概要
『ハリー・ポッターと死の秘宝PART1』は、2010年に公開されたイギリスのファンタジー映画。監督はデヴィッド・イェーツ。原作は2007年に発表されたイギリスの作家J・K・ローリングの同名小説。前作は『ハリー・ポッターと謎のプリンス』、次作は『ハリー・ポッターと死の秘宝PART2』。
闇の魔法使いヴォルデモートの分霊箱を見つけ破壊する旅にでたハリーたちの物語。
「ハリポッター」シリーズはほかに『ハリ・ポッターと賢者の石』『ハリー・ポッターと秘密の部屋』『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』がある。
登場人物・キャスト
ハリー・ポッター(ダニエル・ラドクリフ):額に傷をもつ。選ばれし子と呼ばれている。分霊箱を探すためハーマイオニー、ロンと旅にでる。
(他の出演作:『ガンズ・アキンボ』『スイス・アーミー・マン』)
ハーマイオニー・グレンジャー(エマ・ワトソン):ハリーの親友。知識が豊富で魔法も得意。ロンのことが好き。ハリーと共に旅にでる。
ロン・ウィーズリー(ルパート・グリント):ハリーの親友。ハーマイオニーのことが好き。ハリーと共に旅にでる。
ヴォルデモート卿(レイフ・ファインズ):闇の帝王。ハリー殺害を目論む。死の秘宝の一つ、ニワトコの杖を探している。
セブルス・スネイプ(アラン・リックマン):ホグワーツの校長。前作でダンブルドアを殺害した。
ジニー・ウィーズリー(ボニー・ライト):ロンの弟。ハリーと付き合っている。
ルビウス・ハグリッド(ロビー・コルトレーン):大男。不死鳥の騎士団のメンバーで、七人のハリー作戦ではハリー本人を護衛する。
アラスター・ムーディ(ブレンダン・グリーソン):通称マッド・アイ・ムーディー。不死鳥の騎士団のメンバー。七人のハリー作戦で指揮をとる。
(他の出演作:『オール・ユー・ニード・イズ・キル』)
ベラトリックス・レストレンジ(ヘレナ・ボナム=カーター):ヴォルデモートの副官。マルフォイの館でハーマイオニーを拷問する。
(他の出演作:『クラウド アトラス』)
ナルシッサ・マルフォイ(ヘレン・マックロリー):ドラコの母。ドラコのことを気にかけている。
ホラス・スラグホーン(ジム・ブロードベント):ホグワーツの魔法薬学の教授。
(他の出演作:『ファイト・クラブ』『レ・ミゼラブル』『オーシャンズ8』)
ドビー(声 トビー・ジョーンズ):自由な屋敷しもべ。
(他の出演作:『ミスト』)
名言
ハーマイオニーの幻覚:あなたを好きな人なんている?どんな女性があなたと付き合う?あなたはカスよ、カス。ハリーと比べたらね
Hermione:Who wouldn’t prefer him? What woman would take you? You are nothing… nothing… nothing compared to him…
ドビー:ドビーには主人などいません。ドビーは自由な妖精です。ドビーはハリー・ポッターとハリーの友だちを助けに来たのです
Dobby:Dobby has no master. Dobby is a free elf, and Dobby has come to save Harry Potter and his friends!
ハリー:ドビーを埋めてあげたい。きちんと。魔法は使わずに
Harry:I want to bury him. Properly, without magic.
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あらすじ・ネタバレ・内容
ダンブルドアの死後、ヴォルデモートは敵対する者を殺害し、着実に勢力を伸ばしていた。ハリーは未成年のため「におい」が付いていて、魔法を使用すると居場所がバレてしまう。そのためダーズリー家に不死鳥の騎士団が集結、ポリジュース薬でハリーに変身し、箒でウィーズリー家の「隠れ穴」へ向かう。「7人のポッター作戦」でハリーに変身したのは、ロン、ハーマイオニー、フレッド、ジョージ、フラー、マンダンガス。それぞれ二人一組で行動し、ハリーはハグリッドと移動する。
飛び立った瞬間、ヴォルデモートたちに襲撃される。この戦いでマッド・アイ・ムーディーと梟ヘドウィグが死亡、ジョージが左耳を失う。仲間の死にショックを受けたハリーは、一人で分霊箱を探すことにするが、ロンの説得で家に残る。
ハリーの17歳の誕生時当日、ロンの兄ビルとフラーの結婚式の準備に追われる。そこに魔法大臣ルーファス・スクリムジョールが現れ、ダンブルドアの遺書に従って、ロンには火消しライター、ハーマイオニーには書物「吟遊詩人ビートルの物語」、ハリーにはスニッチとグリフィンドールの剣を送る。しかしグリフィンドールの剣は現在、所在が不明だという。
