『トゥルーマン・ショー』考察|リアルな生活|あらすじネタバレ感想・伝えたいこと解説|ピーター・ウィアー

『トゥルーマン・ショー』考察|リアルな生活|あらすじネタバレ感想・伝えたいこと解説|ピーター・ウィアー

概要

 『トゥルーマン・ショー』は、1998年に公開されたアメリカのヒューマン映画。監督はピーター・ウィアー。出演はジム・キャリー、エド・ハリス。

 ゴールデングローブ賞で三部門を受賞、ヒューゴー賞で最優秀映像作品賞を受賞した。

 島から一度も出たことないトゥルーマンが、実は「トゥルーマン・ショー」というテレビ番組として全世界に放送されていたことに気づき始め、脱出しようと試みる物語。

 この映画がきっかけで、自分の生活がカメラを通して視聴されていると信じる妄想にかかる人が現れ、「トゥルーマン妄想」と呼ばれることになった。

 おすすめ映画はほかに『コーダ あいのうた』『A.I.』『アイズワイドシャット』がある。

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登場人物・キャスト

トゥルーマン・バーバンク(ジム・キャリー):テレビ番組「トゥルーマン・ショー」の主人公。24時間体制で監視され放送されている。自分以外の人と環境はすべて作り物なのだが、そのことを知らない。父の海上での事故以来、水恐怖症になっている。シーヘブンという島からでたことがない。
(他の出演作:『エターナル・サンシャイン』『イエスマン “YES”は人生のパスワード』)

クリストフ(エド・ハリス):テレビ番組「トゥルーマン・ショー」の製作者。トゥルーマンの全てを知っていると思い込んでいる。
(他の出演作:『トップガン マーヴェリック』『アポロ13』『スノーピアサー』『崖っぷちの男』)

ローレン・ガーランド(ナターシャ・マケルホーン):本名はシルビア。本来は脇役だったが、トゥルーマンと出会い恋に落ちる。トゥルーマンに秘密を喋りそうになり、強制的に排除させられる。

メリル・バーバンク(ローラ・リニー):トゥルーマンの妻。商品の宣伝をする場面をトゥルーマンに見つかり怪しまれる。

マーロン(ノア・エメリッヒ):トゥルーマンの親友。トゥルーマンを騙していることに罪悪感を覚えている様子が窺える。

アンジェラ・バーバンク(ホランド・テイラー):トゥルーマンの母親。

ディレクター(ポール・ジアマッティ):クリストフの部下。

ネットワーク・エグゼクティヴ(フィリップ・ベイカー・ホール):仕掛けている会社の管理職。
(他の出演作:『マグノリア』『ゾディアック』)

名言

トゥルーマン:すべてニセモノなのか?(Was nothing real?)
クリストフ:君は本物だ。だから誰もが君をテレビで見るんだ(You were real. That’s what made you so good to watch…)

クリストフ:私は、君以上に君のことを知っている(I know you better than you know yourself.)
トゥルーマン:カメラは頭の中までは入り込めない!(You never had a camera in my head!)

あらすじ・ネタバレ・内容

 離島・シーヘブンに住むトゥルーマンは保険会社に勤めていた。彼は生まれてこの方、一度も島を出たことがなかった。子供の頃にヨットの事故で父を失って以来、水恐怖症になっていたトゥルーマンは海を越えるどころか、橋を渡ることすら難しかった。

 ある日、空から突然ライトが降ってくる。不審に思っていたところ、ラジオで航空機から落下したとのニュースが流れてる。そのままいつもの日々が始まるかに思われたそのとき、亡くなったはずの父親がボロ切れを纏って目の前に現れる。しかし、話しかけようとした瞬間にどこからともなく人が現れ、父親を連れ去ってしまう。このことを母に伝えると、見間違いだと断定される。

 これ以降、トゥルーマンは周囲に違和感を覚え始める。それもそのはず、トゥルーマンの生活空間は、24時間体制で内部カメラで監視され、また太陽から天候まですべて完全に作り込まれたセットであり、「トゥルーマン・ショー」というテレビ番組として全世界に放送されていたのだった。もちろん、住人もすべて俳優であり、それは親友のマーロンだけでなく、妻のメリルや母も俳優なのである。

