『トランスフォーマー』考察|敵は近くに潜んでいる|あらすじネタバレ感想・伝えたいこと解説|マイケル・ベイ

『トランスフォーマー』考察|敵は近くに潜んでいる|あらすじネタバレ感想・伝えたいこと解説|マイケル・ベイ

概要

 『トランスフォーマー』は、2007年に公開されたアメリカのSFアクション映画。監督はマイケル・ベイ。製作総指揮はスティーヴン・スピルバーグ。原作は同名の玩具シリーズ。映画「トランスフォーマー」シリーズの第1作目。

 アカデミー賞で音響編集賞、録音賞、視覚効果賞の3部門にノミネートされた。

 地球外生命体のオートボットたちと共に、敵のディセプティコンに立ち向かう物語。

 他に映画は『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』、『つぐない』、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』、『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』、『エターナル・サンシャイン』などがある。

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登場人物・キャスト

サミュエル・ジェームズ・“サム”・ウィトウィッキー(シャイア・ラブーフ):普通の高校生。良い成績を取ったため、父のロンからシボレー・カマロの74年型を貰う。
(他の出演作:『コンスタンティン』)

ミカエラ・ベインズ(ミーガン・フォックス):サムのクラスメート。自分の身代わりになって父が逮捕されている。父は車泥棒を稼業にしていた。

オプティマス・プライム(ピーター・カレン):オートボットの総司令官。仲間から信頼されている。自由の権利を誰もが持っていると主張し、人類を守ろうとする。

メガトロン(ヒューゴ・ウィーヴィング):ディセプティコンのリーダー。キューブを追って古代の地球に到着していたが、北極海に墜落して凍っていた。その後、セクター7に保管されて、科学技術に転用されていた。

ロン・ウィトウィッキー(ケヴィン・ダン):サムの父親。アーチボルトの曾孫。園芸が趣味。

ジュディ・ウィトウィッキー(ジュリー・ホワイト):サムの母親。

ウィリアム・レノックス(ジョシュ・デュアメル):アメリカ陸軍大尉。勇敢で実直。カタール基地襲撃事件で生き残る。家では生まれたばかりの娘と妻が待っている。

ロバート・エップス(タイリース・ギブソン):アメリカ空軍技術軍曹。レノックスの部下。カタール基地襲撃事件で生き残る。

シーモア・シモンズ(ジョン・タトゥーロ):セクター7捜査官。サムを追いかける。

ジョン・ケラー(ジョン・ヴォイト):アメリカ合衆国国防長官。

フレンジグレン・ホイットマン(アンソニー・アンダーソン):マギーの友人。天才ハッカー。機器的状況でもIT技術を使ってなんとか脱する。

ボビー・ボリビア(バーニー・マック):中古車店のディーラー。サムに割高料金で中古車を売ろうとする。
(他の出演作:『オーシャンズ11』『オーシャンズ12』『オーシャンズ13』)

マイルズ・ランカスター(ジョン・ロビンソン):友人。思春期を迎えている。

マギー・マドセン(レイチェル・テイラー):ハッカーチームの一人。ハッカーとして軍に協力する。

ホルヘ・フィゲロア(アマウリー・ノラスコ):レノックスの部下。興奮するとスペイン語を話す。

パトリック・ドネリー(ザック・ウォード):レノックスの部下。眼鏡をかけている。逃走する途中で敵に見つかり死亡。

トム・バナチェック(マイケル・オニール):セクター7のメンバー。過去に起きた未確認生物による火星探査機の襲撃を軍に報告する。

あらすじ・ネタバレ・内容

 機械に命を吹き込むオールスパークという物質が地球に降ってきた。それを探すため、サイバトロンに住むオートボットと反乱軍のディセプティコンは地球に向かう。ディセプティコンのリーダーであるメガトロンは、地球に到着するも北極圏の磁気異常にやられ、氷漬けになってしまう。

