プラトン哲学を学ぶためにおすすめの本
プラトン哲学を学ぶといってもいろいろな段階があるので、入門編から探究編(大学生・大学院生)まで難易度別に厳選して人気おすすめ著作を紹介することにした。
プラトン哲学を楽しみながら知りたいという人は入門編、プラトン哲学を深く知りたいという人は上級編の著作から読むべしだ。自分のレベルに合わせて読んでみることをお勧めする。
また、アリストテレス哲学の入門書は「アリストテレス哲学のおすすめ入門書・解説書」、アウグスティヌスの入門書は「アウグスティヌスのおすすめの入門書・解説書」、ウィトゲンシュタインの入門書は「ウィトゲンシュタインのおすすめ入門書・解説書」、デリダの入門書は「デリダのおすすめ入門書・解説書」、世界のおすすめ哲学書は「本格的な人向けおすすめ世界の哲学書」で紹介している。ぜひこちらもご覧ください。
入門編
中畑正志『はじめてのプラトン 批判と変革の哲学』
アリストテレスの入門書などでも有名な古代ギリシア哲学研究者の中畑氏によるプラトンの入門書。副題にもある「批判と変革の哲学」がプラトンの哲学であるという考えを中心にプラトン思想を噛み砕いて紹介していく。
プラトンの「批判と変革の哲学」というのは、著者によれば、知と真理、そして魂を配慮せよということに他ならない。この原点からプラトンのイデア論、そして『国家』での政治論を通じてその全体像を浮かび上がらせる(ちなみに後期プラトンにはあまり触れていない)。体系的にプラトン思想を会得したい人は入門書でありながら濃密な本著からスタートするのが良いのではないだろうか。
中野幸次『人と思想5 プラトン」
「人と思想」シリーズのプラトン編。他のシリーズと同じく、始めにプラトンの生涯をたどり、その後プラトンの思想が紹介される。古い著作ということもあり、とりわけプラトンの中心思想の解説に関しては物足りなさを感じるかもしれない。
納富信留『プラトンとの哲学ーー対話篇を読む』
プラトン対話篇を扱い、プラトン思想に迫ろうとする意欲作。『ソクラテスの弁明』『饗宴』などの有名な著作を扱うだけでなく、『第7書簡』や『ティマイオス』『ソフィスト』などそこまで知られていない対話篇の解説にも取り組んでいる。それだけでも価値がある入門書といえよう。
こちらの方が難しさという点では『プラトン哲学への旅」よりも難しいのだが、プラトン対話篇の全体像を掴めるのでこちらを入門編にした。意欲作でありプラトンの現代的意義も考えさせられる。
岸見一郎『シリーズ世界の思想 プラトン ソクラテスの弁明』
古代ギリシア哲学入門として必読の書である『ソクラテスの弁明』を解説した入門書。『ソクラテスの弁明』を33章に分けて解説。プラトンの思想というより、『ソクラテスの弁明』に特化して解説しているので、『ソクラテスの弁明』を通して、古代ギリシア哲学を学びたい人におすすめ。
岸見一郎氏はプラトン『ティマイオス/クリティアス』の翻訳でも知られている。
上級編
納富信留『プラトン哲学への旅:エロースとは何者か』
著名な西洋古代哲学の研究者が挑む野心作。プラトンと一緒に愛(エロース)について議論する。
内容は難しくないのだが、基本的に『饗宴』のみを取り上げているので、プラトンの全体像を掴みたい人にはあまりおすすめしない。どちらかというと現代版『饗宴』に議論に巻き込まれながら、古代ギリシア、哲学、そして愛について考えたい人はこちらの著作をどうぞという著作である。
竹田青嗣『プラトン入門』
哲学者竹田青嗣によるプラトン入門。もちろん竹田の入門書なのでいわゆる「一般的な入門書」ではない。
偏りはあるもののプラトンの中心思想はあますところなく触れられている。ただしそれはそういったプラトンの思想を紹介しようとする意図なのではなく、従来のプラトン像を批判して、新しいプラトン像を打ち立てるためにである。
というわけで、入門といいつつある意味で入門ではない。まずプラトン哲学の大まかな理解が必要になってくる。その上で本書を読むと、プラトンの理解が進んで面白くなるはずである。
『プラトンを学ぶ人のために』
「学ぶ人のために」シリーズのプラトン編。プラトンの対話篇や思想を知り、そこからさらに探究へと導いてくれる本書。詳細で発展的な内容も含まれているため上級編といえる良書である。
探究編
内山勝利『プラトン『国家』ーー逆説のユートピア』
「書物誕生 あたらしい古典入門」シリーズのプラトン『国家』編。著者は古代ギリシア研究者である内山勝利。
内容は非常に濃密で難しいが、『国家』はその後の哲学者が政治論を語る上で欠かせない著作となっている。それを圧倒的な教養で解説してくれる珠玉の一冊となっている。詳しく知りたい人には願ってもいない一冊。
著作(文庫)
国家
中期対話篇であり、プラトンの主著の一つ。副題は「正義について」であり、正義の実在を証明する議論の延長線上で理想国家の在り方が検討される。「哲人王」や「洞窟の比喩」が登場するのも本書である。