概要
『セッション』は、2014年に公開されたアメリカのヒューマンドラマ映画。原題は”Whiplash“。監督・脚本はデイミアン・チャゼル。出演はマイルズ・テラー、J・K・シモンズ。
アカデミー賞は作品賞を含む5部門にノミネート、助演男優賞、編集賞、録音賞で受賞した。
ジャズドラマーの音大生と鬼教師との罵詈雑言がひしめく奇妙な関係を描く物語。
デイミアン・チャゼル監督はほかに『ラ・ラ・ランド』がある。
狂気を主題にした映画はほかに『ダークナイト』『タクシードライバー』『ジョーカー』『インフル病みのペトロフ家』などがある。
登場人物・キャスト
アンドリュー・ニーマン(マイルズ・テラー):本作の主人公。シェイファー音楽院の生徒であり、ジャズドラマー。バディ・リッチのような偉大なミュージシャンを目指している。
(他の出演作:『トップガン マーヴェリック』)
テレンス・フレッチャー(J・K・シモンズ):シェイファー音楽院の教師。「第二のチャーリー・パーカー」を生み出すべく、狂気に満ちた厳しい指導法で授業を展開している。
(他の出演作:『マイレージ、マイライフ』『ラ・ラ・ランド』『ジャスティス・リーグ』『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』)
ニコル(メリッサ・ブノワ):映画館のバイト。後にニーマンの恋人となるが一方的にふられる。
ジム・ニーマン(ポール・ライザー):ニーマンの父。教師でありながら小説家を目指している。
カール(ネイト・ラング):シェイファー音楽院の生徒であり、フレッチャー率いるバンドのメイン・ドラマー。メインをかけてニーマンと競う。
ライアン(オースティン・ストウェル):シェイファー音楽院の生徒であり、ジャズドラマー。フレッチャーのバンドに誘われて、ニーマン、カールと競い合う。
名言
ニーマン:あなたはやり過ぎて、次のチャーリーを挫折させたのでは?
フレッチャー:いいや、次のチャーリーは何があろうと挫折しない。
ニーマン:きっとね。
フレッチャー:正直にいうと、次のチャーリーを育てられなかったんだ。
あらすじ・ネタバレ・内容
19歳のアンドリュー・ニーマンは、名門シェイファー音楽院で有名なジャズ・ドラマーになるべく日々練習を重ねていた。あるとき彼が一人で練習しているときに、伝説の教師フレッチャーが訪ねてくる。曰く、自分のバンドメンバーを探しているとのこと。最初あった日にはスカウトされることはなかったが、後日、初等クラスからフレッチャーに引き抜かれることになる。自信がついたニーマンは、映画館でバイトをしているニコルをデートに誘う。
フレッチャーのバンドに入ったニーマンであったが、初日からそのクラスのレベルの高さに度肝を抜かれる。自信のなくなるニーマンであったが、フレッチャーは優しく接したりして励ます。少し自信を取り戻したニーマンであったが、全くうまくいかないニーマンに対してフレッチャーは椅子を投げつける。さらにテンポのわからないニーマンに対してビンタを喰らわせ、「わざと私のバンドの邪魔をするとブチのめすぞ」と脅す。そしてニーマンに暴言を吐きまくったあと、「悔しい」と大声で叫ばせる。その悔しさと恥ずかしさからニーマンは手から出血するほど練習に励むようになる。
ニーマンが参加して初となる大会の日になったが、ドラム主奏者であるタナーの楽譜をニーマンは無くしてしまう。タナーは楽譜を暗譜していなかったため、暗譜していたニーマンが名乗り出てステージに立つことになる。演奏はうまくいき、フレッチャーの楽団は優勝を勝ち取ることができた。その後、ドラムの主奏者がタナーからニーマンに変更され。、ニーマンは周りの目を気にせずに喜んだ。
しかしフレッチャーは、今度はドラム奏者コノリーを新たにスカウトして連れてくる。焦って気が狂ったニーマンは、順調だったニコルとの関係を「音楽に没頭するため邪魔になった」と伝え、断ち切ることになる。
それからは毎日狂ったように練習を重ねた。ある日のレッスンの前にフレッチャーから教え子のショーン・ケイシーの話を聞かされる。一流のジャズ・トランペット奏者となっていたが、今朝車の事故で亡くなったのだと、涙を流しながら皆に伝える。そのあとすぐにレッスンが開始するが、フレッチャーはドラムに全く納得がいかない。怒り心頭のフレッチャーはドラムをニーマン、コノリ、タナーの三人で取っ替え引っ替えさせて叩き続けさせる。三人は手から血を流しながら必死にドラムを叩き続ける。その結果フレッチャーは主奏者をニーマンに選ぶ。
