概要
『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』は、2014年に公開されたアメリカのコメディドラマ映画。原題はChef。監督・脚本・製作・主演はジョン・ファヴロー。出演はジョン・レグイザモ、スカーレット・ヨハンソン、ロバート・ダウニー・Jr。
天才でありながらも不器用な料理人カールが、有名レストランをクビになったのを機に移動屋台を始め、息子との関係や料理との向き合い方が変化していく物語。
ヒューマン映画はほかに『レ・ミゼラブル』『フォレスト・ガンプ/一期一会』『ターミナル』などがある。
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登場人物・キャスト
カール・キャスパー(ジョン・ファヴロー):腕はいいが大人気ないシェフ。店の経営者とうまくいかず、退職させられる。そこで一念発起して、移動屋台で料理を作ることにする。
(他の出演作:『アイアンマン』『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』)
パーシー(エムジェイ・アンソニー):カールとイネズの息子。10歳。
マーティン(ジョン・レグイザモ)カールの助手で親友。
(他の出演作:『ジョン・ウィック:チャプター2』)
イネズ(ソフィア・ベルガラ)カールの元妻。
トニー(ボビー・カナヴェイル)カールの助手。
モリー(スカーレット・ヨハンソン)ソムリエ。カールの元恋人で友人。
(他の出演作:『LUCY / ルーシー』『プレステージ』)
ラムジー・ミッシェル(オリヴァー・プラット):カールの料理を酷評した料理評論家。
リーバ(ダスティン・ホフマン)レストランのオーナー。
マーヴィン(ロバート・ダウニー・Jr):イネズの最初の夫。
(他の出演作:『シャーロック・ホームズ』『シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム』、フィンチャー監督『ゾディアック』)
あらすじ・ネタバレ・内容
カール・キャスパーはロサンゼルにある有名レストランで、雇われシェフをしていた。彼は若い頃から名を馳せた超一流の料理人で、厨房には一切口を出さないという条件で働いていた。
仕事では部下からも慕われうまくいっている一方で、家庭では数年前に妻イネズと離婚し、10歳の息子パーシーと離れて暮らしていた。カールは仕事に熱中するあまりパーシーを気にかけることはせず、彼は寂しい思いをしていた。パーシーはカールに影響され仕事場に行きたいとお願いするも、カールは拒否する。すれ違う二人の気持ちを、側から見ていたイネズは心配していた。
ある日、ネット界で多大なる影響力がある料理評論家が、カールの店にくるという情報が入る。評論家のラムジーは若い時にカールの料理を食べて以来のファンで、今回の訪問も楽しみにしていた。カールはラムジーが訪れる日に備えて新作料理を考案する。
しかしオーナーのリーバは、長年愛され続けてきた定番コースを出すようカールに要求する。厨房には口を出さない契約だと反論するが、雇い主であることを理由にリーバも一切引く様子がない。結局折れたカールが定番コースを提供するが、ラムジーに酷評されてしまう。そのことを知ったカールは、息子パーシーに教わったSNSを使って、ラムジーに暴言を吐きかける。
翌日、カールの投稿が炎上し、ラムジーとカールの対決が話題になる。新作を食べに来いというカールの提案にラムジーは了解する。しかし、新たなメニューを出すことにリーバは再び反対し、従わないならクビにすると言い渡す。怒ったカールは辞職し、代わってトニーがシェフを務めることになる。ラムジーは出された料理に失望しSNSで酷評する。それを観たカールはラムジーの前に現れ、喧嘩が勃発する。その様子はSNSで瞬く間に拡散され、カールは次の職を探すのさえ困難になる。
そんなカールを心配して、イネズはフードトラックによる移動販売を提案する。イネズは元カレで経営者のマーヴィンをカールに紹介し、カールは古びたトラックを入手する。掃除を手伝うパーシーだったがあまりの汚さに投げやりになるも、カールによって料理に対する姿勢を教わる。さらに元助手のマーティンも加わり、マイアミからロサンゼルスに向かう3人の旅が始まる。
パーシーのSNSの宣伝が功を奏し、行く先々で人集りができるほどの人気を博する。この旅の中で、カールとパーシーはより触れ合いすれ違いを解消していく。しかしパーシーの夏休みの終わりが近づき、カールたちの旅も最終地点のロサンゼルスが近づいてきた。カールは日常に戻るようパーシーに伝える。しかし旅の思い出を回想しているうちにパーシーの存在の大きさに気づき、パーシーの望み通り放課後と週末は移動料理店を手伝うことを許可する。
ロサンゼルスに着くと、評論家のラムジーが現れる。ラムジーはカールの料理を褒め、新たな店を出店するための資金援助を申し出る。それからしばらくして、カールは店長として新たな店をオープンする。そこではカールはイネズと再婚を祝っていた。
解説
「アイアンマン」シリーズのジョン・ファヴローが描く天才像
本作の監督兼主人公はジョン・ファヴローである。ジョンといえば「アイアンマン」シリーズが有名で、『アイアンマン』から『アベンジャーズ/エンドゲーム』までのMCUの計7作作品で監督および役者として出演している。「アイアンマン」シリーズのジョンの役は、アイアンマンに扮する主人公トニー・スタークの運転手兼個人秘書というサポートキャラである。彼はトニーにいびられながらも信頼される、物語に欠かすことのできない愛すべき存在になっている。
