『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』考察|最強同士の戦い|あらすじネタバレ感想・伝えたいこと解説|デヴィッド・イェーツ

『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』考察|最強同士の戦い|あらすじネタバレ感想・伝えたいこと解説|デヴィッド・イェーツ

概要

 『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』は、2007年に公開されたイギリスのファンタジー映画。監督はデヴィッド・イェーツ。原作は2003年に発表されたイギリスの作家J・K・ローリングの同名小説

 前作は『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』、次作は『ハリー・ポッターと謎のプリンス』。ダニエル・ラドクリフ、エマ・ワトソンのほか、新たにイメルダ・スタウントン、ヘレナ・ボナム=カーターが出演している。

 ヴォルデモート復活の真実から目を背ける魔法省と戦いながら、ヴォルデモートの策略に抵抗するハリーたちと不死鳥の騎士団の物語。

「ハリポッター」シリーズはほかに『ハリ・ポッターと賢者の石』『ハリー・ポッターと秘密の部屋』『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』『ハリー・ポッターと死の秘宝PART1』『ハリー・ポッターと死の秘宝PART2』『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』などがある。

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登場人物・キャスト

ハリー・ポッター(ダニエル・ラドクリフ):額に傷をもつ。ヴォルデモートに両親を殺されている。
(他の出演作:『ガンズ・アキンボ』『スイス・アーミー・マン』)

ハーマイオニー・グレンジャー(エマ・ワトソン):マグル生まれの魔法使い。ハリーの親友。知識が豊富で、魔法も得意。

ロン・ウィーズリー(ルパート・グリント):ハリーの親友。ハーマイオニーのことが気にかかる。

ドローレス・アンブリッジ(イメルダ・スタウントン):魔法省の上級次官。闇の魔術の防衛術の教授。ハリーたちの集会を妨害しようと校則を立てまくる。のちに校長になる。

シリウス・ブラック(ゲイリー・オールドマン):ハリーの名付け親。家を不死鳥の騎士団の本部に貸している。
(他の出演作:『レオン』、クリストファー・ノーラン監督バットマン ビギンズ』『ダークナイト』『ダークナイト ライジング』)

ヴォルデモート卿(レイフ・ファインズ):闇の帝王。死喰い人を集め、世界を支配しようとしている。

アラスター・ムーディ(ブレンダン・グリーソン):通称マッド・アイ・ムーディー。不死鳥の騎士団のメンバー。
(他の出演作:『オール・ユー・ニード・イズ・キル』)

アルバス・ダンブルドア(マイケル・ガンボン):ホグワーツの校長。

セブルス・スネイプ(アラン・リックマン):スリザリンの寮長。不死鳥の騎士団のメンバー。

ベラトリックス・レストレンジ(ヘレナ・ボナム=カーター):ヴォルデモートの副官。アズカバンから脱獄。
(他の出演作:『レ・ミゼラブル』『ファイト・クラブ』『オーシャンズ8』)

名言

シリウス:われわれはみんな、光と影を心の中に持っている。問題は、どちらを選び、行動するかだ。それが、本当の自分を決める(We’ve all got both light and dark inside us. What matters is the part we choose to act on. That’s who we really are.)

シリウス:いいぞ ジェームズ!(Nice one, James!)

ダンブルドア:今宵ここに来たのは愚かじゃったのう、トム。じき闇祓いが来る(It was foolish of you to come here tonight, Tom. The Orders are on their way.)
ヴォルデモート:その前に俺様は消え、貴様は——死んでおるわ(By which time I shall be gone, and you… shall be dead.)

ダンブルドア:ハリー、いかにあやつと似ているかではない。いかに違うかだ(Harry… It’s not how you are alike. It’s how you are not…)

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あらすじ・ネタバレ・内容

 夏休み、ハリーとダドリーが路地を歩いていると、突然ディメンターに襲われる。ハリーは守護霊の呪文でディメンターを追い払うが、禁止されていた未成年の魔法の使用が原因で、魔法省はハリーにホグワーツからの退学を迫り、正式な処分は後日に開かれる懲戒尋問によって決定されることになる。

