『イミテーション・ゲーム』考察|秘密は持たないのが一番だ|あらすじネタバレ感想・伝えたいこと解説|モルテン・ティルドゥム

『イミテーション・ゲーム』考察|秘密は持たないのが一番だ|あらすじネタバレ感想・伝えたいこと解説|モルテン・ティルドゥム

概要

『イミテーション・ゲーム』は、2014年に公開されたアメリカの歴史ヒューマン映画。監督はモルテン・ティルドゥム。

 第87回アカデミー賞作品賞、監督賞、主演男優賞、助演女優賞、脚色賞など八部門でノミネート、脚色賞受賞を果たした。

 原作『アラン・チューリング:エニグマ』を基に、第二次世界大戦中にエニグマ暗号の解読し、その後同性間性行為のかどで訴追を受けたイギリスの暗号解読者アラン・チューリングの人生を描く。

 歴史映画・ドラマはほかに『ダンケルク』『ユナイテッド93』『ワールド・トレード・センター』『鎌倉殿の13人』がある。

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登場人物・キャスト

アラン・チューリング(ベネディクト・カンバーバッチ):本作の主人公。大学の数学教授であり、第二次世界単戦中にブレッチリー・パークでエニグマ暗号解読に尽力する。その後同性愛の罪で逮捕され自殺する。
(他の出演作:『1917 命をかけた伝令』『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』)

ジョーン・クラーク(キーラ・ナイトレイ):ブレッチリー・パークで暗号解読に努めた一人。ケンブリッジ大学卒の女性で、大戦中にチューリングと結婚するが、大戦前に離婚。
(他の出演作:『つぐない』)

ヒュー・アレグザンダー(マシュー・グッド):元々全英のチェス・チャンピオン。ブレッチリー・パークで暗号解読に努めた一人。

ジョン・ケアンクロス(アレン・リーチ):ブレッチリー・パークで暗号解読に努めた一人。実はソ連のスパイで暗号解読の情報を秘密裏にソ連へと流していたことが発覚する。

ピーター・ヒルトン(マシュー・ビアード):ブレッチリー・パークで暗号解読に努めた一人。

ロバート・ノック(ロリー・キニア):刑事。チューリングを逮捕し、取り調べの中で、チューリングがブレッチリー・パーク働いていた頃の回顧話を聞く。

スチュアート・ミンギス(マーク・ストロング):秘密情報部(MI-6)長官。エニグマ暗号解読後は、情報の選別を彼の秘密情報部と協力して行うようになる。
(他の出演作:『シャーロック・ホームズ』)

アラステア・デニストン(チャールズ・ダンス):海軍中佐。最初ブレッチリー・パークの暗号解読班を指揮していた。

クリストファー・モーコム(ジャック・バノン):チューリングの寄宿生時代の同級生。チューリングがいじめられているところを助けるなどして親密になる。チューリングは彼に愛の感情を抱くようになるが、結核により寄宿生時代のときに死亡する。

名言

チューリング:秘密に関するアドバイス、秘密は持たないのが一番だ。

クラーク:あなたが普通じゃないから、世界はこんなにも素晴らしい。

モーコム、チューリング、クラーク:時として、誰も予想しなかった人物が想像できない偉業を成し遂げる。

あらすじ・ネタバレ・内容

 1951年に数学者アラン・チューリングの家が空き巣被害に遭う。そこで、取り調べを受けることになったチューリングは、ブレッチリー・パークでの仕事を回顧する。

 1927年、まだ寄宿生であったチューリングは、そこで自分を助けてくれた恩人クリストファー・モーコムと出会う。親密な仲となりやがてチューリングは同性ながら恋をするが、夏休みも終わりクリストファーが学校に戻ってくるのを心待ちにしていたところ、校長にクリストファーが亡くなったことを告げ知らされる。死因は結核であったが、チューリングはそのことを知らされておらず、傷つく。

