方法的懐疑とは何かーデカルト|意味をわかりやすく徹底解説

方法的懐疑とは何かーデカルト|意味をわかりやすく徹底解説

方法的懐疑の概略

 方法的懐疑とはデカルトが提唱した哲学的探究の実践的な方法である。ただ疑うだけでなく、疑いをさしはさみうるすべてのことに同意しないという方法的態度のことを言う。単に間違っているから偽というだけでなく、疑わしいものはとりあえず偽という形で懐疑を拡張しているので、誇張的懐疑ともよばれる。

『省察』における方法的懐疑 その1:感覚も素朴な信念も疑わしい

 『省察』はデカルトが究極の原理を探究するために方法的懐疑を実践した書物である。ここからデカルトのいう方法的懐疑がどのようなものであったのかを具体的に第一省察からみていくことにしよう。

 堅固でゆるぎなもの、要するに真理を獲得して土台を築くために、あらゆる物事を引っ張り出してきてこれは真、これは偽と判定する必要はないとデカルトは言う。

むしろ理性がすでに説得しているところによれば、全く確実で疑いえないわけではないものに対しても、明らかに偽であるものに対するのと同じく注意して、同意をさし控えるべきであるので、それらの意見のどれか一つのうちに何か疑う理由が見出されるなら、それだけで、その全てを拒否するのに十分であろう。

『省察』35頁

 まずデカルトが検討したのが感覚である。色や形などを私たちは感覚を通して知ることになる。あれは赤色、これは黒色というように。しかし時たまその認識が間違っていることがあるだろう。ということは感覚は少しでも間違う可能性があるので、感覚は方法的懐疑によって信頼できないことになる。これによって感覚が排除させる。

 しかし感覚といえども「いま私がここにいること、暖炉のそばに座っていること・・・この紙を手で触れていること・・・この身体全体が私のものであること」(36頁)は疑うことができるのか(ここの文章がフーコーの論文「私の身体、この紙、この炉」という題名の元ネタだろう)。ここで狂気と夢の例が登場する。ここの解釈が「フーコー=デリダ論争」で争われるのだが、それに関しては【フーコー=デリダ論争とは何か*なるほう堂】を参照してもらいたい。そして最終的に起きている時と寝ている時を区別する確実なしるしがないということで、方法的懐疑の原則により私がここにいることや、炉ばたに坐っていることも確実に信頼できることではないという結論になる。なぜならそれが夢かもしれないからである。

 ということで感覚もダメ、ここにいるという素朴な信念もだめということになった。あと信頼できそうなものは何か。そこでデカルトは単純で極めて一般的なもの、すなわち代数学や幾何学で取り扱うものを持ち出してくる。眠っていようがいまいが、2+3=5だというわけである。これに方法的懐疑を施すことはできるのか。

 そこでデカルトが持ち出してくるのが、欺く神(悪しき霊とも呼ばれる)である。この神が実際は嘘なのにそれを正しいと私たちに信じ込ませているだけという可能性はないのだろうか、ということである。先の例であったら2+3=5は偽なのに、欺く神が正しいと信じ込ませているだけではないのかという誇張的な方法的懐疑を行うのである。

『省察』における方法的懐疑 その2:欺く神がいても疑いえないもの

 第二省察でも欺く神の話が続く。第一省察でも述べたように、欺く神が存在するなら、自分が正しいと思っていることは全て偽の可能性があるということだろう。誇張的な方法的懐疑の結果、ほとんど何も信じられないような状況に達したのである。「それゆえ私は、私が見ているものはすべて偽であると想定しよう。あてにならない記憶が表象するものはどれも、何も存在しなかったと信じることにしよう」(44頁)。それでは方法的懐疑の結果、無に到達するということになるのか。

 ここでデカルトは大どんでん返しを発見する。欺く神がを欺き、私は世界には全く何もないと自らを説得したのだとしたならば、むしろその私は存在するはずである。欺く神が私を欺けば欺くほど私は存在する。

それゆえ、すべてのことを十二分に熟慮したあげく、最後にこう結論しなければならない。「私はある、私は存在する」という命題は、私がそれを言い表すたびごとに、あるいは精神で把握するたびごとに必然的に真である、と。

『省察』45頁

 こうやってデカルトは「我あり」という真理を発見した。ここまでが一般に方法的懐疑とよばれるデカルトの懐疑のあらましである。

参考文献

ルネ・デカルト『省察』山田弘明訳、ちくま学芸文庫、2006年。

created by Rinker
¥1,100 (2022/10/01 05:33:58時点 Amazon調べ-詳細)

こちらは哲学用語特集 – 〇〇とは何か – に収録されています。こちらもぜひご覧ください。

哲学カテゴリの最新記事