 1897年、冒険家のアーチボルト・ウィトウィッキーはメガトロンを北極で発見し、その時に彼の眼鏡にオールスパークの在処の情報が刻まれる。

 現在、アメリカ空軍の基地に、数ヶ月前に墜落した軍用ヘリコプターが飛来し軍が殲滅される間に、国家機密のデータをハッキングされる。軍用ヘリコプターはディセプティコンの兵士ブラックアウトであった。ディセプティコンの襲撃に備えアメリカ軍は警戒するが、結果的に国家機密をハッキングされる。

 ロサンゼルスでは、アーチボルトの子孫のサムが、眼鏡を含めたアーチボルトの遺品をオークションにかけていた。約束の成績を取ると、父に中古のカマロを購入してもらい、憧れのミカエラ・ベインズと急接近する。

 だがサム達は謎の機械に襲撃され、マカロが突然変形して守ってくれる。実は、マカロはオートボットのバンブルビーであった。バンブルビーはオプティマスを含めた仲間達を地球に呼び寄せる。オプティマスはディセプティコンとの戦いとその過去を語る。その直後サムは、オールスパークやメガトロンの存在を把握し研究していた秘密組織「セクター7」に拘束される。

 連れいていかれたフーバーダムの下で、氷漬けにされたメガトロンとオールスパークを目にする。セクターセブンは、オールスパークを研究することで最新の科学技術を得ていたのだった。一緒に拘束され氷漬けにされていたバンブルビーの誤解をとき解放してあげると、バンブルビーはオールスパークは最小化させ敵の襲撃に備える。

 敵の潜入工作が功を奏し、メガトロンが復活、ダムは敵に襲撃される。レノックスはオールスパークを街へ移動させることを提案する。しかしディセプティコンの攻撃にあい、合流したオートボットたちと激しい攻防戦が繰り広げられる。

 味方がやられバンブルビーが負傷するなど危機的状況に陥るが、アメリカ軍の協力もあり敵を倒す。オプティマスはメガトロンと一騎討ちになり圧倒するも、敵に加勢があって劣勢になる。サムはオールスパークをメガトロンの胸に押し込み、力に耐えきれなくなったメガトロンは破壊される。

 メガトロンの残骸はローレンシア海溝に沈められ、オプティマスは地球を新しい故郷とするのだった。

解説

地球を舞台に機械が機械と対決する

 日本の玩具会社タカラトミーとアメリカの玩具会社ハズブロによって1984年に販売開始された「トランスフォーマー」が、約20年の月日を経て実写映画となって帰ってきた。人間と機械の友情と機械同士のド迫力の闘いは、殆どの観客を満足させたと思われる。

 有機生命機械であるトランスフォーマーが、正義をなすサイバトロンと悪のデストロンの二つの勢力に分かれ抗争を繰り広げるという世界観は、玩具やその後に制作されたアニメ版から一貫して保たれている。人間vs機械ではない、機械vs機械というのが本作の一つの特徴である。例えば『宇宙戦争』や『ムーンフォール』、『メッセージ』や『オール・ユー・ニード・イズ・キル』はどれも、身体が機械で作られた敵(or 味方)が宇宙から突然現れることで物語が駆動される。機械生命体は地球に侵略し、人間を殲滅しようとする。敵にしろ味方にしろ機械生命体は人間界の外部にいるため、最後には味方であることが分かるにしても意思疎通が出来るようになるまでは、人間と機械生命体は必然的に対立することになる。

 とはいえ、この物語における人間の活躍の重要性はかなり高い。人類最高峰の兵器を持つ米軍と勇敢な兵士たち、さらにAIが得意な一般人とバンブルビーに気に入られた高校生。機械生命体と比べると人間は非力という他ないが、それでも彼/彼女らの協力がなかったら、サイバトロンはデストロンに負けていただろう。人間と機械の協力と友情が、勝敗を分ける鍵なのだ。

