『アンタッチャブル』考察|権力者が恐れるもの|あらすじネタバレ感想・伝えたいこと解説|ブライアン・デ・パルマ

『アンタッチャブル』考察|権力者が恐れるもの|あらすじネタバレ感想・伝えたいこと解説|ブライアン・デ・パルマ

概要

 『アンタッチャブル』は、1987年に公開されたアメリカのヤクザ犯罪映画。監督はブライアン・デ・パルマ。実在の捜査官エリオット・ネスの自伝を基にしている。

 アカデミー賞助演男優賞、ゴールデングローブ賞助演男優賞を受賞。

 禁酒法が施行されるシカゴで酒の密造・密輸を牛耳るマフィアのボスのアル・カポネを逮捕しようと結成した警察組織「アンタッチャブル」の奮闘を描く物語。

 犯罪映画はほかに『殺人の追憶』『ゴーン・ガール』『ノーカントリー』『セブン』『パンチドランク・ラブ』などがある。

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登場人物・キャスト

エリオット・ネス(ケビン・コスナー):財務省から派遣された役人。カポネが率いるマフィアを撲滅するために奮闘する。

ジム・マローン(ショーン・コネリー):シカゴの老警官。ネスに協力を依頼され、一緒に戦うことを決意する。

ジョージ・ストーン(アンディ・ガルシア):新人警官。射撃能力が高く、ネスの相棒となる。
(他の出演作:『運び屋』『オーシャンズ11』『オーシャンズ12』『オーシャンズ13』)

オスカー・ウォレス(チャールズ・マーティン・スミス):簿記係。カポネを脱税容疑で逮捕するという作戦を立てる。頭脳派ではあるものの、銃撃戦でも活躍する。

アル・カポネ(ロバート・デ・ニーロ):マフィアのボス。敵を倒すためには手段を厭わない。警察官から裁判員まですべて買収している。
(他の出演作:『タクシードライバー』『ジョーカー』)

フランク・ニッティ(ビリー・ドラゴ):カポネの腹心。マローンを殺害するなど、極悪非道で容赦がない。

ジョージ(ブラッド・サリヴァ):帳簿係。カポネの脱税を証言しようとして殺害される。

キャサリン・ネス(パトリシア・クラークソン):エリオット・ネスの妻。

名言

ネス:最後まで立ち続けている者が勝ちだ

あらすじ・ネタバレ・内容

 舞台は1920年代から30年代初期のシカゴ。この頃に発令された禁酒法によって、闇取引が横行していた。

 そんな中、アル・カポネの犯罪組織は、カナダからの酒の密輸で莫大な利益をあげていた。カポネはその圧倒的な権力と資金によって警察や裁判所を買収し、逆らう者は殺害するようになっていた。

 カポネに立ち向かうために派遣された財務省のエリオット・ネスは、手柄を立てようと密造酒の摘発に向かう。しかし買収されていた警官が情報を漏らしていたため、この作戦は失敗する。

 摘発が失敗した場面は新聞記者に写真を撮られ、新聞に掲載されてしまいショックを受ける。帰り道で警官ジム・マローンと出会い、家に帰ることが警官の仕事だと教わる。

 翌日、世間から失笑されている中で、マフィアの抗争で娘を失った母親がネスの元を訪れる。彼女の訴えに奮起したネスは、マフィアを撲滅するためにマローンに協力を要請する。マローンは当初、乗り気では無かったものの、ネスの熱意に負けて共に戦うことを決意する。

 ネスたちは新米警官のジョージ・ストーン、簿記係のオスカー・ウォレスを仲間に引き入れ「アンタッチャブル」を結成し、密造酒の摘発に向かう。新聞にネスの功績を称えた記事が載ると、カポネの部下が賄賂を渡しにくる。賄賂を断り帰宅すると、家の前を彷徨く怪しい男性が現れ、妻子に危険が迫っていると感じ離れて暮らすことにする。

 ウォレスの発見でカポネを脱税で起訴しようとする。また、マローンが密輸の日時と場所の情報を得ると、現場を押さえるために襲撃する。激しい銃撃戦でマフィアを殺害してしまうが、帳簿係と帳簿を入手する。

 だが、カポネは報復としてウォレスと帳簿係を殺害し、さらにはマローンまで殺害する。証人を失ったネスは起訴を取り下げようとするが、マローンのダイニングメッセージから、マフィアの会計係の移動経路が発覚し、確保するためにシカゴ・ユニオン駅に向かう。

 会計係を捕まえたネスたちはカポネを起訴する。会計係は脱税を認めるも、カポネは余裕の表情を保ったままで、ネスは不信に思う。カポネの付き人のフランクが拳銃を保持していたことから、法廷の外に出し身体検査をする。

 フランクが持っていたメモからマローンを殺害した犯人であると知った瞬間、フランクは逃亡する。ネスはフランクを追い詰めるも、彼がマローンを侮辱したため屋上から突き落としてしまう。