 イギリスがドイツに宣戦布告した1939年、チューリングはブレッチリー・パークを訪れ、海軍中佐アラステア・デニストンの指揮の下、ヒュー・アレグザンダー、ジョン・ケアンクロス、ピーター・ヒルトン、ファーマン、リチャーズとともに、ナチスの暗号機エニグマの解読に挑むチームを結成する。MI-6長官のミンギスはチームで解読しろ命令するが、同僚の能力を当てにしていないチューリングは協調性を欠き、一人で暗号解読装置の設計に没頭する。

 暗号解読装置を作るには多額の費用を必要とした。デニストンが装置の組立資金拠出を拒否すると、チューリングはウィンストン・チャーチル首相に直訴の手紙を送る。チャーチルは拠出を許可すると同時に、チューリングをチームの責任者に任命する。チューリングは実力の劣るファーマンとリチャーズをチームから解任し、後任を探すため、新聞に難解なクロスワードパズルを乗せて応募を募る。試験にきたケンブリッジ大学の卒業生ジョーン・クラークがチューリングのテストに合格するが、男性と同じ職場で働くという理由で両親に反対される。彼女の才能を見出しているチューリングは、彼女が通信傍受係の女性職員と同じ場所で働けるよう手配する。

 しかしチューリングの装置はなかなか完成せず、ヒューの班の解読も成功しない。イライラは募り仲間割れも限界に近づくが、クラークがチューリングに同僚の関係の大切さを説き、チームを結束させることに成功する。彼らの助言を得ながら「クリストファー」と名付けられたチューリングの暗号解読装置が完成する。しかしドイツ軍が暗号のパターンを毎日変えるため解読が追いつかない。結果が出ないことを理由にデニストンは装置の破棄とチューリングの解雇を命じるが、チューリングの同僚たちも辞職をちらつかせ、これを阻止する。

 クラークはその頃年齢を理由に両親に職場を去ることを迫られていた。不服に思ったチューリングは「独身でなければいい」と考え彼女に求婚し、彼女もこれを承諾する。しかし同性愛者であるチューリングは、そのことを彼女に告げるべきか思い悩む。それに気づいていたケアンクロスはその事を隠し続けるようチューリングに忠告する。

 デニストンに最後のチャンスとして提示された1ヶ月の期限が迫る中、チューリングは通信傍受職員の女性が気づいた、あるドイツ兵士の通信は必ず冒頭が「CILLY」で始まるという特徴を聞かされ閃く。通信の中で確実に使われる言葉だけで探索をかけたら「クリストファー」は暗号を解くのではないかということだ。そして毎朝6時の通信に必ず使用されていた「天気」「ハイル」「ヒトラー」という3つの単語を探索させると、装置は即座に暗号の解読に成功する。皆で歓喜し、さっそくドイツ軍の作戦を阻止しようとデニストンに連絡をしようとするが、チューリングは、自分たちがエニグマを解読したことをドイツ軍に悟られてはいけない、と指摘し、ヒルトンの兄弟が乗った戦艦がドイツ軍に襲撃されるという情報をわざと伝えないという苦渋の決断をする。

 MI-6の協力を得て偽の情報源を作りながら、解読を悟られないよう秘密を守り情報を選別することになる。作業中にチューリングは偶然にもケアンクロスがソ連のスパイであることを知る。それに対してケアンクロスは、英ソはナチス打倒という共通の目標を持った仲間だと主張し、身分を明かせば仕返しにチューリングの同性愛を暴露すると脅迫する。チューリングはあるときミンギスにケアンクロスがスパイであることを暴露するが、ミンギスは既にこれを知っており、ドイツ軍との戦いを有利に進めるべくケアンクロスをチームに配属しソ連へ情報を流すよう仕向けていたのだと明かす。またミンギスはチューリングが同性愛者であることを知っているふうなことを仄かし去っていく。チューリングはクラークに同性愛であることを打ち明けて彼女に危険が及ばないよう婚約破棄を言い渡しブレッチリー・パークを去るよう促すが、クラークは怒りながら拒否しブレッチリー・パークに残る。第二次世界大戦終戦後、ミンギスは彼らに暗号解読の仕事にまつわる一切を破棄するよう命令し、また仕事内容を口外したり互いに会ったりすることを禁じた。

