『アイアンマン』考察|MCUの記念すべき第1作|あらすじ感想・意味解説|ジョン・ファヴロー

『アイアンマン』考察|MCUの記念すべき第1作|あらすじ感想・意味解説|ジョン・ファヴロー

概要

 『アイアンマン』は、2008年に公開されたアメリカのスーパーヒーロー映画。監督はジョン・ファヴロー。出演はロバート・ダウニー・Jr、グウィネス・パルトロー。

 アカデミー賞は音響編集賞と視覚効果賞の2部門でノミネート。

 マーベル・コミックの同名キャラクターをベースにしている。マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の第1作目である。

 武器開発を行う会社の社長トニー・スタークが、アフガニスタンで自社の製品がゲリラに回り命を奪っていることを知ったため改心し、アイアンマンとして活躍する物語。

 ヒーロー映画はほかに『ヴェノム』『ジャスティス・リーグ』『アメイジング・スパイダーマン』『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』などがある。

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登場人物・キャスト

トニー・スターク(ロバート・ダウニー・Jr):アイアンマン。天才発明家。スターク・インダストリーズのCEOであり大富豪。父は武器開発の天才だった。遊び人としてはっちゃけた人生を謳歌する一方、武器開発による世界平和の実現を望んでいた。だが拉致されたさいに自社の武器が人殺しに使われているのを目撃し、理念と経営方針を転換し、パワードスーツを開発して悪と戦う。
(他の出演作:『シャーロック・ホームズ』『シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム』『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』『ゾディアック』)

ジェームズ・“ローディ”・ローズ(テレンス・ハワード):アメリカ空軍武器開発部の中佐。軍とスパーク社のパイプ役。アイアンマンの正体を知りサポートをする。

オバディア・“オビー”・ステイン(ジェフ・ブリッジス):アイアンモンガー。スターク社のNo.2。トニーの父ハワードの盟友で創設期から活躍しトニーを支えてきた。だが実はトニーを殺害し会社を乗っ取ろうとしており、パワードスーツ「アイアンモンガー」を製造させトニーと戦う。

ヴァージニア・“ペッパー”・ポッツ(グウィネス・パルトロー):秘書。トニーの身の回りの世話までしている。トニーを異性として意識しているが、関係は発展せずにいる。
(他の出演作:デイヴィッド・フィンチャー監督セブン』)

クリスティン・エヴァーハート(レスリー・ビブ):記者。スターク社と武器が流出していることを突き止める。

ホー・インセン(ショーン・トーブ):外科兼物理学者。家族はテン・リングスの襲撃で失っている。捕虜になったトニーを外科手術で救い、命と引き換えにトニーの脱出を助ける。

ラザ・ハミドゥミ・アル=ワザール(ファラン・タヒール):テン・リングスの支部のリーダー。オバディアの依頼でトニーを拘束し、ジェリコを開発させようと強要する。

名言

トニー:私がアイアンマンだ。
Tony Stark:I am Iron Man.

あらすじ・ネタバレ

 武器開発を行うスターク・インダストリーズの社長トニー・スタークは、開発した新型ミサイル「ジェリコ」を披露するために、アフガニスタンにあるアメリカ空軍を訪問した。だが車の移動中にテロ組織「テン・リングス」に襲撃され、トニーは監禁される。

 目覚めたトニーは胸に車のバッテリーを繋げ一命を取り留めていることをを知る。手術をし自らも監禁されいてる外科医インセンは、心臓近くの破片を抜かなければ余命は1週間しかないと告げる。解放の条件にジェリコの組み立てを強要されたトニーは、組み立てと偽り、エネルギーを生み出す熱プラズマ反応炉「アーク・リアクター」の小型版を開発した後、胸に取り付ける。続けてパワードスーツを開発し、インセンの命がけの行動とスーツの圧倒的な力で脱出する。

 墜落した砂漠でローディらに救出されたトニーはアメリカに帰国する。アフガニスタンで自社の製品がゲリラに回り命を奪っていることを知ったため、記者会見で軍事産業からの撤退を宣言する。会社ではトニーの解任要求が提出されるが、彼は隠れて新たなアーマーの開発を行う。そしてアーマー3を開発したトニーは、一人でテン・リングスを撃退しに向かう。

