映画音楽の歴史ーー『すばらしき映画音楽たち』からーー

映画音楽の歴史ーー『すばらしき映画音楽たち』からーー

 『すばらしき映画音楽たち』(2017年)を見た。私の大好きなハンス・ジマーがいた。その他諸々の映画音楽の作曲家の偉人達も紹介されていた。忘れてしまうのは勿体無いと思ったので、ここにその内容を書き留めておきたい。映画音楽の歴史については、より詳細な解説本があるだろう。読んだら加筆しようと思う。

*「映画音楽史」といっても、例えば日本の映画音楽はここには含まれていない。もっぱら英語圏の映画に限定されている。

またハリウッド映画史に関しての記事もあるので、興味がある方はこちらからお読みいただきたい。

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アメリカの映画音楽の歴史

 無声映画時代にも映画音楽は存在し、その頃はオルガンが主流だった。用途としては映画に抑揚をつけることだけでなく、映写機の音を誤魔化すために使用されたりもしていた。

 1933年の「キング・コング」(マックス・スタイナー)が一つの転換点だった。映画音楽にオーケストラが登場したのである。それによって単なる作り物であった「キング・コング」が生き生きとしだした。オーケストラの効果でキング・コングが恐ろしくみえるようになったのである。

 アルフレッド・ニューマンも新しいオーケストラ音楽を映画に持ち込んだ。急にテンポを上げたり落としたりするのである。これが映画音楽に新しい息吹を吹き込んだ。より自然な形で「ハリウッドサウンドの原型」が登場したのである。

 さらに映画が発展していく中で、映画音楽も発展していった。ジャズを取り入れるなどよりモダンになっていったのである(ex. 「欲望という名の電車」)。映画音楽にジャズが組み込まれた。他にも、ジョン・バリーはバンド出身で映画音楽にバンドを持ち込んだ。例えば「007」のメインテーマがそれの代表例である。

1950〜60年代は黄金期である。ラジオ出身のバーナード・ハーマンなどが活躍した。

70年代初頭には映画界に変革が起きる。その一つがオーケストラからの解放である。原始的音楽、フォーク、シンプルな音楽が好まれるようになった。ジェリー・ゴールドスミスは「猿の惑星」で金属のボウルをゴムボールで叩いて映画音楽にした。「映画音楽をなんでもありにした」のである。

ジョン・ウィリアムズもこの頃から活躍しており、「ジョーズ」では2音だけでサメが迫ってくる様を表現した。その後「スター・ウォーズ」の音楽を作り、オーケストラの傑作と評されるまでになった。「70年代は間違いなくウィリアムズの時代である」(デヴィット・ニューマン)。

 さらに映画制作方法も変わる中で映画音楽も多様に変化していく。1970年代後半にはシンセーサイダーが登場する。世の中ではパンクロックがブームになり、枠に当てはまらない新しい音楽の発掘も始まった。この頃ダニー・エルフマンなどが現代音楽を取り入れながら活躍した。

 ここ5〜6年(本ドキュメンタリー映画が2017年のものなので、2010年代を指す)では、映画監督が積極的に映画音楽の専門家でない人を起用したりしている。電子音楽系のミュージシャン(ex. トレント・レズナー、アッティカス・ロス)も映画音楽に進出するようになり、さらに映画音楽が多様になっている。

名だたる映画音楽の作曲家達

 それでは「すばらしき映画音楽たち」で紹介されていた映画音楽家を紹介していこうと思う。それぞれ傑作だと思う作品は異なると思うので、ここでは基本的に本ドキュメンタリーで言及された作品についてのみ取り上げようと思う。

マックス・スタイナー(1888〜1971)

「風と共に去りぬ」「カサブランカ」などの映画音楽を担当している。

「キング・コング」(1933年)では、オーケストラ音楽を映画音楽に活用し、映画音楽史に新たな歴史を刻み込んだ。

アルフレッド・ニューマン(1901〜1970)

「我が谷は緑なりき」「イブの総て」などの映画音楽を担当する。

「西武開拓史」(1962年)では、特徴的な金管楽器と木管楽器を使用した。また、フォックスのロゴが登場するシーンでバックで流れるファンファーレも彼が作曲したものである。

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アレックス・ノース(1910〜1991)

もともとバレエ音楽などを手掛けていたが、欲望という名の電車(1951年)で映画音楽に挑戦し、見事成功した。

バーナード・ハーマン(1911〜1975)

「市民ケーン」「タクシードライバー」「北北西に進路を取れ」などの有名作品の映画音楽を担当。

とりわけ「めまい」(1958年)や「サイコ」(1960年)の映画音楽で有名。

エンニオ・モリコーネ(1928〜2020)

モリコーネは楽器やサウンドが斬新なわけじゃない。ただメロディーが痺れるんだ。(クリストフ・ベック)

「ミッション」「ヘイトフル・エイト」などの映画音楽を担当。

「続・夕日のガンマン」(1966年)のギター音が素晴らしいテーマ曲や同作の「ゴールド・エクスタシー」などが有名である。

ジェリー・ゴールドスミス(1929〜2004)

彼を最高の作曲家というミュージシャンも多い。(ランディ・ニューマン)

「スター・トレック」「エイリアン」「オーメン」などの映画音楽を担当。

「猿の惑星」(1968年)や「チャイナタウン」(1974年)で今までの映画音楽にない斬新な映画音楽を披露した。

ジョン・ウィリアムス(1932〜)