ジョンが本作で演じるのは天才的な腕を持つ料理人カール・キャスパー。「アイアンマン」シリーズの役所とは打って変わって、彼は表舞台に立ち料理長として助手たちを引っ張る立場にいる。そしてカールはトニー・スタークと同様、天才であるが故に周囲と衝突する。料理に対して誰よりも一途に真摯に取り組む一方で、オーナーや家族との関係は崩壊しかけているのである。したがって物語は主人公カールの人間的成長と家族関係の修復を描く。特に、父カールと息子パーシーの心のスレ違いを、カールが得意とする料理を介して解消してくのが中心的なプロットになる。
この人間関係が破綻した天才という主人公の型は、ジョン・ファヴローが手掛ける「アイアンマン」シリーズと同型である。カール・キャスパーもトニー・スタークも、人間関係より好奇心を優先する。しかしこれは決して彼らが、非人間的だからでも冷淡だからでもない。むしろ子供のような純粋な心の持ち主だからこそ、そのような態度になってしまうのである。それゆえ彼らはある時には冷淡にみえて、またある時には人情に溢れた存在になる。
ジョン・ファヴローが描く理想的な人間像は、まさにこれである。彼らは人情深いわけでも人徳があるわけでもない。しかし孤独と純粋さの両方を持つ主人公たちは、好奇心の対象を介して人々と繋がることができる。好奇心の対象とはトニーなら科学技術、カールなら料理のことである。彼らは不器用なためにそれらのことしか愛することができない。だがそれらを愛することでトニーなら世界を、カールなら家族を再生させることができるのである。
考察・感想
個人の影響力が必要以上に増してしまうSNSの弊害
料理を介した人間関係の修復。それに加えて、本作では現代社会における必需品となったSNSの問題を取り上げる。
本作が公開された2014年は、SNSが市民権を得た時代である。誰しもが自分が得た経験を全世界に発信し、全世界の人々から承認を得て満足する時代。そしてその承認は次第に特定の人物に集中するようになり、インフルエンサーという名の影響力が強い人物を作り上げた。これまで個人が持てた影響力よりも遥かに大きい力をインフルエンサーは持つ。そんなインフルエンサーの発言は、良い方向にしろ悪い方向にしろ計り知れない。
本作に登場する評論家でインフルエンサーのラムジーは、カールに期待を裏切られ、料理に対するネガティブな感想を全世界に発信する。ラムジーの酷評が店に与えるダメージは計り知れない。このインフルエンサーの多大な影響力という問題は、ラムジーの味覚が正しいかという以前に、彼が知れるのは出された料理だけしかないという点にある。ラムジーはカールの店の料理を酷評するが、その料理は提供されるまでに多くの人の想いや愛情が詰まっている。そのような精一杯にやった成果が酷評され、しかも全世界に発信されるというのは、カールのような作り手にとってはたまったものではない。お前は一体何を知っているというのだ!と激怒するカールは、インフルエンサーによって不当に攻撃された現代の作り手の声を代弁している。
メッセージは全世界に公開されることはない、という従来の感性に立ち戻る
SNSの社会的地位の転換期においては、世代の差が如実に現れる。息子のパーシーはSNSを駆使して、カールが運営する移動式屋台を宣伝する。全世界に発信するということは悪いことばかりではないのである。その点、天才料理人のカールはSNSにかなり疎い。同僚のマーティンやトニーはある程度SNSを使いこなしているようだが、カールは聞いたことも触ったこともない。だからカールはパーシーから使い方を教わってすぐに、ラムジーに文句を送りつける。
このときに面白いのは、カールは相手への文句が世界に発信されると考えていないことである。彼はSNSを一対一のメールのように使っている。しかしこれこそが10年前のリアルである。ちょっと前まで自分の言葉を世界の人が見れるなんてことはあり得なかったのだ。
この感覚、メッセージは相手にだけ送ったものであり、全世界に公開するようなものではない、という一昔前なら当然であったこの感覚に、我々は何度でも立ち戻るべきである。若い世代はパーシーのようにSNSを使いこなし、科学技術をより良い方向に向かわせることができるかもしれない。しかしそれはラムジーという存在や、それに影響され加熱する人々という危険とセットである。そしていつかこれらの危険性も忘れ、私生活や読書や経験を全世界に公開するという感覚が一般的になり、従来の感性は忘却されてしまうだろう。しかしそれは決して普通のことではないのだ。
ラムジーへ送った暴言が全世界に公開されていることを知ってカールは驚き戸惑う。このカールの様子はもう既に忘れかけていた従来の感性を教えてくれる。その意味で、SNSが市民権を得ようとした変化の時代を表象する、重要な作品であるといえるだろう。
関連作品
評価(批評・評論・レビュー)
ロスの有名レストランで一流シェフとして働いていたものの、オーナーと喧嘩して店を辞めてしまったカール・キャスパー。仕事も名誉も失った彼が始めたのはキューバサンドを売る移動販売だった。『アイアンマン』シリーズの …… 全文
ーー cinemaisland.blog77.fc2.com(てくのすけ)
加筆中(おもしろい評論、または、載せてほしい論考などがありましたら、コメント欄にてお伝えください)
動画配信状況
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