『ロード・オブ・ザ・リング 力の指輪』(シーズン1)考察|光を知るためには闇に触れなければならない時もある|あらすじ解説|登場人物

『ロード・オブ・ザ・リング 力の指輪』(シーズン1)考察|光を知るためには闇に触れなければならない時もある|あらすじ解説|登場人物

概要

 原題は The Lord of the Rings: The Rings of Power。J・R・R・トールキンの小説『指輪物語』とその追補編を基に製作され、Amazon Prime VIdeo(プライムビデオ)で独占配信されているテレビドラマシリーズである。前作『ロード・オブ・ザ・リング』(LOTR)や『ホビット』と異なりオリジナルストーリーであり、『指輪物語』などに残された過去の歴史や設定を膨らませながら物語を再構成している。シリーズは全5回の予定。

Amazonオリジナル作品には他に『ペリフェラル〜接続された未来〜』などがある。

登場人物

エルフ

ガラドリエル(モーフィッド・クラーク):エルフの伝説的な戦士で北方軍の司令官。『ロード・オブ・ザ・リング』『ホビット』にも登場。兄をサウロンとの戦いで亡くしており、闇の力を滅ぼすのに執着している。

エルロンド(ロバート・アラマヨ):『ロード・オブ・ザ・リング』『ホビット』にも登場。ガラドリエルの友人で、リンドンで高官の地位に就いている。ケレブリンボールの計画を助けるため、ドワーフで友人のドゥリンと契約を交わしにいく。

アロンディル(イスマエル・クルス・コルドバ):森のエルフの戦士(シルヴァン・エルフ)。南方国の人々を監視してきたが、治療師の女性ブロンウィンに愛着を持つようになる。

ケレブリンボール(チャールズ・エドワーズ):エルフ鍛冶師でエレギオンの領主。中つ国をヴァリノールと同じぐらい美しい場所に変えようと壮大な計画を立てている。

ギル=ガラド(ベンジャミン・ウォーカー):リンドンを治める上級王。エルフたちの未来のために尽力するが、重大な秘密も隠し持っている。

ドワーフ

ドゥリン4世(オウェイン・アーサー):カサド=ドゥームの王子。エルロンドと友人であり、寡黙であるが情に厚い。エルロンドとの友情をとるか、ドワーフの未来をとるかで悩まされることになる。

ハーフット

エラノール・“ノーリ”・ブランディフット(マーケラ・カヴェナグ):本作のハーフット族の中での主人公。好奇心旺盛で、ハーフット族の考え方に疑問を抱いている。よそ人に出会い、旅を共にすることになる。

サドク・バロウズ(レニー・ヘンリー):ハーフット族の指導者的存在。大移動の際には、何世代にもわたる知恵を使いながら、先導していく。

ポピー・プラウドフェロー(ミーガン・リチャーズ):ノーリーの友達。家族を失った孤児で、いつもノーリーの近くにいる。

人間

ヌーメノール人

ミーリエル(シンシア・アダイ=ロビンソン):ノーメノールの女性摂政。表向きには年老いた父親が今もヌーメノールの統治者だが、代理で彼女がヌーメノールを統治している。

ファラゾーン (トリスタン・グラヴェル):ヌーメノールの執政でミーリエルの右腕。民衆から絶大な信頼を集めているが、思慮深い外見の裏にはヌーメノールに対する大きな野望を隠し持っている。

エレンディル(ロイド・オーウェン):ヌーメノールの海洋警備隊の船長。妻を亡くし、娘と息子がいる。シーズン1ではミーリエルとともに中つ国に渡り、オーク軍と戦う。

イシルドゥル(マキシム・バルドリー):エレンディルの息子。父エレンディルとともに中つ国に渡り、オーク軍と戦う。

南国人

ハルブランド(チャーリー・ヴィッカーズ):南方国の王の血筋を引く。海でガラドリエルを助け、ともに行動することになる。

ブロンウィン(ナザニン・ボニアディ):南方国の治療師。息子にテオがいる。エルフの兵士アロンディルに好意を寄せている。オーク軍が攻めてきた時には闘うことを決意し、住民の指導的立場となる。