その夜、結婚式が行われる。そこでハリーは、ダンブルドアの学友ドージから、ダンブルドアがゴドリック谷に妹と弟アバフォースと共に住んでいたこと、彼の若き日の過失を谷に住む魔法史家バチルダが日刊預言者新聞に情報を流していることを知る。そこにキングスリーの守護霊が現れ、スクリムジョールが亡くなり魔法省が陥落したと告げる。その直後、死喰い人に襲撃され、ハリーたちは姿くらましでロンドンのファフツベリー通りに避難する。
そこに死喰い人ロウルとドロホフが現れるが撃退する。ハリーたちは騎士団本部を訪れ、分霊箱のロケットを盗んだ “RAB” がシリウスの弟レギュラス・アークタルス・ブラックだと知る。屋敷しもべクリーチャーにロケットのありかを聞き出すと、マンダンガスに盗まれたと言う。クリーチャーに命令してマンダンガスが連れて来させ問いただすと、アンブリッジにタダであげたと言う。
ハリーたちは変身薬で魔法省の役員に変身し、魔法省に潜入する。そこでアンブリッジが首にかけていたロケットを奪い、魔法省の追手から逃げるために姿くらましをする。しかし、その途中でロンの体が裂けてしまうが、ハーマイオニーが機転を利かせハナハッカのエキスで治す。
野宿をしながらロケットの破壊方法を模索するが、次第にイライラが募っていく。ハーマイオニーは、その負の感情がロケットの影響だと見破り、順番に持つようにする。ハリーは夢の中で、ヴォルデモートが杖職人グレゴロビッチの持っていた何かを探していることを知る。逃亡生活の中、バジリスクの牙の毒を吸い込んだグリフィンドールの剣で、分霊箱を破壊できることに気が付く。
しかし、ロケットの影響を受けたロンは、ハリーに怒りを打ち負け、ロケットを置いてどこかに行ってしまう。ハリーとハーマイオニーは悲嘆に暮れ、二人だけの旅となる。ハリーがスニッチに唇を触れると、「私は終わる時に開く」と言う文字が浮かぶ。ハリーたちはグリフィンドールの剣があるかもしれないゴドリックの谷を訪れる。そこに現れたバチルダに着いていくが、彼女はナギニが変身した姿だった。グレゴロビッチから杖を盗んだのは、ダンブルドアの昔の友人で史上最悪の闇の魔法使いグリンデルバルトという情報だけを得て、姿くらましで逃亡する。その途中、ハーマイオニーの呪文が跳ね返って、ハリーの杖が折れてしまう。
その夜、ハリーの前に現れた雌鹿の守護霊に着いていくと、池の中にグリフィンドールの剣を発見する。ロケットのせいで溺れかけたハリーを、突然現れたロンが助ける。ロンは火消しライターのおけげでハーマイオニーの居場所を知り、雌鹿に導かれてここに来たのだった。ロンは剣でロケットを破壊し、ハーマイオニーと再会する。
ハリーはロンから彼が人攫いから奪ったリンボクの杖をもらう。ハーマイオニーの提案で、吟遊詩人ビードルの物語の書物に書き込まれた謎の印の意味を知るために、ルーナの父ゼノフィリウスに会いにいく。ゼノフィリウスは、その印は死の秘宝を表していて、ニワトコの杖、蘇りの石、透明マントを意味していると言う。これを集めた者は死を制すと言われるが、実在するかは分からない。
ゼノフィリウスの様子がおかしいことに気づいたハリーに、彼はルーナが人質にされていること、死喰い人に通報したと言う。直後、死喰い人に襲撃にあうも、姿くらましで逃げる。だがその先で人攫いに捕まってしまい、さらにハリーだと疑われ、マルフォイ家に連れて行かれる。
地下牢にはルーナ、杖の専門家オリバンダー、グリンゴッツ銀行のゴブリンがいた。そこにハリーたちを救出しにドビーが現れる。ハリーはマルフォイの杖を奪い、拷問されていたハーマイオニーを救出した後、ドビーたちと共にティンワースの貝殻の家に避難する。しかしレストレンジが投げたナイフがドビーに刺さり、ドビーは息を引き取る。ハリーは魔法を使わず穴を掘り、ドビーを埋葬する。
一方、グリンデルバルトからニワトコの杖のありかを聞き出したヴォルデモートは、ダンブルドアの墓を訪れる。ヴォルデモートはダンブルドアの墓を暴き、彼のての中にあったニワトコの杖を盗むのだった。
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解説
頼れる大人たちの死
ついに10年近く続いた「ハリー・ポッター」シリーズも最終章。本作はシリーズ初の二部構成で、「part1」は2010年に、「part2」は2011年に公開された。これまでの映画作品に比べて上映時間が大幅に伸びたため、原作から省かれたエピソードは少なく、比較的原作に忠実に描かれている。本作はその第一部、『ハリー・ポッターと死の秘宝』の「PART1」である。
三作前の『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』でヴォルデモートの復活、前前作『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』でシリウスの死、前作『ハリー・ポッターと謎のプリンス』でダンブルドアの死と、ハリーたちを取り巻く状況は悪化の一途を辿っている。さらに本作の冒頭では、史上最強の闇祓いマッド・アイ・ムーディーまでもが、ヴォルデモートの手にかかりあっさりと殺されてしまう。シリウス、ダンブルドア、マッド・アイ・ムーディー。ハリーを支え励まし褒めてくれた彼らは、最も頼りにしてきた大人たちであり、いわば父のような存在だった。
