『ブレードランナー』考察|レプリカントと崇高さ|あらすじネタバレ感想・伝えたいこと解説|リドリー・スコット

『ブレードランナー』考察|レプリカントと崇高さ|あらすじネタバレ感想・伝えたいこと解説|リドリー・スコット

概要

 『ブレードランナー』は、1982年に公開されたアメリカのSFアクション映画。監督はリドリー・スコット。原作は1968年に発表されたフィリップ・K・ディックのSF小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』。内容は原作から大きく変更されている。

 人間の奴隷として製造されたレプリカントと、レプリカントを取り締まるブレードランナーとの戦いの中で、人間の本質とは何かを問いかける物語。

 SF映画はほかに『インセプション』『ザ・コア』『マトリックス レザレクションズ』『ムーンフォール』などがある。

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登場人物・キャスト

リック・デッカード(ハリソン・フォード):レプリカントを取り締まる元ブレーランナー。ロイたちの反乱のため、ブライアントの指令で半強制的に復職させられる。

ロイ・バッティ(ルトガー・ハウアー):戦闘用レプリカント。レプリカントのリーダー。製造番号はN6MMA10816。

エルドン・タイレル博士(ジョー・ターケル):レプリカントの生みの親。タイレル社社長。

レイチェル(ショーン・ヤング):レプリカント。タイレル博士の秘書。タイレルの姪の記憶を移植していて、本人もレプリカントであることを知らない。

ハリイ・ブライアント(M・エメット・ウォルシュ):ロサンゼルス市警警部でガフの上司。ブレードランナーを取り纏める。

ガフ(エドワード・ジェームズ・オルモス):ロサンゼルス市警の刑事。

プリス・ストラットン(ダリル・ハンナ):慰安用レプリカント。製造番号はN6FAB21416。

J・F・セバスチャン(ウィリアム・サンダーソン):早老症で年齢より老けている。タイレル社の遺伝子工学技師で、プリスたちに騙されタイレル博士にロイを会わせてしまう。

リオン・コワルスキー(ブライオン・ジェームズ):労働用レプリカント。ブレードランナーに捜査された際、相手を殺害する。製造番号はN6MAC41717。

ゾーラ・サロメ(ジョアンナ・キャシディ):女性レプリカント。バーのダンサーとして人間社会に溶け込む。製造番号はN6FAB61216。

ハンニバル・チュウ(ジェームズ・ホン):遺伝子工学者。レプリカントの眼球を作っている。

名言

バッティ:恐怖を感じてるだろう?それが、奴隷であるということだ
Batty:Quite an experience to live in fear, isn’t it? That’s what it is to be a slave.

バッティ:俺はおまえら人間が信じられないだろう物を見てきた。オリオン座の近くで燃えた宇宙船。タンホイザーゲートの近くの闇に光る閃光。それらすべての瞬間が時の中に消えていく。雨に打たれた涙のように。死の時が来た
Batty:I’ve seen things you people wouldn’t believe. Attack ships on fire off the shoulder of Orion. I watched C-beams glitter in the dark near the Tannhauser gate. All those moments will be lost in time… like tears in rain… Time to die.

あらすじ・ネタバレ・内容

 舞台は2019年のロサンゼルス。環境破壊のために酸性雨が降りしきる地球で、上級国民は植民地を求め宇宙へ、下級国民は地球に取り残されていた。また、遺伝子工学の技術進歩により、レプリカントと呼ばれる人造人間が開発され、宇宙で過酷な労働に従事していた。レプリカントは高い知性故に、製造から数年で感情が芽生え、人間に反抗するという事件が発生する。そこで開発者は、最新のネクサス六号に、安全装置として4年の寿命を与える。

 レプリカントを専門とする捜査官ブレードランナーであるリック・デッカードは、宇宙で反乱を起こし人間を殺害したあと地球に向かったレプリカント四名を見つけ出し破壊するよう、ガフを介して上司のブライアントから指令を受ける。レプリカントの四名、ロイ・バッティ、リオン、ゾーラ、プリスは、身分を書き換え人間社会に溶け込み、リオンは追ってきたブレードランナーのホールデンを殺害する。

 デッカードはレプリカント開発者のタイレル博士に話を聞きに行くと、秘書のレイチェルもレプリカントであると見抜く。デッカードの自宅に押しかけたレイチェルは、自分が人間であると思い込んでいたために、記憶ですら植え付けられたものであると知って家から飛び出す。その様子を見てデッカードは次第にレイチェルに惹かれていく。

 レプリカントのリーダーのロイ・バッティは、寿命を知るためにタイレルの施設に潜入するが、タイレル博士本人しか情報を取り出せないことを知る。そのためタイレル社の技師セバスチャンにプリスを接近させる。