 そして1952年クラークがチューリングの家を訪れる。彼にはすでに同性愛の罪で有罪判決が下っていた。クラークの目の前にいるチューリングは手が震えている。刑務所で2年の服役かホルモン投与による化学的去勢を迫られたチューリングは、仕事を続けるために後者を選んだのである。チューリングは「クリストファー」を捨てられてしまうことには耐えられなかった。クラークはチューリングを励ますためにクロスワードパズルをしようというが、手が震えてできない。涙しながらチューリングは「君は全てを手に入れたね、仕事も夫も普通の暮らしも」と言う。それに対しクラークは「普通の人にはできないわ」と呟く。かつての業績を解雇しチューリングを鼓舞しながら、モーコムがチューリングに、チューリングが彼女に言ったように、彼女もあの言葉を語りかける「誰も予想しなかった人物が想像できないような偉業を成し遂げる」と。

 アラン・チューリングは1954年6月7日自殺する。享年41歳であった。2013年、エリザベス女王は彼に死後恩赦を与え名誉が回復された。

解説

史実を基にしながら「友情」「愛」「信念」を描く(ブレッチリー・パークでの暗号解読)

 アラン・チューリングはコンピュータの誕生に重要な役割を果たし、「コンピュータ科学の父」と呼ばれる人物だ。しかし同性愛の罪で逮捕され、41歳という若さで自殺するなど波乱の生涯を送ったことで知られている。この映画では、第二次世界中のブレッチリー・パークでの暗号解読時代に焦点を当てながら、彼の生涯の全体を描いている。

 ブレッチリー・パークでの暗号解読の業績は長らく秘密にされてきた。作中では、また戦争が起きた場合を考えて解読に成功していたという事実を隠蔽しておきたいというのが理由として描かれている。とにかく、1970年代までこの業績が隠蔽されていたことで、同性愛者として有罪判決を受けたという不名誉だけが残る。今では考えられないことだが、1885年から1967年まで、英国法では同性愛はわいせつ罪だったのである。

 アラン・チューリングは数学の天才である。天才にはテンプレがある。型破り、一人でなんでもやってしまう、本音を言ってしまう、自信家、コミュニケーションを取るのが下手、などである。その古典的なイメージは本作でも踏襲されており(実際本当にそうだったという説もある)、チューリングは最初、同僚の仕事が遅いからという理由で解雇したり、解読の仕事も自分一人で誰とも協力せずやろうとする。しかし天才にも苦悩があり、それが後半で徐々に明らかにされていく。

 大きなテーマがいくつか見出せる。まず「友情」である。最初チューリングは同僚を見下し一人で作業をしていたが、徐々に協力が必要だということが分かり、変わり者ながらも同僚と友情を深めていく。そのとき助けてくれたのがジョーン・クラークだ。唯一の女性であり、チューリングの妻にもなる。彼女が同僚との友情の大切さを教えることで、徐々にチューリングも他の同僚に心を開いていこうとする。

 そして「」である。『イミテーション・ゲーム』での恋愛は些か特殊で、ご存知のようにチューリングが同性愛者なのだ。それが寄宿生だった頃のクリストファーとの同性愛めいた関係にも現れている。クラークとチューリングに関しては特に恋愛場面が登場するわけではないが、自分がクラークが好きだが同性愛者だということを隠し通せる自信がないとチューリングが同僚に相談するシーンがあったり、クラークは他人の目が気になるということをチューリングに訴えるシーンがある。当時ではより難しかったであろう状況をうまく描いている。

 一番大きなテーマが「秘密」である。この作品には秘密が多い。まず暗号部隊のブレッチリー・パークの存在が公に知られてはいけない秘密だ。そこで働いている人は皆壮大な嘘を親しい人にも述べなければならい。また、チューリングには同性愛という秘密が、仲間のケアンクロスには〈ソ連のスパイ〉であるという秘密がある。