 ダーズリー家にいたハリーを迎えに不死鳥の騎士団のメンバーが現れ、ハリーと共に騎士団の本部・ブラック邸に向かう。そこにはシリウスは勿論のこと、ウィーズリー家やハーマイオニーなども集まっていた。フレッドとジョージの力を借りて大人たちだけの会議を盗み聞きし、ヴォルデモートが前回にはなかった何かを探している事を知る。

 魔法省の懲戒尋問に出席すると、魔法大臣コーネリウス・ファッジや、上級次官ドローレス・アンブリッジがいた。時間を騙されたダンブルドアは遅れて登場し、証人のアラベラ・フィッグと共に、ハリーの使った魔法は自衛のためだと証明したあと無罪を勝ち取る。

 新学期、ハグリッドは諸事情により不在で、闇の魔術に対する防衛の担当はアンブリッジになる。アンブリッジは魔法省の方針により、実戦演習は全くさせず理論だけを教える。このことに危機感を覚えたハリーたちは、学生たちが集まりハリーを教師として実技を学ぶ、ダンブルドア軍団を結成する。

 ホグワーツへの魔法省の介入によって、アンブリッジはホグワーツ高等尋問官に任命され、強い権限を得る。その過程で占い学のトレローニー教授を停職に追い込み、ダンブルドアと口論になる。またハリーたち生徒が集会を開いていると疑い、数々の校則を新たに決め、生徒への締め付けを厳しくしていく。

 ある日、玉が置いてある神秘的な場所でハリーは自分が蛇になり、ロンの父アーサーを襲撃している夢を見る。ダンブルドアに報告すると、すぐさまアーサー救出に人を送り彼を助ける。ハリーとヴォルデモートの結びつきを逆用される事を恐れたダンブルドアは、スネイプに閉心術を教えるよう命ずる。

 ハグリッドがホグワーツに戻ってきたと知り会いに行くと、彼は傷だらけになっていた。ハグリッドはダンブルドアの命令で巨人族に共闘を求めに行ったが、同じ目的で現れた闇祓いと遭遇したという。アンブリッジは半巨人のハグリッドを憎み、解雇しようと計画する。翌日、アブカバンから腹心ベラトリックス・レントレンジを含め死喰い人が10人脱獄する。またハグリッドは自分が解雇されるのに備えて、禁じられた森にいる巨人の子供グロウプの世話をハーマイオニーたちに頼む。

 ダンブルドア軍団の活動はうまくいっていたが、チョウによってアンブリッジにバラされてしまう。団体名がダンブルドア軍団だったことから、ダンブルドアが魔法省に対抗するための軍事組織を作ろうとしていたと疑い逮捕しようとする。ダンブルドアは逃げることに成功するが、アンブリッジが校長に就任する。アンブリッジはダンブルドア軍団の生徒を厳しく罰し、生徒たちの鬱憤は溜まっていく。

 ダンブルドアが消えた後も、スネイプの特訓は続いていた。しかしスネイプに心を覗かれることに耐え兼ねたハリーは、咄嗟に防御の呪文を放ち、逆にスネイプの過去を覗いてしまう。そこにいたのは、スネイプを虐める高慢なハリーの父ジェームズだった。ハリーはジェームズが理想の父からかけ離れていたことに失望する。またスネイプは激昂し訓練は今後行われないことになる。

 普通レベル魔法試験(O.W.L)、通称フクロウの試験途中に、アンブリッジの抑圧に耐えかねたフレッドとジョージが、試験をめちゃくちゃにして学校を自主退学する。生徒たちが熱狂するなか、ハリーはアーサーが襲われた場所でシリウスが拷問されている夢を見る。ハリーたちはアンブリッジの部屋にある暖炉から移動しようと試みるが、アンブリッジに見つかり拷問されそうになる。

 拷問のために呼ばれたスネイプに、シリウスが捕まった事を暗に伝える。ハーマイオニーはダンブルドアの武器が禁じられた森にあると言ってアンブリッジを誘き出し、グロウプとケンタウロスの力を借りて彼女を倒す。

 合流したハリー、ロン、ハーマイオニー、ネビル、ジニー、ルーナは、シリウスが拷問された魔法省の神秘部に向かう。そこでハリーの名前が添えられた玉を発見する。ヴォルデモートが探し、不死鳥の騎士団が隠そうとしていたものは、このハリーの予言が入った玉だった。

