日本の地質のおすすめ入門書・解説書・専門書!

日本の地質のおすすめ入門書・解説書・専門書!

日本の地質学のおすすめ本の基準は?

難易度とわかりやすさで選びました

 山のほうや海岸沿いに旅行をすると、山肌にあらわれたゴツゴツとした巌の荒々しさや、見事に層をなしている露頭の美しさに驚くことがあります。日々生活している地面の下にこのような世界が広がっていると想像するとワクワクしますね。

 それと同時に、岩の種類が違っていることに気がつくと、どのようにして日本の地層ができたのか疑問を覚えると思います。

 日本はプレートの縁にできた特殊な島で、日本の大部分はプレートによって運ばれてきた「付加体」という岩石によって形成されています。地質ごとに色分けした「地質図」を眺めると、東西方向にきれいに整列されているという特徴を発見することができます。

 とはいえ日本という島は単純に形成されたわけではありません。日本列島の誕生から現在までに起きた地質現象は沢山あり、大量の火山灰で地面を覆い尽くし、地震で地形が変形したりして、日本の地質を複雑化させているのです。

 そこで一般人から大学生・大学院生まで、初心から専門まで満足できるようにおすすめ本を網羅的に紹介します。日本の地質はまだまだ解明されていない謎が山のようにあります。

 本を片手に山に登ってみるのも楽しいです。日本形成の歴史を感じることができますよ!!

 因みに科学の最新情報は、科学メディア「オプクエ」がおすすめです。最新の情報をわかりやすく解説してくれています。

初心者・一般人向け入門書・初級編

平朝彦『日本列島の誕生』(1990年)

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バイブル

 日本列島の地質を語るうえで、バイブル的な存在。プレートテクトニクスという理論を導入したことで、日本の地質の形成モデルは刷新されました。本書はプレートテクトニクス理論の観点から説明した日本の地質の歴史です。

 平さんは日本を代表する地質学者で、日本地質学会会長やJAMSTECの地球深部探査船「ちきゅう」の運用責任者などを歴任しました。

 本書は岩波新書から刊行されており、一般人にもわかりやすく解説しています。日本の地質の形成史が知りたいなら、まずはこの一冊でしょう。

堀口萬吉『埼玉の自然をたずねて(日曜の地学)』 (2012年)

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山のハイキングに必須

 「日曜の地学」シリーズは、47都道府県ごとに地質を解説した良書です。

 シリーズ名のとおり、日曜日に地学を楽しみたい人に向けた本です。その県の地質の概要がわかりやすくまとまっているのはもちろんのこと、露頭の位置、解説、経路まで詳細に解説しています。

 近くの山が、実は地質的に見所が満載だった、なんてこともあるかもしれません。そしてなにより、普段何でもないと思っていた土地が、まるで違った価値ある風景に大変身するかもしれないのです。

 山にハイキングに行ったり、海岸沿いに遊びにいく方は、この一冊を使って予習をするのがおすすめです。

奥村清 監修『徳島県 地学のガイド―徳島県の地質とそのおいたち (地学のガイドシリーズ) 』 (2001年)

「日曜地学」と双璧をなす

 「日曜の地学」シリーズと双璧をなす、「地学のガイド」シリーズです。

 こちらも47都道府県ごとに解説しているのが特徴で、この二冊をもって山にハイキングに行けば、驚きや発見が沢山得られるでしょう。

 地質の解説はもちろんのこと、その露頭に到達するまでの経路や露頭の写真なども掲載されていて、初心者にやさしいです。ただし古いものになると、雨や土砂崩れで露頭がなくなっている場合があるので、なるべく最新の書籍を参考にするようにしましょう。

日本地質学会『日本の地質構造100選』(2012年)

 兎にも角にも、露頭に圧倒されたい、というかたにおすすめです。

 数十メートルから数百メートルスケールの大露頭や、特殊な構造をもつ日本の露頭など、100個に厳選した露頭の写真と解説が収録されています。

 本書の写真を眺めているだけでも大満足です。でもこの本を片手に、本物の露頭を観察するとさらなる驚きがあると思います。

深尾良夫『地震・プレート・陸と海―地学入門 (岩波ジュニア新書 92)』(1985年)

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 日本の地質を深く理解するためには、地学の基礎知識が必要不可欠です。

 本書は地学に入門するための最良の一冊になります。題名にあるように、地震とプレートや、陸と海の成り立ちを関連づけて説明してくれるからです。小学生でも読めるように工夫されていて、入門には打ってつけの名著です。

 著者の深尾さんは日本を代表する地球科学者です。身近な疑問から地球科学の問題に結びつける手腕は唸らされます。

山崎晴雄『日本列島100万年史 大地に刻まれた壮大な物語 (ブルーバックス)』(2017年)

