『怪盗グルーのミニオン危機一発』感想|あらすじ解説|内容考察|グルーの恋愛

『怪盗グルーのミニオン危機一発』感想|あらすじ解説|内容考察|グルーの恋愛

概要

 『怪盗グルーのミニオン危機一発』は、2013年公開のアメリカ3Dアニメーション映画。原題は「Despicable Me 2」。監督はピエール・コフィンとクリス・ルノー。「怪盗グルー」シリーズの2作目。

 前作は『怪盗グルーの月泥棒』、次作はスピンオフ作品の『ミニオンズ』である。

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登場人物

フェロニアス・グルー:大悪党。三姉妹の養父。悪党をやめてジャムとゼリーを開発。

ミニオンズ:独自の言語を喋る黄色い生き物。グルーの部下。ミスが底抜けに明るくポジティブ。

ネファリオ博士:グルーのもとで働く科学者。ジャム作りにうんざりしている。悪事を働きたくグルーのもとを去る。

マーゴ:三姉妹の長女。しっかりもので妹たちの面倒見が良い。ボーイフレンドを作る。

イディス:三姉妹の次女。好奇心が旺盛で騒動をよくおこす。

アグネス:三姉妹の三女。グルーのことを一番慕っている。朗読練習以降、母の存在が気になり出す。

ルーシー・ワイルド:超極秘組織「反悪党同盟」の女性エージェント。グルーと協力してロシアから盗まれた「PX-41」を追う。

エル・マッチョ:怪力の悪党。20年前にサメとダイナマイトとともに火山に突っ込み死んだとされていた。

あらすじ

 北極にある研究所では生物が凶暴化する「PX-41」という薬を開発していた。ある日、上空に巨大磁石を携えた飛行船が現れ、研究所ごと盗まれてしまう。反悪党同盟は月泥棒の実績があるグルーに協力を頼る。だが、グルーは三姉妹と父として生活していて、悪党をやめジャム作りをしていた。

 長年の協力者であるネファリオ博士は、悪行をもう一度やりたいために転職する。博士の転職もあってグルーは反悪党同盟に協力することにする。

 反悪党同盟の捜査官ルーシーと三姉妹を連れてショッピングモールを調査する。そこで長女のマーゴは偶然知りあったアントニオに恋をし、グルーらはレストランの店主が、死んだとされていた怪盗エル・マッチョに似ていることに気がつく。調査をすると、アントニオはピザの店の金庫には秘伝のソースが置いてあった。

 家の周りでミニオンが誘拐される事件が発生。しかし、ミニオンは数が多いのと怠惰なため居なくなったことに気がつかない。反悪党同盟による調査はすすみ、ピザ屋の近くのカツラ店で「PX-41」の残骸が入った瓶を発見され店長は逮捕される。一件落着したことで、ルーシーは次の仕事があるオーストラリアに旅立つ。別れるとルーシーとグルーは互いに相手が好きであることに気がつき、ルーシーはオーストラリア行きの飛行機から飛び降りてグルーのもとに急ぐ。

 グルーはエル・マッチョと再会。そこにはネファリオ博士と「PX-41」で突然変異したミニオン軍団がいた。エル・マッチョはミニオン軍団で世界征服を目論み、グルーにも協力を仰ぐも断れる。そうとは知らないルーシーはエル・マッチョに捕まってしまい、グルーは助けに向かう。

 ミニオン軍団によってグルーは危機に陥るが、ネファリオ博士がグルーたちのことを思い、解毒剤をもって駆けつけにくる。変異したミニオンたちは正常に戻り、エル・マッチョを倒す。

 グルーはルーシーと結婚し、三姉妹とミニオンとともに幸せに暮らすのだった。

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解説

コンプレックスの所在は親から異性へ

 子供向けのアニメ映画でありながら、残酷だったり過激だったりする描写が多い。例えば、エル・マッチョがマグマにダイナマイトと共に突っ込んだり、ダニーが燃やされたり針で鼻を刺されたりする。このような一見するとゾワっとするような怖い映像は、「記号的な身体」というディズニー的な身体感に由来する。