テオ(タイロー・ムハフィディン):ブロンウィンの一人息子。あるとき邪悪な力をもった剣を拾うことになる。

その他

よそ人(ダニエル・ウェイマン):隕石とともに空から落ちてきた謎の人物。ノーリーに発見され、ハーフットともに行動する。言葉もあまり理解しないが、魔法のような不思議な力を使う。

アダル(ジョゼフ・マウル):オークの長。元エルフ。アダルというのはエルフ語で、「父親」という意味である。

用語

ハーフット

ホビットの祖先。体は小さく、裸足でホビットと同じ特徴を持っている。荒れ地で暮らし、移動しながら生活ををしている。よそ者である「大きい人たち」からは身を隠し、仲間と協力し合いながら暮らしている。

ヌーメノール

中つ国とヴァリノールの間の大海(分ちの海)にある島。もともとエルロンドの双子の兄弟であるエルロスがここに建国。第一紀の戦争の際、犠牲を払いながらもエルフと同盟を結んで戦った人間は、その褒美としてヌーメノールを譲り受けた。それゆえ、エルフ建築の壮大な建築物が残っている。以前はエルフの知識と多くの贈り物によって豊かに暮らしていたが、今では彼らの土地でエルフが歓迎されなくなって数世紀が経つ。

ヴァリノール

 エルフが最後にたどり着く土地。中つ国の西の海岸のその先には分(わか)ちの海があり、さらにその先の西の彼方に不死の国であるヴァリノールがある。上のエルフが最後に行き着く土地で、エルフたちはそこで不死の一生を平和に送る。

カザド=ドゥーム

 霧ふり山脈の岩盤につくられた、地底の王国。『LOTR』ではモリアと呼ばれ、『LOTR』の一作目で、旅の仲間がトロールやゴブリンに襲われ、ガンダルフがバルログと対決して道連れにあった坑道である。

名言

フィンロド;知っているか? なぜ船は浮かび、石は沈むか。それは石が下ばかり見ているからだ。水中の闇は果てしがなく、抗いがたい。船も闇の力を感じ引き込まれまいと逆らうのに必死だが、船は極意を知っている。 石のように下を向かず、上を見るんだ、導いてくれる光を。その囁きは闇よりはるかに気高い。
ガラドリエル;でも光の反射で、水面が空と同じくらいまぶしいときは?上と下の区別がつかないときには・・・どの光に従えばよい?
フィンロド;Sometimes we cannot know until we have touched the darkness. わからない時もある・・・闇に触れるまで。

あらすじ

過去の影(第一話)

 ヴァリノールで育ったエルフのガラドリエルは、かつてサウロンと戦って死んだ兄フィンロドの遺志を継ぎ戦士となり、中つ国に渡りサウロンを倒そうとする。ガラドリエルの隊は、北方のフォロドワイスで兄の死体に刻まれたのと同じサウロンの刻印を見つけ、サウロンがまだ滅んでいないことを確信するが、サウロンを発見することはできず撤退命令が出る。リンドンに戻り、エルフの上級王ギル=ガラドに謁見すると、ギル=ガラドは敵はもはや存在しないと宣言し、ガラドリエルらにヴァリノールへの帰還という栄誉を与える。ガラドリエルは受け入れられないが、昔からの友人であるエルロンドにも諭され、渋々ヴァリノールへの船に乗ることを約束する。しかし結局ヴァリノールに行く途中に「分ちの海」で船から飛び降りて、中つ国に戻ることを決意する。

 他方ガラドリエルの友人エルロンドは、ギル=ガラドの命令により、高名な鍛冶士のケレブリンボール卿の計画を手伝うことになる。

 南方国では、ギル=ガラドの宣言により、人間たちを見張っていたエルフの駐留部隊が撤退することとなってた。その一員であるシルヴァン・エルフの戦士アロンディルは、密かに人間の治療師ブロンウィンと恋仲となっていたが、別れの挨拶をしようとブロンディンのいるホルデルン村を訪れる。そのときアロンディルは異変を発見し、一人撤退せず探索することになる。

