批評理論をわかりやすく解説|文芸批評、映画批評からアニメ・漫画批評まで

批評理論をわかりやすく解説|文芸批評、映画批評からアニメ・漫画批評まで

批評理論を学ぶ意義

 映画を観たあとあるいは小説を読んだあとに、言語化できない感情が湧き上がってくることはないだろうか。「よかった」という強烈な印象を受けながら、どこが「よかった」のかを的確に表現することができないとき、この「よさ」を誰かに伝えたいという欲望と、それなのに言葉がでてこないことにもどかしさを感じる。そしてどうにか言葉にしようとして口から洩れた「よかった」という感想に、伝わるはずがないと焦り、語彙の貧困を嘆きながら途方に暮れるのである。

 このような状況に陥ってしまうのは、決してあなたのせいではない。むしろ言葉にできない溢れ出る感動は、内に秘めた感受性の豊かさを物語っている。では何が足りないのか。理論と語彙だ。

 あのシーンが、あのセリフが「よかった」というとき、何故「よかった」のかを説明できてはいない。「よかった」を説明(言語化)してくれるのが、批評理論である。批評理論を用いれば感情を巧みに言語化して、適切に相手に伝えることができる。感動という個人的な経験を相手と共有することができるのだ。その言葉に相手が納得すれば共感が生まれるだろう。つまり批評とはコミュニケーションのツールなのである*。

 批評理論を自ら構築する必要はない。喜ばしいことに、先人たちが築き上げてくれているのだから。ということで、これまでに作りあげられてきた批評理論を簡潔に紹介しておこう。

>>批評理論のおすすめ本はこちらから:批評理論のおすすめ本を紹介!

*とはいえ言語化できない感動も世の中には存在する。作品(コンテンツ)や感動には、コミュニケーションに還元されない要素が内包されている。身体の芯が打ち震えるようなあの感動は、みずからの内にそっと抱え込み誰にも打ち明けず秘密にしておくべきものだ**。そのような作品は、その人にとって理論を超えているのだから。理論を知ることは理論の限界を知ることであり、逆説的に、その地平の先にあるかけがえのない作品の発見を手助けしてくれる。骨の髄が震えるような作品との、未来あるいは過去にあり得べき偶然の遭遇のために、まずは理論を学ぶのも有意義だろう。

文芸批評理論

文学批評理論発祥前史—イギリス文学史

created by Rinker
¥924 (2023/01/28 21:19:46時点 Amazon調べ-詳細)
バイブル

 文芸批評理論が学問として成立したのは、たかだか百数十年のことに過ぎません。そもそも近代小説が成立したのだって数百年前なのです。

 したがって文芸批評が学問として成立した過程は詳細にわかっていて、これがすこぶる面白い。文芸批評発祥の地はイギリスで、立役者の一人はF.R.リーヴィスという人物です。リーヴィスは『スクルーティニー』という雑誌を刊行して、これまでの文学史観を刷新して、その影響は現代まで続いているのです。

 この時期には理論と呼ばれるようなものは提案されませんが、理論の萌芽がみられます。まさに文学批評理論の発祥前史がこの時期にあたります。

>>関連記事はこちら:イギリス文学史と文芸批評成立の前史

印象批評

 何かと馬鹿にされる印象批評です。日本では小林秀雄が有名ですね。

 印象批評とは何かと問われれば、誰しも呟いているあの感想が印象批評だと言えます。基本的には印象を言うだけですからね。ですがそれだからこそ印象批評の使い手は、卓越した想像力と突出した知識が必要になるのです。ただ理論とは言えないものなので、そのような批判がのちになされることになりました。

 もともとはフランス絵画発祥の印象派から輸入されたもので、それを文芸に応用したものです。ここらへんの歴史を調べてみると面白いかもしれません。

>>関連記事はこちら:印象批評とは何か

異化(ロシアフォルマリズム)

 ロシア・フォルマリズムの批評家ヴィクトル・シクロフスキーによって1910年代に、ドイツの劇作家ベルトルト・ブレヒトによって1930年代から40年代に提唱されたのが、異化です。

 異化とは、物事をいつもと違った角度から違った仕方で見せること、そして認識が刷新されることを意味します。日常的に見る風景を、馬の視点でみてみると違った世界が開ける、といったものも異化を用いた一例になります。

 日本ではノーベル賞作家の大江健三郎が、その手法を取り込み自覚的に用いました。

>>関連記事はこちら:異化とは何か

新批評

 イギリスのF.R.リーヴィスやリチャーズの運動がアメリカに渡り、新批評という新たな文芸批評理論が成立します。

 主な手法は、詩のなかに「パラドックス」「アンヴィアレンス」「テンション」を発見し、相互作用の中で調和がとれてる様を示すことです。絶妙な相互作用で有機的な統一性を保っている、と主張したのです。

