『バットマン ビギンズ』考察|ダークでクールなスーパーヒーロー|あらすじ解説|感想|クリストファー・ノーラン

『バットマン ビギンズ』考察|ダークでクールなスーパーヒーロー|あらすじ解説|感想|クリストファー・ノーラン

概要

 『バットマン ビギンズ』は、2005年に公開された英米合作のSFアクション映画。監督はクリストファー・ノーラン。『ダークナイト トリロジー』の第1作目。次作は『ダークナイト』、次々作は『ダークナイト ライジング』。

 DCコミックスの出版するアメリカン・コミック『バットマン』を原作とした実写映画作品で、ダークでクールなバットマン誕生の秘話に迫る。

 ノーランはほかに『メメント』、『インセプション』、『インターステラー』、『ダンケルク』、『TENET テネット』などがある。

 クリスチャン・ベールは『3時10分、決断の時』、ゲイリー・オールドマンは『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』『ハリー・ポッターと死の秘宝PART2』、モーガン・フリーマンは『セブン』『LUCY / ルーシー』に出演をしている。

 ヴィジランテ映画はほかにスコセッシ監督の『タクシードライバー』、『アメイジング・スパイダーマン』などがある。

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登場人物

ブルース・ウェイン(クリスチャン・ベール):バットマン。父アーサーが築き上げたウェイン産業の跡取り。表ではプレイボーイとして、裏ではバットマンとして活躍する。幼少期に落ちた井戸でコウモリに襲われたことがトラウマになっている。

ヘンリー・デュカード(リーアム・ニーソン):影の同盟の頭領。ラーズ・アル・グールとも呼ばれる。ブルースを発見し鍛え上げる。本当の目的はゴッサムシティの破壊であり、ブルースと対決することになる。

レイチェル・ドーズ(ケイティ・ホームズ):地方検事補。ブルースの幼なじみ。母はアーサーに仕える執事。正義と平等を信念にもち、悪にも怖じけず果敢に戦いを挑む。

アルフレッド・ペニーワース(マイケル・ケイン):執事。アーサーの時代から勤めている。ブルースのことは生まれた頃から世話をしていて、ブルースが道を踏み外そうとするときに助言を与えられる唯一の人物。

ジェームズ・ゴードン(ゲイリー・オールドマン):巡査部長。汚職まみれの警察関係者の中で、実直かつ誠実に悪に立ち向かう。その姿勢を買われ、ブルースから協力を頼まれる。

ルーシャス・フォックス(モーガン・フリーマン):ウェイン産業の応用科学部所属。元役員でアーサーとも懇意にしていたが左遷された。ブルースがバットマンとして活躍するために装備や武器を開発する。アルフレッドのほかにブルースが信頼する数少ない人物。

ジョナサン・クレイン(キリアン・マーフィー):ファルコーニが息のかかった精神科医。裏ではデュカードと組んでおり、ファルコーニを裏切る。またブルースやレイチェルを幻覚剤で倒すなど、戦いにも慣れている。自らが幻覚剤を摂取したときはスケアクロウと名乗っていた。

ラーズ・アル・グール(渡辺謙):影の同盟のメンバー。ブルースの前では頭領のフリをしていたが、デュカードの影武者だった。

名言

Thomas:And why do we fall? So we can learn to pick ourselves up.
ブルースの父トーマス:人はなぜ堕ちる?這い上がるためだ。

AFalcone: This is a world you’ll never understand. And you always fear what you don’t understand.
ファルコーニ:ここは、おまえが決して理解することがない世界だ。おまえは理解することなく恐れ続けるんだ

Never.
アルフレッド:決して

あらすじ・ネタバレ

 ブルース・ウェインは幼馴染みのレイチェルと庭で遊んでいると、間違って古井戸に落ちてしまいコウモリに襲われる。ゴッサム・シティの富豪で父のトーマスはブルースを助け「人はなぜ堕ちる?這い上がるためだ」と教える。だがそれ以来、コウモリに深い恐怖心を抱くようになる。

 両親と劇場に来たブルースがコウモリ役の姿を怖がり外に出たところ、強盗に襲われ両親は射殺されてしまう。孤児となったブルースは執事のアルフレッドに育てられ、会社の経営は他の人が受け継がれる。