 その頃ハーフット族はというと、彼らはロヴァニオンで楽しく隠れ暮らしていた。その近くに赤い隕石が落ち、ハーフットの娘ノーリーが、隕石の破片の中に横たわれる謎の男を発見する。

漂流(第二話)

 船から飛び降りたガラドリエルは「分かちの海」を泳いでいた。そこに筏で漂流するハルブランドと南方国の人たちが現れ救出されることになる。彼らの船はワームという巨大生物によって破壊されていた。ワームが再び現れ、小さな筏にハルブラントとガラドリエルだけが残される。その後嵐に直面し海に放り出されるが、新たな船が彼らを救出する。

 エレギオンでは、ケレブリンボール卿がエルロンドに「フェアノールの槌」を見せ、中つ国を美で覆い尽くせるような新しい鍛冶場の建設計画を語る。春までに完成したいと言われ、エルロンドはドワーフに助けを求めることにする。二人でカザド=ドゥームにあるドワーフ王国を訪ねるが、エルロンドだけが入国を許される。入国を歓迎しない旧友のドゥリン王子は、スィギン=タルァグの儀式を行う。この儀式の勝負に負けたエルロンドは追放されそうになるが、婚礼にも行かず、二人の子供の誕生祝いにも行かなかった非礼を詫び、話だけでも聞いてもらうことになる。

 南方国では、アロンディルとブロンウィンが村人が消えていなくなったホルデルン村を発見する。アロンディルは穴からトンネルを探索する一方で、ブロンウィンは村に戻り人々に危険を警告するが無視される。家に戻ると、地下からオークが襲いかかってくるが、なんとか息子テオとともに撃退する。首を人々に見せて危機を証明し、夜明けにエルフの塔へ脱出するように伝える。アロンディルは探索の途中にオークに捕まってしまう。

 ロヴァニオンでは、ノーリが親友ポピーとともに隕石の破片の中からよそ人を救出し、仲間には秘密に世話をするようになる。言葉を話せず記憶もないよそ人であったが、ホタルの光を消してしまうなど不吉な力を発揮し、ノーリたちを困惑させる。

アダル(第三話)

 ヌーメノールの海洋警備隊船長であるエレンディルは、ガラドリエルとハルブランドを拾い上げて都に連れて行き、ヌーメノールはエルロンドの双子の兄弟エルロスが建国したエルフにゆかりのある都市であり、今では摂政女王ミ―リエルと執政ファラゾーンが統治する人間の都市となっていた。ガラドリエルは彼らに謁見し、中つ国に戻ることを訴えるが、ヌーメノールではエルフは歓迎されなくなっており、処分のため3日間そこにとどまることになる。その間にガラドリエルはエレンディルとともに学舎に赴き文献を調べることで、サウロンが南方国を狙っていることに気づく。他方ハルブランドはヌーメノールの民と殴り合いになり、幽閉される。そしハブランドが持っていたペンダントから、ガラドリエルは彼が南方国の王家の出だということを知る。

 南方国では、アロンディルは仲間のエルフとともにオークの命令でトンネルを掘らされる。アロンディルは仲間とともにワーグを殺し脱走をはかるが失敗し、一人オークの頭領アダルのもとに連れて行かれる。

 ロヴァニオンでは、ノーリが匿っていた謎の男「よそ人」の存在が仲間にバレてしまう。大移動の際、罰として一家の荷車は移動する隊列の最後尾におかれることになり、父ラルゴの足のけがのために脱落しそうになる。そこを「よそ人」が助けてくれることになる。

大きな波(第四話)

 ヌーメノールでは、ミーリエルはヌーメノールが津波に飲み込まれる夢を見る。ガラドリエルは、ミ―リエルに南方国でサウロンと戦うための応援を要請するが断られる。そこでガラドリエルは父王に請願すると脅すが、そのためにハルブランドの隣の牢屋に入れられる。故郷に強制送還されそうになるが、危機を逃れミーリエルの病気の父王に会う。そこにはミーリエルもおり、促されるままにパランティールに触れ、ミーリエルと同じくヌーメノールが津波に飲み込まれる未来を見る。次の日ガラドリエルはヌーメノールからの追放を受けるが、白の木の花が散るのを見たミーリエルは改心し、艦隊を率いてガラドリエルを中つ国に送り届けることを宣言する。