 デッカードはリオンの家に残された証拠から、レプリカントのゾーラがバーのダンサーとして働いてると突き止め、彼女を追跡し射殺する。その現場にブライアントとガフが現れ、タイレル博士のもとから脱走したレイチェルを破壊するよう命令を受ける。その後、現場に現れたリオンに襲われ死にかけるが、駆けつけたレイチェルがリオンを射殺し命拾いする。デッカードはレイチェルを家に匿い、熱く抱擁する。

 バッティはプリスの協力でセバスチャンに接近し、さらに彼を利用して、ビルの最上階に住むタイレル博士のもとを訪れる。バッティはタイレル博士に寿命を伸ばすよう要求するが、技術的に不可能だと断られてしまい、逆上してタイレル博士とセバスチャンを殺害する。

 タイレル博士の訃報を聞いたデッカードは、高層アパートにあるセバスチャンの住居に侵入し、プリスを射殺する。さらにそこに帰ってきたバッティと死闘を繰り広げる。圧倒的な戦闘能力の差で追い詰められたデッカードは屋上に逃げ、隣のビルに飛び移ろうとして壁に宙吊りになる。指を折られたデッカードは力尽きて手を離すが、バッティは彼を引き上げる。そして跪き最後の言葉を発した後、笑みを浮かべながら息を引き取る。

 事件後、現場に現れたガフの発言から、レイチェルも寿命で亡くなったと不安になるが、自宅に戻るとレイチェルは生きていた。デッカードはレイチェルと共に、旅立つのだった。

解説

SF映画の金字塔

 SF映画史において重要な作品がいくつかある。スタンリー・キューブリック監督の『2001年宇宙の旅』(1968年)、アンドレイ・タルコフスキー監督の『惑星ソラリス』(1972年)、そしてリドリー・スコット監督の『ブレードランナー』(1982年)がそれだ(これにウォシャウスキー兄弟監督の『マトリックス』(1999年)を加えても良い)。この3作品は映画史に燦然と輝くSF映画で、現代まで多くのファンを魅了してきた。

 この中でも『ブレードランナー』は、人間の本質という難解で哲学的な問いに、最も鋭く迫っている。描かれるのは、人間と人造人間(レプリカント)との戦い。レプリカントは人間の奴隷として製作されたが、ある時を境に感情を持ち始め、人造人間の一部が人間に反乱を仕掛ける。そのように人間に反抗的なレプリカントを取り締まるのが、主人公たちブレードランナーだ。ブレードランナーは人間社会に溶け込むレプリカントを処分するために働く専門家で、レプリカントかを判別する特殊技能を持っている。

人間の本性とは何か、という哲学的問い

 何故、ブレードランナーが必要なのだろうか。それは単に、レプリカントがあまりに精巧にできているせいで、見た目や動作では人間かどうかを判断できないからである。レプリカントも第六世代になると技術は極めて発展していて、過去の記憶を実在する人間の記憶から移植するようになり、レプリカントはさらに人間へと近づく。ブライアントの指令でブレードランナーとして復帰したデッカードが、レイチェルがレプリカントか否かの判断に時間がかかったのはそのためだ。人間の技術が発展すればするほど、レプリカントは人間と何ら変わらない存在になる。人間とレプリカントを分け隔てるものは、ほとんどなくなってしまう。

 その地点において、新たな問いが生まれる。人間とレプリカントを分ける要素がないのならば、人間とは一体どのようにして定義されるのだろうか。そして、レプリカントが人間になれるのならば、人間以上に人間らしく、さらにはより高次な存在へと進化することができるのだろうか。ベルクソンカントなどの哲学者が探究した問いがこの映画には込められている。

考察

ハリソン・フォードの輝かしい俳優人生

 主人公のブレードランナーであるダッカードを演じるのは、稀代のイケメン、ハリソン・フォード。ハリソン・フォードといえば、「スター・ウォーズ」シリーズのハン・ソロ役や、「ジャック・ライアン」シリーズのジャック・ライアン役、そして代表作「インディ・ジョーンズ」シリーズの主役で有名な、世界的大スターである。

 そんな彼が本作の主役を演じた時期を確認すると驚くべきことがわかる。『ブレードランナー』が公開されたのは1982年なのだが、その前年である1981年には「インディ・ジョーンズ」シリーズの第一作目の『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』が、その前々年である1980年には「スター・ウォーズ」シリーズ第二作目の『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』が公開されているのだ。もう少し時代を前後に広げれば、1977年に「スター・ウォーズ」シリーズ第一作目の『スター・ウォーズ』、1979年に『地獄の黙示録』、1983年に「スター・ウォーズ」シリーズ第三作目の『スター・ウォーズ ジェダイの帰還』、1984年に「インディ・ジョーンズ」シリーズの第二作目の『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』が公開されている。つまり、1980年前後のハリソン・フォードは、歴史に名が刻まれているような超ヒット作に毎年出演しているのだ。

 この10年弱は、ハリソン・フォードといえども、そうそう訪れることのない伝説的な期間と言える。そしてその間に公開されたのが『ブレードランナー』なのだ。本作のハリソン・フォードは、彼の俳優人生の中でも最も輝いている。

