アリストテレス哲学を学ぶのにおすすめの本
アリストテレスの哲学を学ぶといってもいろいろな段階があるので、超入門者編から専門編(大学生・大学院生)まで人気おすすめ著作を紹介することにした。
アリストテレス哲学を楽しみながら知りたいという人は超入門者編、アリストテレス哲学を深く知りたいという人は初心者編の著作から読むべしだ。自分のレベルに合わせて読んでみることをお勧めする。
また他に、ソクラテス、プラトン、ストア派、フランシス・ベーコン、ハイデガーのおすすめ入門書・解説本・著作を紹介している。
倫理学は「倫理学のおすすめ入門書・解説書」、論理学は「論理学・分析哲学のおすすめ入門書」で紹介している。
ぜひそちらもご覧ください。
超入門編
高橋健太郎『振り向けば、アリストテレス』
小説仕立てのアリストテレス思想の解読書。著者は古典などを題材に取り独自の執筆活動を続ける作家、高橋健太郎。
物語なので普通に面白く読めるだけでなく、しっかりとアリストテレスの著作である『ニコマコス倫理学』や『弁論術』『形而上学』の内容を解説してもいる。
楽しみながらアリストテレスの思想に触れる!というのを目的とするなら願ってもない一冊である。
入門編
山口義久『アリストテレス入門』
数少ないアリストテレス入門書のうちの一つ。本当に簡潔に書かれたアリストテレス哲学への概説書である。
アリストテレスといえば哲学的概念を生み出した人として「万学の祖」とも言われている。彼独特の哲学をプラトンとの対比に焦点を当てながら辿っていく。
序章が「アリストテレス再発見」であるが、アリストテレス哲学の現代的意義はどこにあるのかにも挑戦しようとしているのが、入門書でありながら突っ込んでいて本作の魅力となっている。
堀田彰『人と思想 アリストテレス』
おなじみ「人と思想」シリーズのアリストテレス編。アリストテレスの生涯から著作を概観し、アリストテレスの思想を紹介していく。
アリストテレスの思想にはいわゆる「形而上学」だけでなく、「政治学」や「倫理学」「論理学」も含まれるが、それらの基本的な事項をあますところなくおさえている。
少し難しめといえば難しめだが良書である。
山本芳久『アリストテレス ニコマコス倫理学「よく生きる」ための哲学』
NHK100分で名著シリーズのアリストテレス『ニコマコス倫理学』編。
『ニコマコス倫理学』を読むポイントを解説してくれている。アリストテレスの幸福論を知りたいという人はこの著作から入っても良いかもしれない。
著者はトマス・アクィナスの入門書などを執筆している山本芳久氏。
上級編
中畑正志『アリストテレスの哲学』
第一級の古代ギリシア哲学研究者によるアリストテレス哲学の入門書。
本書は少し斬新な構成をしている。著者自身、哲学者の生涯と共に思想をたどるような「一般的な」入門書のスタイルを取らず、対話的なスタイルをとると明言している。その中で、アリストテレスの倫理学や霊魂論、形而上学が問われていく。
最新の知見も盛り込んでいるが、その形式から野心的な入門書ということで上級者編といえるだろう。詳しさという点でも入門書の次に読む入門書という感じだろうと思う。
著作
ここからは著作を紹介していきたい。興味のあるものから手に取って読んでみることをお勧めする。
アリストテレスの著作は全集もあるし文庫化されているのも結構ある。読むのに困らないが、なかには翻訳が古くさいのもある。とりあえず迷ったら新しい訳のものを買うのをおすすめする。
ここでは翻訳の最新状況を紹介しよう。
出隆訳『形而上学』
言わずと知れたアリストテレスの主著。実際は、アリストテレスの「第一哲学」に関する著作群を、後世の人々が編纂しまとめた書物となる。
主著であるが、文庫での翻訳はこれだけ。しかも旧版の全集と同じもので1959年の出版。最新の翻訳は新版の「岩波アリステレス全集14『形而上学』」で!と言いたいところだが、まだ未完。
相当翻訳が難しいのだと思われるが、いつかは出版されるので気長に待つしかない。
関連記事:形而上学とは何か|意味を分かりやすく解説|アリストテレス
相澤康隆訳『弁論術』(New!)
2025年、光文社古典新訳文庫から『弁論術』の新訳が登場。相手を説得するためにはどうしたら良いか、その方法論を語る。
他に岩波文庫版(戸塚七郎訳、1992年)などがある。
渡辺・立花訳『ニコマコス倫理学』(2015年)
アリストテレスの倫理学に関する著作。アリストテレスの息子であるニコマコスが編纂したことからこの名前がつけられた。人間の最高善の追求などが考察される。
これもアリストテレスの主著と言ってよく、他に岩波文庫版(高田三郎訳、1971年)や全集版、京都大学学術出版(西洋古典叢書)など翻訳が数多くある。
三浦洋訳『詩学』(2019年)
「創作術」に関するアリストテレスの著作。
創作術には現代の芸術論も含まれており、哲学者や思想家が芸術を論じるにあたって現代においては必読書とまでなった書物である。
岩波文庫版(松本・岡訳、1997年)には「詩学」のほかにホラーティウスの「詩論」が収録されている。









