『崖っぷちの男』感想|あらすじ解説|内容考察|不動という珍しい設定

『崖っぷちの男』感想|あらすじ解説|内容考察|不動という珍しい設定

概要

 『崖っぷちの男』は、アスガー・レス監督による2012年のアメリカ映画。ダイヤモンドを盗んだ容疑で刑務所にいれられてた元警察官が無実の罪を晴らす様子を描く。

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登場人物

ニック・キャシディ(サム・ワーシントン):ダイヤモンドを盗んだ疑いで服役中の元警察官。

リディア・マーサー(エリザベス・バンクス):交渉人。ニックの飛び降りを止めようと奮闘する。

ジョーイ・キャシディ(ジェイミー・ベル):ニックの弟。

アンジェラ・マリア・ロペス(ジェネシス・ロドリゲス):ジョーイの恋人。

デヴィッド・イングランダー(エド・ハリス):ニックをはめた実業家。

あらすじ

 舞台はニューヨーク。ウォーカーという名でホテルにチェックインしたニックは、準備を整えると窓の外に立ち飛び降り自殺をしようとする。ホテルの下には飛び降りを見ようと市民が集まり、ニックのもとには説得のために警察が駆けつける。

 ニックは二年前にデヴィッドのダイヤモンドを盗んだ容疑で服役している元警察官であった。隙をついて警察から逃亡してきたニックは、無実の罪を晴らすために飛び降り自殺の演技をしていた。ニックによって交渉人として選ばれたリディアは、必死の説得によって次第にニックの無実を信じるようになり彼に協力する。

 ニックの作戦はダイヤモンドを発見することで、盗んだという無実の罪を払拭することだった。向かいのデヴィッドのビルに潜入したジョーイとアンジュラは、デヴィッドを騙して巧みにダイヤモンドを盗む。しかしそれがデヴィッドにバレてしまい、ニックとの一騎討ちになるもニックが勝利して幕を閉じる。

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解説

落下と不動

 映画において「動き」(運動)は重要な要素の一つである。登場人物の身振りは大きく表情は豊かで、場所を常に移動しがら物語が進んでいく。もちろん『十二人の怒れる男』のように会話を中心に一つの部屋の中だけで完結してしまう実験的な映画もある。しかしこのようような動きに対して禁欲的な映画が成功するためには、高い演技力や完成度の高い脚本が必要不可欠となる。

 そのような観点からすると、本作は非常に珍しく挑戦的な作品と言えるかもしれない。主人公のニックは物語の大半をビルの上で、しかも窓の外にある幅50cm長さ3mくらいの出っ張りで過ごす。そこで起こる「動き」は自殺を妨げようとする交渉人のリディアとの会話くらいなもので、あとはビルの下にいる市民へジェスチャーを送るのみにとどまっている。行動範囲の狭さでいえば、他に類をみないほどである。

 さらにもう一つ珍しい点があって、それは行動する場所が高層ビルの出っ張りという極めて高い位置にあることだろう。高さは不安や不安定さを象徴しているようで、実際ニックはこの高さに怯えて手は震えている。不安定さはニックの盗難の罪に問われている彼の状態を表している。したがって彼がこの高いところから安定した地面に降りることは、無実の罪をはらすという展開を考えれば、当然の成り行きなのかもしれない。

 映画において上下の運動は、横の動きと比べて表現することが難しい。本作ではニックの地面への帰還はビルから飛び降りることでなされるている。この落下シーンを外から広角で固定して撮るのでは迫力に欠けてしまっていただろう。現在では映像技術の発展に伴いカメラ(視点)の無重力化が可能になっているが(多視点的転回とは何か-渡邉大輔-映画批評理論*なるほう堂)、2012年に公開された本作ではその先駆けのような映像であって、落ちていくニックの視点から地面への接近を迫力ある形で撮っている。

 高所と不動という二つの挑戦的な要素がとりいれられている点はユニークである。だがそのぶん演技や脚本で躍動感を表現しなくてはならないのだが、それに成功しているかは怪しい。ニックとリディアの交渉は進展がないし、父が生きていたというどんでん返しは無くしたほうがいいように感じた。だが、アクションや爽快感は十分楽しめると思う。

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