 エレギオンではドワーフの協力を受けて建設が始まっていた。カザド=ドゥムでは、ドゥリン王子が密かに新たな鉱石ミスリルの鉱脈を採掘する。そのことを嗅ぎつけたエルロンドに対して、ドゥリンはミスリルのことを他言しないとように誓いを立てる。しかしすぐにミスリルの採掘場で落盤事故が起き、王は鉱脈の閉鎖を命じる。

 南方国では、アロンディルはエルフの外見を持つオークの頭領アダルに会い、エルフの塔に立て篭もった人間たちへの伝言を渡され解放される。その伝言とは、その土地を捨てて自分たちに忠誠を誓えというものであった。その一方で、テオは友人のローワンと近くの村に食糧を調達しにいくが、その最中にオークに襲われる。その時テオは自分が隠し持っていた折れた剣がオークの探し求めていた物だということを知る。アロンディルの助けもあり、なんとか逃げ切ることができる。

分岐点(第五話)

 ヌーメノールでは、ガラドリエルとともにヌーメノール軍も出陣することが決定する。エレンディルの息子、イシルドゥルも遠征に参加希望であったが、父であるエレンディルに拒否される。ミ―リエルは父に遠征を告げるが「行くな」と言われ、ファラゾーンの息子ケメンが遠征を妨害するために船を爆破したことで、出発を延期するかどうか悩むが、最終的に遠征を決定する。一方船を爆破したケメンを助けたことで、イシルドゥルは遠征参加を許される。遠征には決心したハルブランドも加わり、ミ―リエル率いる艦隊が出航する。

 エルロンドとドゥリンはリンドンに赴き、上級王ギル=ガラドやケレブリンボールに面会する。ギル=ガラドはドワーフたちがシルマリルの力を宿したミスリルを発見したのではないかとエルロンドに問い詰めるが、エルロンドは答えない。痺れを切らしたギル=ガラドは白の木が枯れ始めたことを打ち明け、エルフの運命がミスリルの入手にかかっていると述べる。エルロンドはドゥリンに訪問には裏がありミスリルが目的だったことを打ち明け、ミスリルがないとリンドンのエルフが滅びてしまうという現状を告げる。ドゥリンは父を説得してミスリルを採掘することを決心し。ガザド=ドゥムに向かう。

 南方国では、オークたちが掘らせたトンネルが完成する。人間たちは降伏する者たちと抵抗する者たちに別れ、降伏する者たちはエルフの塔(オスティリス)を降りてアダルの元へ。ブロンウィンら抵抗する意志のある者たちはエルフの物見の塔にこもり敵を待ち受ける。テオは隠していた折れた剣をアロンディルに見せる。アロンディルは、それがこの土地を支配するための鍵であると見抜く。オークたちは戦いの準備を整え、エルフの塔へと向かう。

 ロヴィニオンでは、奇妙な三人の女たちが隕石の落ちた跡を調べる。ノーリたちは大移動の途中に獣に襲われるが、そのときよそ人が不思議な力を使いノーリーたちを助ける。

奈落(第六話)

 南方国では、オスティリスにアダル率いるオークの大軍がやってくる。アロンディルとブロンウィン率いる人間たちは様々な知恵を絞って応戦するが、圧倒的な数と強さの前に徐々に力尽きていく。追い詰めたところでアダルは探していた折れた剣=鍵を手に入れるが、同時にヌーメノール軍が現れてアダルのオーク軍団を破る。そしてガラドリエルとハルブランドが逃げるアダルを追いかけ捕まえる。ガラドリエルは、アダルがモルゴスに心身を捻じ曲げられたエルフ「ウルク」であることに気づき、サウロンの居場所を聞き出そうとするも「サウロンは殺した」と返答される。すべてが解決したかに見えたが、その頃アダルに従属していた人間ワルドレグが、アダルの指令通り鍵である剣を岩に突き刺す。アダルが逃げたのはおとりだったのだ。剣を岩に突き刺すと、ダムが決壊し、大水がオークが掘ったトンネルに流れ込み、山の噴火を誘発する。結果、火砕流がヌーメノール軍のいる村を襲うことになる。

