批評理論のおすすめ本の基準は?
難易度とわかりやすさで選びました
コンテンツが溢れる時代になりました。いまや、Netflix や U-NEXT、noteやアプリなどで、映画や小説、漫画やアニメに簡単にアクセスできます。
そして「感動した」「面白かった」という感想が「#読了」のハッシュタグとともに流れていくのです。だけれどもこれだけの文章で、読む方も書く方も満足なのでしょうか。やはりどこかでうっすらと自分の感動を言い表せていないと多くの人が感じているはずです。
このような環境であるからこそ、感動を言い表す言葉、つまり理論を学び実践に応用すべきです。とはいえ、何から読めばわからない!わかりやすい本が読みたい!と悩ましい。
そこで一般人から大学生・大学院生まで、初心から専門まで満足できるようにおすすめ本を網羅的に紹介します。文芸批評を中心に、映画批評、アニメ批評、漫画批評も紹介します。
コンテンツに浸かり批評を書きまくりましょう!
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初心者と一般人向け入門書・理論と実践
北村紗衣『批評の教室 ――チョウのように読み、ハチのように書く』(2021年)
三部構成で「精読する、分析する、書く」の3ステップに分けて解説しています。
まず本書をおすすめするのは、本書が批評の理論というよりも批評の態度を教えてくれるからです。
精読を重視、読者を想定などなど、どのレベルになっても批評にとって必須になる姿勢が示されています。
一度かんたんに理論を学んだあと、書く段階で読んでみてもいいかもしれません。
筒井康隆『文学部唯野教授 (岩波現代文庫)』(2000年)
印象批評からポスト構造主義までの批評理論が系統的に学べます。
文学部の唯野教授による講義形式で批評理論を学べるのですが、その間のエピソードがとにかく面白い。つまり理論の本でありながら小説でもあるのです。
理論の説明もわかりやすく、読み物としても面白く、さらに文学部がどのような場所だったかも知れるお得感満載の本です。
亀井秀雄 監修『超入門! 現代文学理論講座 (ちくまプリマー新書)』(2015年)
理論を学んだら今度は使ってみなくなるのが世の常です。
題名に「講座」とあるように、本書では日本の小説を題材にしながら批評理論を実践してくれます。例えば芥川龍之介の『羅生門』など、一度は読んだことのある本を取り上げているので身近でわかりやすいです。
「超入門」と謳いながら本格的な内容にまで突っ込むので、優しすぎて物足りないなんてことはなく充実感が満載です。
廣野 由美子『批評理論入門―『フランケンシュタイン』解剖講義』(2005年)
名著です。まずは「小説技法篇」と「批評理論篇」でそれぞれ、小説はどのような技法で描かれるかと、作品分析の方法論を学びます。
そこで学んだことを前提に、多様な問題を含んだ小説『フランケンシュタイン』に絞って解説します。一つの小説を徹底的に解説するので、理論と実践が深いレベルで理解できるでしょう。
また海外文学を読むチャンスでもあります。古典にも手を伸ばしてみるのもいいかもしれません。
町山智浩『映画の見方がわかる本―『2001年宇宙の旅』から『未知との遭遇』まで』(2002年)
文芸批評理論を中心におすすめ本を紹介してきましたが、批評の対象としてが映画も忘れてはいけません。
日本で大人気の映画評論家・町山智浩が、謎多き名作の数々を作者の発言や文献に基づいて丁寧に読み明かしていきます。映画批評の真髄がここにあります。
この本で映画の面白さに目覚めたという人もいます。そして「映画の見方がわか」れば映画を観るときはいつでも使えるので、人生の大きな財産になります。映画もどしどし楽しみましょう。
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大学生向け専門書・理論編
イーグルトン『文学とは何か――現代批評理論への招待(上)』(2014年)
筒井康隆『文学部唯野教授』の本格バージョンです。イギリスの批評家イーグルトンによる解説で、批評理論を学ぶための教科書であり決定版です。とはいえ最新の理論まではカバーしていません。