教えを乞えば的確な助言を与え、向かうべき道を正しく示してくれた。その意味でハリーはまだ子供のような存在だった。だがそんな彼らはもういない。ハリーは自分の力だけで、道を切り開かなければならないのだ。
ハリーたちはホグワーツの外で旅にでる
ダンブルドア亡きいま、魔法学校ホグワーツにいる必要はもはやない。彼/女らは学校の外で、ダンブルドアから託された遺志を受け継いでいく。
そしてこれこそが、本作の最も特徴的な部分であろう。ハリーは幾多の危機を乗り越えてきたとはいえ、これまでは安全を保障されていた学舎ホグワーツで学生として生活してきた。常に大人に守られている、責任のない存在。ハリーがヴォルデモートの脅威に晒されながらも伸び伸びと生きてこられたのは、学舎ホグワーツの中で子供として扱われていたからだ。
しかしダンブルドアから託された遺志は、彼を責任のある大人として見做している。いまや頼れる大人も、向かうべき道を示してくれる人も殆どいない。一つ一つの行動の責任はすべて自分たちにのしかかり決断を迫られる。しかも彼らが託された任務は、ヴォルデモートの7つの分霊箱を破壊するという、誰もなし得なかったことなのである。ハリーはその余りに大きすぎる任務を遂行するために、ハーマイオニーとロンと共に旅に出る。ヴォルデモートとの対決、ひいては、魔法界の未来は、ハリーたち選択に託されたのだ。
考察・感想
ハリーたちのやることは盛り沢山
ハリーたちの旅がどれほど危険で目的を達するのが難しいかは、状況を整理すれば容易にわかる。
まず最終目標はヴォルデモートの殺害。これはハリーを除いて、未だかつて誰もなし得たことがない。次に分霊箱の破壊。これもハリーとダンブルドア以外、誰も達成したことがない。加えて、分霊箱の破壊は単なる魔法では不可能で、その方法は謎に包まれている。さらに分霊箱の探索。これは「RAB」と言う名の謎の人物も成し遂げている。しかし発見し破壊したのは未だ二個だけで、残りの四個がどのような形をしているのか、何処にあるのかは皆目見当もつかない。つまり、分霊箱に纏わる問題ですら、殆ど情報を持っていない。
これだけでも十分不可能に近いのに、加えて本作の題名にもある「死の秘宝」の謎がある。最終章に突如出現した死の秘宝は、それが登場する童話から調べる始末である。大人たちの保護から外れたハリーたちは、殆ど何もない状態で危険地帯に放り出されたのだ。
本当の危機は仲間との間にあった
だからこそ危機は、旅する三人の間にも現れる。常に危険にさらされた極限の状態で、ハリー、ハーマイオニー、ロンの三人は次第に苛々を溜め込んでいく。この旅で真に試されているのは、分霊箱を効率よく見つけ破壊することではなく、共に行動する三人の友情のほうなのだ。
ハリー:覚悟してたろ
ロン:そのつもりだったさ
ハリー:じゃ何?悪いがわからないね。どこが期待通りじゃなかった?高級ホテルに泊まれて、次々分霊箱を見つけ、クリスマスには帰れると?
ロン:これだけ苦労すれば成果があると思ったよ。君がダンブルドアから情報を聞いてるかと
溜め込んだ怒りが限界を迎えたとき、首から下げている分霊箱であるロケットの影響も相まって、ハリーに対する嫉妬と失望を爆発させ二人の前から姿を消す。ロンはユーモアだけが取り柄の作中で最も役に立たない登場人物だったが、この発言は一理ある。ハリーたちは旅にでて数ヶ月も経つのに、全く成果が上がらないどころか、手がかりすら見つかっていない。要は八方塞がりなのだ。
だが、ダンブルドアはロンの性格を見越して、彼に火消しライターを与えていた。それと突然現れた雌鹿の守護霊によって三人は再会する。さらに欠けた鏡に映る謎の男性。ハリーたちは未だ誰かに導かれている。その答えと壮絶な愛の物語は、『ハリー・ポッターと死の秘宝PART2』で明かされることになる。
補遺
原作との違いもいくつかある。ハリーの父ジェームズの友人たち四人のうちの一人ピーター・ペティグリューは、原作ではマルフォイの館でハリーを殺害するのを躊躇し、ヴォルデモートにつけられた左手に締め殺された。また、ヴォルデモートにニワトコのありかを漏らしたダンブルドアの旧友で闇の帝王グリンデルバルドは、「殺すがよい、ヴォルデモート。私は死を歓迎する!しかし私の死がお前の求めるものをもたらすわけでない。お前の理解していないことが何と多いことか」とヴォルデモートを突き返し殺害されていた。二人とも勇敢に戦ったのだ。
逆に、ダンブルドアは若かりし頃、グリンデルバルドと共にマグルを支配しようとしていた。彼は危険な思想の持ち主だったのである。
これらを改変し映画では、勧善懲悪の世界観を強く打ち出している。しかし本来の人間は、もっと複雑なのだ。