レイチェルとデッカードの恋

 そんなハリソン・フォード演じるデッカードが恋するのは、破壊対象であるレプリカントのレイチェルである。レイチェルは開発者タイレル博士の第六世代のレプリカントで、姪の記憶を移植されているため、より人間に近い存在になっている。そして彼女自身、デッカードが指摘するまで、自分がレプリカントであることを知らない。自分が人間であることを疑ってこなかったレイチェルは、ある日突然レプリカントであると宣告され、そして自身の存在について疑問を抱いていく。

 そんな彼女に恋をするのは、彼女を追う立場であるはずのデッカードである。デッカードは自己の確信に揺らぐレイチェルに、人間らしさを認め恋に落ちる。レプリカントと人間を識別するはずのデッカード自身が、レプリカントと判定したレイチェルに人間の部分を発見するのだ。

 ここで問われているのが、人間と人造人間の差異であり、ひいては人間の条件の本質である。一体、何が人間とレプリカントを分けるのか。そして人間は機械に、人間的な親しみを覚え、恋に落ちることがあるのか。

裏主人公ロイ・バッティの崇高への道

 デッカードとレイチェルの間にある問い。そのほかにもう一つ重要な問いが、デッカードとロイの間に横たわっている。

 ロイは戦闘レプリカントで、人間に反乱を企てる一味のリーダーである。彼の望みはただ一つ、第六世代のレプリカントにある4年という寿命を無くし、より長く生きることである。そのためにタイレル博士のもとを訪れ、寿命を伸ばすことができないと知ると、激昂し博士を殺害してしまう。レプリカントは労働する奴隷として製作され、反乱が起きないように寿命を与えられる。余りに理不尽。彼のなかに渦巻く怒りは、人間のそれだ。

 そんな彼が、死の間際に戦うのがデッカードである。人間離れしたパワーでデッカードを追い詰めたロイは、トドメを刺そうと彼に近づく。折られた指で壁にぶら下がるデッカードは、努力も虚しく、力尽きて手を離してしまう。その時、彼の腕を掴むのは、あろうことか、彼を殺害しようとしていたロイである。そして寿命がきたことを悟り彼は死ぬ。彼の手からは平和の象徴である鳩が飛び立つ。

 このときロイはデッカードよりもはるか高みにいる。むしろ崇高と言ってもいい。彼はデッカードを助け、許し、笑みを浮かべる。彼はこの結末に満足しているかのようである。

 ロイは本作の裏主人公と言って良い。彼はデッカードやレイチェルと同じ、自身の存在の本質を疑いもがき続ける、悩める闘士である。だが彼はその悩みの先に、より大きなものを掴む。死の間際に、慈悲や赦しを与えることを知るのだ。

感想

 他にも本作には面白い論点が幾つもある。

 一つは自らを人間だと信じレプリカントという宣告に酷く動揺したレイチェルと同様に、デッカードもレプリカントであるという説だ。侵入したレプリカントが6人であるという誤った発言から派生した説で、その説を好んだ作者がファイナル・カット版の最後に、それを示唆するユニコーンの折り紙をデッカードが見つけるシーンを挿入している。

 さらに生殖の問題や、記憶の問題など、面白いところは山ほどある。そしてそれらに関する考察も、世の中にはたくさん存在する。興味があるならば調べてみると面白いだろう。

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評価(批評・評論・レビュー)

1950年代までのSF映画は大雑把に言って映画というメディアの特性(特撮)を活かしたエンターテインメントが主流であり、未知なるものへの憧憬と恐れが科学技術への楽観的自信と入り混じったストーリーで、…… 全文

ーー antenna-mag.com(石川俊樹)

例えば『ゾンビ』のように、公開エリアによって権利保持者が違ったため、各々独自の編集が施されたケースもあれば、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズや『アバター』のように、劇場公開版とは別の価値を持つものとして …… 全文

ーー thecinema.jp(尾崎一男)

フィリップ・K・ディックの傑作小説「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」を原作に、リドリー・スコットが惹きこむような審美的映像に仕上げた、時代を画したSF作品。なにより画期的なのは綿密に映像に構築された世界観にある。 …… 全文

ーー screenonline.jp(稲田隆紀)

加筆中(おもしろい評論、または、載せてほしい論考などがありましたら、コメント欄にてお伝えください)

動画配信状況

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dTV✖️31日間550円
FOD✖️✖️976円
ABEMAプレミアム✖️2週間960円
Netflix✖️✖️1,440円
クランクイン!ビデオ14日間990円
mieru-TV1ヶ月間990円
dアニメストア✖️31日間550円
◎☆:おすすめ、○:無料、☆:実質無料、△:別途有料、✖️:配信なし(2023年2月時点の情報。最新の配信状況は各サイトにてご確認ください)*実質無料とは、無料ポイント付与により別途料金を払わずに視聴できるということ。詳細:『ブレードランナー』の無料視聴方法

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