エマニュエル・レヴィナスを学ぶのにおすすめの本
レヴィナス哲学を学ぶといってもいろいろな段階があるので、入門編から上級編まで難易度別に人気おすすめ著作を紹介することにした。
レヴィナス哲学を楽しみながら知りたいという人は入門編、レヴィナス哲学を深く知りたいという人は上級編の著作から読むべしだ。自分のレベルに合わせて読んでみることをお勧めする。
また、他の入門書は「ベルクソンのおすすめ入門書・解説書」「フッサールのおすすめ入門書・解説書」「ハイデガーのおすすめ入門書・解説書」「デリダのおすすめ入門書・解説書」「ユダヤ教・ユダヤ思想のおすすめ入門書・解説書」「現代思想のおすすめ入門書・解説書」「現象学のおすすめ入門書・専門書」などで紹介している。
ぜひそちらももご覧ください。
入門編
熊野純彦『レヴィナス入門』
生い立ちから彼の思想形成を見ていき、その後彼の主著である『全体性と無限』『存在するとはべつのしかたで』を解説する。詩的なレヴィナス哲学に入門するには格好の入門書。
著者は『全体性と無限』の翻訳者でもある熊野純彦氏。
村上靖彦『傷の哲学、レヴィナス』
レヴィナスやケアの研究で知られている村上靖彦氏のレヴィナス入門。『レヴィナス 壊れものとしての人間』の再刊であり、二つのテキストが新しく加えられている。
レヴィナスの生涯などからレヴィナスの思想を「壊れものとしての人間」を核として読み解く。
斎藤慶典『レヴィナス 無起源からの思考』
現象学研究者であり、フッサールに関する入門書『フッサール 起源への哲学』も執筆している斉藤慶典氏によるレヴィナス入門。
難解であるレヴィナスの用語が丁寧に解説されている。
上級編
佐藤義之『レヴィナス「顔」と形而上学の狭間で」
レヴィナスの主著『全体性と無限』と『存在とは別様に、あるいは存在することの彼方へ』(『存在の彼方へ』)を読み解き、その思想を論究することを試みた著作。
入門には難しいが、レヴィナス思想の核心を知ることができる。
『レヴィナス読本』
「読本」シリーズのレヴィナス編。レヴィナスの来歴や基本概念、著作のざっくりとした内容(解題)、影響史などがまとめられている。
ざっくりとレヴィナス思想の全体像が掴める。
著作
ここでは最新の翻訳状況を紹介する。興味のあるものから手に取ってもらうことをお勧めする。
藤岡俊博訳『全体性と無限』
フッサールやハイデガーの現象学を研究した彼は、特にハイデガーの存在論を批判。存在論には外部(無限)がないとして、「他者」の思想を深めていく。
さらに、ナチスの捕虜収容所に収容された経験やユダヤ教の思想を背景として、1961年、最初の主著となる『全体性と無限』を公刊。これにより博士号を取得した。
鍵となるのは他者に対する私の責任であり(記事「他者に対する私の責任ーーレヴィナスの哲学について」)、倫理が最重要な基礎として位置づけられる。
それまでも岩波文庫版(熊野純彦訳)などがあったが、2020年に新訳が講談社学術文庫が出版された。こちらの新訳をおすすめする。
合田正人訳『存在の彼方ヘ』
『全体性と無限』は1964年に発表されたデリダの論文「暴力と形而上学」によって批判される。「他なるもの」が現前するのであれば、それは依然としてハイデガー的な存在論の枠組みに収まるのではないかと。
レヴィナスはその批判に応答する形で自らの思想を深化させていく。「他なるもの」は現前しない。それは「痕跡」として現れてくるだけなのだ。
深化させた哲学として、1974年『存在の彼方へ』を発表。本書では『全体性と無限』には登場しなかった「身代わり」などの概念を通じて、新たに「他なるもの」へと迫っていく。
原題は Autrement qu’être ou Au-delà de l’essence で訳すと『存在するとは別の仕方で、あるいは存在の彼方へ』となる。
合田訳は意訳がすごいので、もっとかっちりとした翻訳が出版されても良いと思うのだがなかなか登場しない。第二の主著なので『全体性と無限』の新訳がでたからにはいつかは新訳がこちらも出ると予想。気長に待つ。