テックスペックとビックリマン

 前述のように、トランスフォーマーには特殊な世界観があり、それは玩具が発売された当初から一貫している。

 トランスフォーマーと呼ばれる変形ロボットが販売されたのは、アメリカでは1984年、日本では1985年のことであった。この玩具の特徴は、本体の精巧さではなくその付属品にある。付属品である「テックスペック」にはキャラクターの情報が書き込まれており、それが「トランスフォーマー」の世界観を作っていたのである。これは1977年に発売されたビックリマンチョコと少しばかり似ている。チョコのおまけとして封入されてしたシールに書かれた情報は、「ビックリマン」のキャラクターだけでなく、裏に広がる世界観をも際立たせた。消費者はキャラや玩具だけでなく、神話や善と悪の戦いといった壮大な物語を消費していたのである。

 「トランスフォーマー」の愛好家は、玩具の付属品であるテックスペックに敬意を払っているため、ここで示された設定から大きく外れることはほとんどない。もちろん本作もテックスペックに忠実である。正義のサイバトロンと悪のデストロンの二大勢力の抗争、登場する機械生命体はどれも本家のテックスペックが提示したものである。

考察・感想

ダイナミックでド派手な変身

 仮面ライダーやスーパー戦隊が変身をするとき、それは一種の儀式である。変身には特殊なポーズや台詞が必要で、その瞬間は敵が攻撃してくることはなく、絶対領域・絶対時間のような無敵の瞬間が変身する者に訪れる。彼/彼女らは侵犯されることのない神聖な儀式を行うことで、変身を成し遂げるのである。これらの変身に儀式が不可欠なのは、それが意味しているのが、人間から超人へ、現実から虚構の存在への位相変換のためである。つまり、虚構世界に入るために、非現実的な儀式が要請されているのだ。これは現実世界においても決して珍しいことではない。化粧やスーツ、ネクタイやネールも変身のための一種の儀式と言える。現実でも公の空間に入るためには、仮面ライダーが超人的な力を得ようと儀式を行うように、変身する必要があるのだ。

 だがトランスフォーマーの変身は、これらとは根本的に異なっている。トランスフォーマーはそれ自体が虚構の存在であるため、変身に儀式が伴わない。連続的で滑らかに変身するのである。

 それによる良き効果が、本作では存分に味わえる。自動車で移動しながらや、戦いながらの変身は大ナクミックである。特に、相手のミサイルを避けるために、変身しながら相手に突っ込んでいくシーンはかなりカッコいい。すげー、カッケー、という感じである。アカデミー賞で音響編集賞、録音賞、視覚効果賞の3部門にノミネートされたようだが、観れば納得の内容と言える。

敵は軍や警察の乗り物に化けている

 ところで、反乱軍ディセプティコンと、それと対峙するオートボットでは、変身した自動車の種類に明確な差がある。結論から言えば、ディセプティコンが変身する乗り物は、大抵が軍や警察の兵器や乗り物なのだ。頭領のメガトロンは戦闘機、ブラックアウトは軍用ヘリコプターで、他にもパトカーや戦車などがいる。

 機械生命体は、乗り物に変形することで人間世界に溶け込むことができた。目的のオールスパークの位置がわからない以上、人間にバレないように物を探すために乗り物に変形するのが最善の選択である。しかし、この偏った種類への変形は何を意味しているのだろうか。

 ディセプティコンにとっては、情報収集するために軍に接近する必要があったのだろう。だが人間にとっては、軍の中にスパイがいたということになる。機械と機械の戦いであると同時に、人間が作り出した組織の内部の戦いでもあるのだ。アメリカ軍の内部にはすでにスパイが潜伏しており、清くも正しくもない組織になってしまった。そうであるから、軍人の誠心誠意の行動で事態がひっくり返ることが重要なのだ。アメリカ軍の内部の腐敗は、愛国心のある実直な兵によって改善される。アメリカ軍の兵力では、機械生命体に敵わなくても関係ない。ようは心が大事なのだ。

 逆に正義の側にいるのが、普通の車でありレスキュー車であり消防車である。彼らは大衆と、大衆を守る存在であって、軍や警察などが代表する権威の側にはいない。彼らはだからこそ自らの命を賭して人間を守ろうとする。それがトランスフォーマーの世界観なのだ。

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