映画『ミスト』考察|真の恐怖は霧である|あらすじネタバレ感想・伝えたいこと解説|フランク・ダラボン

映画『ミスト』考察|真の恐怖は霧である|あらすじネタバレ感想・伝えたいこと解説|フランク・ダラボン

概要

 『ミスト』は、2007年に公開されたアメリカのSFホラー映画。監督はフランク・ダラボン。原作はスティーヴン・キングの中編小説『』(1980年)。

 街が霧に覆われ、その中から現れた怪物に襲われることで、不安と懐疑が増していく人間たちを描いた物語。

 サスペンス映画はほかに『マイノリティ・リポート』『ファイト・クラブ』『アイズ ワイドシャット』などがある。

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登場人物・キャスト

デヴィッド・ドレイトン(トーマス・ジェーン):画家。スーパーマーケットに息子ビリーといる時に、怪物たちに襲われる。

アマンダ・ダンフリー(ローリー・ホールデン):新任の教師。スーパーマーケットではビリーの面倒も見てくれる。

ビリー・ドレイトン(ネイサン・ギャンブル):8歳の息子。

オリー・ウィークス(トビー・ジョーンズ):スーパーマーケットの副店長。射撃が得意。
(他の出演作:『ハリー・ポッターと秘密の部屋』『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』『ハリー・ポッターと謎のプリンス』『ハリー・ポッターと死の秘宝PART1』)

ミセス・カーモディ(マーシャ・ゲイ・ハーデン):狂信的なキリスト教信者。過激な発言を繰り返し、混乱に乗じて支持者を増やす。
(他の出演作:『ジョー・ブラックをよろしく』)

ジム・グロンディン(ウィリアム・サドラー):機械工の作業員。カーモディの信者になる。

ブレント・ノートン(アンドレ・ブラウアー):隣に住む弁護士。怪物が外にいるという話を信じず、助けを呼ぶために外に出る。

ダン・ミラー(ジェフリー・デマン):霧の中で何者かに襲われた最初の人物。デヴィッドに好意的。

アイリーン・レプラー(フランシス・スターンハーゲン):小学校で教師をしている老人。デヴィッドに好意的。

あらすじ・ネタバレ・内容

 画家のデヴィッド・ドレイトンとステファニー夫妻は、息子のビリーの3人で湖のほとりに住んでいた。ある日、街が激しい嵐に襲われてしまい、庭の木が倒れ家の一部が破壊される。夫妻が湖の方を眺めると、白い霧がかかっていた。

 デヴィッドは隣人のブレントと仲が悪かったが、この事件をきっかけに仲を直し、ビリーと3人で地元のスーパーに買い出しに向かう。店には緊急事態に備えようと準備する住人たちで、大変賑わっていた。すると、外からパトカーや救急車のサイレンが鳴り響き、町中に霧が広がっていき、鼻血を流したダンが店内に走り込んで、霧の中に何かがいると警告する。

 すぐさま店は霧に覆われて、人々は不安に駆られる。家に子供を残してきた人が、誰かについてきて欲しいと救援を頼むが、誰も協力しない。彼女は恨み口を叩きながら一人で外に出る。デヴィッドとビリーは教師のアマンダと親しくなる。デヴィッドは数人を連れて、排気口の様子を調べるために倉庫に向かう。シャッターを開けた瞬間、若者のノームが霧の中から現れた触手に連れ去られ殺されてしまう。

 デヴィッドたちは霧の中に謎の生物がいることを伝えるが、信じるか否かで二分してしまう。懐疑派は救助を求めるために、反対を押し切って外に出ようとする。どこまで行けるかを確認するために一人にロープを括り付けて外に出ると、急にロープが引っ張られた後、下半身だけが戻ってくる。そして一緒に外に出た人は全滅してしまう。

 夜、光に吸い寄せられて、得体の知れない怪物が店内に侵入し、多くの被害が出る。これを機に、終末論を唱えるカーモディを信じる者が増加し、デヴィッドたちは恐怖を覚える。怪我人を救うため、隣の薬局に薬を取りに行くと、蜘蛛の巣に人が引っかかっていた。その一人の皮膚を突き破り蜘蛛の子供が産まれ襲いかかってきたが、被害者を出しつつも薬を持って逃げる。

 この霧の原因について、軍が知っている可能性があることを知る。店にいた軍人のうち二人が自殺してしまったので、残りのジェサップ二等兵を問い詰めると、軍が異次元を観察する「アローヘッド計画」を実行していたと告げる。そのことがカーモディの信者に聞かれてしまい、ジェサップは刺されたうえに、生贄として外に放り出され死んでしまう。