目(第七話)

 南方国では、火砕流を生き延びた人々がヌーメノール軍の野営地に集結する。ミ―リエル摂政女王は失明し、イシルドゥルの生死は不明となる。エレンディルはエルフに従ったことを後悔するが、ミーリエルは強い意志で一旦は帰国し中つ国に必ず戻ると誓う。南方国を追われた南方国の人々はアンドゥイン河口に移り住むことを決意する。また南方国の王の血を引くハルブランドは重傷を負う。ガラドリエルはエルフの治療が必要と判断し、一緒にけれブリンボールのいるエレギオンへと向かうことになる。他方で南方国を手に入れたアダルは噴火で荒廃した南方国をモルドールと呼ぶ。

 カザド=ドゥムでは、エルロンドの説得も虚しく王が落盤の危険を危惧してミスリル採掘を禁じるも、ミスリルの力を知ってしまったドゥリンはエルロンドとともに秘密裏に採掘を進める。しかし王に見つかり、エルロンドは追放、ドゥリンは後継ぎの座を奪われることになる。

 ロヴァニオンでは、よそ人が枯れた木を再生しようと試みるが失敗する。その時誤って木がハーフットの方へ倒れてしまい、ノーリからも恐れられ追い払われてしまう。しかし、翌朝には地が豊穣になりよそ人を追い払ったのは過ちだったと悟る。夜になり、よそ人を探す奇妙な三人の女たちが現れる。よそ人の偽の情報を教えると、仕返しにハーフットの荷車を魔法で燃やしてしまう。ノーリーたちは自分たちの過ちを認め、よそ人を探しにくことになる。

合金(第八話)

 エレギオンでは、ミスリルをこれ以上採掘することができないエルロンドが、ケレブリンボールとともにドゥリンにもらった少量のミスリルでなんとかできないかを模索している。そこにガラドリエルとハルブランドが到着し、ハルブランドが回復する。回復したハルブランドは、ケレブリンボールに合金を作るよう助言する。ケレブリンボールとエルロンドは、ギル=ガラドに合金の王冠をつくる三か月の猶予を請うが、そのときのケレブリンボールの言葉に疑念を抱いたガラドリエルは、ハルブランドの素性を調べさせる。するとハルブランドが南方国の王族ではないことが分かる。ガラドリエルは殺そうとするが、幻覚を見せられ、目覚めるとハルブランドはすでにエレギオンを去った後だった。ガラドリエルは三つの指輪を作ることを提案し、ヴァリノール産の純度の高い金銀を使った兄の短剣をその素材として捧げる。そしてエルフの3つの指輪が出来上がる。

 ヌーメノールでは、エアリエンが瀕死の王の肖像を描く役目を与えられ、パランティールを覗いてしまう。そしてミ―リエルの船団が戻ってくるが、そのときに王が死んだことを知らされる。

 ロヴァニオンでは、森の中で三人の奇妙な女たちがよそ人をサウロンと呼んで仕えるのだが、未だ記憶を取り戻せず、力を制御できないため、よそ人を束縛する。そこによそ人を救出しにきたノーリーたちが現れ、ハーフットを助けようとしたよそ人は自分が何者かを思い出す。自分はサウロンではなくイスタルだったのだ。サドクは死んでしまうが、3人の女たちを撃退することに成功する。断片的に記憶を取り戻したイスタルは、リューンに行き、完全に記憶と力を取り戻そうとする。そのイスタルの旅にノーリが同行することになる。

 モルドールでは、サウロン(ハルブランド)が、三つの指輪が鋳造されたことを知る。

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解説

製作費4億ドルのプライムビデオオリジナル作品。

 シーズン1は全八話。計画ではシーズン5まで。アマゾンが超期待を込めて作った作品である。

 前前作が『ロード・オブ・ザ・リング』(LOTR)、前作が『ホビット』である。そのときの監督はピーター・ジャクソンだった。ホビットの最終章『ホビット 決戦の行方』が2014年なので、8年ぶりの『指輪物語』作品で、シーズン1はドラマ仕立ての全8回構成となった。