 日本列島の形成史においては、わりかし最近の100万年を詳しく解説します。この100万年は、日本列島誕生の1500万年前と比べると短いとはいえ、最もダイナミックな訪れた期間でもあります。

 伊豆半島衝突、富士山噴火、動く琵琶湖、ナウマンゾウの生活など、おもしろい歴史が盛り沢山です。身近な風景は過去を遡ると全く違ったものになります。

 複雑な日本の地形をわかりやすく解説します。

藤岡換太郎ほか『日本海の拡大と伊豆弧の衝突 ―神奈川の大地の生い立ち (有隣新書75) 』(2014年)

 日本列島からちょこっと外にでた伊豆半島、その先にある富士山、さらに大島や八丈島などの列になった伊豆諸島。これらの配置は偶然なのでしょうか?

 実はいまから100万年前に、プレートに乗った伊豆半島が日本列島に衝突、それによって富士山が形成されたのです。それによって日本の地質は大きく変化し、様々な地質現象を起こしました。さらに伊豆諸島の数々は、いまなお日本列島に近づいているのです。さてどうなるのか、というのを、研究者が丁寧に解き明かしていきます。

 空間スケールも時間スケールもたいへん大きく、地質学のダイナミックな魅力を堪能できます。

大学生・大学院生向け専門書・中級・上級編

堤之恭『新版 絵でわかる日本列島の誕生 (KS絵でわかるシリーズ)  』(2021年)

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 ありとあらゆる分野を分かりやすく解説することで定評のある「絵でわかるシリーズ」の一冊。

 ところが、初学者が読むものかとナメてかかると痛い目に合います。日本列島の形成史が最新の研究をふまえて解説されていて、もはや専門者並みに詳しいです。

 特に黒瀬川帯の理解が深まります。専門的に知りたいときの一冊目におすすめです。

泊次郎『プレートテクトニクスの拒絶と受容 新装版: 戦後日本の地球科学史』(2017年)

 趣向を変えて、面白い本を紹介します。日本の地質というより、日本の地質学における歴史の検証です。

 ブレートテクトニクス理論が広まる前、日本の研究では、自国の地質を説明するために、独自に発展した理論がありました。そして権力のある一部の人が頑なにその理論を手放さず、プレートテクトニクスを拒絶したのです。

 それに対して若い世代の科学者が戦い、プレートニクスは受容されます。その歴史が記されていて、読み物としてとても面白いです。

天野一男『フィールドジオロジー入門 (フィールドジオロジー 1)』(2004年)

 地質学は机で理論を学ぶだけではなくて、最大の魅力は地質調査にあります。実際に露頭を観察し、何故こんなヘンテコな構造ができたのかと、悩み考えるのです。

 地質調査にも基本的な装備品、地質図の作り方、露頭の観察法などなど、必要不可欠な基礎知識が存在します。「日曜地学」シリーズで楽しみつつ、本格的な調査に徐々に移行するのも楽しいかもしれません。

 本書は「フィールドジオロジー」シリーズの第1巻。どの巻もたいへんよくまとまっていてわかりやすいです。特に本書の特徴として、理論編と実践編にわけて書かれているため、実際の地質調査でも大いに役立ちます。

日本地質学会『日本地方地質誌 3 関東地方  』(2008年)

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 日本地質学会が編集する、辞書みたいな本です。2万円以上と高いですが、それだけの価値はあります。数十年ぶりの大改訂で、かなり最近の研究までまとまっています。

 とにかく全ての論文をまとめ、その地方の地質を専門的に解説しています。北海道や四国などのほかの地方のもすべて詳しく書かれていて、専門的に学ぶなら一家に一冊は欲しいところです。

 最初の方にある、対象地方の地質「概要」が勉強になります。そこだけでも読むべきでしょう。

ほかの分野にも挑戦してみよう

 山や温泉に行くと珍しい石に見惚れることがありますね。これは一体何の石なんだろう、と疑問に感じたら、日本の地質を勉強すると楽しめるはずです。

 本記事では、日本の地質に興味がある方向けに本を紹介しました。一般書から専門書まで、初学者から大学生まで誰でも楽しめて勉強になるラインナップになっています。

 この分野は隣接領域にも面白い分野が広がっています。地質学は、地球史学や火山学、さらに地震学とも近しい関係にあるのです。

 地球史に興味を抱いたのならほかの分野にも挑戦してみるのも面白いかもしれません。地球史は「地球史を学習するためのおすすめ本を紹介!」、地震学は「地震学を学習するためのおすすめ本を紹介!」、火山学は「火山学を学習するためのおすすめ本を紹介!」で紹介しています。

 ぜひこちらも参考にしてみてください。

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