance is sweet. How I hoped I’d be the one to catch you.
ペティグリュー:君ならどうした、シリウス?
ブラック:俺なら死ぬ!友だちを裏切るくらいなら死ぬさ!
Peter Pettigrew:What would you have done, Sirius?
Sirius Black:I would have died! I would have died rather than betray my friends
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あらすじ・ネタバレ・内容
夏休みに、親戚のマージョリー・ダーズリーが、ダーズリー家を訪れ、ハリーに亡くなった両親の悪口を言う。我慢できなくなったハリーは、マージョリーを魔法で膨らませ、そのまま家を出る。夜の街で黒い犬を目撃したあと、突然目の前に現れた「夜の騎士バス」に乗り込みダイアゴン横丁に向かう。
パブ「漏れ鍋」に着くと、現れた魔法大臣コーネリウス・ファッジに、外出はダイアゴン横丁に止めるように言い渡される。マグルへの魔法の使用により退学になると思っていたハリーは、罰則がないことに驚くが、アズカバンを脱獄したシリウス・ブラックがハリーの命を狙っているというウィーズリー夫妻の会話を盗み聞きし、自分の置かれた状況を把握する。シリウスはヴォルデモートの家臣で、ハリーの両親を裏切り居場所を密告した張本人だった。
新学期、魔法生物飼育学の教授にルビウス・ハグリッド、闇の魔術に対する防衛術の教授にリーマス・ルーピンが就任する。ハグリッドの授業で誇り高きヒッポグリフのバックビークに、無礼な態度で触ろうとしたマルフォイが蹴られ怪我をする。リーマス・ルーピンの授業はユーモアにあふれ人気となる。新たに受講した占い学のシビル・トレローニー教授は、信憑性のない不吉な予言をたびたび行う。
クィディッチの試合中、ホグワーツを警護するアズカバンの守衛、吸血鬼ディメンターに襲われ箒から落ち、ニンバス2000が壊れる。この事件をきっかけに、ディメンターから身を守る守護霊の呪文を、ルーピンから教わる。
友達がホグズミード村に向かう中、保護者のサインがないハリーはホグワーツに残る。抜け出そうとするハリーを見つけた、フレッドとジョージはハリーに、ホグワーツにいる人々の居場所と抜け道がわかる忍びの地図を渡す。忍びの地図を使ってホグズミード村に訪れたハリーはパブ「三本の箒」で、シリウスが父ジェームズの親友であったこと、ハリーの名付け親であったこと、両親を裏切ったことを盗み聞きし怒りを抱く。
忍びの地図を眺めていると、シリウスに殺害されたジェームズたちの友人ピーター・ペティグリューが、ホグワーツ内を歩いているのを発見する。確認しに現場に向かうもペティグリューは見つからず、逆にスネイプに夜間に出歩いていることを詰問される。そこに現れたルーピンに助けられるが、忍びの地図はルービンに没収される。
その頃、ドラコに怪我を負わせたバックビークの裁判が行われ、処刑が決定される。ハリーたち三人は処刑執行直前にハグリッドのもとを訪れると、そこでハーマイオニーの猫クルックシャンクスに食べられたと勘違いしていた、ロンの鼠スキャバーズを発見する。三人はハグリッドのそばに居ようとするが拒まれ、処刑が始まる前に小屋から出る。
ホグワーツに帰る途中、スキャバーズを抱えたロンが黒い犬に襲われ、暴れ柳の下にある穴に引き摺り込まれる。あとを追うと叫びの館に到着し、黒い犬の正体、シリウス・ブラックが姿を現す。ハリーはシリウスに襲いかかるが、現れたルーピンに止められる。実は、裏切り者はシリウスではなく、スキャバーズに変身していたペティグリューであり、シリウスの狙いはペティグリューだった。
ペティグリューを捕まえるも、この日が満月だったためルーピンが狼に変身してしまい、ペティグリューは逃亡する。ルーピンを抑えるためシリウスは犬に変身するが、ディメンターに襲われる。ハリーの守護霊の呪文も役に立たず、シリウスはディメンターに魂を抜かれれる接吻をされそうになるが、その時、動物の形をした守護霊を呼び寄せた何者かによって救われる。
ハリーは目を覚ますと、シリウスは捕まりディメンターの接吻という刑が確定していた。ダンブルドアの助言に従い、逆転時計を使って過去に戻りバックビークを救出する。そしてディメンターに襲われた場面では、ハリーが完璧な守護霊を呼び寄せ、ディメンターを追い払う。先程の何者かは、父ではなく自分の姿だったのだ。その後、シリウスをバックビークに乗せて逃亡させる。
シリウスの無実は明かされず、狼人間であるとスネイプにばらされたルーピンは辞職し、ハリーは落ち込む。しかし、そこにシリウスからクィディッチ用の箒ファイアボルトが届き、それに乗るところで幕を閉じる。
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解説
ハリーの両親の殺害の秘密