 そこに死喰い人が現れ予言を渡すよう迫る。シリウスが拷問されていたのは、ヴォルデモートが見せた夢で、ハリーを誘き出し予言を手に入れる策略だった。ハリーたちは死喰い人と対決するも、劣勢に追いやられる。そこに不死鳥の騎士団のメンバーが救出に現れ、激しい戦闘になり、その途中で予言が破壊される。またベラトリックスが放った死の呪文でシリウスは死亡し、謎の石のアーチの向こうに消える。

 怒りに囚われたハリーは、ベラトリックスを殺そうとし、現れたヴォルデモートも唆す。だがそこにダンブルドアが登場し、ヴォルデモートとの一騎討ちを繰り広げる。ヴォルデモートとベラトリックスは逃亡する直前にハリーの体を乗っ取ろうとするが、ハリーの力強い抵抗により失敗する。異変を感じ現れたファッジや魔法省の役員はヴォルデモートを目撃したことで、ついに悪の帝王の復活を認めるのだった。

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解説

ヴォルデモートだけでなく、魔法省とも戦う羽目に

 ついにヴォルデモートによる暗黒の時代がふたたびやってきた。前作『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』のラストで復活したヴォルデモートは、死喰い人を呼び集め闇の力を蓄える。ヴォルデモートが猛威を奮った十数年前と同様、行方不明者が続出し、状況は悪くなるばかりである。

 このような状況で、ダンブルドアたちも不死鳥の騎士団を再結集し、ヴォルデモートに対抗しようと準備を進める。闇祓いのマッド・アイ・ムーディーとトンクス、魔法省勤務のキングスリーとアーサー、ジェームズの親友のシリウスとルーピンなど。シリウス邸を本部にした不死鳥の騎士団も、錚々たるメンバーを集め懸命な抵抗を試みる。

 それでも状況が悪くなり続けるのは、魔法省のトップ、コーネリウス・ファッジがヴォルデモートの復活を否定しようと躍起だからだ。ヴォルデモートと死喰い人の行動からは目を背け、数々の不審な事件は全てシリウス・ブラックの犯行とされ野放しにされる。不死鳥の騎士団はヴォルデモートと戦うと同時に、魔法省とも戦わなくてはならない。そして魔法省は、ホグワーツに魔法省上官アンブリッジを送り込むことで、魔法学校を掌握しにかかる。ハリーたちは学校を戦場として、魔法省の圧政に勝負を挑む。

原作から削られた部分

 本作も前作同様、上下巻の作品を一本の映画で見事に表現している。物語を大幅に削りながらも、友情、葛藤、孤独、抵抗などのエッセンスを抽出し、不自然がないよう繋げ、飽きさせることはない。しかも原作はシリーズ最長で、映画はシリーズ二番目の短さというのだから、その華麗な手腕に驚かされる。

 とはいえ、プロット上重要なのだが、仕方なく削られたところも多々ある。ハーマイオニーとロンが監督生に選ばれハリーはより孤立感を深めている場面や、シリウス邸の屋敷しもべがヴォルデモートに情報を流していたこと、シリウスが家から出られず苛立ちを募らせていたことなど。これらの要素が加われば物語はよりスムーズに進行し、観賞後の満足感は増大したことだろう。

 だがその欠点を差し引いても、映画の出来栄えは見事と言うほかない。孤独感を強めるハリー、魔法省の役人アンブリッジの圧政という暗く静かな雰囲気から、ダンブルドア軍団の結成とアンブリッジへの抵抗というワクワクを経由して、シリウスの死、そしてダンブルドアとヴォルデモートの対決へと至り、絶望感に沈み高揚感に浸る。そしてこれから起こるであろうヴォルデモートとの熾烈な戦いを、まざまざと予感させる。

考察・感想

シリウスはジェームズとの共闘を夢見る

 本作でも他のシリーズ作品と同様、際立った魅力を放つのはルールを破る人たちだ。ホグワーツ内では双子のフレッドとジョージ、外ではシリウス・ブラックが、自らの危険を顧みずルールを破る。

 ヴォルデモート復活から目を逸らそうと躍起になる魔法省は、闇の魔術の防衛術の教授にアンブリッジを送り込み理論のみを教えようとするが、ヴォルデモートの復活を肌身で感じている生徒たちは、危機感を募らせダンブルドア軍団を設立する。

