『ハリー・ポッターと秘密の部屋』考察|より深く、より遠く|あらすじ解説|感想|クリス・コロンバス

『ハリー・ポッターと秘密の部屋』考察|より深く、より遠く|あらすじ解説|感想|クリス・コロンバス

概要

 『ハリー・ポッターと秘密の部屋』は、2002年に公開されたイギリスのファンタジー映画。監督はクリス・コロンバス。原作は1998年に発表されたイギリスの作家J・K・ローリングの同名小説。前作は『ハリ・ポッターと賢者の石』、次作は『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』。ダニエル・ラドクリフ、エマ・ワトソンのほか、新たにケネス・ブラナーが出演。

 2年生に進級したハリー・ポッターが、ホグワーツ魔法魔術学校で起きた石化事件、通称「秘密の部屋」事件を解決するために、ハーマイオニー、ロンと共に奮闘する物語。

 「ハリポッター」シリーズはほかに『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』『ハリー・ポッターと謎のプリンス』『ハリー・ポッターと死の秘宝PART1』『ハリー・ポッターと死の秘宝PART2』『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』などがある。

 ダニエル・ラドクリフはほかに『ガンズ・アキンボ』、『スイス・アーミー・マン』に、ケネス・ブラナーはほかにクリストファー・ノーラン監督の『TENET テネット』、『ダンケルク』に出演している。

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登場人物

ハリー・ポッター(ダニエル・ラドクリフ):額に傷をもつ。ヴォルデモートに両親を殺されている。

ロン・ウィーズリー(ルパート・グリント):赤毛。ハリーと行動を共にする。

ハーマイオニー・グレンジャー(エマ・ワトソン):マグル生まれの魔法使い。知識が豊富で、魔法も得意。

アルバス・ダンブルドア(リチャード・ハリス):ホグワーツの校長。最強の魔法使い。

ミネルバ・マクゴナガル(マギー・スミス):グリフィンドールの寮長。

ルビウス・ハグリッド(ロビー・コルトレーン):森の番人。

セブルス・スネイプ(アラン・リックマン):スリザリンの寮長。ハリーに厳しい。

ギルデロイ・ロックハート(ケネス・ブラナー):闇の魔術に対する防衛術の教授。忘却術が得意。虚栄心と自己顕示欲が強い。

ドビー(声 トビー・ジョーンズ):ルシウスの屋敷しもべ。

ルシウス・マルフォイ(ジェイソン・アイザックス):ドラコの父。リドルの日記をジニーの籠に忍び込ませる。

名言

Dumbledore:You will find that help will always be given at Hogwarts to those who ask for it.
ダンブルドア:ホグワーツでは、助けを求める者には、常に助けが与えられるだろう

Dumbledore:It is not our abilities that show what we truly are. It is our choices.
ダンブルドア:自分の本当の存在は、能力で決まるのではない。選択によって決まるのだ

あらすじ

 ハリーは夏休みの間、ダーズリー家へ帰省していた。ホグワーツでは夢のような生活とたくさんの友達ができたにもかかわらず、手紙が届かずショックを受ける。そこに屋敷しもべ妖精・ドビーが現れ、ホグワーツには戻るなと警告する。ハリーが警告を無視しようとすると、ドビーはケーキを来客者の頭に落としそれをハリーの仕業に見せかける。ハリーの行為だと勘違いしたバーノンは、怒りのあまりハリーを部屋に監禁する。

 そこにロンと兄フレッドとジョージが、空飛ぶ車で救出に現れる。ウィーズリー家に着くと教科書を買うためにダイアゴン横丁へ向かい、そこでハグリッドやハーマイオニーと再開する。また書店でサイン会を開いてたギルデロイ・ロックハートに出会い、新聞記者にツーショット写真を撮られる。その後、ドラコ・マルフォイと父ルシウス・マルフォイと偶然遭遇し、ロンの父アーサーと一色触発の状態になる。

 新学期が始まり、キングス・クロス駅の9と3/4番線へ向かうが、ハリーとロンだけ通り抜けることができない。仕方なくウィーズリー家の空飛ぶ車でホグワーツに向かうが、ホグワーツにある暴れ柳に衝突し、ロンの杖へ折れ、車は禁じられた森に走り去ってしまう。空飛ぶ車を見られたロンは、母モリーから吼えメールが送られ、杖は折れたまま使用しなくてはならなくなる。

 ハロウィン当日、フィルチの猫ミセス・ノリスが石になる事件が発生。それに続き、マグル出身者の生徒が石にされる事件が起こり、「スリザリンの継承者」によって「秘密の部屋」が開かれたという噂が広がる。