 このような手法が好まれたのには様々な理由がありますが、冷戦下の不安定な時代であったことも背景にありそうです。

>>関連記事はこちら:新批評とは何か

受容理論

 20世紀最大の哲学者ハイデガーの解釈的現象学に影響を受けて成立したのが解釈学で、それに続いて生まれたのが受容理論です。

 文学作品を成立させるためには、「作者ー作品ー読者」の三つの要素が必要になります。これまで注目されてきた「作者ー作品」に代わって、「読者」を重要視したのが受容理論です。

 「作者」が「作品」を生みだすだけでは、作品は意味を持ち得ない。「作品」は「読者」がいてこそ、変化し運動し続ける意味を為すのだ、というのが受容理論の肝になります。

>>関連記事はこちら:受容理論とは何か

新歴史主義

 古典的な歴史研究というと、客観的な事実の集合としての歴史があり、それを記述しながら作品を読み解くのが一般的でした。大航海時代があり、アヘン戦争があり、etc.といった具合にです。

 しかしながらこれは一方的な見方ではありません。それは西洋の観点からみた、世界の「歴史」なのです。これに自覚的であること、つまり歴史は単なる事実の集積ではなく、物語化された歴史であることを踏まえて作品分析をおこなうこと、それが新歴史主義の基本的な考え方です。

 言い換えると、「客観的史実の集合体としての歴史」から「物語の歴史」へ、ということになります。現在では常識といっても過言ではありませんが、だからこそ気をつけていないと旧歴史主義的な考え方をしてしまうのです。

>>関連記事はこちら:新歴史主義とは何か

カルチュラル・スタディーズ

 カルチュラル・スタディーズを日本語に訳すと「文化研究」になります。この「文化」に何を含めるかで研究対象の範囲が変化します。

 もともとは労働者の文化を擁護する運動でありましたが、大衆消費社会を擁護するようになり、次第にグローバルな視点をもつようになります。

 系譜の一つに受容理論があります。どちらも共通するのは、受け手側、つまり読者や労働者、消費者に注目している点ですね。いまでも盛んに研究されている分野です。

>>関連記事はこちら:カルチュラル・スタディーズとは何か

動物論

 最新の文芸批評理論の一つです。

 人文学という名からもわかるように、批評理論とは人が書いた文章についての理論ですが、近年動物について注目が集まっています。

 簡略化して言えば、人間と動物をわけるものを真剣に考えてみると意外にも線引きが難しく、動物という存在が人間の定義を揺さぶるものなのです。そこから動物がどのように表象されてきたかを問うのが、動物批評の一つの戦略になります。

>>関連記事はこちら:動物論とは何か

フェミニズム批評

>>関連記事はこちら:フェミニズムとは何か

ポストコロニアリズム

加筆します

クィア批評

加筆します

参考文献

created by Rinker
¥990 (2023/01/28 19:47:18時点 Amazon調べ-詳細)
入門オススメ
created by Rinker
¥2,090 (2023/01/29 04:57:39時点 Amazon調べ-詳細)
最新まで網羅

映画批評理論

多視点的転回

created by Rinker
¥2,500 (2023/01/29 11:55:27時点 Amazon調べ-詳細)

 近年、撮影技術の発展により、映画は新たな展開をみせています。従来の映画をシネマと呼ぶなら、ポストシネマと呼びうるような変革期に現在は立たされているのです。

 撮影技術の発展は映像にどのような変化をもたらしたのか。最も重要な変化は、カメラの視点が自由になり、多視点の視点が現れたことです。鳥、亀、人間とその視点は自由自在です。

 さらにカメラという物理的制約がなくなり、無重力のような新たな視点を確立したのです。このような変化を「多視点的転回」と呼びます。

>>関連記事はこちら:多視点的転回とは何か

漫画・アニメ批評理論

シャカイ系

 「シャカイ系」とは「社会」しか描いていないといえるくらい「社会」が描かれた作品です。しかしながら、その「社会」とは、福祉国家的な「社会」ではなく新自由主義的な「社会」であり、無能な「シャカイ」なのです。

 提唱者の河野は、フォーディズム→ポストフォーディズムや福祉国家→新自由主義といった、社会的な移行と結びつけて論を広げていきます。

 セカイ系の想像力のあとにくるのは、シャカイ系なのか、目が離せません。

>>関連記事はこちら:シャカイ系とは何か

アトムの命題

created by Rinker
KADOKAWA
¥734 (2023/01/29 00:58:10時点 Amazon調べ-詳細)

