『ミニオンズ』感想|あらすじ解説|内容考察|ミニオンの可愛さと面白さの秘密

『ミニオンズ』感想|あらすじ解説|内容考察|ミニオンの可愛さと面白さの秘密

概要

 『ミニオンズ』は、2015年のアメリカ映画。3Dアニメーション映画。監督はピエール・コフィンとカイル・バルダ。「怪盗グルー」シリーズのスピンオフ。子分であるミニオンが主人公。

 前前作は『怪盗グルーの月泥棒』、前作は『怪盗グルーのミニオン危機一発』、次作は『怪盗グルーのミニオン大脱走』。

>>無料トライアル実施中!<U-NEXT>

登場人物

ケビン:ミニオン。目は二つ。悪党を失いやる気をなくしたミニオンたちに、やる気を取り戻させるため大悪党を探しにいく。

スチュアート:ミニオン。目は一つ。ギター弾き。ケビンほどやる気はないが、成り行きで悪党を探す旅についていくことになる。

ボブ:ミニオン。子供。目は二つ。旅に率先して参加。おっちょこちょいで陽気。

スカーレット・オーバーキ:大悪党。悪党界のトップ。子分を探している。女王になって国を支配したい。

ハーブ・オーバーキル:スカーレットの夫。発明家。相手を眠らせる帽子、溶岩を噴出する銃、多機能を備えた身体拡張機を製作している。

エリザベス女王:イギリス君主。王座を退いても居酒屋で民衆を魅了する力強さがある。

あらすじ

 人類が生まれるずっと昔。ミニオンは凶悪で最強の生物に仕えることを生きる目的にしていた。最初はティラノサウルス。ミニオンたちはティラノサウルスと仲良く遊んでいたのだが、ミニオンのおっちょこちょいな行動によってティラノサウルスはマグマに落ちて死んでしまう。

 その後に仕えた主人は、原始人、ファラオ、吸血鬼、ナポレオンであった。だが、どの主人もミニオンが起こす出来事によって、ふいに亡くなってしまうのだった。主人を変えながら移動を続けるミニオンたちは、氷の洞窟を発見しそこで自分たちだけの新生活を始める。ところが仕えることが目的だったミニオンたちは、主人がいないことで次第に活気を失っていく。

 1968年、ケビンは現状を打破すべく大悪党を探す旅に出ることを決意。スチュアートとボブと共に他のミニオンの喝采のなか旅に出る。

 偶然車に乗せてくれた一家が悪党家族であり、フロリダで開かれる「悪党大会」に連れて行ってくれる。そこで子分を探す大悪党スカーレットに出会い、彼女についていくことになる。イギリスを支配したいスカーレットは、ケビンたちにエリザベス女王の王冠を盗むことを指示し、ケビンらは泥棒しにいく。

 警察との格闘のなかで、ボブが伝説の剣エクスカリバーを引き抜き王位につく。王女になりたかったスカーレットはこの出来事をケビンらの裏切りと取り彼らを閉じ込める。脱出したケビンたちはスカーレットと戦うことになる。

 ハーブの実験室に逃げ込んだケビンは、そこにあった謎の機械で巨大化する。仲間を助けスカーレットと対決し見事勝利し、エリザベスに王位が戻る。すべてを失ったスカーレットは王冠だけでも盗もうとするも、現れたグルーに氷漬けにされ王冠も盗まれる。新しい主人の出現にミニオンたちはグルーを追いかけるのだった。

>>Amazonプライム「30日間の無料体験」はこちら

解説

単細胞生物のかわいさ

 『怪盗グルーの月泥棒』(2010年)から始まった「怪盗グルー」シリーズものは、『怪盗グルーのミニオン危機一発』(2013年)、『怪盗グルーのミニオン大脱走』(2017年)と続編がでるにつれて人気を博していった。その一つの要因に、怪盗グルーの手下でわらわらと現れる黄色い生物、ミニオンの存在がある。このおっちょこちょいで奇妙な生物ミニオンは世界中で大人気で、ついにはミニオンを主人公にしたスピンオフが製作された。それが本作『ミニオンズ』(2015)で『怪盗グルーの月泥棒』の前日譚を描く。