翌日が大会だったのだが、バスがパンクし予定の時間に間に合わなくなる。レンタカーを借りて会場に向かうことになるが、急ぎのあまりトラックと衝突して交通事故を起こしてしまう。なんとか車から這い出してきて、血だらけのまま会場に向かうと、なんとか開演時間には間に合うことに。そのままドラムを叩こうとするが、怪我の影響でうまく叩けず、スティックを落としてしまう。フレッチャーはニーマンに「終わりだ」と告げる。ニーマンもついに溜まっていたものが頂点に達し、フレッチャーに掴みかかり、暴れ、退場させられてしまう。
ニーマンは学校を退学させられることとなった。そんなニーマンのもとに弁護士がやってきて、何か問題はなかったかと問い詰める。そこでショーン・ケイシーは鬱病を発症しており、首をつって自殺していたことを知らされる。ためらっていたニーマンであったが、決心してフレッチャーについて告発することになる。
その後ドラムセットも片付け音楽から遠ざかっていたニーマンであったが、あるジャズライブのチラシにフレッチャーの名前があるのを見かける。会場へ足を運ぶとピアノを弾くフレッチャーの姿があった。ニーマンに気づいたフレッチャーはライブ後声をかけ、二人で会話することになる。フレッチャーは内部告発により音楽院を辞めさせられたこと、現在はプロのバンドの指揮をしていることなどを告げる。
別れ際、フレッチャーはニーマンにそのバンドのドラムを担当しないかとオファーを出す。曲目は音がいくイン時代によく練習していた「キャラバン」や「ウィップラッシュ」で、それに慣れている人が欲しいという。ニーマンはコノリーやタナーの名前を出すが、彼はニーマンへの刺激剤であったと告げる。
承諾したニーマンは練習に励み、当日に会場に向かう。演奏の準備をして、ステージに立つと、ドラムの前にいるニーマンにフレッチャーが近づいてくる。そして「私をナメるなよ。密告はお前だな」といい、ステージ中央に向かう。フレッチャーが曲名を発表すると「アップスウィンギン」で、ニーマンが聞かされていた曲とは全く異なっていた。ニーマンも頑張るが当然曲に合わせることができない。曲が終わると、フレッチャーは再度ニーマンに近づいてきて「お前は無能だ」と吐き捨てる。
フレッチャーの復讐を受けたニーマンは、とぼとぼとステージから立ち去っていく。ステージ袖では父親が待っており、よくやったと慰め、ニーマンと一緒に家に帰ろうとする。しかし、何を思ったか二ーマンはステージへと戻り、いきなり「キャラバン」を演奏し始める。それに合わせて周りも演奏を始めるが、もちろんフレッチャーの予定にはなく、「クソったれ」と吐き捨てながら渋々指揮することになる。しかし徐々にフレッチャーがニーマンのドラムを認め、演奏を助けることになる。最後、ニーマンは曲が終わってもドラムを叩き続け、フレッチャーと目を合わせ微笑み合う。その後、ニーマンのドラムのシーン数秒あり映画が終わる。
解説
過去の経験をもとにした狂気の映画
この作品は監督であるデイミアン・チャベルが自身のトラウマ体験を乗り越えるために作った作品だと言われている。実は監督自身が高校生の頃ジャズドラムに傾倒していたが、鬼コーチのトラウマレベルのスパルタ指導により挫折、音楽の道を断念する。音楽をやめたあともバンド時代の悪夢にうなされる日々が続いたという。その苦しい経験を映像化したのが『セッション』なのだ。
『セッション』の原題はWhiplash、意味は「むち打ち(症)」である。いくつかの意味がこめられているが、わかりやすいのがジャズ曲の題名(ウィップラッシュ)である。実際、フレッチャーのクラスで学生達が演奏するのがこの曲で、1973年にハンク・レヴィが作曲したジャズバンドの名曲である。他にドラマーは職業病として鞭打ちになりやすく、その意味も反映しているのではないかと考えられている。
みると分かるが、とにかくフレッチャーの罵詈雑言がすごい。字幕をみても、なにかとんでもないことを叫んでいるのが分かる。とにかくf***の嵐なのだ。ギネスをとったら、この単語を聴く回数は映画史上過去最高なのではないかというぐらいである。途中からはニーマンも暴言を吐きまくるので、英語が分かる人はさぞ楽しいだろうなと思ってしまう(しかしどうやら日本語字幕版に年齢制限はかかっていない様子である)。