 14年後、ウェイン夫妻殺害事件の犯人ジョー・チルは、マフィアのボスであるファルコーニを売ることで仮釈放される。チルを殺害するためにブルースは待ちかめていたが、ファルコーニの手下が射殺してしまう。地方検事補佐として活躍するレイチェルは、殺害しようとしたブルースを叱りファルコーニこそが悪の元凶だと説く。ブルースはファルコーニのもとを訪れるが、何もすることができず自分の非力さを痛感する。

 プルースは犯罪者の心理を理解すべく世界中を駆け巡り、雪山に住むラーズ・アル・グールが率いる影の同盟にたどり着く。そこでデュカードを師とし修行に励み、恐怖心を克服する。だが影の同盟の目的がゴッサムの破壊であると知ると決別し、屋敷に火を放ちゴッサムに舞い戻る。

 そこでウェイン産業の元役員で応用科学部に左遷されたルーシャス・フォックスに頼み、悪と戦うための武器を準備する。表舞台ではプレイボーイとして、裏ではバットマンとして悪と闘う生活が始まる一方、あまりのプレイボーイぶりにレイチェルからは軽蔑される。

 汚職で信用ならない警察関係者の中からゴードン巡査部長に協力を仰ぎ、麻薬密輸現場でファルコーニを逮捕する。ファルコーニが息のかかった精神科医ジョナサン・クレインを呼び出したところ、幻覚剤を吹きつけられナローズ島のアーカム精神病院に収容される。

 バッドマンはナローズ島に潜入し、クレインと遭遇。幻覚剤でやられるも、アルフレッドに助けられ、解毒剤をフォックスが量産する。レイチェルはクレインに捕まり幻覚剤を使われるも、バッドマンが救出し解毒剤で助ける。

 自らの誕生パーティーに出席したところデュカードが現れ、彼こそが本物のラーズ・アル・グールであることを知る。デュカードの作戦は幻覚剤を下水道に流し込み、ウェイン産業から盗んだマイクロ波放射器で幻覚剤を拡散させるというものだった。ブルースに誘いを断られたデュカードは、屋敷に火を放ち計画を実行に向かう。アルフレッドに助けられたブルースは、レイチェルを安全な場所に移したあと、デュカードとの戦いに挑む。

 放射器を乗せた列車で、ブルースはデュカードに勝利。ブルースが脱出したタイミングで、ゴードンが砲撃でモノレールを倒壊させ、放射器を破壊、デュカードは亡くなる。

 ついにゴッサムに平和が訪れた。社長アールは解任し、フォックスが新社長に就任。レイチェルはブルースに過去の発言を謝り、ブルースのことを想い続けていたというが、バットマンであることが必要とされているということから別れると告げる。警部補に昇進したゴードンは、新たな敵ジョーカーが現れたことをバットマンに告げる。

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解説

「バットマン」シリーズの歴史と差異

 『バットマン ビギンズ』はクリストファー・ノーランが監督する『ダークナイト トリロジー』の第1作目であり、バットマン誕生の秘話を描くダークファンタジーである。

 DCコミックスが出版する『バットマン』を原作とした実写映画は、これまでに5作制作されていた。最初に作られたのが『バットマン オリジナル・ムービー』で1966年のことである。その後ティム・バートン監督が1989年に『バットマン』、1992年に『バットマン リターンズ』を制作し「バットマン」シリーズを始動、ティム・バートンの持ち味が遺憾無く発揮され、ダークなバットマンのイメージを鮮烈に印象付けた。しかし1995年に『バットマン フォーエヴァー』、1997年に『バットマン&ロビン/Mr.フリーズの逆襲』がジョエル・シュマッカー監督により制作されると、批評家の酷評にあいこれまで4作続いていた「バットマン」シリーズが終わりを迎えることになる。

 そのような状況で、前作から8年後、新たに「バットマン」シリーズのリブートして制作されたのが、『バットマン ビギンズ』というわけだ。この作品ではバットマンに扮するブルースの幼少期から始まり、修行期を経てゴッサムシティーを悪の手から救い出すダークヒーローとして大成するまでが描かれる。