 マルフォイが「スリザリンの継承者」だと考えたハリーたちは、1ヶ月かけて姿を変えられるポリジュース薬を作る。その間にロックハートの授業で、「決闘クラブ」が開催される。ハリーとマルフォイの決闘中、ハリーはマルフォイの魔法で現れた蛇と会話をする。サラザール・スリザリンも蛇語を使えたことから、ハリーが継承者だと噂が広がる。

 ポリジュース薬が完成したことで、マルフォイの側近に変身して探りをいれるも、マルフォイは継承者でないことが判明する。ある日、ハリーは3階の女子トイレで、古い日記帳を見つける。その日記にはトム・リドルという人物の記憶が保存されいて、前回「秘密の部屋」が開かれた50年前の記憶をみせてくれた。そこにいたのは、猛獣である蜘蛛を飼育し怪しまれるハグリッドの姿だった。

 後日、何者かに日記が盗まれる。さらにハーマイオニーが石化の被害に遭い、クィディッチの試合は中止となる。前回疑われたハグリッドは、ダンブルドアと魔法大臣からアズカバンに送ると言い渡される。またこの現状の責任を問われ、ダンブルドアが停職に迫られる。

 ハグリッドの去り際に残した言葉をヒントに禁じられた森に入り、ハグリッドに育てられた大蜘蛛アラゴグから話を聞き、ハグリッドの無罪を確信する。さらにハーマイオニーの手に残されたメモから、スリザリンの怪物が目を合わせただけで殺される大蛇だと推測する。

 その時、ロンの妹ジニーが秘密の部屋に連れ去られたことで、生徒は寮へ戻され、教職員は集合する。そこでロックハートにスリザリンの怪物の討伐が託される。このことを盗み聞きしたハリーたちは、ロックハートの部屋を訪れると、彼は逃げ出す準備をしていた。ハリーたちは、これまで忘却術で他人の手柄を横取りしてきたロックハートを脅し、前回の被害者である三階の女子トイレに住む嘆きのマートルのもとを訪れる。

 彼女の話から、秘密の部屋への入り口が3階の女子トイレにあると知り、ハリーたち三人は秘密の部屋に乗り込む。隙をついてロックハートがロンの杖を奪い忘却術を放つも、ロンの杖は折れていたため逆噴射してしまい自分の記憶をなくす。その衝撃でトンネルが崩れてしまい離れ離れになったハリーは、一人で秘密の部屋に向かう。

 秘密の部屋には横たわるジニーと、50年前のままで16歳のT・M・リドルがいた。一連の事件はジニーを操って行ったリドルの犯行であり、ジニーが死ぬことでリドルは復活するという。さらにリドルはヴォルデモート卿の学生時代だと明かす。リドルの命令でスリザリンの怪物バジリスクがハリーに襲いかかる。するとダンブルドアの校長室にいた不死鳥フォークスが現れ、組み分け帽子を渡す。組み分け帽子からでてきたグリフィンドールの剣でバジリスクを倒し、バジリスクの牙で日記を破壊しリドルは消滅する。

 その後、ルシウス・マルフォイがリドルの日記をジニーに渡した犯人だと暴き、ルフィーの策略でドビーが屋敷しもべから解放される。石にされた生徒たちは元の姿にも戻り、ホグワーツに平和が訪れた。

解説

前作に続く傑作

 『ハリー・ポッターと秘密の部屋』は「ハリ・ポッター」シリーズの2作目。ホグワーツ魔法学校で2年生に進級したハリーが、前作からお馴染みのハーマイオニーやロンと協力して、ホグワーツ閉鎖の危機に立ち向かう。

 前作『ハリーポッターと賢者の石』は「ハリ・ポッター」シリーズの記念すべき一作目で、「すべてはここから始まった」(魔法ワールド公式Twitterのツイート)と称するに値する出来栄えだった。しかしある意味では本作こそが、「ハリ・ポッター」シリーズの真価を決定づけた、始まりの作品と言えるかもしれない。

 作者のローリングは前作の想像以上の好評をみて、次作を完成させるのは難しいと感じていたが、本作も前作と同様に広い読者に好意的に受け止められた。本作が作品の重厚さを深めながらより広い範囲へと物語を展開することに成功したことで、1作目がまぐれ当たりでないばかりか、「ハリ・ポッター」シリーズの大いなる飛躍を読者に確信させた。

垂直的な時間軸によって、より深みを増していく

 『ハリーポッターと賢者の石』では豊かな物語世界を提示しながらも、裏の設定は仄めかすに留め、ハーマイオニーとロンとの友情と勇気に焦点を当てていた。本作ではこの水平的な関係に垂直的な時間軸を加え、物語の厚みは大きく増すことになる。

 物語はホグワーツを起点に大きく過去へと開かれる。ホグワーツの創始者スリザリン、スリザリンが作った秘密の部屋、50年前に現れたスリザリンの継承者と秘密の部屋が開かれたという事件、その事件で暗躍する16歳の少年トム・リドル、そしてハグリッドの過去。

