スピノザ哲学を学ぶのにおすすめの本
スピノザの哲学を学ぶといってもいろいろな段階があるので、入門編から上級編まで難易度別に人気おすすめ著作を紹介することにした。
スピノザを楽しみながら知りたいという人は入門編、スピノザを深く知りたいという人は上級編の著作から読むべしだ。自分のレベルに合わせて読んでみることをお勧めする。
また、他のおすすめ書物は「ライプニッツのおすすめ入門書・解説書」「デカルト哲学のおすすめの入門書・解説書」「ウィトゲンシュタインのおすすめ入門書・解説書」「ドゥルーズのおすすめ入門書・解説書」「ユダヤ教・ユダヤ思想のおすすめ入門書・解説書」などで紹介している。
ぜひそちらもご覧ください。
入門編
國分功一郎『はじめてのスピノザ 自由へのエチカ』
「NHK 100分de名著」『スピノザ エチカ』に新章を加えた増補改訂版。
『エチカ』というスピノザの著作を軸にスピノザの思想の解説を試みた入門書。おそらく入門書の中で最も平易に書かれている。まさにはじめてスピノザ思想に触れる人におすすめできる一冊である。
上野修『スピノザ 「無神論者」は宗教を肯定できるか』
スピノザはユダヤ人でユダヤ教徒であったが、ユダヤ教に批判的であったこともあり破門されたいわゆる「無神論者」であり、だからこそ「汎神論」でも有名な哲学者である。
そこでこの問いだ。無視論なのに、宗教=神を肯定できるか?本作はその問いに迫る。
吉田 量彦『スピノザ 人間の自由の哲学』
スピノザの生涯、思想、その後をいくつか回(生涯6回、思想9回、死後1回)に分けて解説している一冊。生涯の回の次に思想の回が来るという読者に配慮したつくりになっている。
また、著作としては『神学・政治論』と『エチカ』が主に扱われる。
分かりやすく、そして面白いと評判の一冊。また著者は吉田氏は『神学・政治論』(光文社古典新訳文庫)の訳者でもあるので信憑性がある。
上野修『スピノザの世界 神あるいは自然』
スピノザの汎神論の概要が分かりやすく解説されている入門書。主に扱っている著作はスピノザの主著『エチカ』
著者はスピノザ全集『エチカ』の翻訳者であり、『デカルト、ホッブズ、スピノザ 哲学する十七世紀』など近代哲学に関する良書を多数出版している上野修。
入門書としてはかなり評判の高い一冊となっている。
上級編
國分功一郎『スピノザ 読む人の肖像』
『はじめてのスピノザ 自由へのエチカ』も書いている國分功一郎氏によるスピノザの入門書。
入門書であるが、『はじめてのスピノザ 自由へのエチカ』よりも内容は深く難しめ。ただし、基本的な方向性は同じ著者なので変わらない。
扱われる著作が『エチカ』以外にも『デカルトの哲学原理』『知性改善論』『神学・政治論』『ヘブライ語文法綱要』などがあり、多くの著作を解説しているのが他にない特徴か。
研究編
加藤節『スピノザ――「変性の哲学者」の思想世界』(New!)
スピノザ読解の研究書。これまで多様な解釈がなされてきたスピノザ解釈をおさらいしながらその問題点を指摘し、倫理学、政治学、聖書批判を行ったスピノザの作品群に焦点を当てながら、自らの統一的解釈を試みていく。
すでにスピノザ解釈を自らに持っている人におすすめの一冊である。
著者は『統治二論』(ロック)や『リヴァイアサン』(ホッブズ)の翻訳などがある加藤節氏。
著作
ここからは翻訳の最新状況を紹介していきたい。興味のあるものから手に取って読んでみることをお勧めする。
畠中 尚志訳『エチカ』
主著といえばこれなのだが、1951年に出版されたもので、翻訳があまりにも古い。
2000年代にはより一層研究が進み、『スピノザ全集Ⅲ エチカ』(岩波書店、2022年)が新訳として出版されている。確かに高いのであるが、読みやすさを重視するのであれば新訳の方をお勧めする。
なお中公クラシックス版(工藤・斎藤訳、2007年)のエチカ(エティカ)もあるので、そちらを検討してみても良い(がそれも翻訳は古い)。







