これは禁煙映画だ!——フランシス・ローレンス『コンスタンティン』

これは禁煙映画だ!——フランシス・ローレンス『コンスタンティン』

概要

 『コンスタンティン』は2005年に公開されたアメリカのファンタジーアクション映画。監督はフランシス・ローレンス、主演はキアヌ・リーブス。

 天使と悪魔、さらに悪魔払いを加えた三者の戦い。

 キアヌ・リーブスは『マトリックス レザレクションズ』で主役を演じている。

 また宗教に関係する映画はほかに『セブン』『ジョーカー』『スノーピアサー』『宇宙戦争』がおすすめである。

登場人物

ジョン・コンスタンティン(キアヌ・リーブス):悪魔祓い師。強い霊能力者でハーフ・ブリードと人間を見分けられる。誰にも信じてもらえず10代で自殺。死んだ二分の間に地獄の世界を見て、間違っていなかったことを確信する。自殺したため地獄行きは確定しているが、悪魔祓いで善行を積んでいる。ヘビースモーカー。肺癌により余命わずか。

アンジェラ・ドッドソン(レイチェル・ワイズ):刑事。妹のイザベルが霊能力者。イザベルの飛び降り自殺の真相を探るうち、コンスタンティンと行動を共にするようになる。実はイザベルよりも強力な霊力者。

イザベル・ドッドソン(レイチェル・ワイズ):アンジェラの双子の妹。強い霊能力者。入院している精神病棟で飛び降り自殺を図る。

チャズ・クレイマー(シャイア・ラブーフ):コンスタンティンの助手。霊力はないが勤勉でコンスタンティンを助ける。

パパ・ミッドナイト(ジャイモン・ハンスゥ):元エクソシスト。ハーフ・ブリードが集まるバーを経営。天界・人間界・地獄に対して中立的な立場をとる。

あらすじ

 天界・人間界・地獄は本来独立していて自由に行き来することのできない。しかし「ハーフ・ブリード」という天使や悪魔と人間の中間的存在が、人間の身なりをして人間界に潜伏していた。ハーフ・ブリードが悪事を働いたとき元居た天界か地獄に送り返すのが悪魔払いの仕事である。

 舞台はロサンゼルス。ある日、悪魔払いのコンスタンティンは、助けた少女が描いた槍の絵に異変を察知する。コンスタンティンはかつて自殺を図ったために地獄行きが確定しており、また煙草の吸いすぎによる肺癌で死期が迫っていた。コンスタンティンは寿命を伸ばしてもらうために、ハーフ・ブリードであるガブリエルに面会するも拒否される。仕方なく天界や地獄に行ける「イス」を使用するためにパパ・ミッドナイトのバーを訪れるが拒否される。

 刑事のアンジェラは双子の妹イザベラが飛び降り自殺した知らせを信じられず調査をする。防犯カメラに映ったイザベラが「コンスタンティン」と呟いていたため、彼に会いに行くが悪魔の存在を信じられず別れる。だが帰りがけに魔手(タロン)に襲われたアンジェラを助けて、互いに信頼するようになる。

 コンスタンティンに協力をしていたヘネシーはイザベルの遺体を調べていたところ、悪魔バルサザールに幻覚を見せられ殺害される。彼が残したダイニングメッセージを調べるようビーマンに頼む。イザベルの病室に「コリント書17章1節」というメッセージが残されていた。ビーマン曰く、地獄の聖書のその章にサタンの息子マモンが人間界に訪れること、そのために霊力の高い人間が必要なことが記されている。だがその途中ビーマンは殺害される。

 アンジェラは幼少期の経験から封印していただけで、実はイザベル以上の霊力の持ち主であった。ビーマンの殺害現場に残された証拠からコンスタンティンはバルサザールに辿り着き、マモン出現のために必要なものを聞き出す。だが駆けつけたアンジェラが何者かに攫われる。ジョンはミッドナイトの協力で、アンジェラがイザベルのいた病院にいることを知る。

 助手チャズの助言で病院にいた悪魔を一掃するが、アンジェラはすでにマモンに取り込まれていた。チャズとともにマモンを封じ込めるも、何者かによってチャズは殺害される。コンスタンティンの刺青の力で姿を暴くとガブリエルが現れる。ガブリエルは人間は恵まれすぎているといい、人間には試練の必要性を唱え、そのために悪魔を呼び入れていたのだった。

 神に無視されるコンスタンティンは自殺することで、コンスタンティンを気にいるサタンことルシファーがお迎えにくる。ルシファーはマモンを地獄に戻しガブリエルの翼を燃やす。コンスタンティンに借りを返すためイザベルの魂を人間界に戻し、彼を地獄に連れて行こうとするが動かせなくなる。それは彼が善行を積んだため行き先が天国になったからだった。

 彼を天国にやりたくないルシファーは、彼の体内の悪性部分を取り除き延命させ消える。挑発するガブリエルを殴り、「運命の槍」をどこかに隠すようアンジェラに託す。チャズの墓参りで愛用していたライターを置いて去ろうとすると、ハーフ・ブリードの姿のチャズが飛び立っていくのだった。

