芥川龍之介とは
経歴と作風
芥川龍之介は1892年に生まれました。彼は早熟の天才で若くして文壇にデビューします。しかしそのせいもあってか精神を病んでしまい、1927年に35歳という若さで服毒自殺してしまいます。
短い人生を駆け抜けた芥川ですが、数多くの傑作が残されています。菊池寛は彼の功績を称え、芥川龍之介賞をつくり、現在では権威ある文学賞の一つになっています。
芥川の作風は3つの時期、初期と中期と晩年に分かれます。
初期は説話文学を典拠とした作品が主で、ユーモアにあふれた教訓深い物語を展開しました。
中期は芸術至上主義的な主張が全面に押し出されます。それを見事に表現した作品が『地獄変』で彼の代表作の一つです。
晩年は作風も大変暗くなり、人生に対する懐疑主義を反映したものが多くなります。晩年は『河童』や『歯車』、『或阿呆の一生』などの、死に迫るようなある種の迫力がある傑作が生み出されます。
この機会に芥川の作品を読み漁り、存分に堪能しましょう。
芥川龍之介のおすすめ代表作ランキング
1位:羅生門(1915年)
『羅生門』は芥川龍之介のなかで最も有名な短編小説のひとつ。彼の23歳の作品でこれにより文壇にデビューしました。
飢餓に苦しむ青年が羅生門の上に登ると、そこにある死体から着物を剥ぐ老婆がいました。老婆と問答をしているうちに青年はある決心をします。
この作品は教科書で取り上げられているため、多くの人にとって馴染み深い作品です。さらに本作を基に、黒澤明監督が1950年に映画『羅生門』を製作し、ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞しました。したがって『羅生門』の名は、世界的にも知られています。
関連記事:芥川龍之介『羅生門』感想|「下人の行方は誰も知らない」で終わる意味|あらすじ解説・考察
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2位:河童(1927年)
『河童』1927年に発表された空想小説です。この1927年という年は芥川龍之介にとって極めて重要で、この年に彼は自殺をしてしまいます。芥川の命日7月24日が「河童忌」と呼ばれるのはこの小説に由来しています。
本作は、河童という架空の生物とそれらが住む世界を描くことで、当時の日本社会や人間社会を痛烈に風刺する「風刺小説」であり、狂人を主人公にした「狂人小説」でもあります。
この頃の芥川は精神的にもかなり参っているので、それが本作の内容にも如実に表れています。前期の作品『芋粥』や『羅生門』と比較して読むと、その違いが際立ち一層面白く読めるはずです。
関連記事:芥川龍之介『河童』感想|なぜ人間がおかしく見えるのか|あらすじ解説・考察
3位:芋粥(1916年)
「芋粥」は芥川の初期の名作で、1916年9月に『新小説』という雑誌に発表されました。「鼻」と同じく『宇治拾遺物語』の一話から題材を得ている短編小説です。
芋粥を腹が一杯になるくらい食べてみたいと欲する主人公が、藤原利仁のおかげで夢が叶いそうになるも、その欲望が次第に失われていくという物語です。
欲望とは何か、という問いに真正面から取り組んだ物語です。芥川の人間に対する理解が極めて深いことを伺わせます。
関連記事:芥川龍之介『芋粥』感想|飽くことのない欲望と幸福|あらすじ解説・考察
4位:鼻(1916年)
『鼻』は芥川龍之介が23歳のときに『新思潮』で発表した作品で、『羅生門』の次に執筆された小説です。『今昔物語集』と『宇治拾遺物語』から題材を得ています。
生まれながらに長い鼻を笑われコンプレックを持つ禅智内供が、あることをきっかけに鼻を短くすることに成功するも、それでも他人に笑われ違和感を持つ物語。