 最大の秘密は、暗号を解いたのにまだ解いてないと錯覚させなければならないという秘密だ。もし暗号を解いたのがドイツ軍に察知されたら、ドイツはすぐに暗号を変更することになるだろう。それを阻止したいブレッチリー・パークの面々はいわば知らないフリをし、情報を取捨選択しながら味方に教えることになるわけである

 しかしそれは、逆に仲間の死を見過ごすことでもある。敵がどこを攻めてくるのか情報を得ているのに、対策を立てずにただ味方がやられるのを待つしかないのだ。しかしそれが、最終的にはイギリスの勝利につながっていく。ある一件ではピータの兄を乗せた戦艦にドイツ軍がそドイツ軍が攻撃するという情報を手に入れたが、それを上層部に伝えることをしないという選択をする。エニグマを解くこと同様に隠すことも暗号解読班はやらなければいけないのだ。

ピーター:神じゃないのに生死は決定できない

チューリング:それでもやる

ピーター:なぜ?

チューリング:他の誰もできないから

 暗号を解いた時点で、チューリングたちのポジションはチェスの棋士のような存在となる。すべてが手駒であり、いかようにも動かすことができるのだ。それゆえ「神」という言葉がこの映画には結構登場する。勝利のためにはあまりにも多くの犠牲を必要とした。この映画では秘密を守ることの苦悩がひしひしと伝わってくる。

どのようにしてエニグマを解読できたのか

 エニグマというのはドイツ軍が使用した暗号機のことだ。解読不可能と呼ばれたエニグマであったが、様々な方法で戦時中に解読されてしまっていた。

 実際の暗号解読の歴史は非常に複雑なので、知りたい方は『エニグマ・コード 史上最大の暗号戦』を読んでもらいたい。第二次世界大戦における暗号戦の全貌がこれで分かる。またエニグマの仕組みを簡単に理解したい方はこのサイトを参照してほしい(https://gigazine.net/news/20201123-paper-enigma/)。ここでは本作に登場した暗号解読がどのようなものだったのかを解説しよう。

 本作で仄めかされていたのは「クリブ」と「シリー」だ。この二つがエニグマの暗号を解く時に重要な鍵となってくる。

 一つ目の「クリブ」であるが、これは推測されたドイツ語平文のフレーズのことだ。この「クリブ」が分かると、今度は「ボンブ」で暗号を割り出すことができる。ちなみにこの「ボンブ」がチューリングが開発した電動式機械のことなのだが、映画ではその名前が「クリストファー」になっている。

 さて、チューリングが閃いたシーンを思い出そう。女性の通信傍受職員の話を聞いて、ブレッチリー・パークに戻り、いつも朝6時に特定の三つの単語「天気」「ハイル」「ヒトラー」が使用されているのを発見し「クリストファー」で探索をかけると、暗号を解いてしまう。さてなぜ解けたのだろうか。

 「クリブ」はここではつまり「天気」「ハイル」「ヒトラー」のことだ(「天気」についてだが、ブレッチリー・パークで見つけた初期のクリブは気象に関するものが多かったそうである)。ドイツ語だと”Wetter, Heil, Hitler”になる。「クリブ」の前提条件として、その暗号文が必ずある単語を示していることをわかっている必要がある。だから、その朝6時の暗号文の始まりは決まって元文がWetterから始まっているなど、何らかの仕方でもとの単語が絶対にこれだということを知っていたということである。そうすると例えば暗号文QIKJUO→WETTERということが確定しているので、そこからボンブで探索をかけて解くことができたというわけである(ボンブの仕組みも『エニグマ・コード』に載っている)。つまり何が言いたいかというと、この暗号文は絶対にWETTERですね、HEILHITLERですね、というのがあらかじめ何らかの仕方で分かっていたということ、どうして分かったのかは描かれていないので、それを前提にしないとなぜハイル・ヒトラーだけで暗号が解けたのかわかなくなってしまう。