 ここで明らかにされるのは、ヴォルデモート卿とハリ・ポッターの対決に潜む長い歴史の影である。そしてこの傾向はシリーズが進むにつれてより濃厚になる。ヴォルデモート卿の幼少期、ダンブルドアとグリンデルバルトの因縁、ハリーの父ジェームズとスネイプの因縁、神話に登場する死の秘宝の存在などなど、過去に起きた出来事が現在を生きるハリーたちを飛び越え描かれることで、ハリーとヴォルデモートの対決はより重層的な意味をもつ。このような方向性を提示したのが、本作『ハリー・ポッターと秘密の部屋』の最も大きな意義なのだ。

考察・感想

闇の魔術に対する防衛術の教授ギルデロイ・ロックハート

 「ハリー・ポッター」シリーズの全編を通じて、重要人物が教える教科が一つある。それが「闇の魔術に対する防衛術」だ。この教科の就いた教授は、いい意味でも悪い意味でもすべての年で物語の中心的な役割を果たすが、最後には事件や事故に巻き込まれ退職に追いやられる。この教科の担当になると一年後には必ずホグワーツを去らなくてはならないという曰く付きの教科なのだ。

 前作で「闇の魔術に対する防衛術」を教えていたクィリナス・クィレル教授は、ターバンを巻いた頭にヴォルデモート卿を寄生させていた。クィレルはハリーの母リリーの愛の魔法で身体から朽ち果ててしまい、その後釜についたのがギルデロイ・ロックハート教授である。

 ギルデロイ・ロックハート教授は超人的な武勇伝を幾つも持つ、女性からの人気が絶大なイケメンで、ハーマイオニーやロンの母モリーは見かけると惚れ惚れとした眼差しを送る。しかし実のところロックハートは、自己顕示欲と虚栄心の塊で、武勇伝も他人のものを奪っていた。唯一得意な魔法は忘却呪文だけ。彼は武勇伝の持ち主の記憶を忘却呪文で忘れさせ、自らの著作で自分の手柄として吹聴していたのである。

ロックハート、ヴォルデモート、ハリーの三幅対

 虚栄心にまみれたダメ人間は、しかしながら、ハリーと、そしてヴォルデモート卿と横に並べたとき、他にはない魅力を発する。ロックハートはヴォルデモートと同じ自己顕示欲に溺れていながら、ヴォルデモートにはないユーモアを発揮する。

 ロックハートは多くの場面でドジを踏む。ハリーの骨折を治そうとしては骨を消滅させてしまい、授業でピクシーを使おうとしては捕まえられず収拾がつかなくなる。スネイプは彼のそんな虚栄心を見抜き、秘密の部屋にいきバジリスク退治を依頼するが、ロックハートは皆んなに隠れてホグワーツから去ろうとする。虚栄心丸出しにもかかわらずロックハートを憎めないのは、彼が自らに力がないと知りながら、その後のことを考えず人前にしゃしゃりでてしまうからだ。

 ふつう自らの業績が嘘の塊で能力もないと知っていたなら、あえて人前にでようとはしない。しかし彼は、失敗すると分かっていてもみんなの前に現れ、予想通り失敗する。ロックハートが魅力的なのは、ずる賢さと、そこはかとない明るさと、失敗への果敢な挑戦心が共存しているからだろう。そして最後には、得意の忘却術が逆噴射して自分のことすら忘れてしまう。この失敗はロックハートのせいではないにしろ、彼の性格を反映したかのような、見事に笑える結末なのだ。

 逆にトム・リドル(ヴォルデモート卿)には、自己顕示欲だけでなく、それに見合った能力も持っている。本作で初登場の二人が、対照的な性格を持っているのは偶然ではない。そしてこの二人がいるからこそ、ハリーの人格的な素晴らしが際立ってくる。ハリーは才能に溢れ、グリフィンドールの剣を授かり、ヴォルデモートを退けたとしても、決してそれらを誇示することはない。ハリーによって重要なのは、才能や選ばれたことではなく、選択だからだ。

ダンブルドア:自分の本当の存在は、能力で決まるのではない。選択によって決まるのだ
Dumbledore:It is not our abilities that show what we truly are. It is our choices.

 ハリーとヴォルデモートの違いはここにある、とダンブルドアはいう。ハリーとヴォルデモートを繋ぐ共通点。しかしそれはハリーがヴォルデモートと同じことを意味しない。何故なら「本当の存在は、能力で決まるのではない」からだ。ハリーは彼の「選択によって」ヴォルデモートと袂を分かつ。ハリーは、グリフィンドールを選び、自己顕示欲に蝕まれず、屋敷しもべを解放したのだ。これらを含めた彼の選択と、これまで歩んできた道のりが、ハリーの「本当の存在」を形作っている。

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