圧巻のラスト9分間
この映画のラストはフレッチャーやニーマンによる「キャラバン」の演奏だ。ニーマンの独奏などもあり、カメラもほとんど彼ら二人で占められる。彼らの表情(特にフレッチャー)に注目すると、その9分間の間にまったく異なった表情になっていくのは非常に面白いところだ。
カメラワークも圧巻である。ニーマンからフレッチャーへ、フレッチャーからニーマンへ交互にカメラが行き来するシーンがあるが、フレッチャーのシーンが極端に短かったり、音に対してカメラが遅れたりと不規則である。まるで、あたかも観客が演奏に引き込まれてあっちむいたりこっちむいたりしているかのようなのだ。素晴らしい。
ジャズの名曲・偉人達
「偉人たちの演奏を聴け」とフレッチャーはニーマンに言っていたが、ジャズ素人にはそもそもジャズの名曲や偉人が全く分からない。作中に登場する偉人・曲に関しては多少知識を獲得しておこう。
ジャズの歴史についてであるが、大まかに四つの時期に分けられる。誕生期(1900〜1920)、スイング時代(1920〜1940)、ビ・バップ〜ハード・バップ時代(1940〜1960)、現代ジャズの時代である。スイング・ジャズというのは、自然と体が踊り出してしまうような陽気なジャズのことで、1929年の「世界大恐慌」などによる暗い時代を背景にして誕生した。そのようなジャズがマンネリ化すると、新たなジャズが志向されるようになった。それがビ・バップである。特徴は「スイングにないコード進行に基づいたアドリブ中心の自由な演奏」である。さらにビ・バップがマンネリ化してきたことを背景に、それを洗練させたハード・バップが来て、そして今度はハード・バップを乗り越えようとした動きの中で現代ジャズが誕生する。これが現代まで続いてるのである。
さて、いくつか紹介していこう。作中で「サッチモ」という言葉が登場したが、ルイ・アームストロング(1901−71)の愛称である。ジャズの始まりは1900年ごろのニューオリンズで誕生したと言われているが、そのニューオーリンズから誕生した最大のミュージシャンがアームストロングである。
他に登場する偉人がチャーリ・パーカー、バディ・リッチ、ジョー・ジョーンズである。チャーリー・パーカーが歴史的には最も重要で、彼は1920年生まれのジャズ・ミュージシャン。アルトサックス奏者、作曲家、編曲家で「ビ・バップ(モダン・ジャズ)」の創生者である。また、作中にバードという呼称が登場するが、それはチャーリー・パーカーの愛称である。
そのチャーリ・パーカーにシンバルを投げつけたのがジョー・ジョーンズである。スイング時代から活躍したジャズドラマーで、いつも笑顔なのが特徴のプレイヤーであった。ちなもに作中ではミスに怒って投げつけたとされるが、これは諸説ありらしい。
バディ・リッチも同時期の名ジャズ・ドラマーである。ビ・バップの時代に活躍した。ニーマンが尊敬していた人物であり、作中に登場する、’If you don’t have ability, you wind up playing in a rock band’(無能なやつはロックをやれ)、という言葉はバディ・リッチの言葉である。
原題でもある「ウィップラッシュ(WHIPLASH)は、1973年にハンク・レヴィが作曲した比較的若い曲である。目まぐるしくリズムが変化し、ダイナミックでノリの良いアンサンブルが魅力の曲である。
最後に演奏される「キャラバン」(CARAVAN)はスイング時代の名曲である。1935年にエリントン楽団のファン・ティゾールが作曲し、デューク・エリントン楽団(超有名)が演奏して有名になった。
また、フレッチャーの元生徒で交通事故によって命を落としてしまったトランペット奏者「ショーン・ケイシー」であるが、ショーンの配属されていたバンドが字幕で「ウィントン・マルサリスのバンドのトランペット奏者」と表示される。(英語のセリフでは「リンカーン・センターの第三トランペット奏者」でこれの意訳である)ウィントン・マルサリスは現代に置いて最も著名なジャズミュージシャンの1人なので、ショーンの実力がそれで分かるわけである。
他にもジャズに詳しい人なら無限に語れるぐらいにジャズ要素が満載だとのこと。知り合いにジャズマニアがいたら色々と質問してみるのが良いだろう。
考察・感想(ラストシーン)
怒りは何を生んだのか