 もう一つ「シリー」も暗号解読の手助けをしてくれている。「シリー」というのは、ドイツ軍が犯した人間的なミスの総称のことだ。例えば、エニグマにはローターというものがあって、その初期設定に三つのローマ字が必要なのだが、それをqazとかwsx(キーボードを見よ!)にしてしまうということがあった。これは要するに、パスワードをaaaにする、みたいなことに等しい。それでは簡単に推測されてしまうだろう。

 そのシーンが通信傍受職員が言っていた、必ず「CILLY」というおそらく彼女の名前を最初に入れるというものだ。この映画では、チューリングが「クリブ」に閃くというシーンと繋がっているので、あんまり関係ないとも言えそうだが、「シリー」の綴りは「cilli」で、これは先程の初期設定(開始位置設定)で初めて解読されたものの中に「CILという設定があったからだそうなので、おそらくそのことを念頭において、この映画では「CILLY」を登場させたのだろうということが言える(またこれは英語の「silly=馬鹿げている」とかけてもいるらしい)。

なぜクリストファーという名前なのか

 機械の名前が「クリストファー」なのは史実とは異なる。クリストファーというのは、チューリングが作中で子供の頃愛した男性の名前だ。クリストファーは亡くなる。彼は結核でもともと長くなかったのだ(しかもチューリングはそのことを知らされてなかった)。それがチューリングに喪失の悲しみを植え付けさせる。どこかいつも寂しそうなカンバーバッチの演技は素晴らしい。喪失の埋め合わせにチューリングは機械にクリストファーと名付ける。その機械を捨てるかホルモン投与をするかという選択では、チューリングは後者を選択する。チューリングは「私を独りにしないでくれ」と泣く。ずっと過去の喪失を引きずっているのだ。

 この作品ではチューリングの内面的な脆さに深く切り込んでいる。実際、ブレッチリー・パークでも何度か気弱そうな表情を見せていたが、最後の最後で心の奥底の感情があらわになる。子供のように涙するが、そこにはクラークがいる。クラークは強い女性である。チューリングの弱さをクラークが助けようとする場面は、映画の最初の方と関係が逆になっており対照的な構図となっている。

考察・感想

印象がガラリと変わるマラソンシーン

 カンバーバッチは、ご存知のようにテレビ版『シャーロック』でホームズを演じた俳優で、ある種の天才型を演じるのがよく似合っている。またナイトレイは、『パイレーツ・オブ・カリビアン』でも分かるように、強気な女性を演じるのが非常にうまい。実に配役もぴったりだと思う。実際、アカデミー賞ではカンバーバッチとナイトレイは、それぞれ主演男優賞、助演女優賞にノミネートされている。

 この物語の前半ではチューリングは単純な天才人間として振る舞っているが、徐々にその心の弱さや複雑さが垣間見えてくるような移り変わりがある。それを一番感じられるのがマラソンシーンだ。

 マラソン自体は、チューリングはどうやら得意でかなり速かったらしいのだが、本作ではそのマラソンシーンが二回登場する。最初のランニングシーンでは、いきなりタンクトップ姿で走っているシーンが映され、ある意味でチューリングの変人ぶりを誇張しているような感じに見える。しかし、ほとんどラストのところで登場するランニングシーンは、マラソンというよりも疾走であり、チューリングの苦悩、人の生死を神でもないのに選択しなければならないという苦悩が浮かんでくるのだ。同じようなシーンなのに、場面の違いで、全く見え方が異なるのが面白い。おそらく監督も意図的に前半と後半に同じようなシーンを入れたのだろう。

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私は何だ?

チューリング:では・・・刑事さん。判定を頼もう。教えてくれ。私は何だ? 私は・・・マシンか?人間か? 戦争の英雄か?犯罪者か?