 戦後漫画に通底する問題意識は何か。戦後日本はマッカーサーに12歳と揶揄されました。敗戦国の日本は永遠の子供であり、父としてのアメリカに依存しながら生きていくことになったのです。

 その歪みが端的にあらわれたのが、手塚治虫の『鉄腕アトム』であり、そこで提示されたものは現在の漫画やアニメに通底している、と大塚英志は言うのです。

 人造人間でありながら成長を望み、人造人間であるが故に成長できないという、矛盾した身体と精神を持つもの者において成長とはどのようにあるのか、それがアトムの命題です。この問題は姿形を変えて、至る所にみられる日本を蝕む命題なのです。

>>関連記事はこちら:アトムの命題とは何か

不可能性の時代

created by Rinker
¥946 (2023/01/28 18:12:18時点 楽天市場調べ-詳細)

 大澤真幸の概念で1995年以降の時代を表しています。

 前提となるのは大澤の師匠で社会学者の見田宗介の議論です。見田は現実に対置される反現実の視点から、戦後日本を三つの時代に区分しました。それが理想の時代、夢の時代、虚構の時代です。

 大澤はこの議論を前提に、1945年から1970年を理想の時代、1970年から1995年を虚構の時代と、時代区分を引きなおします。そして1995年を境に虚構の時代が終わり、不可能性の時代が訪れたと提唱するのです。

>>関連記事はこちら:不可能性の時代とは何か

拡張現実の時代

 宇野常寛の概念です。

 宇野は大澤の議論を参照しながら、不可能性の時代の代わりに拡張現実の時代を提唱します。これは現実を考えてみてもわかりやすい。例えば「ポケモンGO」とかが理解しやすいと思いますが、仮想現実というよりもこの現実を拡張していく拡張現実のほうが優勢になっている印象です。

 拡張現実の時代に感性はどのように変化するのか。あるいは拡張現実の時代の新たな問題とその解決法とは。

 

>>関連記事はこちら:拡張現実の時代とは何か

母性のディストピア

created by Rinker
¥924 (2023/01/29 00:58:10時点 楽天市場調べ-詳細)

 宇野が戦後アニメにみいだした想像力の源流に母性的な想像力があります。その磁場があまりに強いため、宮崎駿を含め多くのアニメ作家が、男性の成長を描くために母性への依存を前提としていたのです。

 そのあまりに強い磁場を母性のディストピアといいます。宮崎駿に顕著ですが、少年が空を飛ぶためには女性の承認が必要になっているのです。

 したがって戦後アニメは母性のディストピアに蝕まれた作品群であり、そしてそこからの脱出を目指しているともとれるのです。

>>関連記事はこちら:母性のディストピアとは何か

ゴジラの命題

 アトムの命題の対概念として提唱されました。虚構についてアトムの命題が「私ー個人ー文学」の側から考えたとすれば、「公ー世界ー政治」の側から捉えたのが「ゴジラの命題」です。

 ゴジラの命題とは、虚構のなかでしか捉えることのできない現実を描くこと、と言えます。

 アトムの命題とゴジラの命題、この両輪でアニメ・漫画を見つめ直すと新たな発見があるはずです。

>>関連記事はこちら:ゴジラの命題とは何か

**秘密は死ぬまで抱え込んでおくべきだろうか、それとも誰かに打ち明けるべきだろうか。その答えは人それぞれというほかない。だが、もし秘密を打ち明ける瞬間がおとずれるとすれば、それはガツーンと頭を打つような作品との出会いが偶然であり突然であったように、打ち明けるべき相手も偶然に突然に現れるはずだ。そのとき秘密は、真面目に聞きたいといった青年に秘密を打ち明けた『こころ』の先生のように、あるいは、息子の友人に過去の秘密を打ち明けた『寝ても覚めても』の岡崎栄子のように、明かされるのかもしれない。

おすすめ小説をご紹介、批評理論を学んだ後に読むべき名著

 本記事では批評理論を紹介した。次は批評理論を使って作品を味わってみるのがおすすめだ。

 文芸批評理論は100年かけて着実に発展してきた。そのため先人たちが取り上げたのはいまでは古典と呼ばれる小説や詩であった。したがって改めて古典的名著に触れてみると、新たな発見があるかもしれない。

 世界の文学は「世界文学のおすすめ人気ランキング!」、フランス文学は「フランス文学の古典から現代までおすすめ人気ランキング!」、イギリス文学は「イギリス文学の古典から現代までおすすめ人気ランキング!」、日本小説のおすすめは「日本文学のおすすめの人気ランキング!」、また哲学入門書は「哲学初心者向けの人気おすすめ著作」、哲学必読書は「本格的な人向け哲学書必読書」で紹介している。

 ぜひこちらも参考にしてほしい。

文学カテゴリの最新記事