 総製作費4億6千5百万ドル(約600億円)からもわかるように、アマゾンはかなり力を入れている。これまでで製作費が最も高額な映画が『パイレーツ・オブ・カリビアン 生命の泉』だと言われているが、それで約3億8千ドル。つまりシーズン1だけでゆうにその金額を超えてしまっているわけだ(もちろんここにはシーズン全体の権利獲得の費用も含まれているのだが)“Amazon’s ‘The Lord of the Rings’ to Cost $465M for Just One Season”(2023年1月27日閲覧)。

 どうしてこのような規模になったのか。それが『ゲーム・オブ・スローンズ』の影響である。HBOのテレビドラマシリーズで、中世ヨーロッパ風の世界が舞台のファンタジードラマだ。このシリーズは2019年までで終了しているが、このドラマに匹敵するものを作りたいという要望から、『力の指輪』計画が持ち上がったのである。

 すごい規模だが、第二紀の話が多く描かれる『シルマリルの物語』の権利などを得ていない。つまり『指輪物語』で語られている内容から、想像を広げて脚本をオリジナルに作成した作品なのである。また『指輪物語』とその補遺『追補編』からのみ引用が許可されており、『シルマリルの物語』や『終わらざりし物語』などの第二紀を扱ったトールキンの他の作品からは許可されていない。『追捕編』はほとんどが第三紀に関するものであり、第二紀に関する記述は日本語版で20ページ足らずである。つまり、かなりの程度自由にストーリやキャラクターを設定できるので、オリジナル作品として監督や脚本家の力量が試されることになる。

 また『ゲーム・オブ・スローンズ』の前日譚である『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』が2022年より放送開始。ストーリーは異なるものの世界観が似ているので、批評家は必ずこの2作品を比べて論じるなど、どちらの作品も注目の的となっている。『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』は、日本ではU-NEXTが独占配信している。

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中つ国第二紀の物語

 本作ではいわゆる第二紀の物語が扱われている。『ホビット』と『LOTR』が、どちらもトールキンによる中つ国の歴史における“第三紀”と呼ばれる時代を扱っていた一方で、その数千年前にあたる“第二紀”と呼ばれる時代を扱っているのが今回のドラマの特徴だ。そのため、地名や状況設定などがかなり異なっている。

 『LOTR』に引き続き登場するのが、ガラドリエルエルロンドだ。エルフはほとんど不死なので、若かりし頃の二人として登場する(役者は変わっている)。ヌーメノールや南方国は本作で初めて登場する地名だ。ヌーメノールは中つ国の西側に位置する島で、南方国は後のモルドールだ。南方国に関しては、この頃はまだエルフの管理下のもとで人間が暮らしている。

 ハーフットも新たな存在だ。彼らはホビットの祖先で、ホビット同様体が小さく裸足であり、この頃は定住せず移動しながら暮らしている。また生死に関してある種の独特な価値観をもった種族であり、エルフと対比的に語られることになる。

 この第二紀というのは、サウロンがエルフと人間の同盟軍に敗れたところで終わりを迎えるが、それまでに様々な物語が複雑に交錯する。メインはガラドリエルが主人公の物語で、ガラドリエルが兄を殺された復讐にもえながら悪を葬り去ろうと懸命にサウロンの居場所を探す。エルロンドの物語では、彼の半エルフとしての苦悩やドゥリンとの友情が描かれることになる。ハーフットの物語では、シーズン1ではエルフと関わりを持たないが、逆にノーリーを主役としてよそ人との不思議な出会いと関係が描かれる。

 第二紀はまた「力の指輪」が鋳造される時代でもある。『LOTR』では、3つの指輪がエルフの手に、7つの指輪はドワーフの手に、9つの指輪が人間の手に与えられたと言われていた。シーズン1ではエルフの指輪がまず作られることになるが、他の指輪はまだ登場していない。

 まだシーズン1なので多くの謎を残しながら終わっている。最終話ではハルブランドやよそ人の正体が明かされるのだが、今後どのようにストーリーが展開していくのか、シーズン2の期待値も高い。