 これまでの作品との違いは、ヒーローとしてのバットマンだけでなく、人間としてのブルースを描いた点にあるだろう。バットマンはスーパーヒーローでありながら、親を殺され心に闇を抱えた人間である。バットマンとして闇に紛れて悪を打ち倒すその姿は悪と表裏一体だ。だからバットマンは信念を持ったスーパーヒーロである一方で、不気味な暗い影を抱え込んでいる。その二面性の表現は好意的に受け取られ、批評家から高く評価されることになった。さらに2005年の全世界興行収入ランキングで9位となり、興行収入でも大成功を収めたのである。

考察・感想

バットマンの光と影——人はなぜ堕ちる?這い上がるためだ

 バットマンのダークな一面は、両親を殺されたという事実だけに起因するのではない。むしろ両親と共に劇場を後にしなくてはならなくなった原因のほうが、ブルースにとっては重要だ。彼はレイチェルと屋敷の庭で遊んでいたある日、不運にも井戸に落ちてしまう。誰もいない漆黒の闇の中で、彼はコウモリに襲われてしまい、真の恐怖を植え付けられる。ブルースにとってコウモリは恐怖の対象でしかない。そしてそれが原因となり両親を失ってしまうのだ。

 だがただ単に恐怖を植え付けられたわけではない。井戸の底で恐怖に怯えたブルースを助けにきた父であるアーサーはこう声をかける。

And why do we fall? So we can learn to pick ourselves up.

 人はなぜ堕ちる?這い上がるためだ。アーサーのこの言葉はブルースの人生における指針になる。彼は絶望で動けなくなるとき、暗闇のなか苦しみに耐えるとき、この言葉を思い出すのだ。

 ここにバットマンにおける二面性の本質が現れている。絶望と希望が、落下と上昇が、彼にとっては等価にあるのだ。彼は一度落ちた。それは同時に這い上がる契機でもある。闇に飲まれそうになるとき彼はこの言葉を思い出す。彼にとって絶望は常に希望への相転移と共にある。

街の象徴はモノレールからバットマンへ

 アーサーが恐怖心を克服するために訪れるのが、雪山の奥地を本拠地とする影の同盟である。影の同盟はどうやら忍者の集団で、社会の秩序を守るべく裏で秘密工作をしている組織らしい。アーサー夫妻が射殺される原因となったゴッサムの不況も、彼らの仕業というのだ。

 ここで安易に呼び寄せられる東洋風の想像力は結構笑える。絶望の克服はゴッサムの外部で、しかも東洋との接触によってなされなくてはならないのだ。頭領のラーズ・アル・グールは、替え玉ではあったのだが、渡辺謙が演じている。忍者を率いているのだから日本人と理に適っていそうだが、どちらかというと中国人風である。だが彼が喋る言語は何語か判別がつかずまるで呪文のようである。渡辺謙が演じるラーズ・アル・グールは大した役ではなく、頭領でないどころか、アーサーに助言一つすらすることのない噛ませ役である。コミュニケーションが取れないのだから仕方ないと言われればそれまでだが。

 ところでトッド・フィリップス監督の『ジョーカー』と違い、アーサーは弱者に優しい完璧な善人として描かれている。彼は影の同盟に唯一抵抗した人物であり、貧富の差を是正するために奮闘した傑物である。彼の功績でもあり平等の象徴でもあるのが、街の中心に伸びるモノレールだろう。彼はこの建設に貧富の差の解消を夢見て命をかけて尽力したのである。

 だからこそデュカードは、モノレールを街の破壊のために逆用する。彼はモノレールを使用して街を破壊することで、アーサーからブルースへと引き継がれた理念ごと壊すつもりなのだ。この逆用をブルースはさらに逆用する。ブルースは父アーサーの遺産であり街の象徴でもあるモノレールを、ゴードンと共に破壊するのだ。この破壊の意義は大きい。つまりモノレールからバットマンへ、街の象徴が変化したのだ。貧富の差の根本的な解消ではなく、二面性を抱えたヒーローによる恐怖の統治。ゴッサムシティでは夜になると、バットマンの印が空に映る。悪は闇に潜むバットマンを恐れ影を潜める。だがこれは本質的な解決になっているのだろうか。貧富の差が際立ったゴッサムで、二元論に囚われない新たな悪ジョーカーが誕生する。次回作『ダークナイト』で、アーサーはこの問題に真っ向から取り組むことになるのだ。

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