 法廷に戻ったネスは、ストーンからカポネが陪審員を買収していると聞かされる。そこで陪審員の入れ替えを判事に要求し、カポネの帳簿に判事の名前があると脅して、入れ替えを実行させる。

 追い詰められた弁護士は有罪であることを認める。翌日、ネスはストーンと別れた後、禁酒法が廃止になると記者に問われ、大いに飲むと答えるのだった。

解説

マフィアvs警察——実話を元にした映画

 この物語は実在したシカゴの捜査官エリオット・ネスの自伝に基づいている。舞台は1930年代のシカゴ。マフィアが街を牛耳る暗黒時代である。

 禁酒法が施行されると、マフィアは酒の密輸・密造で大金を稼ぎ、その金で警察や裁判官を買収していた。だから敵対するマフィアを攻撃しても、密輸・密造の邪魔になった人物を殺害しても、罪に問われることはない。そんな恐ろしい時代が、現実に存在していたのだ。

 酒の密造・密輸を牛耳るマフィアのボスはアル・カポネ。そんな彼を逮捕しようと奮闘するのが、ネスと老警官マローンが率いる警察組織「アンタッチャブル」である。法を犯す裏の組織であるマフィアと、法を遵守する表の組織である警察。銃撃戦も交えたこの二つの組織の戦いは、名演技もあって大変に見応えがある。

 ちなみにマローンを演じたショーン・コネリーは、その好演が認められアカデミー賞助演男優賞を受賞した。

『ゴッドファーザー』と比較

 一人の中年男性が椅寝っ転がり、その周りを複数の給仕と記者が囲んでいて、ちょっと離れたところには街の権力者が数人ほど直立している。その様子を上方から映したカメラは、その中年男性の方にゆっくり近づいていき、周囲の人物たちは画面の外へと消えていく。

 この冒頭のシーンには、マフィアの長であるアル・カポネの権力性がわかりやすく示されている。一般的に暴力で街を支配する権力者は、子分たちを威圧し平伏させる。裏社会を生きるマフィアを描いた『ゴッドファーザー』(1972年)の冒頭の場面では、ドン・コルレオーネが部下と対峙しゴッドファーザーと呼ばせ、権力の差を身にしみてわからせる。これぞ圧倒的な権力だ。あくまでも自発的なお辞儀という形式を取るこの儀式は、ゴッドファーザーへの絶対的な忠誠を示すことになる。

 カポネの場合はそうではない。ドン・コルレオーネとは対照的に饒舌であるカポネは、気さくで話しかけやすそうである。彼は記者を通じて世間に話しかける。自分は優しく気さくでいいやつだと。ドン・コルレオーネが一対一になって部下に忠誠を誓わせるならば、カポネは複数の部下に同時に話しかける。ドン・コルレオーネが静かに言葉少なく威圧するならば、アル・カポネはうるさく饒舌に語りかける。

考察

「タッチャブル」に抵抗する者としての「アンタッチャブル」

 カポネは警察と裁判官を買収し、敵対組織のメンバーを殺害し、「アンタッチャブル」な存在としてシカゴの街に君臨していた。だが、冒頭の爪を磨かれ髭を剃られ、給仕のなすがままにされるカポネの姿は如何にも無防備だ。ここにカポネの恐ろしさの核心に、「タッチャブル」な性質があることが窺える。

 それは給仕が剃刀で誤ってカポネの頬を切ったときに強く意識させられる。彼は「アンタッチャブル」なのではなく「タッチャブル」な存在なのだと。

 だからこそ逆説的にカポネは恐ろしい存在なのだ。カポネは給仕に無防備な姿を晒す。記者に囲まれ疑惑を問いただされる。法廷に引きずり出されることもある。でも彼が捕まることはない。彼に触れることは容易なのにも拘らず、誰も触らない/触れないというこの状況こそが、カポネの作り上げた権力構造の本質だ

法と人情

 カポネはタッチャブルだからこそ街全体を掌握できる。ネスが結成したチーム「アンタッチャブル」は、カポネのこの本質に真っ向から抵抗するためのものだ。彼らにとって真逆の性質を持つ組織は、それだけで恐ろしい。

 ところでネスは、「禁酒法」に賛成したわけではなかった。彼は「禁酒法」が「法」であるというその一点において、命をかけて守るべきだと判断した。それゆえにフランクを助けた後に突き落とすシーンには重みがある。ロープをつたって降りようとするフランクを助けるとき、彼は未だ「法」の守り人である。だが、父のように慕っていたマローンを侮辱されたとき、彼は警官であることをやめてフランクを殺害する。ネスにとってチーム「アンタッチャブル」は「法」以上に尊いものになっていたのだ(法を守るために法を破るという方法を取ったのはクリストファー・ノーラン監督のダークナイト』である。参考までに)。

 最後になるが、本作は銃撃戦もかなり見応えがある。密輸現場に馬で駆けつけるシーンや、マローンが襲撃されるシーンはかなりドキドキする。さらに駅で会計係を捕まえる場面のスローモーションもかなり効果的である。演技、銃撃戦、物語、どれをとっても一級品。文句なしでおすすめできる映画である。

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