 ところが、軍事産業から撤退したにもかかわらず、未だに自社製品がテン・リングスで使用されていた。裏取引で私腹を肥やしているものがいると判断したトニーは、ペッパーに内部事情の偵察を命じる。すると、オバディアがテン・リングスと繋がり、トニーを殺害しスターク社を乗っ取ろうとしていたことが判明した。トニーは捜査官フィルやペッパーと共に、オバディアの計画を阻止するために動き出す。

 一方、オバディアはゲリラたちから奪ったパワードスーツの残骸から、自分用のパワードスーツ「アイアンモンガー」を開発する。さらに不意打ちでトニーのアーク・リアクターを奪い立ち去る。旧型のアーク・リアクターで何とか回復したトニーは、アイアンモンガーに戦いを挑み、会社に置いてあった巨大なアーク・リアクターを利用して撃退する。

 この事件をきっかけに、謎のスーツをきたヒーローはアイアンマンと名付けられ有名になる。正体を隠せと周囲に言われていたトニーは、記者会見で「I am Iron Man」と宣言する。その後、トニーのもとにS.H.I.E.L.D.の長官、ニック・フューリーが現れ、「君にアベンジャーズの話をしに来た」と告げる。

解説

MCUの第1作『アイアンマン』の輝かしい評価

 『アイアンマン』はマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の記念すべき第1作目。公開されたのは2008年で、インフィニティ・サーガと呼ばれるフェーズのラストを飾る『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』が公開された2019年の間に、23作品もの系列映画が公開されたのだから驚きである。平均すれば毎年2本以上の映画が制作れていることになる。さらに、マルチバース・サーガと呼ばれるフェーズの第一弾フェーズ4では、2021年の初めから2022年末の約2年の間に、配信を含めて18作品も公開されている。映画史を鑑みても類のない異常なペースであることは間違いない。

 このような事態に発展するとは誰も想像だにしなかった2008年、本作は主人公を演じるロバート・ダウニー・Jrの演技が批評家に評価され、興行収入も大成功を収めた。またアカデミー賞は音響編集賞と視覚効果賞の2部門でノミネートし、MCUの開幕を告げるに相応しい輝かしい評価を得ることになった。

 さらに、2022年12月14日、本作品はアメリカ国立フィルム登録簿に追加されるとアメリカ議会図書館が発表した。MCUの作品が収録されるのは本作品が初めてであり、ヒーロー映画にとっても記念すべき年になったのである。

現代アメリカ社会を映す鏡

 主人公のトニー・スタークは、マーベル・コミックの同名キャラクターをベースにしている。元のアメコミでは、ベトナム戦争に向かったトニーが地雷を踏み現地ゲリラに捕まるといったストーリーだが、本作では2005年にリブートされたアイアンマン第4シリーズを踏襲し、アフガニスタンで襲撃された設定になっている。

 巨大軍需企業を経営してた父を継ぎ、天才的な頭脳を用いて新兵器をするところは原作と同様だが、本作のトニー・スタークにはそこに現代のIT社長的イメージが付け加わっているようにみえる。軍事産業の社長というより、スティーブ・ジョブズやイーロン・マスクのようなイメージのほうがしっくりくる。

 このように設定を少しずつ変更し現代調に直すことで、本作は0年代後半のアメリカの状況や理想を反映することになる。彼は大富豪でありながら、社会倫理や企業倫理を持ち、さらにスーパーヒーローとして活躍する。興行収入の成功からもわかるように、このような可能な限り最高で最善のヒーロー像が、現代のアメリカでは切に求められている。

考察・感想

仮面ライダーのような映像

 いまやMCD作品といえば、高度なCG技術と圧倒的な資本によって、他では得られない映像体験を提供してくれるのだが、2008年に公開された『アイアンマン』は意外にもちょっとダサい。拘束されたトニーがパワードスーツを装着し敵の前に現れ、砂の崖を背景に火炎放射を使用する場面は、仮面ライダーなどの休日に放送されていた日本のヒーローものの映像を想起させる。MCUといえども、当時はそこまで映像技術が高くなかったのだ。