評価は批評家と観客でくっきり分かれる。

 観客視点でいうとシーズン1ではがっかりした人が多かった模様である。しかし、Rotten Tomatosを見てみると面白い評価となっている。Rotten Tomatos では批評家の評価メータであるトマトメーターが85%、一般観客のスコアが38%なのだ(2023年1月23日閲覧)。批評家からの評価は上々といえよう※。

本作は製作費や人種的側面も含めて挑戦的な作品でもある。さて論評家は何と言っているのか。

一例として、Jo lvingstone “The Rings of Power” Is True to Tolkien’s Mythmaking (Spirithttps://www.newyorker.com/culture/on-television/the-rings-of-power-is-true-to-tolkiens-mythmaking-spirit)(2023年2月1日閲覧)の論評を見てみることにしたい。

 まず『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』との関連で論じられている。この作品も『力の指輪』も前日譚という位置づけなのだが、比較してみると両者の足りない部分が浮かび上がってくる。比較すると『力の指輪』はジョーク少なめれない要素少なめという点で物足りなさを感じるが、逆に後者は壮大な風景描写の点で物足りなさを感じるという。またどちらも黒人を配役に選んでおり、このようなジャンルの作品には白人が出演すべきなんだと考えるファンからの配役批判にあっているという。

 これはトールキンの物語の作り方に背景がある。例えばエルフは長寿で真面目という特徴づけが与えられている。他方でハーフットは陽気で、人生の長さにそこまで価値を置くことはない。このように種族ごとの価値観を決定したりしているので、ますます人種などを変更するときに困難が生じるのである。

 最後にこの作品がこのように神話を語ることで、トールキンの思想を反映させることに助力していると語っている。トールキンは神話は反復され回帰すると考えていた。『ナルニア国物語』の作者であるC.S.ルイスが考えたように、神話というのは「壮大な嘘」というわけではないのである。今でも神話は反復され続けており、それをこのテレビシリーズでさらに拡張することができると、リビングストンは考えている。

 冷めた視点で、さらにトールキンが『指輪物語』を執筆した背景まで視野に入れれば、『力の指輪』をまた別のことなった視点から眺めることもできるだろう。

※ただし本作のトマトメーターの見方には注意が必要だ。基本的に評価は1作ごとになされていて、どれも80〜90%を誇っており評価が高いのだが、全体の批評は4つしかなく、しかもそのうち3つはいわば低評価だ。全体を通しての批評が少ないので、批評家の評価も正直なんともいえないということもできる。

感想・考察

 興味深かった点についての考察である。

予言(予兆)に左右される様々な種族

 『力の指輪』では予兆がたびたび登場する。これがこの物語の独特の価値観だ。彼らは基本的に自分より大きな力が与えてくれる予兆だっだり前兆に耳を傾けながら未来の行為を決断していく。

 第一話からそうである。ハーフット族の近くを旅人が通り過ぎる。それを見て、サドクは書物を読みながら「こんな季節に旅人が」と言い、周りの人は凶兆だ、という。書物を読めるのは長であるサドクだけだが、それは未来の方向性を決める予言の書でもある。彼らにとって知恵は長だけが知っていれば良い。生き残るのに全員が知る必要はない。というのも知恵を使うにも、優れた知恵が必要だからだ。そして、一番の凶兆は”よそ人”の到来であった。

 ヌーメノールにも予兆がある。それが”白の木の花”であり、”パランティール”である。

言い伝えによると、白の木の花が散る時良からぬことが起こる。散る花はヴァラールの流す涙。生きる戒め:”我らの行いにエルフたちが目を光らせ裁きを下す”と

ミーリエル(第三話)

ここではエレンディルは、予兆に惑うのは愚かなことだと主張しているが、大噴火の火砕流に巻き込まれた後はエルフを助けたのは間違いだったと悔やんでいる。

第五話では、リンドンの木が枯れ始めており、これはエルフの滅亡の予兆であるとギル=ガルドは考える。

 エルフもヌーメノールの民もハーフットも予兆を感じながら生きている。面白いのは、その予兆に対して現在どう振る舞えば良いのか、何が正解なのかが決してわからないことだ。象徴的なのは、ガラドリエルに対するヌーメノールの対応で、なるほどエルフの登場は何がしかの災いの前兆であるが、しかしエルフを助けることが災いをもたらすのかエルフを助けないことが災いをもたらすのかは分からない。だからエルフの処分に対しても、色々と揺れ動く。