ハーマイオニー:ワクワクしない?校則を破るのって

 ダンブルドア軍団の結成やその集会は、勿論アンブリッジが新たに作った校則に違反するのだが、だからこそハリーたちは「ワクワク」する。校則は破るためにあるのだ。そしてその極地にフレッドとジョージがいる。ダンブルドア軍団の集まりを止められ体罰をしてくるホグワーツから学べることはもはやない。彼らはフクロウ試験をメチャクチャにして、そのまま学校を去り、新たな楽しみを探しに行く。

 そして学校の外ではシリウス・ブラックが危険を犯す。魔法省が数々の事件の犯人としてシリウス・ブラックを追っているにもかかわらず、ハリーを送るために駅にまで出てきてしまう。しかしこれはハリーのためというより、家に閉じ込められてストレスが溜まっているからで、彼のヤンチャで破天荒な性格はジェームズと遊んでいた時から全く変わっていない。

 シリウスはハリーたちの救出という名目で、騎士団本部から外に出られたため開放感に酔いしれる。死喰い人との戦闘で楽しそうにしているのはそのためだ。そのことを全身で表現するかのように、彼の動きはしなやかでどこかおちゃらけて見える。しかし彼はレストレンジに一瞬の隙をつかれて死んでしまう。その直前、名付け子のハリーと夢の共闘を果たしたシリウスは、ハリーがルシウスの杖を弾き飛ばしたのを見て、こう声をかける。

シリウス:いいぞ!ジェームズ!

 彼は死の直前まで、おちゃらけながらも、ルールを破り人生を楽しむ偉大な人物だった。シリウスは死んでしまったが、最後は幸せだったに違いない。死の直前に、ジェームズとの共闘を昔のように楽しめたのだから。

ダンブルドアとヴォルデモートの夢の対決

 そしてもう一つ見逃せないのが、ダンブルドアとヴォルデモートの対決である。史上最強の魔法使いと闇の帝王との対決は、一体どのようなものになるのだろうか。

ダンブルドア:今宵ここに来たのは愚かじゃったのう、トム。じき闇祓いが来る。
ヴォルデモート:その前に俺様は消え、貴様は——死んでおるわ

 流石は魔法使いの頂上決戦。どちらも余裕を感じさせる。そして二人の魔法対決は声を荒げたり、呪文を唱えたりはしない。そこで繰り広げられるのは、どちらが上かを見せつける、力と力のぶつかり合いである。この戦いはシリーズ史上最も心昂るシーンである。一見の価値ありだ。

どちらを選び、行動するかだ。それが、本当の自分を決める

 ところで「ハリー・ポッター」シリーズの伝えたいことの一つは、人間の価値を決めるのは、性質や血筋ではなく、何を選んだかということだった。本作でハリーはヴォルデモートとの結びつきを強く感じ、彼と同期して怒りの感情を覚えたことで、自分がヴォルデモートと似ているのではないかと不安になる。そんなハリーに道を示してくれるのは、ここでもやはりシリウスである。

シリウス:われわれはみんな、光と影を心の中に持っている。問題は、どちらを選び、行動するかだ。それが、本当の自分を決める

 しかしこの言葉を聞いてもハリーは悩み続ける。ホグワーツでは孤独を感じ、夢の中ではヴォルデモートと同化し、日常生活では制御できない怒りを感じる。そしてシリウスを殺したレストレンジを追い詰めようとするハリーの感情に、どす黒い負の感情が湧き立つ。ハリーはレストレンジを殺そうとし、その負の感情の隙をついてヴォルデモートがハリーを乗っ取ろうとする。

 けれども重要なのは、シリウスが言うように、「どちらを選び、行動するか」なのだ。苦しむハリーにダンブルドアは、選択の重要性をシリウスとは別の角度から説く。

ダンブルドア:ハリー、いかにあやつと似ているかではない。いかに違うかだ

 いかに似ているかではない、いかに違うかだ。そしてその違いは、どのような選択をしたのかの違いでもある。ハリーはホグワーツに戻り、ハーマイオニーやロンなどの信頼できる仲間の存在を確認し、ヴォルデモートとの違いをはっきりと認識する。そしてハリーは仲間と共に、ヴォルデモートに立ち向かうのだ。

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