最後のシーンをもう一度振り返ってみよう。フレッチャーに誘われてニーマンはフレッチャーのバンドのドラマーとなるが、これはフレッチャーの策略であった。フレッチャーはニーマンに嘘の一曲目を伝えたことによって、ニーマンが全く演奏できず恥をかく。ニーマンもはめられたことを悟り、一曲目の終了後裏に一人退場するのだが、二曲目が始まる前に戻ってきて、フレッチャーが合図する前に突然「キャラバン」を弾き始める。怒りと困惑の表情を見せるフレッチャーであるが、場を持たせるためにニーマンに合わせる。演奏中に徐々にフレッチャーの態度も変わってきて、しっかりと指揮をとりはじめ、最後にはフレッチャーとニーマンが目を合わせて微笑み合う。最後は和解した二人の関係性についてまず考察してみよう。
いくつか面白いことがある。まず重要なのは、ニーマンもフレッチャーもものすごく才能に溢れた人材ではない、ということである。つまり「中の上」とか「上の下」とかそういった人物達なのである。ニーマンはわかりやすいだろう。音楽一家であるわけでもなく、なんとなく一流だからという理由でシェイファー音楽院に入学している。もちろんうまいのだろうが、天才ではない。
フレッチャーはどうか。楽団は賞をとっているし、教師としてのそれなりの実力を兼ね備えているようにも見える。しかしそもそもニーマンを入れている時点でそこまで才能を見極められる人物ではない。どうやらうまくいったのはケイシー一人だけで、その人も鬱で自殺してしまう。今風にいえば、彼はただの体罰教師である。
ニーマン:あなたはやり過ぎて、次のチャーリーを挫折させたのでは?
フレッチャー:いいや、次のチャーリーは何があろうと挫折しない。
ニーマン:きっとね。
フレッチャー:正直にいうと、次のチャーリーを育てられなかったんだ。
この発言が物語ってるのは、教育の才能がないということではない。フレッチャーに足りてないのは「才能を見極める能力」なのだ。そもそも才能ある人は挫折をしないのである。
さて天才ではない二人の間にある関係性はどのようなものだろうか。両者の間にあるのはよくある師弟関係ではない。ラストシーンまで持ち越される感情は尊敬や信頼という崇高なものではない。怒り・憎悪だ。ニーマンはフレッチャーによって精神を傷つけられ、フレッチャーはニーマンによる内部告発で教師の職を追われている。挫折したもの同士最後には打ち解け合うのかと思いきや、フレッチャーががニーマンに復讐する。あるのは憤怒なのだ。面白いのはここからだ。服従するのかと思いきや、ニーマンもフレッチャーに仕返しをする。そこにあるのは憤怒だ。お互いの関係の間にある感情は憤怒や憎悪しかない。
しかし、お互いが憤怒を持ちあうことで主従のない対等な関係が生まれている。まさにここで本当のセッションが起こるのだ。フレッチャーはニーマンを助け、そして演奏をやり遂げることに成功する。一体何がおこったのだろうか。
良い関係とは何だろうか。師弟関係であれば尊敬が必要であり、友達関係であれば信頼や友情が必要だと一般的には言われている。しかし、それを持っていればうまくいくということは決してない。良い関係と成功とは必然的な関係ではないのだ。そこには不条理がある。
つまり怒りは悪い感情なのかもしれないが、成功に導くということは大いにありうるのだ。ニーマンとフレッチャーは互いに尊敬していない。むしろ憎しみあい、怒りでワナワナ震えている。しかし、なぜかその感情が時として良い結果に作用することがある。どのような関係が最も良い関係かなど誰もよく分からない。尊敬が良い場合もあるし、怒りの方がうまくいく場合もある。セッションが起こるのは、何か不思議なことが偶然にも起こるからなのだ。
目を合わせるということ
ラストシーンでは怒りの感情が徐々に調和していくのが見て取れる。最後はニーマンとフレッチャーが互いに見つめ合い、微笑み合うことになる。実はこの「目を合わせるということ」には伏線がある。
ニコル:映画館で会うといつも下向いてる。
ニーマン:僕?父さんに言われる”目を合わせない”って
彼は目を合わせたがらない。なぜか。言及されてないが性格的なところが背景にあると考えられる。
ニーマン:レーズンいらない。
ジム:なぜ言わない。
ニーマン:避けて食べるから。
ジム:変なやつだ。