 カーモディから逃れるために、デヴィッドらは脱出を図る。しかし行動を予期していたカーモディと信者たちに、脱出を阻止される。ビリーを生贄に出せと要求するカーモディと乱闘になり、オリーが彼女を射殺して脱出する。すぐに怪物が襲いかかり、デヴィッド、アマンダ、ビリー、ダン、アイリーンの5人が車までたどり着く。

 デヴィッドは自宅で妻が死んでいるのを発見し、悲しみに暮れながら車を走らせる。巨大生物を目撃しながらひたすら逃げ続け、ついにガス欠になる。デヴィッドたちは生き残ることを諦め、怪物に襲われる前に自死することを決意する。銃弾は4発しか残っていなかったため、自分はなんとかすると告げ、ビリーを含めた4人を射殺する。

 外に飛び出し怪物に殺されるよう叫ぶが、霧の中から現れたのは重装備をした軍人たちだった。生存者を乗せたトラックには、最初に出て行った女性とその子供がいた。デヴィッドはそれらの光景を眺めながら絶望するのだった。

解説

怪物の造形にB級感があふれでる

 監督のフランク・ダラボンは、過去にスティーヴン・キングの『ショーシャンクの空に』と『グリーンマイル』を映画化しているため、キング原作の映画化は今回で3作目になる。

 突如として街を襲った暴風雨。その翌日、家の前の湖に正体不明の霧がかかる。このとき私は、『ミスト』という題名から「霧」が物語において重要な役割を果たすことを知っていたので、霧に目もくれないデヴィッドに不吉なものを感じた。そしてデヴィッドに注意を払われなかった「霧」が、どのように脅威をもたらすのかを予想した。

 霧が湖の上で発生したことに必然を見て、湖に留まりつづける霧の発生原因を探るという展開はありうる。その発生の原因を調べるうちに、世界の秘密やら陰謀やらに辿り着くという筋である。しかしデヴィッドがビリーを抱っこして霧に覆われているポスターをすでに知っていたので、親子が霧に襲われる可能性が高いと考えた。であるならば、霧が湖から街へと広がって人々を覆い尽くすかもしれない。

 実際、予想は大きくは外れておらず、前日の暴風雨で破損じた自宅を直すために訪れた街の店で、デヴィッドと同じような境遇で店にいた人たちは霧に襲われる。その霧の中から現れたダンは、鼻血を流しながら店に逃げ込み、霧の中に何かがいると叫んだ。これを見て、霧は精神や記憶に障害をもたらす力があるとふんだ。ダンが精神的に狂っているように見えたし、霧の中にいる「何か」が重要だとしたら霧の存在理由がないように思えたからである。つまり霧の中の「何か」ではなく、霧自体に脅威があるはずと考えた。そして、霧の中に見た「何か」が実は「何」でもなく、その空虚に翻弄され疑心暗鬼に陥る人間たちの様子が、鮮明に目に浮かんだ。

 ところが、霧の中に「何か」がいた。異世界からきた怪物である。最初に蛸の足のような触手がノームを捕らえたとき、その安っぽい作りに心底驚いた。怪物の触手の動きも物語展開の奇抜さもB級感に溢れている。この映画がどこに向かおうとしているのか、皆目見当もつかなくなった。

考察・感想

恐怖と不安に陥った人間の姿を描く

 このB級感に加えて、カメラの手ブレが酷くて酔った。臨場感をだすためにあえて使っているのはわかるのだが、不必要な場面でも使われているような気がしたのである。

 ということで、前半部分だけを見て気力がかなり減退したのだが、後半は見応えがありラストに至って凄まじい作品であることを思い知らされた。そもそもこの映画の主題は、『ムーンフォール』が描く異星人との戦いでも、『メッセージ』が描く宇宙人とのコミュニケーションでもなく、どちらかというと『宇宙戦争』のように異星人に襲われた人間の心情の変化を描いている。街を霧が覆い、店の外には怪物がいる。外に出た人たちは怪物に襲われ、かといって店の中が安全というわけではない。このような不安が募る極限の状態で、人々は狂信的なキリスト教者のカーモディの言葉に身を任せることで、束の間の安心を得る。人は自らの力を遥かに超越した現象に直面したとき、非論理的で凄惨なメッセージでも、安心のために従ってしまうのである。

