感染症文学の最新おすすめ11選|古典から現代まで面白い名作小説を取り揃えました

感染症文学の最新おすすめ11選|古典から現代まで面白い名作小説を取り揃えました

感染症文学について

 現代はコロナという感染症が蔓延している時代である。人々は様々な制約を強いられ、生活環境が一変したところもあるだろう。しかし、人類の歴史というのは感染症との歴史ともいえる。

 感染症がここまではやらなくなった時代の方が人類の歴史からしたら珍しいのである。ペストやコレラ、結核、スペイン風邪など様々な感染症が様々な地域で蔓延し、その地域の人口の3分1がなくなった時もある。

 感染症が蔓延すると、人々の生活は一変し、精神状況にも変化が現れる。その心の変化を描くのは小説の得意とするところだ。これまでにもたくさんの感染症文学が描かれてきた。今回はそのうちおすすめの10作を古今東西から紹介したいと思う。

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感染症文学の古典的名作

ダニエル・デフォー『ペスト』(1722年)

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 「ロンドンの大疫病」として有名な、1655年ロンドン最後のペストの大流行についての体験談が語られる作品です。

 記録自体は詳細に述べられているので、ノンフィクションに見えますが、ロンドンの大疫病のとき、デフォーは5歳だったので、おじさんか誰かの話や日記をもとに書いたのではないかと言われています。

 内容はペストの大流行の際の人々の反応や生活環境の変化など、ペストによって被った甚大な影響を克明に記述しています。コロナを体験した私たちにとって「歴史は繰り返す」を確認できる一冊となっています。

シェイクスピア『ロミオとジュリエット』(1595年)

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 意外にもこの物語にはペストが一躍買っています。ロミオが自殺したのも当時の感染症であったペストに関係があるのです。物語の後半、ロミオとジュリエットは駆け落ちを試みます。その作戦は、ジュリエットが仮死状態となる薬を飲んで、先祖の墓のところで死んだフリして待っているというもの。

 その作戦が書かれた手紙をローレンツ神父という人がジョン神父という人に託しますが、なんと仲間が感染症にかかり自分は濃厚接触者ということで、一歩も外に出られず、また手紙を他の人に託そうにも怖がって誰も会ってくれなかったのこと。ロミオはその手紙を読めなかったことで、ジュリエットが死んでいると勘違いし自殺します。

 16世紀末から17世紀にかけてロンドンはたびたび腺ペストに襲われていました。その恐怖を知っていたシェイクスピアならではの感染症文学です。

ジョバンニ・ボッカチオ『デカメロン』

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 1348年から1353年にかけて製作された全100話イタリア語の短編物語集です。1348年に流行したペストから逃れるためにフィレンツェ郊外の別荘に引きこもっていた10人が、退屈しのぎに互いにお話を語り合うという小説です。内容はそれぞれ恋愛談だったり失敗談だったり、ユーモアがあり楽しく読めるような構成になっています。

 1348年にヨーロッパで大流行したペストでは人口の3分1が亡くなりました。当時の人々としては、細菌が目に見えないという環境下で恐怖と絶望を感じたことでしょう。そんななかで、現実逃避でも何でもいいから何とか楽しい心持ちにさせようとした意図が読み取れます。そのような背景を押さえて読むと、ゾクゾクするような一冊です。

感染症から人間の深みを考えさせる小説

トーマス・マン『ヴェニスに死す』(1911年)

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 コレラ文学です。主人公の大作家グスタフ・フォン・アッシェンバッハは休暇で来ていたヴェニス(ヴェネチア)である少年(タッジオ)に一目惚れします。その美しい少年に恋したアッシェンバッハはその街にとどまり少年を探すようになりますが、ヴェニスでコレラが流行っていることを知ります。感染の可能性を自覚しながらも、露店の苺を食べてしまったアッシェンバッハはこれらに感染し、この街で息を引き取ります。

 この話の少年愛の部分に関してはトーマス・マンの実体験に基づいています。それを感染症と組み合わせることで、愛を選ぶか死を選ぶかという究極の美の肯定が描き出された一冊です。

志賀直哉『流行感冒』(1919年)

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 世界的な流行となったスペイン風邪を題材とした作品です。テレビドラマにもなりました。

 この作品では主人公の私の視点から、愚鈍な女中の石という人物に焦点が当てられます。スペイン風邪が流行っているのに、石は人が密集する芝居を見に行ったことが発覚します。私は石の軽率さに腹を立てますが、そのうち自分や妻が感染すると、感染を一人免れた石が必死に働いてくれます。

 「愚鈍さ」や「軽率さ」の両面を描いた志賀直哉らしい小説です。

トーマス・マン『魔の山』(1924年)