 ミニオンの特徴はまずもってその身体にある。細長い手足。のっぺりした黄色い胴体。数本しか映えてない髪の毛。それらは画一的で身体性の欠如を感じさせるが、じつはそれぞれに個性を持っている。例えば、ケビンとボブは目玉が二つあるのだが、スチュアートは目玉が一つしかない。ケビンの髪の毛は数本の逆毛で、スチュアートはセンター分け、ボブにいたっては髪の毛がない。ケビンとスチュアートは体が大きく精神も大人びてるのだが、ボブの体は小さく幼い。ボブは子供のなのだ。

 そこでふと、ミニオンに子供がいることに驚く。ミニオンには性別がないようにみえるからだ。もし仮に、無性別で(精神的に幼い)子供がいるとすると、ミニオンに身体的にも精神的にも成長はあるのか、死はあるのか(なさそうにみえる)、食べるものやエネルギーは何なのかなどと、ミニオンの生態系が気になり出す。調べてみると、どうやらミニオンは単細胞生物らしい。

 そうであるならば、ミニオンたちは単細胞生物に一般的な生殖方法である「分裂」で数を増やしているのかもしれない。そしてミニオンの魅力的なツルッとして単純な身体構造や、愛らしいおっちょこちょいな性格もそこに理由があるのかもしれない。ミニオンが愛され続けるキャラクターであるのは、単細胞生物ゆえなのである。

考察・感想

両義的なミニオンズと名作のオマージュ

 ミニオンは強くて凶悪な主人に仕えることを生きがいにした生物である。しかし、それはミニオンたちが「奴隷」であることを意味するわけではない。ミニオンたちは「楽しさ」を求めていて、そのためには強くて凶悪な主人に仕えるのが最善なのだ。

 だが、ミニオンが主人に仕えるとき、試されているのは主人の方である。なぜならミニオンはおっちょこちょいな性格であって、大抵の場合(ナポレオンでさえ)、主人はミニオンの行動が原因で亡くなってしまうのだ。ミニオンは悪に仕えながら、悪を崩壊させる両義的な存在なのである。

 ミニオンがのっぺりとした単細胞的な身体をしているがゆえに、身体の拡張が一つのテーマになっている。なかでも身長の低いボブは、ハーブにもらった手足につける機械が自由自在に伸びたり縮んだりすることで、行動範囲を大幅に広げそのことに大きな喜びを感じ、さらにはボブらを助けることにも成功する。ボブらを助けるというちょっとした大人の体験のあとには、聖剣エクスカリバーを岩から引き抜き、そのおかげで王位を継承するというご褒美が待っている。なんとも可愛らしい。

 ケビンの場合はハーブの実験室にあった謎の機械のおかげで巨大化する。巨大化した体で街を歩く姿は『ガリヴァー旅行記』を彷彿とさせる。また爆弾を止めるために壊した水道から勢いよく噴出する水はまるでケビンの小便のようで、これまた『ガリヴァー旅行記』の名場面を想起させる(『ガリヴァー旅行記』第一篇を読む――リリパットにおける禁止の過剰について*なるほう堂)。

 じつは、このコミカルな物語は、過去の名作のオマージュに溢れている。身体の伸び縮みや、言語のナンセンスさは『不思議の国のアリス』を思わせるし、ボブの手が伸びて川に落ちそうな車を止めるところはまるでスパイダーマンのようだ(『アメイジング・スパイダーマン』シリーズが不評だった本当の理由*なるほう堂虚構を見破れ——『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』*なるほう堂)。また、アポロ計画の映画撮影現場やヒッピーデモなどの歴史的な出来事を駆け抜けていくのは『フォレスト・ガンプ』のような疾走感がある(アポロ計画の映画はこちら:失敗を乗り越えろ——ロン・ハワード『アポロ13』)。

 『ミニオンズ』に笑いと面白さと懐かしさが溢れているのは、ミニオンのキャラ造形もさることながら、過去の名作からの引用が多分に含まれているからなのである。

アニメカテゴリの最新記事