 しかもテロ集団に常に監視されながら、アーク・リアクターやパワードスーツを二人だけで作り上げるという展開は無理がある。だがそこに日本のヒーローものに似たB級の香りがして憎めない。むしろ力技で乗り切る展開のほうが、ヒーロー感があって楽しめる。

 ところで、遊び人で挙動も変なせいでトニーの理想が分かりづらいが、彼は最初から世界平和を求める慈善家である。それと軍事産業会社の経営は矛盾だと指摘したくなるが、ここにトニーの、そして現代社会に生きる人々の能天気さと勘違いがある。トニーは軍事開発が世界平和に繋がると純粋に信じていたのだ。開発された兵器はアメリカ軍だけが使用し、市民を傷つけることはなく、抑止力として働く。だが実際はオバディアが兵器をテロ組織に横流しにしたり、市民を殺害するために使用されたりしている。

 したがって、アフガニスタンでテロ集団テン・リングスが、自社の兵器を使用していると知るや否や、会社の要である兵器開発の撤退を決断する。さらに悪を一人で倒せるようになるために、会社経営をそっちのけでパワードスーツの製作に取り組む。やはりここでも大富豪こそが企業倫理や社会奉仕を徹底すべきという理想が現れている。

主体を明かすアイアンマン、仮面で隠れるバットマン

 本作のラストからも分かるように、トニーは自己顕示欲を抑えられない。周囲の人々は混乱を招くためトニーがアイアンマンであると公表しないように助言するが、記者会見でメモを退けて「I am Iron Man.」と宣言してしまう。トニーは大富豪であり、慈善家であり、そしていまやスーパーヒーローでもあるのだ。

 これはクリストファー・ノーラン監督の『バットマン ビギンズ』で描かれたバットマンとは対称を成す。バットマンとアイアンマンの装着する仮面の意味が真逆なのだ。バットマンは自らの存在を隠すことで周囲に危害が加わらないように注意する。彼は「マスクを着けろ。お前自身のためじゃない。大切な人を守るためだ」(『ダークナイト ライジング』)と言うのはそのためだ。バットマンの顔を隠すマスクは、自分を隠すためではなく他人を隠すため、つまり、他人を守るために装着される。逆にトニーはマスクを取り、自分こそがアイアンマンだと告白する。これの鉄の仮面は自分を守るために装着されるのである。

 その意識の違いは見栄えにも反映されている。影に隠れるために黒く塗りぬぶされたバットマンの装備と違い、アイアンマンのスーツは赤と金で纏われている。だがこれをトニーの奢りだと考えてはいけない。何故なら現代が理想とするヒーローであるトニー・スタークは、大富豪であり、慈善家であり、ヒーローであると同時に、誰にも負けず周囲の人物を傷つけさせないほどの大きな力を得ているからだ。トニーは顔を公開し周囲が狙われても助けられるほどの、絶対的な力を有しているのである。

 影に隠れるバットマンと、表舞台で輝くアイアンマン。主義主張を異にする、二大ヒーローの姿がここにある。

関連作品

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評価(批評・評論・レビュー)

前回論じた『ダークナイト』が公開された2008年は『アイアンマン』の公開年であり、マーベル・スタジオが立ち上げられてその後MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)という形で、ひとつの世界観のもとにさまざまなヒーロー作品が制作されていく出発点となる、記念碑的な年だった。 …… 全文

ーー shinsho-plus.shueisha.co.jp(河野真太郎、文学者)

美やパワーに対する内なる欲求、憧れが強いのか、アメリカ人は肉体改造が大好きだ。ボディビルやプロレスの大会は、アナボリックステロイドをバンバン入れた大男ばかり。誰が見たって違法薬物を使用しているのに、当たり前の …… 全文

ーー movie.maeda-y.co(前田有一)

加筆中(おもしろい評論、または、載せてほしい論考などがありましたら、コメント欄にてお伝えください)

動画配信状況

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dTV31日間550円
FOD✖️976円
ABEMAプレミアム✖️2週間960円
Netflix✖️✖️1,440円
クランクイン!ビデオ✖️14日間990円
dアニメストア✖️31日間550円
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