『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』考察|恋愛と嫉妬にまみれたロン|あらすじ解説|感想|マイク・ニューウェル

『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』考察|恋愛と嫉妬にまみれたロン|あらすじ解説|感想|マイク・ニューウェル

概要

 『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』は、2005年に公開されたイギリスのファンタジー映画。監督はマイク・ニューウェル。原作は2000年に発表されたイギリスの作家J・K・ローリングの同名小説。小説はヒューゴー賞を受賞。前作は『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』、次作は『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』。ダニエル・ラドクリフ、エマ・ワトソンのほか、新たにブレンダン・グリーソン、ロバート・パティンソンが出演している。

 100年ぶりに開催される伝説のイベント、三大魔法学校対抗試合の選手となったハリーが、ヴォルデモートの策略に嵌まりながらも戦いに挑む一年を描く。

 「ハリポッター」シリーズはほかに『ハリ・ポッターと賢者の石』『ハリー・ポッターと秘密の部屋』『ハリー・ポッターと謎のプリンス』『ハリー・ポッターと死の秘宝PART1』『ハリー・ポッターと死の秘宝PART2』『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』などがある。

 ダニエル・ラドクリフはほかに『ガンズ・アキンボ』『スイス・アーミー・マン』、ブレンダン・グリーソンは『オール・ユー・ニード・イズ・キル』、ロバート・パティンソンはクリストファー・ノーラン監督の『TENET テネット』、ゲイリー・オールドマンはノーラン監督の『バットマン ビギンズ』『ダークナイト』『ダークナイト ライジング』に出演している。

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登場人物

ハリー・ポッター(ダニエル・ラドクリフ):額に傷をもつ。ヴォルデモートに両親を殺されている。

ハーマイオニー・グレンジャー(エマ・ワトソン):マグル生まれの魔法使い。ハリーの親友。知識が豊富で、魔法も得意。

ロン・ウィーズリー(ルパート・グリント):ハリーの親友。ハーマイオニーのことが気にかかる。

ヴォルデモート卿(レイフ・ファインズ):悪の魔導師。ハリーの死を企む。

アラスター・ムーディ(ブレンダン・グリーソン):マッド・アイ・ムーディー。闇の魔術の防衛術の教授。史上最強の闇祓いと呼ばれる。片目、片足がなく、義眼がギョロギョロと動くのが特徴的。

セドリック・ディゴリー(ロバート・パティンソン):ホグワーツの代表。レイブンクローの生徒で、機知に富み、仲間からの信頼も厚い。

ビクトール・クラム(スタニスラフ・アイエネフスキー):ダームストラング専門学校の代表。クィディッチのブルガリア代表で、名シーカー。ハーマイオニーのことが好き。

フラー・デラクール(クレマンス・ポエジー):ボーバトン魔法アカデミーの代表。

アルバス・ダンブルドア(マイケル・ガンボン):ホグワーツの校長。

セブルス・スネイプ(アラン・リックマン):スリザリンの寮長。ハリーに厳しい。

シリウス・ブラック(ゲイリー・オールドマン):ハリーの名付け親。遠隔でハリーに助言を与える。

ピーター・ペティグリュー(ティモシー・スポール):ワームテールと呼ばれる。ハリーの父の友人で、ヴォルデモートの配下。

フィリウス・フリットウィック(ワーウィック・デイヴィス):半小鬼、半魔法使い。レイブンクロー寮の寮長。

名言

ダンブルドア:暗く困難な時が訪れる。すぐに、我々は、良い道と楽な道のどちらを進むべきかの選択を迫られるじゃろう
Dumbledore:I trust you know that. Dark and difficult times lie ahead. Soon we must all face the choice between what is right and what is easy.

あらすじ

 夏休み、ハリーの夢の中にヴォルデモートが現れる。ヴォルデモートはピーター・ペティグリュー(ワームテール)と正体不明の男性とリドルの館で、ハリー殺害の計画を立てていた。そこに現れた老人フランク・ブライスは、ヴォルデモートによって殺されてしまう。

 ハリーはウィーズリー家、ディゴリー家とともに、クィディッチ・ワールドカップの決勝、アイルランド対ブルガリア戦を観に行く。そこでブルガリア代表のビクトール・クラムの動きに感動し、ロンは彼のファンになる。

 その夜、ヴォルデモート卿の配下である死喰い人が、ハリーたちがいる野営地を襲撃し、13年ぶりに闇の印が打ち上げられる。逃げ遅れたハリーは死喰い人の一人に見つかりそうになるが、魔法省の役員が集まってきたため、死喰い人は逃げていく。

 新学期、闇の魔術に対する防衛術の教授に、元闇祓いのアラスター・ムーディ(マッド・アイ・ムーディー)が就任する。ダンブルドアはホグワーツ魔法魔術学校、ダームストラング専門学校、ボーバトン魔法アカデミーの代表者が競い合う伝説のイベント、三大魔法学校対抗試合を100ぶりに開催することを発表する。条件は17歳以上の生徒、炎のゴブレットに立候補者の名前を記入した紙をいれることで、選定は炎のゴブレットが行う。

