漫画『現象学の理念』入門と解説|あらすじ、内容要約と面白い点、次読むべきおすすめ著作は!

漫画『現象学の理念』入門と解説|あらすじ、内容要約と面白い点、次読むべきおすすめ著作は!

概要

 須賀原洋行『現象学の理念』はフッサール『現象学の理念』を原作とした漫画である。2020年、講談社まんが学術文庫から出版。まんが学術文庫では、このような企画をシリーズ化しており、他に漫画『純粋理性批判』や、漫画『ツァラストゥストラはかく語りき』などがある。

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登場人物

仏猿フッサル:ラーメン屋の店長。現象学を客に講釈するおじさんであり、現象学的還元ラーメン(500円)を販売している。よくみると・・・・フッサールに似ている。なぜかこの人だけ振り仮名もカタカナ。

ラーメン好きのサラリーマン:主人公。現象学おじさんに現象学の講釈を受ける。

ラーメン好きの男の同僚の女:主人公に連れられて、現象学おじさんが営むラーメン屋に行く。どうやら一応主人公と付き合ってるらしい。

場栗ばくり 飛雄無ひゆうむ:現象学おじさんの大学時代からの議論相手。徹底した観念論者&懐疑論者。

丸久須まるくす:ラーメン屋の常連。職業は高校の物理教師。物理教師であるが、顔はあのマルクスに似ている。

あらすじ

 まずは『現象学の理念』というフッサールの著作を知っておく必要があるだろう。『現象学の理念』とは、1907年に大学で行われたフッサールの講義録である。この講義は5つに分けて行われ、第1講義から第5講義まである。現象学的還元が初めて明確に打ち出された講義でもあり、現象学的還元を得て現象学的所与がどのように与えられ、対象がどのように構成されるのかについて簡潔に述べられている。

 その講義をラーメン屋を舞台にして漫画にしてしまったのがこの本だ。主人公がラーメン屋を訪れたところから話は始まる。お品書きを見ると、普通のラーメンが1500円、現象学的還元ラーメンが500円であった。ただし現象学的還元を頼んだ場合は、そのラーメンに関する説明を聞く義務を負う。ラーメンオタである主人公は嬉々として現象学的還元ラーメンを注文したのだが、なんと出てきたのは具が入っておらずスープのみのラーメンである。激おこぷんぷん丸となった主人公であるが、スープを飲むととてもうまかった。その後麺や具が足されていき、完食して満足したところに、店長による現象学の講釈が始まる・・・・

内容要約

 ラーメンのスープはうまかった。うまい!という快、実はそこから店長は現象学へと大転換させる。

(うま!という快に対して)あんたは今 フッサールという哲学者が自分の哲学の基礎においた「現象学的還元」という手法を実行して純粋直観による「快」を直接 観取したのだ!

ラーメン屋店長の言葉

 これこそ実践的現象学的還元なのだ。実は主人公はすでに現象学的還元を遂行してしまっている。そこから現象学的還元によって何がエポケーされたのか、そのエポケーによって何が獲得されたのかがラーメンによって明らかにされる。超面白い。

 後日、今度は同僚を連れてまたラーメン屋に行くことになるが、今度は現象学的還元によって得られたものの続きである。還元によって快が得られたのはいいが、それだけでは他のことが何もわからない。現象学は、そのような純粋直観の次元からどのように対象とか世界とかが生じてくるのかを考察するのが主題なのだ。なので、漫画もそこから構成の問題に移る。主観ー客観という図式から内在と超越という図式へ、そこから内在における実的内在と構成的内在(対象的なもの)の区別へ、そしてその構成的内在の奥深さ(例えばメロディという対象)へと進み、これらの現象学的位相が明らかにされていく。最後に、徹底的懐疑論者(場栗)や科学主義者の物理教師(丸久須)が登場して、現象学と対決する。この議論も超面白い。表情が面白い。

 全部読めば、自然的態度と呼ばれる素朴に物事を信じている態度から現象学的還元を経て現象学的構成の問題へと突き進む、『イデーン』期のフッサールの核思想を知ることができるようになる。

考察・感想

 めちゃめちゃ竹田青嗣によるフッサール現象学解釈の影響を受けている、と思う。例えばの話、還元によって純粋な快が得られるんだというような説明は竹田的である(竹田もそんなふうには言ってないけども)。主観ー客観図式を捨ててしまおうというのも竹田的である。実際問題としてこの漫画を書くにあたって竹田青嗣の解説書を本棚から引っ張り出してきたということがあとがきに書かれている。竹田青嗣の解説書といえば、『現象学の理念』にうってつけの解説書がある。『超解読!はじめてのフッサール『現象学の理念』』である。これだろう。

 あと、的中性(Treffenheit)という概念も面白い。この概念『現象学の理念』以後ほとんど出てこないのである。そして現象学の目的が実在に的中することを目指すという解釈も新鮮で面白い。竹田的解釈である。

 例えばだが、『これが現象学だ』の谷的現象学だと逆に深く潜って、限界まで深層までことが現象学の目的と言われる。つまり下に下にという運動なのだけど、漫画『現象学の理念』を読むと、現象学の目的は上へ上へという方向性が見られる。上に普遍性があるからである。谷の方が、現象学の歴史に沿った解釈だ。メルロ=ポンティもレヴィナスも下に下にいった。だからこそ竹田的視点は面白い。

発展編:次読むべき著作は?

 まずは絶対に竹田青嗣の著作である。生活世界のことも漫画『現象学の理念』は触れていたので、包括的な現象学理解の書である『現象学入門』が良いと思う。

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最良の入門書

 竹田青嗣は他にも様々な著作を発表している。その最新作が2022年9月15日発売の『新・哲学入門』だ。彼の哲学である欲望論の全貌がここにある。

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竹田欲望論への招待

 この漫画の原作は『現象学の理念』であったが、この漫画を読んだことで原作をもう読む必要もなくなった。今度は『現書学の理念』の上位互換である『イデーンI』にトライしてみるべきだ。

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