 デヴィッドら正常な感性の持ち主にとっては、外にいる怪物以上に、内にいる狂信者が怖い。狂信者の行動の原動力は不安であるから、安心を得るために生贄が要求させる。その生贄はその場の雰囲気で決められるので尚更怖い。怪物よりも人間が怖い、そう感じたときデヴィッドたちは、外部の危険を知りながら、あえて外に唯一の生還への道を見ようとするのである。

真の恐怖は霧である

 幾人もの仲間を失って、デヴィッド、アマンダ、ビリー、ダン、アイリーンの5人は車に辿り着く。今日か明日にでも怪物に殺されるであろう狂信者たちを店に置き去りにして、5人は僅かな望みにかける。数分前に決断した5人と、死が決定した狂信者たちの、決定的な差。それが如何に大きいのかは、両サイドから相手を映す場面のスローモーションによって鮮明になる。

 車に乗って逃げていると、これまで見たのよりも何倍も大きな怪物が出現する。そんな怪物に存在が気付かれ踏まれでもしたらひとたまりも無い。彼ら/彼女らの精神的な負担が限界に近いと想像される。そのとき、一体の怪物が現れる。その怪物は人間に見向きもせずに歩き去る。その姿が神々しい。デヴィッドたちも恐怖ではなく唖然とした表情で見惚れているようである。

 この5人は束の間の家族を作る。ビリーが息子で、デヴィッドとアマンダが父母、ダン、アイリーンが祖父母のような幸せの家族である。だがその関係もガス欠のために終わりを迎える。怪物に殺されるより自死を選ぼうとする大人たちは、デヴィッドを残した四人(ビリーを含める)を四発の銃弾で殺害する。その後、外に出たデヴィッドは霧の中から現れた軍人に唖然とする。既に軍は怪物を撃退し、生存者をトラックで運んでいたのである。店から逃げ出したデヴィッドの作戦は、完全に間違っていたうえに、数十秒前の選択も間違っていたのである。

 このとき、真の敵が怪物ではなく、霧であったことに愕然とする。真の恐怖は怪物ではなく、この霧だったのだ。霧が視界を遮ったことで人々の不安が募り、救済の光を見えなくさせるからこそ死を決断させる。作中で言明されてはいないが、おそらく怪物たちは人間に対して見かけほどに攻撃的ではないか、霧の外にでてまで人間を襲う気がない。その証拠に、店のガラスを突き破るのは容易にもかかわらず、それを成し遂げた昆虫型の怪物は光に吸い寄せられただけだし、幾多の怪物が目の前を掠めたにもかかわらず、ガス欠になるまで走らせた車を襲わなかった。デヴィッドたちが冷静になれば、それらの事実から帰納的に、ガス欠になった車の中で止まり続けるという選択肢もあったのである。その冷静さを奪ったのが「霧」である。だから、題名が「ミスト」であるのは必然なのだ。

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評価(批評・評論・レビュー)

この『ミスト』、僕は映画館で観たんですよ。『ショーシャンクの空に』の原作者スティーヴン・キングとフランク・ダラボン監督が再びタッグを組んで新作を撮った!という触れ込みに釣られてノコノコ観に行ったわけです。で、観終わった直後の感想は …… 全文

ーー type-r.hatenablog.com(タイプ・あ〜る)

フランク・ダラボン監督とスティーヴン・キング原作のコンビには、「ショーシャンクの空に」「グリーンマイル」という傑作がある。鬼門とさえ言われるほど難しいキング作品の映画化を、ほとんど唯一成功させているのがこの監督なのだ。 …… 全文

ーー movie.maeda-y.com(前田有一)

加筆中(おもしろい評論、または、載せてほしい論考などがありましたら、コメント欄にてお伝えください)

動画配信状況

『ミスト』配信状況比較

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Amazon Prime✖️30日間500円
TSUTAYA DISCAS30日間2,052円
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dTV✖️31日間550円
FOD✖️✖️976円
ABEMAプレミアム✖️2週間960円
Netflix✖️1,440円
クランクイン!ビデオ✖️14日間990円
mieru-TV✖️1ヶ月間990円
dアニメストア✖️31日間550円
◎☆:おすすめ、○:無料、☆:実質無料、△:別途有料、✖️:配信なし(2023年4月時点の情報。最新の配信状況は各サイトにてご確認ください)*実質無料とは、無料ポイント付与により別途料金を払わずに視聴できるということ。詳細:『ミスト』おすすめ無料フル視聴方法

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