これ一冊で批評理論の内容だけでなく、理論の変遷と歴史が手に取るようにわかるようになります。
大橋洋一 編修『現代批評理論のすべて (ハンドブック・シリーズ)』(2006年)
古典的理論から最新理論まで「すべて」が載っています。最近の理論まで解説してくれているのが、とても有り難く有用です。
それぞれ数ページの解説ですがよく纏まっています。また理論に影響を与えた人物を、個別に取り上げて解説をしているので勉強になります。
読み物としても面白いですし、辞書のようにも使えます。一家に一冊、必ず用意しましょう。
ピーター・バリー『文学理論講義:新しいスタンダード』(2014年)
理論以後の理論、「ポスト理論」時代の文学理論入門書です。つまり最新の批評理論まで解説しています。
大学の講義で使われるくらい詳しいです。(わかりすく)「入門」ではなくて、(本格的な研究に)「入門」の意味です。
学問的強度を保ちつつ解説しているので、詳しく知りたい人は大満足できます。
入門書から専門書まで・実践編
北村紗衣『お砂糖とスパイスと爆発的な何か: 不真面目な批評家によるフェミニスト批評入門』(2019年)
フェミニズム批評です。実際に作品を読み解きながら解説してくれます。
新批評や受容理論など昔の理論を中心に学んできましたが、実際に使うとしたら最新の理論が面白いです。とはいえ勿論、受容理論や異化など古い理論も部分的には使いますが。
身近で一般に流布する多くの作品に、隠れた偏見や無意識を暴き出します。
柄谷行人『定本 日本近代文学の起源』(2008年)
日本の文芸批評家・柄谷行人の名著です。
日本の近代文学がどのように成立したのかを、新歴史主義的な観点から論じます。具体的には、風景の発見、内面の発見、告白などに注目します。
とにかく面白いです。柄谷行人はほかに『探究I』も特別に面白くおすすめです。柄谷行人の最新著作『力と交換様式』の書評は以下。
関連記事:カラタニその可能性の消尽『力と交換様式』書評・要約・解説
イヴ・K・セジウィック『男同士の絆』(2001年)
19世紀イギリス文学にホモソーシャルな欲望を発見し、クィア理論の端緒をつけた歴史的な名著です。
あつかわれる作品がマイナーな場合もあり一筋縄ではいきません。が、この機会に色々と読んでみるのも手かもしれません。
クィア理論を学ぶための三大著作は、フーコー『性の歴史』、バトラー『ジェンダー・トラブル』、セジウィック『男同士の絆』です。全部読みましょう。
エドワード・W. サイード『オリエンタリズム』(1993年)
ポストコロニアル批評の端緒であり、歴史的かつ画期的な名著です。
オリエンタリズムの歴史と誕生を詳細に研究しています。とにかく読みましょう。今日最も盛んに行われている現代批評理論の原点がここにあります。
宇野常寛『母性のディストピア』(2019年)
日本のアニメや漫画批評もめちゃくちゃ面白いです。
扱われる作家は、宮崎駿、富野由悠季、押井守で、日本の想像力の中心に「母性的」なものを認め、その磁場と脱出について批評的に論じます。
母性社会という日本の風土的なものと、敗戦による戦後的なねじれた感性の合体が、漫画やアニメにどのような影響を与えているかを論じていて、アニメ批評でありながらある種の社会批評でもあります。
宇野は「拡張現実の時代」「母性のディストピア」「ゴジラの命題」といった概念を提唱していて、これらも大変面白いです。
名作小説や哲学著作にも挑戦してみよう
本記事では批評理論を学ぶためのおすすめ本を紹介しました。ここでは入門書から専門書まで幅広く紹介しています。
理論を学ぶと作品が一層愉しく受容できるようになるはずです。ぜひここで紹介した本から理論を学び、改めて小説や映画を観てみましょう。
ほかに「世界文学のおすすめ」、「日本文学のおすすめ」、「フランス文学のおすすめ」、「イギリス文学のおすすめ」、「感染症文学のおすすめ」でもおすすめ小説を紹介しています。
ほかに批評理論や哲学などを嗜むと、より一層文学を楽しめると思います。
批評理論は「批評理論をわかりやすく解説」、哲学入門書は「哲学初心者向けの人気おすすめ著作」、哲学必読書は「本格的な人向け哲学書必読書」で紹介しています。