『ザ・コア』感想|あらすじ解説|内容考察|地球内部が描かれるのは珍しい

『ザ・コア』感想|あらすじ解説|内容考察|地球内部が描かれるのは珍しい

概要

 『ザ・コア』は、ジョン・アミエル監督によるアメリカ映画。2003年に公開。外核の運動が停止したために地球滅亡の危機が訪れる。地球を救うため科学者と操縦員が地球内部を目指して出発する。

>>無料トライアル実施中!<U-NEXT>

登場人物

ジョシュア・キーズ(アーロン・エッカート):地球物理学者。感が鋭い。

レベッカ・チャイルズ (ヒラリー・スワンク):優秀な宇宙飛行士。

エドワード・ブラズルトン(デルロイ・リンドー):探査艇バージルの開発者。

コンラッド・ジムスキー(スタンリー・トゥッチ):地球物理学者。自己顕示欲が強い。

あらすじ

 ボストンで突如、ペースメーカーを使用している人々が急死する。翌日のロンドンでは、ハトの群れが方向感覚を失い壁に激突。数日後には、スペースシャトルが帰還時に制御不能に陥り、不時着を余儀なくされる。

 世界規模で多発する奇怪な事件に対処するため、FBIは地球物理学者のジョシュに調査を依頼。その結果、これらの事件は地球内部の外核が停止したために発生したと推測された。外核の運動が止まると太陽風から地球を守る地磁気が失われ、一年以内に人類は滅んでしまう。

 この危機を乗り越えるべく、外核で核爆弾を爆発させて外核をふたたび動かすという作戦をたてる。この計画のために各分野のスペシャリストたちが集められ準備は順調に進む。

 3ヶ月後、地中車「バージル」に乗って地球内部へと向かう。想像を超える環境におおくの船員を失うも、なんとか外核へと辿り着いたジョシュたち。搭載された核爆弾だけではエネルギー量が足りないことが判明した彼/彼女らは連鎖的に爆発させる方法を考えだす。

 奇跡的に作戦は成功し外核が動き出す。残されたジョシュとレベッカは地上に戻ることが不可能に思われたが、一縷の可能性に賭けて地上を目指す。

>>Amazonプライム「30日間の無料体験」はこちら

解説

新しい視点の人類の危機

 人類の滅亡の危機はさまざまな形で描かれてきた。宇宙人の襲来(9.11以後と黙示録的想像力 ——スティーヴン・スピルバーグ『宇宙戦争』*なるほう堂)、生物の異常発生(第三極としての日本 – 二本松嘉瑞『昆虫大戦争』*なるほう堂)、異常気象による寒冷化(反転し円環する社会 – ポン・ジュノ『スノーピアサー』*なるほう堂)。2003年に公開された『ザ・コア』もまた人類の危機を扱ったSF作品だが、これまでの作品とは一味違うところがある。「危機」だけがそこにあり、倒すべき敵がいないのだ。

 そういった観点からすると、『ザ・コア』は隕石が宇宙から飛来するという設定の『アルマゲドン』に似たモチーフを描いているともいえるのだが、人類滅亡の原因が宇宙からではなく地球内部にある点は新しい。広大な宇宙はわれわれの想像力を常に刺激してきた。『E.T』や『未知との遭遇』、最近では『メッセージ』なども、宇宙に魅了され未知の生命の予感に触発されて作られてきたのである。ところが、宇宙とおなじくらい解明されていないはずの地球内部は、意外にも映画では中心的に扱われてこなかった。本作はその意外さを逆手に取った作品である。

 人類危機の原因は地球の内部にある外核の停止。よって外核を動かすのが本作のミッションだ。対象が新しいとはいえ、これまでの作品の延長線上にいることは間違いない。指令室にいる軍人たちと、地中車「バージル」にのる勇猛果敢な科学者というのもお決まりのパターン。途中で仲間が死にながらもめげずにミッションを遂行するという展開も捻りがない。

 大抵はここに自己犠牲や国への奉仕などが付き纏うのだが、本作はそのような要素は脱色され、隊員たちは私欲を優先して亡くなっていく。エドワードは自分の船のため、コンラッドは歴史に名を残すため。ジョシュアはヒロイン(?)のレベッカとちゃっかり生き残る。

 核の良い使用法というのもお決まりである。もはや核は脅威ではない。正しく運用すれば人類の滅亡を防ぐ善の武器になり得るのである。

考察・感想

意外にも科学的に正しい描写

 なぜ外核の運動が止まると人類が滅亡するのか。それは太陽風を守る地磁気が失われてしまい、地球表層に有害な光線が降り注ぐからである。地球内部の異常が表層に住む人類の危機をよびよせるというストーリーは、一見するとアクロバティックで信憑性が乏しいようにも思えるのだが、科学的にじつは正しい。

 地球が誕生すると、重い鉄は地球中心部へと落ちていき核を形成した。それによって、地殻、マントル、核という三層構造ができあがり、さらに核は液体の外核と固体の内核へと分かれた。液体である外核が回転することによって発生した地磁気は、地球を太陽風から守り生命誕生の環境を整えた。地磁気の存在は地球表層における生命生存の可能性の条件なのである。

 宇宙よりも深海よりも地球内部のほうが遥かに遠い。作中でもでてくるが、人類は到達できてもせいぜい十数km。しかもボーリングと掘削坑から石をとってきてるだけである。宇宙は真空・無重力の世界だが、地球内部は高温・高圧であってこの環境に耐えられる物質はない。だから、核どころかマントルにすら人類が到達することは難しいのであって、全くもって非現実的な物語なのだが、例えば海から突入するという選択は正しかったする。マントルから核に入るさいに邪魔をするダイヤモンドの存在は極めて怪しいのだが、マントル/核境界には異質な物質があると言われているので、真偽の程は不明である。だが、地球内部にあれだけ大きな空洞があるということはあり得ない。

 コンラッドは自己顕示欲が強い人物で、探索当初から後世の見られ方を気にしている。詩的な言葉で探査記をレコーダーに記録してるのもそのような理由からだろう。コンラッドは、お前はカール・セーガンか、と隊員にツッコミを喰らう。カール・セーガンは物理学者でありSF作家でもある人物で、コンラッドはどうやらこのポジションを狙っているようである。カール・セーガンの業績は、作家としては『コスモス』、科学者としては「核の冬」や「テラフォーミング」、地球惑星科学者としては「暗い太陽のパラドックス」の提唱などが有名である。「暗い太陽のパラドックス」は未解決問題である。

 コンラッドはカール・セーガンのようにはなれなかったが、死ぬ最後まで記録を残し続ける様子は根性を感じる。記録を残しても地中の藻屑(?)と化すのだが科学者としての執念があるのだろう。最後に「何をやっているんだ俺は」と笑い出す哀愁漂うシーンは、思わずジーンときた。

映画カテゴリの最新記事