映画音楽のルネッサンスだと思ったね。(スティーブン・スピルバーグ)

おそらく映画音楽史上最も名を馳せた映画音楽の偉人である。彼が手がけた映画音楽を見るごとに、知っている作品の多さに驚かされる。

「華麗なる週末」(1969年)で、ジョン・ウィリアムズ名義として初登場する。超有名になったのは「ジョーズ」(1975年)からである。この作品でアカデミー作曲賞とグラミー賞を受賞した。

そして「スーパーマン」(1978年)「E.T.」(1982年)「スター・ウォーズ」(1983年)「インディ・ジョーンズ」(1984年)「ジュラシック・パーク」(1993年)「ハリー・ポッター」(2001年)なども担当し、数多くの映画音楽を生み出した。ジョージ・ルーカスおよびスティーブン・スピルバーグ監督作品の音楽を手がけることが多い。

また、元々ジャズピアニストであり「ウエスト・サイド物語」「アパートの鍵貸します」では、彼がピアノを弾いている。

ジョン・バリー(1933〜2011)

「007/ドクター・ノオ」(1962年)の映画音楽を担当。

ハワード・ショア(1946〜)

「ロード・オブ・ザ・リング」(2001年)「ホビット 思いがけない冒険」(2012年)などの映画音楽を担当している。

「ロード・オブ・ザ・リング」では三部作全てでグラミー賞を受賞。モチーフを同じにし、シンプルなリズムをいろんなイメージでアレンジするという手法を用いて、誰もがいつのまにか馴染んでしまう音楽を得意とした。これはベートーベンが得意とした手法である。

ダニー・エルフマン(1953〜)

オインゴ・ボインゴの元リーダー。ティム・バートンがオインゴ・ボインゴのファンであったことから、彼の映画「ピーウィーの大冒険」(1985年)の音楽担当に抜擢され、有名になる。他に「シザーハンズ」(1990年)「バットマン」(1989年)などの映画音楽を担当。

「バットマン」では、ジョン・ウィリアムス風の音楽にならないよう工夫したとのことである。

ジェームズ・ホーナー(1953〜2015)

「タイタニック」(1997年)の映画音楽を担当。

「タイタニック」ではドーソン(レオナルド・ディカプリオ)がブケイター(ケイト・ウィンスレット)をスケッチするシーンがあるが、そのシーンの音楽はホーナーが試作の音楽として送ってきたものであり「スケッチ」と書いてあったので、ジェームズ・キャメロンがスケッチシーンの音楽と勘違いして当てはめて聞いたらピッタリだったからそのまま使ったという逸話があり、そのことを『すばらしき映画音楽たち』でジェームス・キャメロンが語っている。

トーマス・ニューマン(1955〜)

「ショーシャンクの空に」「アメリカン・ビューティー」(冒頭マリンバ)「ファインディング・ニモ」(ピアノ映画音楽の傑作)「007/スカイフォール」などの映画音楽を担当。父はアルフレッド・ニューマン。

ハンス・ジマー(1957〜)

彼は革命児だ。弦楽器をギターのように使ってリズムを刻ませた。ものすごく面白い発想だ。史上初の試みだと思う。(ジョン・デブニー)

現在も精力的に映画音楽を作り続けている生ける「伝説」である。とにかく壮厳なオーケストラと電子音楽の融合で観客を魅了する。

1994年の「ライオン・キング」の音楽でアカデミー作曲賞を受賞するが、本ドキュメンタリーで取り上げられた最初の作品は2000年の「グラディエーター」である。ラッセル・クロウ主演のこの作品でリサ・ジェラルドとタッグを組み、世界にその名を轟かせた(本作で Now we are free を謳い上げたリサ・ジェラルドは、日本では大河ドラマ「龍馬伝」のオープニングの声でも知られている)。

 さらに彼を有名にさせたのは「パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち」(2003年)である。引用の「史上初の試み」というのはこの映画を指す。「パイレーツ」のテーマソングはもはや誰もが一度は聞いたことあるぐらい有名だ。

 またクリストファー・ノーランとタッグを組むことが多いことでも知られている。2000年以降のノーラン作品の音楽はだいたいハンス・ジマーである。本ドキュメンタリーでは「ダークナイト」(2008年)と「インセプション」(2010年)が取り上げられている。「インセプション」の結末では、壮大なオーケストラが流れた後静かにになり。駒が回り続けるという謎を残したまま幕を閉じる。ここにもハンス・ジマーの魅力が存分に披露されている。

『インセプション』のラストシーン。 (C) 2010 Warner Bros. Entertainment Inc.

 

ちなみに『ラジオスターの悲劇』という、確かにどこかで聞いたことのある曲があるのだが、そのバンド「バグルス The Buggles」のレコーディングにも参加しており、その姿を見ることができる。

トム・ホルケンボルフ(1967〜)

「マッドマックス/怒りのデス・ロード」(2015年)の音楽を担当。連続的に打たれ続ける打楽器が特徴。

トレント・レズナー(1965〜)、アッティカス・ロス(1968〜)

「ソーシャル・ネットワーク」(2010年)の映画音楽を担当。二人は本作でアカデミー賞作曲賞を受賞し、電子音楽などの最先端技術を取り入れた新しい映画音楽の形を切り拓いた。

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スティーブ・ジャブロンスキー(1970〜)

「トランスフォーマー」シリーズの音楽を担当。

ブライアン・タイラー(1972〜)

「ワイルド・スピード」シリーズの音楽を担当。

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