 フレッドとジョージが不正で紙を入れようとするも、炎のゴブレットは受け付けず、歳をとる呪文をかけられる。選ばれた代表者は、ホグワーツはセドリック・ディゴリー、ダームストラングはビクトール・クラム、ボーバトンはフラー・デラクールだった。だが炎のゴブレットはその後に、四人目の代表者ハリー・ポッターを選出する。

 魔法の効力で止めさせることができず、ハリーも代表者として競うことになる。ハリーは多くの人から不正を疑われ、ロンとも喧嘩になる。さらに記者リータ・スキーターによる、ハリーのことを誇張した記事が日刊予言者新聞に載り、さらなる反感を生む。

 ロンからの伝言でハグリッドからの助言をもらったハリーは、第一の課題がドラゴンであることを知る。唯一課題を知らないセドリックに内容を教え、自らはムーディーからの助言で箒を利用する計画を立てる。箒を用いてドラゴンが守る金の卵を奪い、次の課題に進む。またこの課題が大きな怪我をするほど過酷だったため、ロンは誤解を解き仲直りする。

 金の卵に隠された第二の課題のヒントを見つけられないが、クリスマスに開かれるダンスパーティのためにパートナーを探す。ハリーとロンだけがパートナーを見つけられず、思い切って誘った初恋相手、チョウ・チャンは、すでにセドリックが申し込んでいた。ロンはフラーを誘うも断られ、最後の手段で誘ったハーマイオニーはすでに申し込まれていたため断られる。ハリーはパーバティ・パチルを誘うことに成功し、ロンは彼女の妹パドマ・パチルと踊ることになる。パーティー当日は、ハーマイオニーはクラムのパートナーとして、美しい姿で現れる。ロンはハーマイオニーに嫉妬し、二人は喧嘩になる。

 残り二日と迫り、金の卵の謎が解けず焦るハリーに、セドリックが卵を持って監督生のバスルームに入るよう助言する。金の卵を水の中で開くとヒントとなる歌が聞こえ、次の課題が水中であることを知る。水中で呼吸をする方法を図書館で調べていると、ネビルがエラ昆布の存在を教えてくれる。

 当日、エラ昆布で水中を自由に泳げるようになったハリーは、捕らえられたロンを救出しようとする。クラムはハーマイオニーを、セドリックはチョウを助けるが、フラーが現れないため、ハリーはフラーの妹ガブリエルを救出する。三位で戻ったハリーだったが、遅れた理由が気高い行為であったため、クラムを抜かして二位となる。

 審査員であった魔法省のクラウチは、ムーディーと会話し何かに勘付くが、その日のうちに殺されてしまう。ダンブルドアのもとに向かったハリーは、憂いの篩のなかにあるダンブルドアの記憶を誤って見てしまう。そこで、過去にクラウチの息子が死喰い人として捕まっていったこと、それが夢に出てきた正体不明の男性であったことを知る。

 第三の課題では、操られたクラムを倒し、蔓などの障害物を乗り越えて、セドリックと共に優勝杯を掴む。しかし優勝杯は移動キーで、ヴォルデモートの父トム・リドル・シニアの墓とリドルの館がある場所に飛ばされる。

 セドリックはワームテールに殺害され、父の骨、ワームテールの肉、ハリーの血によりヴォルデモートは復活する。ヴォルデモートは死喰い人を呼び寄せ、ハリーと決闘する。だが呪文がぶつかると、ヴォルデモートによって殺された人々の霊が現れ、ハリーの両親の助力によってハリーはセドリックの死体を担いでホグワーツに戻る。

 ダンブルドアはすぐに事態を把握し皆を落ち着かせ、ムーディーはハリーを自分の部屋に連れていく。するとムーディーはゴブレットにハリーの名を入れたのも、優勝するよう手引きしたのも、優勝杯を移動キーにしたのも自分だと告げる。ハリーに襲い掛かろうとするムーディーを、間一髪でダンブルドアが倒す。ムーディーは実はクラウチの息子クラウチ・ジュニアで、ムーディーを監禁してポリジュース薬で変身していたのだった。

 ダンブルドアは魔法省に口止めされているにもかかわらず、ヴォルデモートの復活を告げる。大会はハリーの優勝で終わり、ダームストラング、ボーバトンの生徒たちは自分の国に帰っていく。ハリーたちは事件が起こらない年はないと笑いながら幕を閉じる。

解説

イギリスとホグワーツの外には世界が広がっていた

 本作の監督は、『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』のアルフォンソ・キュアロン監督から代わって、『フォー・ウェディング』で有名なマイク・ニューウェル。次作『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』ではデヴィッド・イェーツ監督に代わるので、「ハリ・ポッター」シリーズでマイク・ニューウェルが監督を務めるのは本作が最初で最後である。