 ディズニーのアニメは初期の頃から、現実離れした死ぬことのない身体を描いていた。車に潰されようが扉に挟まれようが、次のシーンでは何事もなかったかのようにケロっとしているのが、ディズーで描かれるキャラクターの特徴で、そのような不死身の身体が「記号的な身体」と呼ばれるものなのだ。

 そのようなリアリティーのない身体は、ある特徴的な身体を編み出した。顔がやたらデカくて、足が異常に細い、ダニーにみられるあれである。それは、現実味がないのだが逆にそのおかげで親しみやすく、細部の特徴をとらえて肥大化させた完全なフィクションの身体だ。だから、てっきり彼の顔は、特徴を肥大化させただけで、かっこいいのだと思っていた。ところが、それが間違いだったようだ。彼の頭はハゲているし、カッコよくない。ダニーはそのことにコンプレックスを抱いていたのである。

 前作では母との嫌な記憶からダニーは子供毛嫌いしていた。本作は子供の頃に異性に気持ち悪がられていた記憶から異性を毛嫌いしてる。つまり前作が母のトラウマを乗り越える親と子の物語(母とダニー、ダニーと三姉妹)だとすれば、本作はコンプレックスを抱えた男性がそれを乗り越えるために奮闘する男と女の物語なのである(父から母へ、母から父へ——『怪盗グルーの月泥棒』*なるほう堂)。

 ダニーは前作の最後で「親」になることができた。それによって本作の冒頭は悪党であることをやめて、三姉妹の親としてジャムを作っていた。コンプレックスを乗り越えたダニーの目には、「父」や「母」などは全く眼中にない。むしろ笑ってしまうくらい、三姉妹の過保護な「親」なのである(マーゴがアントニオと付き合うことは許さない)。

考察・感想

スプラトゥーンの先駆け的作品

 前作と比べると、筋が単純になってしまった感は否めない。家族の問題を解決したグルーは、もてないコンプレックスを克服し異性と付き合うだけである。

 とはいえ、恋愛映画に特有の面白さがある。ルーシーからの好意が少しでも示されれば、グルーは上機嫌になり道端にいる人ともダンスをしたりする。このシーンは『(500)日のサマー』で、サマーと初セックスをしたトム(ゴードン=レヴィット)が上機嫌のあまり通勤中に他人を巻き込み踊り出すシーンに似ている。トムはそのとき、ガラスに映る自分の顔をハリソン・フォードと見間違えるのであった。グルーもそうであったに違いない。

 ほかにも、いくつか面白いところを挙げておこう。一つはカメラの視点。アニメーションの強みは、カメラを本来的に必要としていない点にある。実写の映画はカメラが絶対に必要であり、カメラの物質性による制約も大きいのだが、その点アニメは自由自在なのである。その強みを生かしたところが、視点が突然変異したミニオンに変わるところだろう。異常なブレと低い視点、獲物に向けた妙なスピード感は、異様な臨場感を与えている。視点の変更が突然なので、一瞬誰の視点なのか判断がつかないが、それがわかったときミニオンの視点の認識が改まる。異化のような作用が働いているのである(異化とは何か – シクロフスキー、ブレヒト*なるほう堂)。

 二つめは戦い方。本作において戦闘シーンはほとんどないのだが、変異ミニオンを倒すときは注目に値する。グルーたちは博士が開発した解毒剤入りのジャムを変異ミニオンに打つと、紫色をしていたミニオンたちが本来の黄色に戻っていくのだが、それは戦闘と違う色塗りのような快楽がある。紫一色の「危機一髪」の状態から黄色一色に変わっていく様子は、「スプラトゥーン」というゲームで行われる戦闘に似ている。「スプラトゥーン」が提示したのは戦闘ではない対戦の新たな快楽であり、それは世界的ブームを巻きこしたのだった。だが「スプラトゥーン」が販売されたのは2015年であって、本作の公開の後なのである。『怪盗グルーのミニオン危機一発』は「スプラトゥーン」の先駆け的作品に位置付けられるのかもしれない。

 

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