ノック:私には判定できない。

 映画の題名の『イミテーション・ゲーム』とは、元々論文の題名で、そこではマシンか人間をどのようにして見分けられるのかが問われているとされている(一般にはチューリングテストと呼ばれるものである)。しかし、本作ではマシンか人間かということはあまり問われていない。むしろ倫理的な問題が問われている。すなわちチューリングは戦争の英雄か?犯罪者か?ということである。

 本作では、チューリングは多くの民衆を救ったと同時に、多くの人を殺したことになる。また彼はソ連にわざと情報を流すことに協力している。しかも、それは自分の同性愛がバレないための自己保身(ほとんど脅迫に近い形であるが)も含まれており、容易に英雄視できないことをやっているわけだ。

 また、エニグマを解くための解読機械、クリストファーも同じく変な立場にある。あそこまでクリストファーに執着したのは、暗号を解くためだけでなく、クリストファーという過去に愛した人をそこに投影するためでもあった。公の仕事に私情を挟み込んでいる。こういったことをチューリングも自覚していたので、彼はノックに問うたのである。

 結局私(チューリング)は何だったのだろうか。ノックが判定できないと答えたように、唯一の答えがあるわけではない。しかし、チューリングは「他の誰もできない」ことをした。「他の誰もできない」ことが犯罪的な要素を含んでいることを知っていたにもかかわらずである。分かっていて彼は決断したのである。そう、善悪が簡単には決まらないところで、私たちは決断しなければならない。「決断」、これはおそらく結構大事なことだ。

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評価(批評・評論・レビュー)

今年のオスカーレースで、ワインスタイン・カンパニーが『ビッグ・アイズ』でなく、『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』をイチオシにした理由は明らかだ。とにかく、すべてにおいて「手堅い」…… 全文

ーー cinematoday.com(くれい響)

つくづく得体の知れない映画だ。表向きは数学者がナチスの暗号「エニグマ」を解読しようと奮闘する英国ミステリー。しかし観客が…… 全文

ーー eiga.com(牛津厚信、映画ライター)

加筆中(おもしろい評論、または、載せてほしい論考などがありましたら、コメント欄にてお伝えください)

動画配信状況

『イミテーション・ゲーム』配信状況比較

配信サービス配信状況無料期間月額料金
U-NEXT31日間2,189円
Amazon Prime30日間500円
TSUTAYA DISCAS30日間2,052円
Hulu✖️2週間1,026円
dTV31日間550円
FOD✖️✖️976円
ABEMAプレミアム2週間960円
Netflix✖️1,440円
クランクイン!ビデオ✖️14日間990円
mieru-TV✖️1ヶ月間990円
dアニメストア✖️31日間550円
◎☆:おすすめ、○:無料、☆:実質無料、△:別途有料、✖️:配信なし(2023年2月時点の情報。最新の配信状況は各サイトにてご確認ください)*実質無料とは、無料ポイント付与により別途料金を払わずに視聴できるということ。詳細:『イミテーション・ゲーム』無料視聴方法

 日本には有力な動画配信サービスはいくつもある。NetflixAmazon PrimeU-NEXTDisney+は配信数の多さやオリジナル作品のクオリリティーの高さが魅力的で、映画・アニメ・ドラマファンから高い人気を博している。それらの配信サービス以外にも、HuludTVクランクイン!ビデオなど代償様々なサービスが展開されていて、それぞれにメリットやデメリットがある。また配信サービス以外には宅配レンタルサービスもあり、その代表格に業界トップの取り扱い数を誇るTSUTAYA DISCASがある。

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 U-NEXTは日本企業が運営する定額制の動画配信サービス。業界トップクラスの見放題配信数で、映画ファンが愛用している。また毎月ポイントが付与されたり、雑誌が読み放題だったりとちょっと変わった特典も魅力。

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 TSUTAYA DISCASは、持分法適用会社のカルチュア・エンタテインメントが運営する宅配DVD/CDレンタルサービス。取り扱っている作品数はU-NEXTよりも多く、宅配レンタルならではの独自システムでサービスを提供している。

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 Netflixはアメリカの動画配信サービス。独自のNetflixオリジナル作品の質が高く、アカデミー賞ノミネートされた作品も数多い。

 またほとんどの動画配信サービスが「無料お試し期間」を設けている。その期間を利用すると無料で作品を視聴することができる。期間中の解約も可能である。

 本作を動画配信サービスで無料視聴する方法は下記の記事にまとめた。

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