 本作にはこれまでの作品にない特徴が二つある。一つは物語のスケールが広がったこと、もう一つは小説版の内容の多さである。

 スケールの広がりは、端的にホグワーツの外の世界が描かれたことに由来する。映画の冒頭、ウィーズリー家、ディゴリー家と共にハリーが向かうのは、クィディッチ・ワールドカップ決勝のアイルランド対ブルガリア戦であり、各国のクィデッチチームが凌ぎを削る世界規模の大会である。考えてみれば当然のことだが、魔法界はイギリスだけでなく世界中に広がっているのだ。

 そしてこれまた考えてみれば容易に分かることだが、世界にはホグワーツ以外にも魔法学校が存在する。それがダームストラング専門学校とボーバトン魔法アカデミーで、これにホグワーツ魔法学校を加えた三校の代表者が競い合うのが、100年ぶりに開催される伝説的なイベント、三大魔法学校対抗試合である。このような伝説的なイベントだけあって、怒り狂うドラゴンと闘ったり、水中に友人が捕らえられたりと、これまで以上に過酷な試練が待ち受ける。

小説版は上下巻にも関わらず、映画は前作と同じ長さ

 このスケールの戦いを迫力満点で描写しながら、学園内の人間模様も丁寧に描いたために、小説版は前作よりも内容が約2倍に増え上下巻で刊行された。しかし映画版の上映時間は前作とほぼ同じで、内容を大幅に圧縮しなくてはならなかった。

 本作に否定的な意見の原因の一つはここにある。原作にあった出来事が大幅に削られたために、本作は一つ一つのエピソードの繋がりが弱くなってしまっているのだ。冒頭のクラムの試合は割愛され、ドビーたち屋敷しもべの物語や、忍びの地図を使った伏線は丸ごと全部なくなっている。時間的制約があるため仕方がない側面もあるが、このことで原作にあった伏線回収の楽しみは大きく減じてしまったようだ。

考察・感想

恋愛と嫉妬——ロンが三人の関係を破壊する

 前作までなかった要素で大きくクローズアップされるのが、生徒たちの色恋沙汰だ。あの小さかったハリーたちも気づけば14歳、思春期の真っ只中で恋愛に目覚め始める。

 ダンスパーティーに異性を誘うので苦戦するのは、ハリー、ロン、ネビルの三人だ。その中でも最も非モテと思われていたネビルは、二人より先にジニーとの約束を取り付けてしまう。ハリーは初恋の相手チョウ、ロンはボーバトン魔法アカデミーの代表者フラーを誘ってみるが、どちらも断られ途方に暮れる。ロンは仕方なしにハーマイオニーを誘うが、すでに他の人に誘われていると断られる。そしてハーマイオニーがクラムと踊ることに嫉妬したロンは、彼女に嫌味をもらし喧嘩になる。

 勿論この場面で最低な人物はロン・ウィーズリーだ。そもそも本作でロンは、試練に立ち向かうハリーの役に少しも立っていないどころか、物語において重要となるような事を一つもしていない。さらには、ハリーとハーマイオニーに対する嫉妬で、三人の関係に亀裂をいれる始末である。これまで仲良しだった三人が恋愛感情や嫉妬でギクシャクしてしまうのは、彼/女らが成長し思春期を迎えたことを踏まえると、かなりリアルなものである。そしてこの作品以降、恋愛パートは物語の大きな一部を成すことになる。

ダンブルドアの本性

 酷く評価を落としたのはロンの他にもう一人いる。ダンブルドアだ。

 本作のダンブルドアは、いつになく怒りっぽく、冷静さを欠き、指針となるような助言を出せずにいる。ハリーが一年生のときに見せた温かい瞳や、居るだけで与える安心感はどこにもない。彼はクラウチ・ジュニアの策略に騙され、何一つ対処することができず、周囲を疑うことしかできない。

 しかし実は、本作のダンブルドアこそが本物なのだ。『ハリー・ポッターと謎のプリンス』や『ハリー・ポッターと死の秘宝PART2』で明かされるように、ダンブルドアは偉人でも人格者でもなく、欲に目が眩む平凡な人物である。そしてそのことに気付けたのは、ハリーたちが成長したからでもある。一年生の頃は如何なる場面でも安心感を与えてくれる雲の上の存在であったダンブルドアでも、同じ土俵で近づいて見れば、意外にも醜い部分があることに気づく。ダンブルドアも人間なのだ。

ダンブルドア:暗く困難な時が訪れる。すぐに、我々は、良い道と楽な道のどちらを進むべきかの選択を迫られるじゃろう
Dumbledore:I trust you know that. Dark and difficult times lie ahead. Soon we must all face the choice between what is right and what is easy.

 ヴォルデモートの復活によって事態はより深刻になり、これ以降、人々は多くの選択を迫られる。良い道か、楽な道か。そしてそれはハリーも、ダンブルドアも例外ではないのだ。

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