 トゥルーマンはメリルに出会った頃に恋をしていたローレンのことが忘れられない。彼は雑誌の女性の写真を切り継ぎして、ローレンに似た顔を作り上げていた。ローレンとは一度だけデートをしたことがあり、そのとき砂浜で、本名はシルヴィアであり、全てが作り者であると告げる。だがシルヴィアの父親が現れ、彼女を精神疾患があるといい連れ去ってしまう。シルヴィアは別れ際に「私を探して」と言い残す。

 製作者側は予測できない行動をしたトゥルーマンに対応しきれず、トゥルーマンはエレベーターの向こうに控えている俳優を発見する。いよいよオカシイと確信したトゥルーマンは、妻のメリルを尾行したところ、彼女が行う手術の様子が素人同然であったことに驚く。真実を知るためメリルを連れて街からでようとするも、製作者側に阻まれ、さらに拘束され家に連れ戻される。

 トゥルーマンがメリルを疑っていると、マーロンが現れ、父親と再会させる。父との再会により、全世界の視聴者は感動し涙する。

 翌日、地下室で寝ていたトゥルーマンは、カメラ越しに眺める監視人を欺き、家から脱走する。それに気づいた番組創設者のクリストフは、総動員によるトゥルーマンの捜索を指示する。しばらくすると、海の上でヨットに乗るトゥルーマンが発見される。クリストフは大雨と強風をおこさせるも、ヨットに自分を縛り付けたトゥルーマンはなんとか生き延びる。

 そして、世界の端にたどり着いたトゥルーマンは、出口である扉に手をかける。そんな彼にクリストフは、この作り物の世界の素晴らしさを語り説得を仕掛けるが、トゥルーマンは一言も発しない。我慢の限界を迎えたクリストフが、何かを言ってくれと叫ぶと、トゥルーマンは毎朝隣人に向かっていうセリフ「会えない時のために、こんにちはとこんばんは!おやすみ!」と言い、外に出る。

 呆然とするスタッフと、感動で盛り上がる視聴者。その後番組が終了すると、何事もなかったかのように、視聴者は番組を変えるのだった。

解説

偽りの世界に存在する唯一の本物トゥルーマン

トゥルーマン:おはよう!会えないときのためにこんにちは、こんばんは、そしておやすみなさい!(Good morning, and in case I don’t see ya, good afternoon, good evening, and good night!)

 代わり映えのないトゥルーマンの日常は、隣人に向けたこのセリフから始まる。おはよう、こんにちは、こんばんは、そしておやすみなさい。もし今日もう一度会わなくても大丈夫なように発せられるこの挨拶は、挨拶は隣人に向けられたものでありながら、カメラがそれを真正面から捉えているおかげで観客に向けて発せられているかのようでもある。もちろんここでの「観客」とは、「トゥルーマン・ショー」を楽しむ外の世界の住人のことだ。

 トゥルーマンの平凡な日常を視聴する外の世界の住人は、何に疲れ何を望んでいるのだろうか。答えはあまりに素朴で、彼/女らはフェイクに疲れトゥルーを望んでいる

 シェイクスピアの『ハムレット』にある有名なセリフ「この世は舞台、人はみな役者」は、人はみな世界という舞台のうえで役者のように自分を演じていると説いた。日々他人の視線にさらされ続ける外の世界の住人は、世界という名の舞台で自分という名の役者を演じ続ける。そして人々はその演技にほとほと疲れてしまっている。それはなぜか。

クリストフ:それはある意味でフェイクの世界だ。だがトゥルーマンの世界にフェイクはない。脚本もカンニングペーパーもない。シェイクスピア級の物語ではないが、本物がある。命がある