傍観者の利己主義という概念を提出し、人間に本来的に備わる利己主義を鋭く指摘しました。ユーモアと機知に富む内容は現代でも多くの人に愛されています。
また師匠でもある夏目漱石に激賞され、文壇での地位を確立しました。
関連記事:芥川龍之介『鼻』感想|傍観者の利己主義とは何か|あらすじ解説・伝えたいこと考察
5位:侏儒の言葉(1923年 – 1927年)
『侏儒の言葉』は芥川にしては珍しく、小説ではなくて随筆・警句集です。題名にある「侏儒(しゅじゅ)」とは知識のない人の蔑称で、自身のことを指していると言われています。
1923年から自殺した1927年の間に執筆されたもので、芥川の晩年の思想を知ることができます。
暗い内容の中にもユーモアがあり、流石というほかありません。
6位:蜘蛛の糸(1918年)
『蜘蛛の糸』は芥川龍之介が26歳のときの短編小説で、彼が初めて手掛けた児童文学作品でもあります。映画化やアニメ化もされており、教科書にも掲載されています。
地獄に落とされた犍陀多を、生前にした一つの善行を見ていた御釈迦様が助けようとして蜘蛛の糸をたらす。その糸を見付けた犍陀多は、そこから天国に向かってよじ登っていくも……。
これまた教訓深い物語で、利己的な考えが自らに跳ね返っていく様子を描きます。深く考えさせられる話です。
関連記事:芥川龍之介『蜘蛛の糸』感想|教訓は何だ?|あらすじ解説・考察
7位:地獄変(1918年)
『地獄変』は『宇治拾遺物語』を基にした芥川龍之介の短編です。
芸術のためには犠牲を厭わない絵描きの主人公が、娘を焼かれながらも描くのを続けようとする物語。
主人公の芸術に対する姿勢が、芥川龍之介自身の芸術至上主義を表現していると考えられており、彼の芸術観、小説観を知る上でも必読の書です。
8位:歯車(1927年)
『歯車』は『河童』や『或阿呆の一生』と並ぶ晩年の代表作です。服毒自殺を図る年の作品で、この小説からも彼の精神状態が窺い知れます。
物語はほぼなく、芥川が実際にみたであろう幻想や妄想などが描かれます。
これまた初期作品とは違った作風に驚かれることでしょう。
9位:アグニの神(1921年)
『アグニの神』は1921年に児童雑誌『赤い鳥』に発表された児童文学です。
雇い人の娘が拐われてしまい、その娘を使用人が助けに向かう時に、アグニと呼ばれる神が現れ一騒動起きる物語です。
「蜘蛛の糸」や「杜子春」と並ぶ、芥川の児童文学の傑作です。元になった作品は諸説あり、それを調べてみるのも面白いでしょう。
関連記事:芥川龍之介『アグニの神』感想|運命のおごそかさについて|あらすじ解説・考察
ほかの小説や批評、哲学や映画作品にも挑戦してみよう
本記事では芥川龍之介の有名な作品を紹介しました。
有名で知っている本から、読んだことのない本まであったと思います。どれか一つでも気に入る作品を見つけていただければ嬉しいです。
ほかの小説では、夏目漱石は「夏目漱石のおすすめ作品」、ル=グウィンは「ル=グウィンのおすすめ作品」、ヘッセは「ヘルマン・ヘッセのおすすめ作品」、日本の純文学は「純文学のおすすめ作品」でおすすめ小説を紹介しています。
ほかに、批評理論や芥川龍之介と関連の深い哲学、映画作品などを嗜むと、より一層文学を楽しめると思います。
例えば、アウグスティヌスの入門書は「アウグスティヌスのおすすめの入門書・解説書」、ショーペンハウアーの入門書は「ショーペンハウアーのおすすめ入門書・解説書」、ウィトゲンシュタインの入門書は「ウィトゲンシュタインのおすすめ入門書・解説書」、ノーランのおすすめは「クリストファー・ノーランのおすすめ傑作映画」、批評理論のおすすめ本は「批評理論のおすすめ本」で紹介しています。こちらもぜひご覧ください。