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 この話に出てくる感染症は結核です。結核は現在(平成29年)も日本で年間2300人の人が亡くなっている最大級の感染症で、今もなお怖い病気です。

 さて、『魔の山』では主人公ハンス・カストルプがスイスの国際サナトリウム「ベルク・ホーフ」を訪れます。そこでいとこが結核で療養していたからです。しかし、ついてからというもの自分の健康状態も悪化し、医師から結核の症状が出ていると告げられ、患者としてサナトリウムで療養することになります。その山の上にあるサナトリウムが『魔の山』です。カストルプは徐々に『魔の山』の虜になっていきます。

 長大な作品で読み応えがあります。しかし淡々と話が進んでいくので挫折の可能性も大の作品です。

梶井基次郎『冬の日』(1927年)

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 主人公は結核にかかった堯(たかし)という青年です。到底助かる見込みがないので、生きる熱意を失っており、毎日窓から風景の移り変わりを見るだけの生活となっています。その日々の心境の移り変わり、真冬に移り変わる季節の風景と共に描いた美しい作品です。

 梶井基次郎自身、結核を患っており、肺結核で亡くなった人です。この『冬の日』は実体験をベースにしながら、虚実織り交ぜて素晴らしい作品世界を作り込んでいます。一度は読んでみたい作品です。

 梶井には他に『檸檬』という名作があります。

アルベール・カミュ『ペスト』(1947年)

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 題名からも感染症文学であることが一発で分かるカミュの代表作です。中世ヨーロッパで大流行したペストからヒントを得て、不条理文学と呼ばれる物語を描きました。

 舞台はフランスの植民地であるアルジェリアのオラン市。そこにペストが襲い、市民や医者、逃亡者たちがペストの脅威に立ち向かいます。苦境の中で死にゆく者もあり、無慈悲な運命と人間との関係を鮮やかに描き出しています。人々の心の強さ弱さなど、人間理解にも役立つ一冊です。

 カミュはほかに『異邦人』という傑作があり、そちらもおすすめです。

未知の病にどう立ち向かうのか

 ペストや結核など、現実に存在する感染症ではなくて、未知の感染症を描いた想像的な小説もあります。今後どのような感染症が起こり、人々はどのように対応するのでしょうか。想像力をかき立てられます。

エドガー・アラン・ポー『赤死病の仮面』(1842年)

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 黒死病とはペストのことですが、この「赤死病」も「白い病」と同じ新種の病です。「赤死病」はかかると発病から30分も立たないうちに身体中から血が溢れ出して死にます。だから赤死病です。

 この話は、ある国で「赤死病」が蔓延して人々を苦しめていましたが、国王は王宮の奥に引きこもり赤死病が入ってこないようにしていました。やがて舞踏会を開こうということになり、開催されますが、そこに赤死病を模した仮装をした見知らぬ人間が紛れ込んでいることが分かります。国王は怒り狂い、短剣で追い回しますが、振り返ったその人物と対峙した瞬間に倒れて死んでしまいます。そして参加者たちは勇気を振り絞ってその仮面を剥ぎ取ると……。

 怖い怖いホラー小説です。ポーはほかに『ウィリアム・ウィルソン』『黒猫』『モルグ街の殺人』が有名である。

カレル・チャベック『白い病』(1937年)

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 『白い病気』は、戦争と迫り来る未知の感染症を主題にした、チェコの作家カレル・チャペックの代表的戯曲のひとつです。ここでの感染症は、なんとペスト(黒い病)でも結核でもなく「未知の感染症」、名付けて「白い病」です。

 では「白い病」とは何なのか。この未知の疫病は、感染すると白い斑点が体の何処かに出てきて、生きながら腐敗していくという恐ろしいものですが、実は感染には条件がありました。それがなんと50歳以上の人しかかからないという、年齢制限つきの病だったのです。この全く新しい病に対して、人類はいかに抵抗するのか。様々な問いが人類に突きつけられることになります。

>> 関連記事:カレル・チャペック『白い病』考察|誰が罹るかはじめから決まっているとしたら

小松左京『復活の日』(1964年)

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 SF小説家の小松左京も感染症を題材にした小説を書いています。それが『復活の日』です。映画化もされました。

 この本で登場する猛毒の新型ウイルス「MM-88」は、致死率なんとほとんど100%。今までにない最強のウイルスで感染もします。地球上のほとんどの人間が死亡し、生き残ったのは南極大陸に滞在していた各国の調査員約1万人だけとなります。これからどのように生き残っていけばよいのか。非常にドキドキする作品です。

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