 舞台と役者しかいない世界には、極論するとフェイク(偽物)しかない。フェイクに疲れた人々は、どこかなにトゥルー(本物)を求める。その欲望に応えたのがトゥルーマン(true man)である。トゥルーマン・ショーには脚本もシェイクスピア級の物語も存在しないが、トゥルーマンという本物がいる。彼の行動は予測不可能で、そうであるからこそ映像に命が宿り人々を魅了する。フェイクに飽きた時代にあらわれた本物を求める欲望が、完全なフェイクの世界で生きる本物の命、トゥルーマンを誕生させたのだ

リアリティーショーと監視社会——見られたいという欲望

 演技ではない本物を見たい、つまり、他人のプライバシーを覗き込みたいという欲望は、社会制度の発展と並行してきた。

 その一つが、街中に設置された監視カメラの導入によるデジタル管理社会の誕生である。デジタル管理社会とは、デジタルの発展に伴って誕生した社会のことで、デジタル技術を用いて人間を監視・管理する状態を指す。この状態は漸進的に制度化されてきたが、その間には、監視カメラはプライバシーの侵害であり倫理的な問題があると反対意見も多数あった。しかし、1980年代になると防犯カメラがなし崩しに導入されて、それ以降、デジタル管理社会は急速に制度化され、いまやデジタルのない世界を想像するほうが難しくなっている。

 面白いことに、この社会的な変化と並行して、1990年代に到来するのが、リアリティーショーのブームである。リアリティーショーとは、他人の私生活をそのまま観賞するテレビショーのことだ。つまり、人々は監視カメラによるプライバシーの侵害を恐れたのではなく、他人のプライバシーを覗きみることを欲望したのである。

 だが事態はもう少し複雑である。実はリアリティーショーの参加を募ったところ、数多くの人が志願したというのだ。自分のブライバシーを守りつつ他人のプライバシーを覗き見たいのではない、不特定多数の他者の視線に晒されたいという欲望。この欲望の源泉は何か

 この映画の一年前、1997年におきた「神戸連続児童殺傷事件」の犯人は自らを「透明な存在であるボク」と呼んだ。これが時代の風潮を如実に表している。1990年代の末に多くの人々が、自分は透明な存在と感じていて、誰かに見られていたいと望んでいた。だからこそ、監視カメラは導入されたあと再び問題に浮上することはなかったし、同時期にはリアリティーショーが流行り、多くの人がこのショーに応募したのだ。

考察・感想

クリストフという父の視点

 それを裏付けるように、この映画の上映後に数多くの人が、自分の生活がカメラを通して視聴されていると信じる妄想を発症した。この妄想は「トゥルーマン・ショー妄想」と呼ばれる。つまり、監視カメラの普及と、リアリティーショーのブーム、さらに、見られたいという欲望と、見られているという妄想が同時に進行したのである。ようはこの時期に、「透明な存在のボク」を「非透明な存在」にしたいという欲望が渦巻いていたというわけだ

 父を海の事故で亡くしたトゥルーマンは、そのことがトラウマで海を渡ることができない。だから一つには父を探す、あるいはトラウマを乗り越えることが物語の機軸をなしているのだが、父を見つけても何も起こらない。実際、彼らは再会の後に、言葉をほとんど交わしてない。それどころか、翌日には外の世界に向けて、海の上でヨットを走らせているのだ。

 トゥルーマンにとって、倒すべき「父」は制作責任者のクリストフである。彼はトゥルーマンに死に追いやりかねないほどの嵐をお見舞いする。しかし、トゥルーマンも負けてはいない。ロープで体を船にくくりつけ、絶対に海に落ちないようにする。そして嵐が明けたあと、転覆したヨットが起き上がり、トゥルーマンが起き上がるところは、名シーンだろう。天変地異を起こすクリストフの暴力にも打ち勝ったのだ。そこでは太陽光までもが、トゥルーマンを祝福してくれている。

 しかし、この壮大なリアリティーショーは、クリストフとトゥルーマンの共犯関係であったと思われる。クリストフはトゥルーマンをショーの主演としてではなく、まるで親が子供に接するように言葉をかける。