解説

天使と悪魔の生態系

 監督は『ハンガー・ゲーム』シリーズで有名なフランシス・ローレンスで、本作は彼の初監督作品にあたる。主役を演じるキアヌ・リーブスは、『マトリックス』シリーズの堂々の完結作が2003年に公開ということなので、本作が二年ぶりの映画作品である。

 本作『コンスタンティン』は、キリスト教を題材に天使と悪魔と人間の抗争を描くファンタジー。天界・人間界・地獄の三つの世界は独立で存在するのだが、天使と悪魔のなかでもハーフ・ブリードと呼ばれる存在だけは人間界に入り込むことができる。人間界で悪事を働いたハーフ・ブリードを元いた場所に送り返すのが、悪魔祓い師で主人公のコンスタンティンだ。

 ジョン・コンスタンティンはイエス・キリスト(Jesus Christ)と同じイニシャルをもちながら、聖書を暗唱していないばかりか、自分だけは天国に行きたいという利己的な考えが強く、案の定過去に自殺の経験があるという理由で地獄行きが決まっている。悪魔祓いの仕事も生まれ持った特殊能力を世間のために生かそうというような崇高なものではなくて、天国に行くための善行という何処までも利己的なものである。

 ということで基本的には、救いようのない利己的なコンスタンティンがイエス・キリストばりの自己犠牲を働いて、天国に行けることになるというのが大まかなプロットだ。そのためドッドソンという名の双子や助手のジョンと協力してくれるのだが、こちらよりむしろ面白くみえるのは天使と悪魔の生態系のほうである。

 ミッドナイトが経営するバーは、ハーフ・ブリードだけが集まれるのだが、そこでは天使と悪魔が共存しているのだ。そもそも天使と悪魔が戦うシーンはない。敵対するにしても人間を介してなのである。加えて天使のなかでも上位に位置するはずのガブリエルが、ルシファーの息子マモンを人間界に呼び出すために悪魔に協力していた。天使といえど心まで清いわけではない。逆にいえば悪魔であろうと心が汚いわけではないのだ。思えば地獄行きの原因である自殺は、殆どコンスタンティンによる過失ではなく、少なくとも情状酌量の余地ありの案件だった。だけれでも神は彼の言い分を聞き入れることさえしない。反対に悪魔の頭領ルシファーは、私利私欲とはいえ結果的にコンスタンティンを助けてくれる。それどころか体の中まですっかり綺麗にしてくれるのだ。全体的にチープな展開ではあるのだが、意外にも天使と悪魔に対する先入観を転覆するという大きな裏テーマがあるのかもしれない。

考察・感想

天使と悪魔に騙されるな!!これは禁煙映画だ

 とはいえ天使と悪魔だとか、善行と悪行だとかに気を取られすぎてはいけない。この映画が最も前面に押しだしている主張は「喫煙は危険」ということであり、紛れもない禁煙のプロパガンダ映画だからである。

 コンスタンティンは霊力が強くハーフ・ブリードである悪魔を退治できるほどの超人的な力を持っていた。その力は余りに強く、多くの悪魔を地獄に送り返したために悪魔の頭領ルシファーが、直々にお迎えに来るほどなのだ。そんな彼に死期が迫る。だがそれは悪魔や天使との戦いが原因ではない。天使のハーフ・ブリードであるガブリエルは、延命してほしいとせまるコンスタンティンに無情にもこう告げる。

死ぬのは重度の喫煙による自業自得だ

ガブリエルのセリフ

 衝撃である。天使と悪魔との戦いというここまで壮大な背景がありながら、コンスタンティンの危機の原因は余りにちっぽけだ。しかしちっぽけであってもそれを取り除くことができない。逆説的にコンスタンティンにとって禁煙の問題は、天使や悪魔の問題よりも深刻になっている。死の宣告を打ち消すように、コンスタンティンは煙草を吸いまくる。喀血しても、体が悲鳴を上げても吸いまくる。あろうことか、死のその瞬間も吸おうとする。どこまでも、なによりも、煙草が重要なのだ。

 だが悪魔ルシファーのおかげでコンステンィンの体内は綺麗になり、肺癌は治り寿命は伸びる。殺害されてしまった助手のチャズの墓に供えるのは、愛用していたライターである。ライターをここに置くのは、チャズへの友情の証であり、チャズの分まで生きるよという宣言でもある。つまり肺癌にかかるリスクがある煙草を吸わないという宣言なのだ。

 どれほど強い力を持っていたとしても、煙草の前では無意味だ。煙草は肺癌を誘発し、天使であっても直すことができない。煙草で死ぬのは自業自得だ。だから言えることは一つしかない。生きたければ、禁煙せよ。このことを伝えるためだけにこの映画は作られている。

P.S. 最初見たときは何を訴える映画か全くわからなかった。本作は紛うことなき禁煙映画である、と教えてくれたのは友人のFTである。この場を借りてFTに感謝を述べておく。

映画カテゴリの最新記事