目を合わせるというのはなかなか勇気のいることだ。そもそも動物同士で目を合わせるということは威嚇である場合が多い。だから相手を威圧したい場合は思いっきり睨みつける。威圧というのは権威者がよくするものである。『セッション』だとフレッチャーがまさにそれだ。でもそんな奴と関わらなくても上手く生きていける。レーズンの話はそれを象徴している。そんな人間は避けてしまえばいいのだ。ある意味処世術にちょっとだけ長けていた生き方、それがニーマンの生き方でもあるだろう。
ラストシーンでそれが大転回をとげる。ニーマンとフレッチャーが互いに見つめ合う。見つめ合うというよりも睨み合う。そして目を合わせて笑うのである。さきほど目を合わせるのは威嚇行為だといった。これは両者の力関係が不均衡だと一方的なものとなる。片方はもはや目を合わせない。しかし釣り合うとどうだろう。それが威嚇であっても、そこに怒りの感情が渦巻いていても目を離す必要はない。そして怒りの感情が静まってきたときに別の感情が生じる。お互い何かが打ち解け合う。解け合って何かが伝わる。そこに笑いが登場する。ラストの目を合わせるシーンは、そういった複雑な感情の変転をうまく表現しているように思える。
拍手はもらえたのか
ラストは微笑んだあと、ニーマンがドラムを叩いて話が終わる。おそらくそこで演奏も終わったであろう。しかし観客の反応までは描かれていない。演奏が終わったら何らかの反応をしなければならない。観客はあの演奏に拍手を与えたのであろうか。
一つ目の演奏の終わりの拍手はまばらであった。拍手喝采では全くなく、観客もそこまで感動しなかったと言うことだろう。実際、ニーマンはドラムをうまく叩けていなかったので、演奏自体も失敗だったとみて間違いない。
二曲目「キャラバン」はどうだったのだろうか。全体を俯瞰的にみればかなり奇妙な演奏だったはずだ。指揮者を無視してドラムが勝手に演奏を始めるし、終わったかと思いきやドラムの独奏が続く。明らかに予想外の演奏で困惑した人も多かっただろう。しかし、ニーマンとフレッチャーにとっては良い演奏だったのではないか。フレッチャーも途中からニーマンのシンバルを立て直したりと演奏がうまくいくように手伝ったり、頷いたりしている。彼がニーマンの演奏を美しいと思っているのは間違いない。しかし賞はとれないだろう。他の楽団からみても、勝手に指揮者とバトルを始めたドラマーを引き抜きたいと思うだろうか。
おそらく拍手は観客、つまり映画を見ている私たちに委ねられているのだろう。演奏を聞いていたのはホールにいた人たちではなくて私たちだ。カメラワークもそのような視聴者目線のカメラワークが意識的に使われていたところもある。もちろんどちらの評価を下しても良い。しかし、もし感動したならば観客と同じように拍手を送ったり、あるいは映画館だったらスタンディングオベーションを反射的にしてしまう、仮にそうなったら面白いだろうなという期待も込めて監督が意図的にそうしたのではないか、という夢想がついつい膨らんでしまう面白い終わり方であった。
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評価(批評・評論・レビュー)
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ーー 超映画批評(前田有一)
加筆中(おもしろい評論、または、載せてほしい論考などがありましたら、コメント欄にてお伝えください)
動画配信状況
『セッション』配信状況比較
配信サービス | 配信状況 | 無料期間 | 月額料金 |
---|---|---|---|
U-NEXT | ◎ | 31日間 | 2,189円 |
Amazon Prime | ◎ | 30日間 | 500円 |
TSUTAYA DISCAS | ◎ | 30日間 | 2,052円 |
Hulu | ○ | 2週間 | 1,026円 |
dTV | ○ | 31日間 | 550円 |
FOD | ✖️ | ✖️ | 976円 |
ABEMAプレミアム | ✖️ | 2週間 | 960円 |
Netflix | ✖️ | ✖️ | 1,440円 |
クランクイン!ビデオ | ✖️ | 14日間 | 990円 |
mieru-TV | ✖️ | 1ヶ月間 | 990円 |
dアニメストア | ✖️ | 31日間 | 550円 |
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