クリストフ:ずっとお前のことを見てきたんだよ。生まれたとき、初めて歩いたときも。小学校に入学した日、初めて乳歯が抜けた日のことも。

 彼はこの世界がすべて作り物であると認めながら、トゥルーマンはこの作り物の舞台の役者であるとは思っていない。

クリストフ:だがトゥルーマンの世界にフェイクはない。シェイクスピア級の物語ではないが、本物がある。命がある

クリストフ:君は本物だ。だから誰もが君をテレビで見るんだ

 そう。全て作り物の中で、トゥルーマンだけは「本物」なのだ。クリストフとトゥルーマンは、出演している俳優を介して、直接語り合っていた。彼はトゥルーマンの全てを見てきたし、多くを語り合ってきた。クリストフはトゥルーマンのすべてを知っているのだ。だが、この思い上がりは、トゥルーマンによって否定される。

クリストフ:君のことは、君自身よりも僕がいちばんよく知っている

トゥルーマン:あんたは、俺の脳みその中を、カメラで見てないさ

本当はわかっている?

 問題はトゥルーマンとクリストフの内面である。トゥルーマンは本当にこの世界が作り物だと知らず、クリストフはトゥルーマンを騙そうとしていたのだろうか。じつはこの世界には、大きな設計ミスがある。それが太陽と月の配置だ。

 夕暮れ時の海辺で、大きな月があがるシーンがある。月と太陽が隣り合っているのだ。当然これは原理的におかしい。作り込まれたこの世界で、このような設計のミスが意味することは一つしかない。つまり、クリストフはトゥルーマンにこの世界が作り物だと見ぬいて欲しかったのだ。

 そして多分トゥルーマンもこの世界が作り物だと見抜いている。彼の大げさな身振りや、作ったような笑顔は、世界に向けて発信される演技のようだ。彼はよくカメラと真っ長面から向き合い、直視しながら語りかける。さらには、彼の視点は、時々カメラの役割を果たすこともある。彼は無意識にこの世界の構造を把握してるのである。

 「世界の果て」を越えようとするトゥルーマンにクリストフは、この作られた世界の素晴らしさを語りかける。しかしトゥルーマンは、もはやそれに答えることはしない。つまり、演技者をおりたのだ。クリストフは「何か言ってくれ。何か言うんだ。全世界に生放送中なんだぞ!」と嘆願する。トゥルーマンは、少し考えたあと、冒頭のあの台詞を繰り返す。

トゥルーマン:会えないときのために、こんにちは、こんばんは、おやすみなさい。

 そして、作り物の外の、新たな生活が始まりを迎えるのだ。

関連作品

評価(批評・評論・レビュー)

本論考ではまず、メディア研究の領野でしばしば論及されてきた映画、ピーター・ウィアー監督、アンドリュー・ニコル脚本による『トゥルーマン・ショー』(1998)をとりあげるところから議論を切り出したい。 ……… 全文

ーー core.ac.uk/(松本健太郎)

映画『トゥルーマン・ショー』(98)は、90年代に全世界的な広がりを見せたリアリティ・ショー文化をアイロニカルにとらえた作品という文脈で受容されている。日本であれば、テレビ番組『進め! 電波少年』(92〜)に代表される ……… 全文

ーー cinemore.jp(伊藤聡)

加筆中(おもしろい評論、または、載せてほしい論考などがありましたら、コメント欄にてお伝えください)

動画配信状況

『トゥルーマン・ショー』配信状況比較

配信サービス配信状況無料期間月額料金
U-NEXT31日間2,189円
Amazon Prime30日間500円
TSUTAYA DISCAS30日間2,052円
Hulu2週間1,026円
dTV✖️31日間550円
FOD✖️✖️976円
ABEMAプレミアム✖️2週間960円
Netflix✖️1,440円
クランクイン!ビデオ✖️14日間990円
mieru-TV✖️1ヶ月間990円
dアニメストア✖️31日間550円
◎☆:おすすめ、○:無料、☆:実質無料、△:別途有料、✖️:配信なし(2023年2月時点の情報。最新の配信状況は各サイトにてご確認ください)*実質無料とは、無料ポイント付与により別途料金を払わずに視聴できるということ。詳細:『トゥルーマン・ショー』の無料視聴方法

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