ハリーに忍び寄る暗い影、ホグワーツに迫りくる危機。物語はついに、ヴォルデモートがハリーの両親を襲ったあの日の秘密に迫る。ハリーの母リリーと父ジェームズは、何故、ヴォルデモートに見つかり無残にも殺されたのか。
本作のキーパーソンは、題名に登場する「アズカバンの囚人」である。アズカバンとは魔法界最大の監獄のことで、生気を吸い取る吸血鬼のディメンターが看守を務める。これまでにアズカバンから脱獄できた者は存在しない。そんなアズカバンに投獄された者(=アズカバンの囚人)が、ハリーの父ジェームズの親友でありながら、ヴォルデモートに情報を売り、両親の死の直接の原因となったシリウス・ブラックである。
物語冒頭で報じられるシリウス・ブラックによるアズカバンの脱獄は、これまで穏やかな雰囲気に包まれてきたホグワーツ魔法学校の様子を一変させる。シリウス・ブラックの潜入を防ぐために、これまで安心と安全の象徴だったホグワーツの周りを、アズカバンの看守で吸血鬼のディメンターが飛び回る。暗く薄気味悪い雰囲気を匂わせたホグワーツに、絶対的な安心感はもはやない。そしてこの暗い雰囲気は、本作『アズカバンの囚人』を起点として、シリーズを追うごとに増していくことになる。
トレローニの予言——再び主人の元に馳せ参ずるであろう
これは占い学のトレローニ教授による予言によっても暗示される。
トレローニ:今宵、戻ってくる。今宵、友を裏切った殺人鬼が解き放たれ自由の身となって、罪無き者の血が流され、召し使いは再び主人の元に馳せ参ずるであろう
これまでヴォルデモートは、ハリーたちにとって恐怖の対象ではあるが、表立って活動できない非力な存在であった。『ハリ・ポッターと賢者の石』ではクィレルの頭に寄生することでなんとか生き延び、『ハリー・ポッターと秘密の部屋』では彼の過去の記憶が猛威を奮うに止まった。しかしトレローニ教授は、そんなひ弱なヴォルデモートの復活と暗黒の時代の到来を、要するに、これから展開される物語の方向性を予言する。
「主人」=ヴォルデモートの元に、「友を裏切った殺人鬼」と「召し使い」が「馳せ参」じ、「罪無き者の血が流され」る。ここでは二つの事柄が述べられていて、本作で「今宵、友を裏切った殺人鬼が解き放たれ自由の身とな」るという予言が、次回作『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』で「罪無き者の血が流され」という予言が現実と化してしまう。闇の力の集結とヴォルデモートの復活、そして「罪なき者の」死が間近に迫っている。
考察・感想
アズカバンの囚人シリウス・ブラックのカッコよさ
本作にも前作同様、初登場の魅力的なキャラクターがいる。シリウス・ブラックとリーマス・ルーピンだ。彼らはジュームズの親友で、ハリーにとってのハーマイオニーとロンのような者たちである。
ルーピンはユーモアにあふれた人物で、闇の魔術に対する防衛術としてハリーに守護霊の呪文を教えてくれる。ハリーはルーピンからジェームズとリリーの思い出を聞き、ルーピンはハリーに二人の面影を見る。ハリーは頼れる兄的存在としてルーピンを信頼していくことになる。ルーピンとは違い、シリウス・ブラックはハリーにとって父的存在になる。ハリーの名付け親でもあるシリウスは、厳つい風貌ながら、ハリーへの慈しみとジェームズへの信頼に満ちている。
ペティグリュー:君ならどうした、シリウス?
ブラック:俺なら死ぬ!友だちを裏切るくらいなら死ぬさ!
ヴォルデモートに怯えジェームズをうったペティグリューは、シリウスに「君ならどうした」と問いかけるが、彼は間髪入れずに「俺なら死ぬ!友だちを裏切るくらいなら死ぬさ!」と答える。シリウスにとって友人との信頼は、言うまでもなく自分の命よりも重い。ここにシリウスがジェームズの親友であり、ハリーから父の代わりとして慕われる理由がある。シリウスは風貌だけでなく、心意気からしてカッコいいのだ。
伏線の張ることの巧みさ
ジェームズ、シリウス、ルーピン、ペティグリューの集団と因縁のある同年代の人物がいる。それがスネイプだ。
スネイプ:復讐は蜜より甘い。おまえをつかまえるのをどれだけ待ち望んだか
これ以降の作品で明かされることだが、スネイプはジェームズに虐められていて、ハリーに対するジェームズの悪口は、殆ど全てが事実だったのだ。スネイプはシリウスと共謀するルーピンを発見し、彼らに対する積年の恨みを晴らそうとする。曰く「復讐は蜜より甘い」。
シリウス:お見事!鋭い洞察力でまた間違った結論を引き出した
ところが今回はスネイプの方が間違っていた。機知に富むシリウスは、ユーモアのある返答で挑発する。このやりとりからだけでも、スネイプとシリウスの関係が悪いことがわかるだろう。このように「ハリポッター」シリーズは、伏線のはりかたがとても上手い。一度全部観て(読んで)から再読すると、その巧さに驚かされる。のちに明かされるジェームズたちの過去を知った後に、「復讐は蜜より甘い」と「お見事!鋭い洞察力でまた間違った結論を引き出した」の場面を観ると、その意味がわかりより楽しめるだろう。