 ”よそ人”に関してもそうで、最初は助けたことは間違いだったと主張するが、最後は良い選択だったということになる。

予兆はある。でもどうしたら良いかは決まっていない。ここは、現代にはない神話的価値観の結晶となっており非常に面白い。

神話感がなく人間臭いエルフと一貫性の問題

 何かが欠けていると感じた点もある。まずエルフの描写に関してである。

 『LOTR』と『ホビット』、とりわけ『LOTR』ではエルフは旅を手助けしてくれる存在だった。旅の主役はオークやホビットであり、彼らが困難に陥った時に、ガンダロフ(魔法使い)が現れたり、エルフが現れたりしてその困難を克服させたりしていた。エルフはそもそも作中で、永遠の命を持っているし、彼らの建築物も人間業ではない装飾を施した神秘的な建物であったりと、いわば彼らは神秘的で預言者的な存在であったわけである。

 本作ではガンダルフやエルロンドが主役として登場することもあり、基本的にエルフが物語の中心である話が多い。そういう理由もあってか、どこか神話的な要素が薄れ人間臭くなっている。

 特にガラドリエルがそうだろう。『LOTR』のイメージとは真逆で、交戦的、余裕なし、優しさなし、とある意味でガラドリエルの精神的な成長以前をみることができるのであるが、その焦りとか苛立ちとかかとてつもなく人間的である。あのエルフの気高い感じがまるでなくなってしまっているのである。

 またアロンディルとオークの戦闘シーンがあるが、アロンディルはオークに負けてしまう。つまり強くない。『LOTR』にも『ホビット』にも登場したレゴラスは、とにかく負けない。あのよくわからないが負けないエルフというのも、一つの面白さであったような気もする。

 ガラドリエルの内面性が複雑すぎて分からないということもある。第三話のガラドリエルが馬に乗って疾走するシーンでは、スローモーションになりこの話の見せ場だ。エピソード3の舞台裏では、ガラドリエルの自由と解放を表す瞬間で、撮影陣としては嬉しさと心の高まりを見せたかったとあるが、どうしてそんなに嬉しいのかは分からない。あと第七話では火砕流によりやられてしまったことに対して自分のせいだとすごく悔やむのであるが、しかし鍵を絶対に取り返そうとしているわけでもなく、これもまた分からない。多分ここの描写は、鍵をくるんだ布の中身を確認しなかったため、テオが見るまでオノだと気づかなかったというオチだと思うが、さすがにアロンディルぐらいは確認するだろう、と思ってしまう。

 一貫性といえば、ディーサの性格である。ディーサは実は夫を着実に王にしたいという野望を秘めたドゥリンの妻なのだが、シーズン4では狡猾でエルフ嫌いにも見えるのに、他のエピソードではエルフ(エルロンド)に対して友好的である。

あまり壮大ではない。

 『LOTR』も『ホビット』もとにかく壮大だった。とにかくあらゆる山々を疾走し、崖を上り、谷を降り、それを上空から撮影したシーンが何度も登場するのが印象的である。『LOTR』と『ホビット』には共通点がある。どちらも冒険物だったということである。しかし『力の指輪』はそうではない。確かに印象的な場面はいくつもあるが、壮大という感じがしない。壮大さは迫力につながるが、それが今作はちょっと薄い感じがする作品となっている。

 また音響もそこまで壮大な感じがしない。『LOTR』でも『ホビット』もアカデミー賞の音響賞にノミネートされており、記憶残るメロディも多いのではないかと思う。本作はそこまでという感じがない。やはり、これも冒険というのが主題ではない所以なのだろうか(ただしシーズン2ではノーリーが冒険を始めることになる)。

シーズン2に期待

 すでにシーズン5までが確約されており、そこまで評価していない批評家も自作に期待という感じなのが多い。まだ1作目。これからどんどん謎が明かされていくはずである。

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